各種資料

平成16年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
議事要旨について





平成16年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会議事要旨

1.日   時: 平成16年7月20日(火)10:00〜16:30
2.場   所: 虎ノ門パストラル 新館6階 ペーシュ
(東京都港区)
3.出席委員: 石田主査、小澤委員、佐伯委員、根本委員、藤田委員、船水委員(以上、第1部会)
辻本委員(第2部会)、井口委員(第3部会)
4.配付資料:
資料1 平成16年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第1部会担当)委員名簿
資料2 評価の方法等について
資料3 国土技術政策総合研究所プロジェクト研究一覧
資料4 健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究(中間評価)関係資料
資料5 都市地域の社会基盤・施設の防災性能評価・災害軽減技術の開発(中間評価)関係資料
資料6 公共事業評価手法の高度化に関する研究(事後評価)関係資料
資料7 社会資本整備水準の評価手法に関する研究(事前評価)関係資料
資料8 ヒューマンエラー抑制の観点からみた道路・沿道環境のあり方に関する研究(事前評価)関係資料
資料9 四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発(事前評価)関係資料
資料10 走行支援道路システム研究開発の総合的な推進(報告)関係資料
資料11 他の分科会における評価対象課題資料
【参考資料】
国土技術政策総合研究所研究評価委員会設置規則
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会設置規則
国土技術政策総合研究所研究方針(平成15年度改訂)
Project Concept 2004(要覧)
国総研アニュアルレポート2004
5.議事次第:
1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について
(2) プロジェクト研究の中間評価
@ 健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究
A 都市地域の社会基盤・施設の防災性能評価・災害軽減技術の開発
(3) プロジェクト研究の事後評価
@ 公共事業評価手法の高度化に関する研究
(4) 新規研究開発課題の事前評価
@ 社会資本整備水準の評価手法に関する研究
A ヒューマンエラー抑制の観点からみた道路・沿道環境のあり方に関する研究
B 四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発
(5) プロジェクト研究の中間評価・事後評価の取りまとめ
5. 報告
(1) その他のプロジェクト研究の報告
@ 走行支援道路システム研究開発の総合的な推進
(2) 他の分科会における評価対象課題の報告
6. その他
7. 国総研所長挨拶
8. 閉会
6.議事内容:
(1) 評価の方法等について
 事前評価の方法等について、事務局より説明した後、委員の了解を得た。
(2) 議事「プロジェクト研究の中間評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答、議事「プロジェクト研究の中間評価の取りまとめ」についての評価状況、質疑応答及び取りまとめ
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
本分科会においては、中間評価・事後評価対象の各課題について、主査より各課題の担当委員を指名していただいた。各課題の評価に当たっては、質疑応答に先立ち、担当委員より議論のための論点整理をしていただいた。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究
<論点整理>
研究が着々と進められている。研究を総括すると6つのポイントがある。
1. 健全性(水循環系・流砂系)を評価するに当たっての基礎的な指標の抽出がなされており、かなり研究が進んでいる。
2. 指標を計算するツールや指標を現地でモニタリングするツールに関する基本的な開発は進んでいるが、まだまだ取り組むべき事項も残されている。例えば、山地から海岸までを一貫して解析する地形変形モデルについては、海岸部での土砂収支の問題、山地部での土砂生産の問題など、解析モデルの境界条件の設定に課題が残っている。
3. 治水・利水・環境の全てに関して健全性の指標を総合化することが研究の目標であるが、環境も含めた健全性をどのように評価するかについての研究成果がまだはっきりとしていない。環境問題を考える場合、いろいろな指標値のトレンドも大切だが、時間的変動も大切であると思われる。例えば、水循環で言えば人工洪水を起こすことが環境面で良いとか、土砂管理について言えば河床形状が安定化し過ぎるよりは時間的に変動する方が良いとか、そのような視点からの研究も望まれる。環境問題への取り組みでは、生物や生態系の専門家を含めた研究体制が必要である。
4. 健全な水循環系・流砂系を構築するための具体的な対策については、これから行われる予定の課題であり、今後の研究の発展に期待している。
5. 水循環系・流砂系の総合化という観点では、土木系と砂防系の分野を越えた研究体制の強化を進めていただきたい。
6. 類似の社会条件を有するアジア地域への研究成果の応用ということが謳われているが、アジア地域と日本には自然条件・社会条件に相当な違いがある場合も多いので、むしろその違いを明確にしながら研究成果の適用を図るという形にしてほしい。
<研究概要、資料等についての質疑応答>
先行研究にどのようなものがあるかについての説明がないと、効率的な研究推進に繋がる評価がしにくい。事前評価(平成13年度)以降にも、この分野の研究は世界で進められており、開発が進んでいるものと推察される。現時点における先行研究の状況を説明してほしい。
環境を視点とした水質や流域の環境の脆弱性を評価する指標はアメリカのEPA(米国環境保護庁)が清水法を補完するモニタリングの位置付けで行われている。これは水質を中心としたものだが、水質に限らず、より広い形で研究を日本でもしていこうとしている。
流砂系については個別の土砂流動のモデルの研究は進んでいるが、流砂系を一貫して土砂の動態を観測するような全体系モデルの開発はできていない。
総合的な評価と合意形成を2本立てで用意しているのは良いアイデアだと思う。残された研究期間で、ユニバーサルな基準に基づく総合評価と流域毎の住民の考えを反映しようという2つを結びつけてアウトプットを出していただきたい。合意形成と健全性の評価はつながりが強い。また、水循環系については水収支モデルをベースにして合意形成をという説明があったが、水収支モデルがどのような水(水質)をどのように配分(水量)するのかというイメージがあまり明確でないという印象を受けた。この先にまとまっていくことを期待したい。
水循環の水収支モデルについては、水量の配分をベースにしつつ、環境等の多様な要素にどのように反映させ、評価していくかが課題だと考えている。このモデルは、水量が無くて生態系や流域に非常に影響がある場合に、水のやり取りを介してどういう形で問題解決できるかという検討をするために作成された背景がある。カリフォルニアのカルフェド(CALFED)では湾の水質や生態系保全のために流量をどのように確保していけば良いのかということに州政府と連邦政府が合同で取り組んだ事例のほか、米国の東部においてもいくつかの事例がある。そうしたものを参考にして水収支モデルを作ったが、どのように評価に反映するかについては今後検討していきたい。
水量だけではなく、どのような質の水をどう配分するか、また、どのような質の水をどう作るか、という議論も必要である。
研究成果の公表や活用ということで、学会誌への発表を頑張ってほしい。特に水循環グループについては頑張ってほしい。どのような情報発信をしていくかについては国総研の考え方もあるだろうが、世界の中でどのような位置を保つかということも情報発信の中で考えていく必要がある。
論文については、アジア太平洋水文水資源協会の国際会議などでも合意形成に関する発表をしているが、資料の不備でそうした発表が抜けてしまった。また、論文だけではない情報発信としての、具体的な行政への反映等も重要であると思うので、その方法について検討する必要があると考えている。
合意形成に関連して、流砂系の健全性、水循環の健全性、環境を含めた総合的な健全性を考えていくように研究が進められているが、個々の視点での健全性を踏まえて、最後に一般住民を含めて総合評価をするという想定は単純な感じがする。合意形成の過程で、専門家が判断する部分と、住民の好みに応じて選択する部分は異なっており、専門家と一般住民の役割分担や全体の合意形成のあり方を考えておく必要がある。
「治水・利水・環境の総合化」と「水循環系と流砂系の総合化」については、双方で総合化という言葉が使われており、混乱するので言葉や概念の統一をお願いしたい。
欠席委員及び他部会の委員からの事前意見を紹介してほしい。
どのような方法で総合指標の適切性を判断するか不明とのご意見があった。どのような水循環系が健全かということについて、多様な価値観の中で多くの方の考えを求めていく必要がある。指標作成のプロセスに多くの人に参加いただいて、知見を集積していくことを考えている。
合意形成では意見や立場の異なる人々の意見をいかに調整するかであり、AHPには限界があるとのご指摘があった。確かに、AHPには限界があることは認識している。多様な価値のトレードオフを議論し、関係者が意思決定に参加することを支援するモデルとして、水収支モデルのような参加型の取り組みも重要であると認識している。
健全性の確保やモデルの構築について、いかに総合化するかを明確にすべきとのご意見があったが、治水、利水、環境はまず個別に扱うのが適切だと考えている。その上で各流域の特徴を踏まえつつ、流域ごとに治水・利水・環境といった多様な価値のトレードオフを考慮する手法を求めていくことが、水、土砂管理の評価に繋がると考えている。そのため、いくつかの流域においてケーススタディを積み重ねていきたい。
表7−1の要素例が適切でないとのご意見があった。これは概念を抽象的に並べたもので、具体的な評価においては精査していくことが必要だと考えている。その際には、是非委員の方々にもご意見をいただきながら研究を進めたい。
この研究では特に、治水・利水・環境を総合化するという点が一番難しい。合意形成にあたっては、まず治水上健全な姿、利水上健全な姿、環境上健全な姿をそれぞれ明確にすることが大切である。それらをメニューとして提示した後に、合意形成の段階に入るのだと思う。治水・利水についてはある程度研究が蓄積されているが、環境上健全な水循環系・流砂系については新しい研究だと思う。生態系や生物の専門家でさえも、このような課題に対してはっきりわかっていない部分が多い。したがって、これについての研究を重点的に進めていただきたい。
<評価シート集計結果(段階評価結果)>
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない
 
☆☆☆☆☆☆☆☆
 
 
研究の進捗状況
(中間達成度)
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない
☆☆☆
☆☆☆☆☆
 
 
研究継続の必要性・妥当性 1 計画通り継続
2 計画を一部修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
☆☆☆☆
☆☆☆☆
 
 
※より詳細な「評価シート集計結果(コメント含む)」は、別紙をご参照下さい。
<評価シート集計結果等に関する質疑、評価>
各委員のコメント等に対して、研究担当から追加説明等があればお願いする。
健全性の定義について、例えば病気に対する対症療法的なものではなく、ここでは健康に相当するところを研究したいと考えており、水循環の健康に相当する治水・利水・環境のバランスを考えた健全性を評価していきたい。
指標の総合化という表現がわかりにくかったと思うが、治水・利水・環境それぞれについて流域で指標を評価し、これらのバランスを考えるということが、指標の総合化であると考えている。
水循環系と流砂系の総合化がわかりづらいということであったが、特に水循環系と流砂系の総合化を図り、水・土砂管理の総合化を図っていくということが最終的な目標の一つである。水循環系の方から流砂系の方に対しての提案や、逆に流砂系の方から水循環系の方に対して人工排砂等のあり方を検討するような場所を選定する等して、残された研究期間の中で考えていきたい。
水循環系の健全化の中で、水質、生態系、森林の涵養機能等についての意見をいただいているが、そうしたものについては具体的な健全化の取組みではなく、評価指標作りの中で検討している。具体的な健全化の手法やツールについては、大学や土木研究所でも検討いただいており、それらと連携を図りながら進めているところである。さらに、水循環系については関係省庁との連絡会議の場で、行政の動きの中でも進めて行きたい。
用語の問題だが、「健全な」の定義がわかりにくい。英文題目では何と表現しているのか。
循環系をhydrological cycleと表現する場合には「健全な」をバランスのとれたという解釈をして、balanced hydrological cycleという表現を使っている。水循環系としてwater cycleという言葉を使うことは少ないが、これを使う場合には、healthyという言い方をしている。
健全性についての定義を早く明確にした方がいい。特に環境上の健全性が本研究のポイントになる。流砂系における環境上の健全性の定義は非常に難しいと思うが、それがないと研究も進まないので、早く提示するようにしていただきたい。
<評価のとりまとめ>
これまでのところ合格点を与えることができる。4名もの委員が「計画を一部修正の上継続」と評価しており、適切な対応をとられたい。特に、本研究において重要な概念である「健全」がどういうことかをきちんと説明できるようにしてほしい。多数のツールが開発されていることは魅力的だが、それらをどのように有機的に組み合わせて総合化(治水・利水・環境の総合化、合意形成という総合化、水循環系と流砂系の総合化)を図っていくのかについてより多くの資源を投入する形で研究を更に継続してほしい。
A都市地域の社会基盤・施設の防災性能評価・災害軽減技術の開発
<論点整理>
何のために研究するのかということに対する本質的な掘り下げが必要である。その面から、都市地域の自然災害を防ぐ戦略的な方法論の体系化が必要である。また、2つ目として、地震、水害等、災害毎の様相に応じたシナリオも必要であるといえる。更に、3つ目として、地震防災に関しては、予防対策、緊急対応、復旧の3つの切り口を踏まえたものが望ましい。
全般を捉えた戦略的な防災論の理論構築が必要だと考えるが、「各種災害に対してバランスの取れた対策」という箇所が資料の中で重要なポイントとなっており、何に対してバランスを取るのかを明確にする必要がある。リスクカーブを用いた評価を全国一律にするのかは非常に難しい問題である。端的な例としては、東海、東南海・南海地震はそれぞれの地震を想定した対策がとられており、国土交通省の社会資本整備計画の中でも取り込まれていると認識している。極めて稀にしか生じない強い地震動に対してどのように取り組むかを明確にしていく必要がある。
ここで、例えば、地震の場合は火災も発生する。土砂災害でも急傾斜等では雨の影響が出てくる。水害の危険地域は地盤が軟弱であり地震でも対応が必要である。また、都市の地震災害を考えれば火災も重要であり、都市内の道路ネットワークと火災との関連を考えることが必要となる。災害には素因、誘因、拡大要因があるため、それらを融合的に扱う必要がある。
資料5の図―1では、津波が地震災害の項目の中に記載されている。津波が来襲する前の段階で、河川堤防・高潮水門が地震動によって機能を損なうことがないかが重要である。地震を特定した場合に、河川堤防・高潮水門がそれなりの性能を保つことができるか否かが、その後の対応等への影響が大きい。更に、津波の問題では、都市周辺地域の臨海コンビナートの防災が問題となってくる。長周期地震動に対する石油タンクのスロッシングの問題も視野に入れることが必要である。
以上まとめると、地震対策では、災害対策基本法に基づいて国の機関や自治体等でさだめることとされている地域防災計画の震災対策編がバイブルとなっている。こうしたものへ反映させることを踏まえ、広範で多岐に渡るプロジェクト研究をどのように展開し、研究成果をどうまとめていくか、研究の目的を認識して考えていく必要がある。
東南海・南海地震への緊急対応のため、津波や長周期地震動に関する検討も開始する。その中で、津波来襲前に生じる地震動に対して、水門等がどのような挙動を示すのかについても研究を進めたい。
<研究概要、資料等についての質疑応答>
種々の災害をまとめて扱うメリットがあまり明確にされていないのではないか。リスクのバランスを横断的にどのようにして取るか、どういうものから対策投資するかといった横断的な戦略が明らかでない。
コストを含んだ議論をしないと、整備の順序の検討や各種災害の総合化をしにくいのではないか。資料のリスクやハザードの図に合わせて、コストを含んだ図もほしい。
最適な防災投資やリスクミニマム投資を、是非この研究の成果として出していただきたい。物損と人命をどのように評価していくかが課題である。また、危険度の高い場所に敢えて住んでいる場合と、そうでない場合を同一に扱うべきではないと考える。こうした自己責任の問題も、投資を決めるときに考慮すべきである。難しい問題がいろいろあるが、是非取り組んでいただきたい。
物損と人命損失については、別々に評価している。自己責任については、ご指摘をふまえて検討したい。
例えば、地震、台風などは、複合的な災害を引き起こす場合があると思われる。資料には、「災害間での横断的検討をする」と記載されているが、そのあたりがあまり明確でない。災害毎の取り組みについては示されているが、複合的な災害がどのように発生するのか、また、それをどのように評価するかについては、整理してわかりやすく示してほしい。例えば、地震の外力を想定して、津波、氾濫、土砂災害などが複合的にどのように起きるのか、また、台風による外力を想定して、土砂災害、水害がどのようにして起こるのかという外力別の整理をしてはどうか。
現在、災害ごとにリスクカーブを描いている。それをどのようにして総合化するかについては、災害毎の担当者から構成されるワーキンググループをつくり、対応していきたい。
研究することが実際に役立つか否かが重要であり、人命が救助されるということが最も大切なことと考える。自衛隊は災害救助等の最前線で活動しており、このような研究は防衛関係の機関でも検討されているかもしれない。違った角度からシナリオを検討してもらうという観点からも、内閣府、防衛庁、防衛研究所等との接点を設けて研究内容を点検してはどうか。
個々の災害に対してシナリオを描き、いろいろな条件の幅の中でどういったことが起こりえるかを広く住民に提示し、どこまでの災害を受忍限度とするかについて検討できれば、そこで、コストの問題も顕在化するのではないか。現在は、洪水についてはハザードマップで住民に対する情報公開が進んでいる。住民あるいは都市の利用者が自己責任で意思決定する際に必要となる災害に関する情報を、国土交通省として、冷静でわかりやすい形で提供していくことが非常に重要であり、そのような位置づけでの研究をまとめていくことが非常に大切である。その中で施策あるいは政策の選択肢がはっきりしてくるのではないか。本日の事前評価課題である社会資本整備水準の評価指標は、防災投資・防災対策等とも関連してくると思われるので、研究を取りまとめていく上で考慮していただきたい。
欠席委員及び他部会の委員からの事前意見を紹介してほしい。
各分野相互の依存関係を災害対策にどのように盛り込むかという視点を持って研究のとりまとめを進めてほしいというご意見があったが、各災害の相互の影響や複合的な効果については、各災害の担当者から構成されるワーキンググループで検討を進めていきたい。
平成18年度に及ぶ追加研究と全体枠の関係がわかりにくいというご指摘があった。プロジェクト研究を構成する課題は、本省の各事業ベースで予算をとって進めている。これらの研究課題で出されるリスクカーブを災害毎に整理し、総合化していくのがこのプロジェクト研究であり、平成17年度までにまとめられる。個別の研究課題の事業目的の最終成果については、平成18年度以降に出てくるものがある。平成16年度から検討を開始している巨大地震に関する課題については、平成18年度までの課題となっているが、出来る限り効率的に研究を進めることで本研究プロジェクトへ反映させる部分の開発は間に合わせたいと考えている。
本プロジェクト研究の最大の特徴は、多種多様で多岐にわたる災害を総合化して、横断的に一括して扱うところにある。対応策、地域特性をどのようにしてバランスよく判断するかが重要である。各災害を担当するワーキングで検討を進めていくと書かれているが、それでよいのか。各災害の担当で精密化する必要もあるのはわかるが、ときには思い切って定性的に全容シナリオを描くことも必要ではないか。
記述が誤っており、訂正したい。各災害別にWGを作るのではなく、各災害を担当する者が集まるWGで検討を進めていく。
添付の資料(関連研究の成果の表)において、インプット外力が示されているものと示されていないものがある。今後も示せないという箇所もあるかもしれないが、どこまで示していくことができるかが今後の重要な作業のポイントである。今後示していけるのはどこか。
研究課題毎に検討された部分を書いた。インプット外力の表示など抜けているかもしれない。
例えば、17)の道路構造物地震被害予測については、セルがブルーになっているのは脆弱性の箇所だけであるが、ここについては成果が出ていることを表している。インプット外力の箇所などセルが白色になっている箇所に関しては、この課題で目標として成果でないという意味で、外力の設定をしていないということではない。
インプット外力がないと計算できないものがあるはずである。成果だけでなく、その前提条件としても重要なので漏れがないようにしてほしい。
<評価シート集計結果(段階評価結果)>
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない

☆☆☆☆☆☆☆
 
 
研究の進捗状況
(中間達成度)
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない
☆☆☆☆
☆☆☆☆
 
 
研究継続の必要性・妥当性 1 計画通り継続
2 計画を一部修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
☆☆☆☆☆☆
☆☆
 
 
※より詳細な「評価シート集計結果(コメント含む)」は、別紙をご参照下さい。
<評価シート集計結果等に関する質疑、評価>
各委員のコメント等に対して、研究担当から追加説明等があればお願いする。
総合的にまとめていく箇所について、今後の展開が明確でないということと、難しいというご指摘をいただいた。総合化の箇所については、担当研究官のワーキングを通じて国総研として総力を挙げて進めていきたい。また、広く外部の専門家の方々からの意見を受けつつまとめていきたい。カタストロフィックなリスクカーブの難しさというものに対しては、委員等々からのご意見をいただきながら進めて行きたい。
厳しい指摘をしたというよりはエールを送ったつもりである。リーダーシップをとって頑張っていただきたい。
<評価のとりまとめ>
中間評価としては合格点といえる。研究の必要性・妥当性については、総合化が非常に大切なので、そこに力点をおいて研究を進めてほしい。是非、最終成果を達成できるよう研究を推進していただきたい。
(3) 議事「プロジェクト研究の事後評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答、議事「プロジェクト研究の事後評価の取りまとめ」についての評価状況、質疑応答及び取りまとめ
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
本分科会においては、中間評価・事後評価対象の各課題について、主査より各課題の担当委員を指名していただいた。各課題の評価に当たっては、質疑応答に先立ち、担当委員より議論のための論点整理をしていただいた。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@公共事業評価手法の高度化に関する研究
<論点整理>
研究マップに示されているように、国総研は大学と行政の間にあって、研究課題は手法開発――外部経済評価と不確実性の問題に焦点を絞って取り組んだという点は非常に良かった。
外部経済評価については、技術的課題を挙げて、研究をレビューし、ケーススタディが行われているが、いろいろな技術的なポイントが資料の12ページ目に指摘されている。しかし、過去の研究のレビューをすれば分かる結果なのか、それとも国総研でオリジナルなデータ収集や解析を行い、当該手法を検討することで新たに得られた科学的な知見なのかが区別されていない。成果公表時には、その辺を明確にする必要がある。地方整備局等での利用を想定した別冊資料の「外部経済評価の解説(案)」は、極めて有用であり、広く世の中に公表して大学等で活用してもらうと良いのではないか。このような成果は、国総研の特徴が非常に出ており、高く評価したい。
将来の不確実性に関する研究では、事例調査で事業の遅延やコスト増の要因を分析しようとしており、非常に貴重なデータが集められており興味深い。ただし、結果として、データの不足から要因の抽出には至らなかったということは残念である。更に努力して分析を進め、結果を公表していただきたい。また、データの不備で分析が出来ないとすれば、それを論理的に示して、データの整備を提案する形での成果発表を是非していただきたい。行政での利用を想定した「感度分析評価の手続」についても興味深く、役に立つと思う。
「事業評価カルテ」も現場で役立つ仕組みが提案されていると思う。ただし、このカルテでどのように事業評価をして、次に結び付けていくかははっきりしていない。後継プロジェクトにおいて、このようなカルテを適切に利用する方法や、合意形成上どう役立てていくかということを研究していただきたい。
得られている成果に対して研究発表が少ない印象を持つ。オリジナルな研究成果が出た部分は学会発表を是非していただきたい。研究者のインセンティブを高めるため、学会発表を奨励し、個人の研究成果ができるだけわかるようにしてほしい。行政文書も執筆分担を示してほしいが、日本ではそのような習慣がないため難しいのかもしれない。諸外国では行政文書を誰が執筆したかを示すような仕組みができつつある。本研究プロジェクトの責任者についても、誰がいつからいつまでを担当したのかを明確にすべきではないか。
2年間で成果を出すため、行政の方に力が入ってしまったことは否めない。現状の成果では十分とは考えておらず、委員の方々の意見を踏まえて更に高度化を図っていきたい。学会発表についても、秋頃の学会に向けて準備中でもあり、今後次々に出していきたい。「外部経済評価の解説(案)」に関して、単なるレビューとオリジナルに分かった点が明確ではないとの指摘については、確かに不明確な点があると思う。実際には、レビューし国総研で検討を加えてまとめたという部分がほとんどである。オリジナルの部分で特に力を入れたのは、CVM等の表明選考法の箇所だと考えている。今後のまとめで発表して行く際には、その辺がもっと明確になるようにしていきたい。
<研究概要、資料等についての質疑応答>
事業評価については5〜6年前に中村英夫先生をリーダーとする専門家によって「道路投資の社会経済評価」が書かれ、国土交通省からは便益帰着構成表を作るように指示が出されていたと思うが、当然のことながら、便益帰着構成表の中には外部効果に関するものがかなり含まれる。便益帰着構成表を作成すべきとの指示が5〜6年前に出ている中で、精度が上がらないながらも適用してきたというのであれば理解できるが、これまで現場で広く適用されてこなかったという先の説明は理解に苦しむ。事実関係に即した説明になっているのかどうか確認してほしい。
4〜5年前から各事業マニュアルの中でも適用していくよう指示があるものの、現場に聞いてみると、どのように使えば良いのかがよく分からないという意見や、もう少し書き下してほしいという意見がかなりあった。また、実際に試行してみたが、本当にこれでよいのか分からないという意見が結構あったのが実態であった。このように現場レベルではどのように使ったら良いのかまだわからないとか、実感がなかなか湧かない段階であったことから、今回そうした点を出来る限り埋めたいと考えた。
科学的見地から成果が上がったかどうかということが重要になる。例えば、CVMでも計測できるのはオプション価値や存在価値だけだと思う。こうしたものと実利用価値との関係というのが本当に整理できたのか、その点について科学的見地からの成果が上がったのかどうか確認させていただきたい。
科学的見地という点については、ご指摘のとおり現状の成果では甘いということは否めない。科学的知見に関してはどこまで取り込むか議論したが、現場での適用は相当難しいという現状に照らし、科学的な検討よりも現場での運用を改善させることに比重をおいていた。今後現場の適用性をふまえつつ、科学的見地をもう少し詰めていかなければいけないと思っている。
不確実性について科学的に検討されているとのことであるが、不確実性に対処するには行政的な計画策定プロセスの再検討といったやり方が、より効率的である可能性がある。その辺の比較検討はしたのか。
プロセス検討にまで至っていないのが実態である。今後、事業の遅延要因、コスト増大要因を分析し、実際のプロセスのあり方についても見ながら、更に高度化していきたいと考えている。
地方自治体で再評価をしていると、駅に通じるような街路整備は、行き止まりであるためネットワーク効果が無く、便益が0という扱いをしている。これは、投資効果の評価マニュアルの基本編には、どのような形で計測するべきかの記述がなされていないためである。応用編には書いてあるので、やれば便益を計算できるが、強制はされていないため、便益0ということになってしまう。先の「道路投資の社会経済評価」があまり使われていないということに関連し、運用面は国総研の努力ではどうにもならないところもあるが、評価手法は実際に使ってもらわなければいけない面があり、非常に重要な課題と考える。
国総研が実施するプロジェクト研究として、現場で役に立つツールや手法を提供するという具体的な目標が達成できたと非常に高く評価している。外部経済・不経済の問題、感度分析の問題、ツール、手法が具体的に提示され、現場に役立つように取り組まれており、今後はそれをフォローアップしていくことが大切である。不確実性のカルテの問題、実際の事業、次の事業にフィードバックをかけていくというプロセスについては、まだ取り組むべきことが多く残っている。参考資料として示されたカルテが、国民にも見えるようになるのが本来の姿だと思われる。事業評価手法そのものの改善に役立つので、今後も是非研究を継いでいただきたい。
目標を限定し、明確に焦点を当てたことが非常に良いと思う。目標に対する成果が十分に得られている。その反面、これだけの成果が得られたのであれば、目標設定を多少高くしても良かったのではないかとも思う。残された課題としては、例えば、異種事業間の評価の比較、個別事業だけでなく計画・政策の評価(道路でいえば、ネットワークの評価、規制の評価)があり、また、SEAとかPIプロセスでの活用というのはどのようにすればよいのか等、といった課題がある。いずれも緊急性が高く、益々事業評価手法の高度化に邁進していただきたい。
欠席委員及び他部会の委員からの事前意見を紹介してほしい。
どのような点を「高度化」したのか不明とのご指摘があった。本研究では、技術的な事業評価として達成できなかったものを、現場レベルで達成するようにしようと研究に取り組んだ。そうした部分において実施に至るだけでは十分な高度化がまだなされていないというご指摘と考えており、委員のご指摘を踏まえて更なる高度化に向けて継続的に研究していきたい。
本来感度を求められているのは、インフレ、人件費の変動、海外からの資材調達率でないか、というご指摘があった。コストの変動については、今回、インフレや人件費を含めて10%と設定した。ご指摘の通り、実際の変動要因の影響度がよくわかっていないため、データを蓄積しながら、どの要因が特に大きく影響を与えるのかという点について、インフレデータや人件費データと重ね合わせながら、更に検討を進めていきたい。
他の研究への活用と今後の発展的継続を望むとのご意見があった。事業評価という分野だけでなく、合意形成の周辺分野を含め、事業運営全体にどういったことを生かすべきなのかを考慮しながら、この研究を更に進めていきたい。
目標がよく達成できたし、次の課題も見えてきた。今後も続けて研究を一生懸命に進めていただけるコメントもいただいた。事後評価を受けた後に、委員会として積極的に更に研究に取り組んではどうかというような仕組みはあるのか。
仕組みとしてははっきり申し上げられないが、分科会からそうした意見をいただければ、今後の取り組みに生かしていきたい。事業評価については行政の実務でこれから随分やられるので、そうしたものについてのフォローアップも含め、努力していきたい。
不確実性のカルテ収集から、客観的データの収集に努め、それを公開活用するということは非常に大切なことなので推進していただきたいが、評価の緊急性ということを考えると、結果が出てからでは遅い面もある。PFIの分野では専門家の主観的な評価をどのように活用するかについて随分研究が進んでいるので、その辺りも是非参考にされたい。
<評価シート集計結果(段階評価結果)>
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない
☆☆☆☆☆
☆☆☆
 
 
研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった
☆☆☆
☆☆☆☆☆
 
 
※より詳細な「評価シート集計結果(コメント含む)」は、別紙をご参照下さい。
<評価シート集計結果等に関する質疑、評価>
是非研究を継続し、更なる高度化に向けた取り組みが望まれる。関連研究を大いに活用してバージョンアップしてほしいという意見や、高度化に向けての更なる研究継続の必要性をサジェスチョンする意見が大多数であったことに配慮し、研究の継続等について判断いただきたい。
「外部経済評価の解説(案)」について、行政内だけでなく広く世に出して、大学等に検討させてはどうかというコメントをいただいたが、国総研のホームページ上で、全文ダウンロードできるようにしている。さらに、世の中に公表したということをさらに知ってもらえるよう、関連雑誌等を通じてPRし、色々な方から意見をいただけるようにしていきたい。また、今後もこの研究をもっと継続するべきだとのコメントをいただいたが、今後、事業評価結果や、そのやり方がどうであったのかだけではなく、評価結果がどのように受け止められたのか、住民がどのように感じたのかといった点までを出来る限りフォローアップしていきたい。フォローアップの結果については、フィードバックして評価手法の高度化、更には、PI、合意形成、プロジェクトマネジメント等の関連分野にも反映させられるよう研究を続けていきたい。
<評価のとりまとめ>
おおむね目標を達成できたと評価する。高度化という言葉に左右されて、期待が過度に膨らんでいる感があるが、不確実性についても客観的なものと主観的なものの活用に踏み込んでほしいという指摘や、CVMでもオプション価値と実利用価値の峻別が必ずしも成功しているとはいえない等の意見もあり、今後検討されたい。評価手法の高度化という大きな目的からすると、本研究はまだ一部分でしかなく、委員からの意見を参考にしながら、今後の研究開発、展開を期待する。
(4) 議事「新規研究開発課題の事前評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答、とりまとめ
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@社会資本整備水準の評価手法に関する研究
研究としてはおもしろい。交通経済や交通計画の分野に取り組んでいる専門家であれば誰でも気になるところである。効率性と公平性には必ずしも共通解があるわけではないので、ある意味、気楽にできる研究だと思う。ただし、3年間で8800万円の予算は少し高いのではないか。これだけの予算であれば、公共事業の評価手法を高度化する内容も研究対象に含めるなど、もう少し色々なことを盛り込めるのではないか。
分析枠組みを作るときに経済理論が役立つかもしれない。公共財として提供しなければならない理由のひとつはスケールメリットがあるからだが、サービスごとにスケールメリットがどの程度あるかはよくわかっていない。さらに、スケールメリットと各地域の人たちが好きなものをその地域に作る話にはトレードオフの関係がある。また、支払い意思を聞いてサービス水準を決めれば良いという議論があるが、ただ乗り問題がある。自分は払わず、他人に払ってもらってラッキーというなかなかやっかいな問題があって、それをどう考えるかがポイントである。アンケートをする際には、この点に配慮しながらうまく調査票を設計する必要がある。更に、足による投票というコンセプトがある。それぞれが勝手に好きなサービスが受けられる地域に住めばいいという考え方である。そういった状況では、あまり公的な介入が必要なくなるという話になるが、スケールメリットも無視できない。また、金持ちだけを集めて、税金を高くし、いいサービスを提供するという行政にとって都合のよい運営方法もありえる。生活保護を充実させますから皆さん来てくださいという自治体はないので、その点で、国の役割やナショナルミニマム論も考えざるを得なくなるかもしれない。
研究の目標について、シビルミニマムを考える時にはどんな生活なのかという生活像をイメージしてみるという切り口もあるのではないか。
地域性を考えたシビルミニマムに関して、先ほどの説明では、人口が少ないところでは環境的なものをたくさんサービスできるので、利便性はある程度我慢しなければいけないというような話が出された。しかし、違う見方をすれば、田舎では放置しておいても環境は十分であるので、シビルミニマムとしては利便性を追求した方が良い、というような考え方もできるのではないか。
利便性がある水準に達していない場合は、行政が少しでも底上げに貢献しなければならないという面は勿論あるが、利便性の上限制約もあるので、その辺りを考慮して検討していきたい。先ほどの説明は、一例であり、人口が少ないから利便性が低くても良いということには必ずしもならないと思うので、その辺りは配慮していきたい。
社会資本整備の対象によって色々と考えなければいけない問題があると思う。防災投資を考えなければならない対象と、そうでないものを分けて検討してほしい。また、防災投資を考えた場合にどのような方法で合意形成をしていくかということも問題になる。更に、カタストロフィックなリスクの評価の問題もある。そうしたものをこのプロジェクト研究で展開するか否か、また、その他のプロジェクト研究で展開するのかを含め、防災投資に対する整備水準に関して整理していく必要があるのではないか。これからストックの時代に入るため現在使われているものに対して防災投資も含めた整備水準をどのように確保していくかが重要になる。健全性をどの程度長持ちさせていくのかということも含め、使用性、安全性、耐久性の適正な水準を決めていくことは、納税者あるいは国民にとって非常に重要なことだと思うので、その辺を念頭に置いて対応していただきたい。
整備水準の話と部屋の温度を決める話は割と同じような問題があり、ほとんどの人は部屋の温度に満足しているが、どんな温度に設定しても1/7位の人は暑すぎたり、寒すぎたりするもので、どのようにして整備水準を決めていけば良いのかということは難しい問題である。また、時間変化を取り入れて考えていくことも必要である。例えば、来年満たされるのと、死ぬまでには満たされるかもしれないというのでは随分選び方が違ってくるという問題もある。水準の問題には、時間変化の影響が必ず含まれるので、配慮する必要がある。
欠席委員及び他部会の委員からの事前意見を紹介してほしい。
研究の必要性は認めるが、調査手法や研究体制がわかりにくいというご意見、例えば住宅という財の特殊性や細街路を含めたシステムとしての評価が必要であるが、そのフォローが可能かというご指摘があった。
これでやればできるという調査手法を持っているわけではないが、複数の色々な切り口、手法から調査し、それをつなぐ方法を考えてみたい。検討する部分は非常に多いが、例えば、供給が少ないものに対して住民が不満を持っている、あるいはもう既にあるから元々供給が少ないのだ、といった関係をどのように捉えていくか、また、個々の調査地域での過不足状況と住民が求めているものというのはマッチングしているのか否か、といったものを検討していきたいと考えている。また、仮想市場法によって、必需性を調査するというようなことも考えていきたい。
体制の問題については、各個別分野をどの程度掘り下げていくのかに関わってくる問題であるが、現段階では、分野横断的にシビルミニマムと言えるような基礎的なインフラの整備水準を検討する時に使えるような共通的手法の開発ということを考えていきたい。ただその際に、異種インフラ間の代替性や補完性も考慮していくということになるかと思う。プロジェクト研究として研究を実施する場合は、個々の分野については、直接の担当部局となる研究部と調整を図って進めていきたい。
シビルミニマムというのは概念的にはっきりしているが、具体の計測例はない。それを全面的にやろうという試みは、国土計画あるいは国土交通省の政策全体もサービスレベルを中心に展開していこうという大きな変革の中で非常に重要である。ただし、個々のツール、事業、アウトプットとアウトカムの関係が明確でない。文献調査だけで済むというものではなく、相当程度大変な調査になると思われるので、予算との兼ね合いも検討していただきたい。理想の国土構造の広域生活圏等も絡んで非常に重要な話だと思うので、是非、研究を推進していただきたい。
<評価のとりまとめ>
興味深く重要な研究であるため積極的に推進していただきたい。ただし、合意形成の問題、受益と負担の問題、リスクとサービスをどのように考えるか、また、本日委員からいただいた経済理論やその他意見を検討し、次の分科会までに詳細な研究計画としていただきたい。
Aヒューマンエラー抑制の観点からみた道路・沿道環境のあり方に関する研究
パワーポイントの3枚目の高齢者のヒューマンエラーの図では65歳以上74歳までの人はそれ以下の世代と同程度の数値となっている。そうであるなら、75歳以上の人には、例えば運動試験や視力試験をしてもらい、結果が悪い人には運転させないという政策も考えられるのではないか。
国総研が回答する立場にあるか否か難しいが、核家族化が進み、高齢者だけの家族になっている状況が今でも進んでいることを考えると、車なしで生活できるとは考えにくい。75歳以上を車に乗せないことは難しいのではないか。
図の指標を走行台kmに変えてみてはどうか。もっと明確に差が出てくると思われる。
ご指摘の通りだと思うが、既存データでできる範囲の計算をした図としている。年齢層別の走行台kmを出すことができれば、インパクトのある数字が出てくると思う。
交通センサスのデータで出せるのではないか。オーナーインタビュー調査がなされているので運転者がわかる。
交通センサスのデータでは、精度の確認が必要と思われる。
安全にし過ぎるのもお金がかかってしまうので、コストとの関係を踏まえた最適な安全度という考え方もあるのではないか。道路側が原因となって事故が起きた場合、裁判等で道路が悪いことになるのか。道路のサービスレベルを上げるのは良いが、論理的な裏づけの無いレベル向上であればきりがないという問題がある。
成果目標を具体的なイメージで示していただきたい。道路・沿道環境を対象とするのは範囲が広すぎる感があり、まずは、道路管理者が確実にコントロールできるものを検討対象とするのが良いのではないか。ターゲットを絞り、他と比べて事故率が高い場所の情報も含めた議論をすれば、この研究の正当性・必要性がはっきりとしてくるのではないか。
交通事故の多発地点対策や危険箇所対策はこれまでにも取り組まれてきたが、今後も事故の多発地点がある限りは、取り組んでいく必要がある。どのサービスレベルまで取り組むかには議論があるが、多発地点がある以上、道路管理者サイドとしては真摯にその状況を受け止める必要がある。道路構造上のどのような特徴がヒューマンエラーを発生させやすいのかという観点で研究に取り組みたい。
交通事故の95%がヒューマンエラーに起因するということになっているが、居眠りや身体的・精神的な問題もヒューマンエラーに含まれているのか。
居眠り等による事故が発生しやすい場所があれば検討対象にするが、そうでなければ検討の対象とはしない。
事故全体の95%を占めるヒューマンエラーは、道路や沿道の環境だけによって起こっているわけではない。そうだとすれば、この研究によって95%をどれだけ減少させられるかという予測はどうなるのか。研究の必要性として、道路や沿道の環境だけを変えても、ヒューマンエラーが大して減らないようであれば、研究実施の必要性があるのかということになる。反対に大きく改善できるのであれば、是非実施していただきたい。
実際に、事故発生率が突出している区間があり、道路の構造が何らかのミス発生要因となっていると思われる。ヒューマンエラーの誘発要因を減らすことによって、どれだけ減るかを現時点で見積もることは難しいが、効果は確実に出ると思う。
95%というのは警察の事故調書上の話であり、警察は責任追及を第1の目的にしているため、必要以上にドライバーに責任を押し付けている面もあるのではないか。そういう意味でも重要な研究であり、安全性を確保の観点からは、警察のそうした態度は相応しくないとも思えるため、是非研究に取り組んでいただきたい。その際には、やはり実際の事故の原因を追究するところからはじめてほしい。また、ヒューマンエラーをなくすために、AHS等で交渉を与える手法もある。また、美しい沿道景観の道路では事故も少ないと希望的に思っている。その辺りにも配慮していただきたい。
欠席委員及び他部会の委員からの事前意見を紹介してほしい。
関連する研究の欄が特になしとなっていた点について即座には納得しがたいとのご意見があった。事前にお送りした資料を修正し、関連研究の状況として国総研で取り組んできている研究について追加した。事故データ、ヒヤリマップといったものを作って、実際の事故要因の分析とか、事故対策の検討といったことにつなげている。また、非常に基礎的な勉強段階のこととして、ドライバーの挙動を試行的に実験で把握したり、高齢者に対するアンケート調査を実施して経路選択の傾向などについて調査をしたりしてきており、そうした内容を紹介している。
<評価のとりまとめ>
基礎的ではあるが非常に重要な研究と思われるので推進していただきたい。関連研究としては、ヒューマンエラーというものをどのように考えるか、どう把握するか等、色々な情報の与え方の課題がある。現状では、ヒューマンエラーの本当の具体的な内容が明らかでないので、基礎的なデータの収集を含めて研究を進めてほしい。道路空間内だけでなく、沿道も多少は検討対象に入ると思われるので、具体的にどのようなコントロール方法があるのか、また、どのような効果が考えられるか検討していただきたい。
B四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術の開発
実施体制について、鉄道事業者、ゼネコン、ディベロッパー、マーケティングの民間企業という参加を想定しているが、想定される参加者のニーズやメリットに関して今わかっていることはあるか。
六本木ヒルズや汐留地区の開発担当者から、当初想定していた人の流れと実際にオープンしてからの人の流れが随分違い、将来これがどのように変わっていくかをデータとして表現したり、解析したりすることなどが必要だろうという感想をいただいている。開発技術は机上だけの検討には限界があるので、実際のフィールドで実用化していくべきものであり、そうした段階では協力してもらえる雰囲気はある。こうした場所にはモニター用のカメラが付けられており、それに開発ソフトをのせていくという形で上手く連携できるのではないかと考えている。
アプリケーションが開発された時に、メリットを感じる人はたくさんいると思う。ただし、標準化やプラットフォームについて、ボランティアベースのグループをつくって相談しようということになると、標準化のメリットの説明が必要であるし、標準作成への参加について説明が必要になる。標準化することによって、日本全体でメリットがあるという研究が今年7月に発表されたので参考にしていただきたい(ISO/TC204)。標準そのものを皆で作るよう説得することは意外に難しい。
その辺のノウハウがあまりないので、いろいろとご指導いただきたい。
現在、渋谷の東急文化会館の建て替え計画にあわせて、立体的に人がどのように流れていくのかという経路選択のモデルのようなものを作っている。いいコラボレーションができればと思う。
アウトプット、アウトカムの目標をもう少し明確にするべきである。国土交通省の責務である安全・安心の確保ということであれば、例えば、大規模地震対策特別措置法の中でいろいろな情報が発せられたときに、ターミナルや高密度な都市空間の中で人がどのように行動するのかということを心理的なことも含めたシミュレーションをし、そのような中で施設、設備、避難誘導施設がどのように整備されていれば比較的混乱が少なくて済むかといった方向で、研究に付加価値を付けていけば国総研が取り組む価値があると感じた。
最終目標は、防災対策、特に人災対策に資する成果としたいが、災害をシミュレーションするデータがなかなか無いのが実情である。現状では、比較的毎日人の集積する箇所を対象にモニタリングしてみたい。ある程度手法が確立した段階で、有事に対して具体的に適用するというステップを踏みたい。
ごく小規模であるが、大学の研究単位でビデオを撮って解析をすることは、相当に研究されている。そうした大学の研究と今回の研究との違いというものが幾つかの面で考えられないか。例えば、手間隙がかかる部分を自動化して大規模かつ連続的にデータをとるようなことをすれば、危機管理のシミュレーションもできるようになるとか、そうした技術を発展させてリアルタイム制御にも使えるようになるといったイメージである。大学の研究との違いやアウトカムが今日の説明、資料ではわかりにくい。
ご指摘の通り大学はじめさまざまの研究と本研究がどのようにリンクするのか、整理不足の面がある。委員の方々のご指導をいただきながら整理していきたい。
欠席委員及び他部会の委員からの事前意見を紹介してほしい。
必要性、有効性を評価していただく意見が多いが、平時でも難しい技術の危機管理への適用に若干疑問を抱くというご意見があった。本研究の究極の目的は災害時などの危機に際して有効に活用できる開発を行うことであるが、当面は平常時の行動解析を中心に検討したい。
<評価のとりまとめ>
現在、このようなデータの取扱いは大きく変わりつつある。ICカードに相当な普及が認められるため、サンプリング調査ではなく全数調査ができるようになりつつある。全数のデータに基づいたマーケティングや政策決定ということが求められるようになるし、技術的にも可能になりつつある。そのような状況において、公共空間でしっかりとした流動状況のデータを継続的に取得することは非常に重要なことだと思われるので、是非本研究を積極的に推進していただきたい。ただし、アウトプットやアウトカムについては、多少的を絞り、明確にすると良いのではないか。次の分科会までに検討いただきたい。
(5) その他のプロジェクト研究の報告についての評価委員の意見及びそれらに対する国総研の回答
@走行支援道路システム研究開発の総合的な推進
稼働率の箇所の説明では、システムの安全の目標が95%以上とされた。95%ということは、100台中5台に適切な情報が伝わらないということになる。レベル設定の考え方として100%はあり得ないということは当然であるが、どのくらいの確率を今考えているのか。
目標値の設定を100%にするのは技術的・コスト的に無理がある。ここでは、コストとの兼ね合いを考慮しながら、JIS等を参考に設定している。
安全度の95%は100台中95台に伝わるという意味ではなく、危険な事象があった時に95%の正確さで検知できるという意味である。
20回中1回検知できないのであれば、はじめから何も伝えない方が良いと思うひともいるのではないか。感知器やスプリンクラーの精度は人間とのインタラクションが無く決まってくるが、本研究の内容は人間とのインタラクションがあり、95%では危ないのではないかと思う。
残りの5%の事象が起こったらどうするかについては、検知がうまくいっていないことを伝えるようなフェイルセーフ対策を考えている。例えば機械が故障した時や通信に異常がある場合には、メッセージを出してドライバーに正常動作時と違うことを知らせるような対策を検証している。
パワーポイントの11枚目は、どのように読むのか。事故は減ったと読むのか。それとも、今まで隠れていた事故が検出されたと読むのか。
隠れていた事故も含めて30台あったという数字である。基本的にセンサーは検知していたので、全ての車がこのシステムを装備していれば上手く伝わったであろうという想定の話である。別の実験では、路側表示板で前方に障害物があるという表示をした結果、表示前の18ヶ月と比べて表示後の18ヶ月の事故件数がほぼ半減している。
路車間協調となると100%ではなくても、かなりの率でこのシステムの搭載を前提とする必要がある。95%の検知率では、ユーザー側にとって搭載するインセンティブが弱いのではないか。また、インフラ整備サイドとしては、B/Cを高めるために事故多発地点から取り組むことになるが、そうするとサービスしている箇所とサービスしない箇所が混在するため、自動車会社やドライバーからすると搭載は難しいと思われる。その辺の反省からかもしれないが、今後の研究の方向と内容では、随分方向転換がなされているので、更に良くなっていくのではないかと思う。その辺についての議論やお考えの点等があれば教えていただきたい。
当初は専用の通信機器の車載を前提としていたが、今はETCの車載機と全く同じ通信方式で情報を提供できるようにしている。ETCはかなり普及しつつあるので、将来はETCと同じ車載機さえ載せていれば同じサービスが受けられるというのが一つの方向である。また、路側表示板だけでも効果があることがわかっている。路側表示板や普及しつつあるVICSを使って情報提供するなど、情報のチャンネルを増やす方向で動いている。
ETCのDSRCはとても良い技術だと思うし、ETC搭載車両も増えてきている。ETCとカーナビの融合ということも資料に示されているが、そのような方向でいつでもどこでも使えて役に立つというところを目指さなければ普及しないと思われるので、互いに連携していただきたい。
(6) 他の分科会における評価対象課題の報告について
 事務局より、他の分科会において評価を受けるプロジェクト研究(中間評価)1課題、新規研究開発課題(事前評価)7課題についての説明があった。評価を担当する部会の委員以外からも事前に意見を伺い、それらを分科会の場で紹介することで審議・評価結果へ反映させることについても説明があった。
(7) 新規研究開発課題(第1部会評価担当)の評価書の作成
 評価書の作成については、主査に一任されることとなった。
(8) その他
 事務局より、本日の審議内容については、議事要旨としてとりまとめ、各委員に確認をしていただいた上で確定するとの連絡があった。また、評価書の作成については主査に一任されることとなったことと、他の分科会の審議に基づき作成された評価書とともに、最終的には本委員会委員長の同意を経て決定されるとの連絡があった。
 さらに、評価書や議事要旨等をとりまとめた報告書を作成し、公表されるとの連絡があった。
 最後に、各課題の資料に添付されている政策評価個票(案)について、行政評価法に基づき国総研が作成し、国土交通省本省に提出するものであり、外部評価の結果欄は本日の審議に基づき、主査の了解を得つつ作成する旨の連絡があった。