各種資料

平成16年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
議事要旨について





平成16年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会議事要旨

1.日   時: 平成16年7月26日(月)13:30〜15:30
2.場   所: 虎ノ門パストラル 新館6階 ペーシュ
(東京都港区)
3.出席委員: 村上主査、熊谷委員、高田委員、辻本委員、桝田委員(以上、第2部会)
屋井委員(第3部会)
4.配付資料:
資料1 平成16年度第2回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第2部会担当)委員名簿
資料2 評価の方法等について
資料3 国土技術政策総合研究所プロジェクト研究一覧
資料4 歴史的文化的価値を踏まえた高齢建造物の合理的な再生・活用技術の開発(事前評価)関係資料
資料5 人口減少社会に対応した郊外住宅地等の再生・再編手法の開発(事前評価)関係資料
資料6 既存住宅の省エネルギー性能向上支援技術に関する研究〜住宅エネルギー効率の診断改修システム(住宅版ESCO)開発〜(事前評価)関係資料
資料7 健康的な居住環境確保に関する研究 (報告)関係資料
資料8 他の分科会における評価対象課題資料
【参考資料】
国土技術政策総合研究所研究評価委員会設置規則
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会設置規則
国土技術政策総合研究所研究方針(平成15年度改訂)
Project Concept 2004(要覧)
国総研アニュアルレポート2004
5.議事次第:
1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について
(2) 新規研究開発課題の事前評価
@ 歴史的文化的価値を踏まえた高齢建造物の合理的な再生・活用技術の開発
A 人口減少社会に対応した郊外住宅地等の再生・再編手法の開発
B 既存住宅の省エネルギー性能向上支援技術に関する研究
5. 報告
(1) その他のプロジェクト研究の報告
@ 健康的な居住環境確保に関する研究
(2) 他の分科会における評価対象課題の報告
6. その他
7. 国総研所長挨拶
8. 閉会
6.議事内容:
(1) 評価の方法等について
 事前評価の方法等について、事務局より説明した後、委員の了解を得た。
(2) 議事「新規研究開発課題の事前評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@歴史的文化的価値を踏まえた高齢建造物の合理的な再生・活用技術の開発
歴史的文化的価値を考慮したこのような研究は、国総研として初めて行うものか。
旧建築研究所において、景観総プロ(美しい景観の創造技術の開発、H5〜H8)の一環として、レンガ造を中心に研究を行った。
研究対象は、文化財か、一般の建築物か。同じく、公共建築物を対象とするのか、広く民間の建築物を含めて対象とするのか。
文化財に限定せず、一般建築物を含めて、古い歴史的建造物を対象としたい。また、国総研のミッションに照らし、まずは公共建築物を対象とするが、研究の成果は民間の建築物にも広く適用できるものと考えている。
古い建造物で、実際に使われているものを対象とするということでよいか。
はい。
古い建物の価値ということでは、文化的価値と経済的価値、特に不動産価値との関係が整理されていないことや、文化財的なアプローチで議論される場合とそうでない場合で、全く文脈が異なるということを度々経験している。価値を評価する際には、これらを踏まえ、理論的、実用的なものにしていただきたい。
価値評価手法としては、公園や環境の評価と同じく、どれだけ支払い価値があるか、というアンケートや分析手法を基本に考えているが、それを歴史的建造物に適用する場合、ケーススタディを通じて、アンケートの設計・設問の作り方を十分研究し、実際に評価していきたい。
歴史的建造物の改修の問題と建築基準法のあり方とは極めて密接にかかわっているが、現状ではうまくつながってはいない。建築基準法の今後のあり方、改正の議論と古い建物の保全・活用についての議論の間を埋めるという観点からも研究に取り組んでいただきたい。
建築基準法関係の研究は国総研のミッションであるが、建築基準法において既存不適格となるものの取扱いは、本研究の範囲を超えた、より広範なテーマと考えており、本研究では対象外としたい。
説明を聞く限り、研究の内容が、多少耐震の方に偏っている印象を受ける。従来の用途や、再生後の用途をどう設計するかに依存すると思うが、重要なポイントである。単に建物を残すだけでなく、新しい機能を追加する等、例えば設備面でITの活用を図ること等をどう考えているか。
耐震は、安全性の柱として強調したが、機能性やバリアフリーにも対応しつつ、それら現代的な機能性と歴史的価値の整合をどう取っていくか、が研究の課題と認識している。
再生に当たっては、劣化の再生や防災面の対応だけでなく、現代的な使いやすさ、IT等の効率的なものにも対応するということでよいか。
はい。
防火等、防災の観点から再生を検討する必要があるが、他の研究部との協力をすべきではないか。
はい。国総研の他の研究部・室と協力していきたい。
高齢建造物には、極めて劣化が進んでおり、再生に使えない部材もあると思うが、その仕分けも研究対象とするのか。
残存能力をどう評価するかというところだと思うが、どうしても使えない場合は、景観保全としてレプリカ保存という方法も考えられる。コストの兼ね合いもあり、オリジナルの材料にこだわりすぎないよう考えたい。
'可逆性のある補強技術'の言葉の定義がよく分からない。本来の価値のある部分と補強部分を後からでも切り離せるということかと思うが、本質的に何を残したいのか、別の言葉で表現できないか。
後から、補強したもの自体を取り外せるようなものを想定している。例えば、レンガ造の補強に湿式の工法を用いた場合、補強のRCの方が先に劣化したり、後でよりよい工法が開発された場合に補強部分を取り外すことが難しいといったことを念頭に置いた言葉になっている。
アウトカムに'シナリオ策定に寄与'とあるが、成果として妥当か。便益計算にCVMを使う場合、文化財的要素を持つ建物を評価する際には、それぞれの地域の歴史・文化や価値観が影響する。地域的に思い入れの深い建物の場合、CVMの値は大きめに出てしまうのではないかと思う。そこで、具体的に建造物を再生し、残すことによって、地域の将来のあり方がどう描けるかという点に踏み込んだ評価ができるのではないか。単にシナリオを作って終わりでなく、再生・活用の実現までにどれだけ関われるかという観点での組み立てがあり得ると思う。
ご意見を踏まえ、どのように成果を打ち出すかという点についても、具体的に検討していきたい。
他部会の委員や欠席委員の意見を紹介してほしい。
研究の前提として建物の実態把握についての事前意見があった。今回、公共建築物のデータを示しているが、研究1年目に対象建造物についての詳細な分析をしたい。また、研究レビューに関して、現状で学会等での取り組みがあり、適切に現状技術を評価されたいという事前意見があったが、土木系においても橋梁等の保全に取り組まれており、必要に応じて目配りしていきたい。さらに、保存活用技術のバリエーション、方法論についての意見があったが、再度の事前評価までにより細かく検討し、お示ししたい。最後に、研究体制についての意見に対して、現状の検討段階から函館等の自治体と協力関係があり、民間等も含めて研究を進めていきたい。
<評価のとりまとめ>
 基本的に高い評価を得ており、実施すべきであると評価する。ただし、研究対象となる建造物のイメージを明確にして欲しいという意見、単なる劣化の修復だけでなく、新しい価値をもった建造物へ再生させてはどうかという意見、アウトカムのイメージをより明確にすべきという指摘等があり、研究実施までに検討していただきたい。
A人口減少社会に対応した郊外住宅地等の再生・再編手法の開発
言葉の確認をしたいが、本研究では、どの程度の郊外を対象にしているのか。筑波大学で'超郊外'と名付けて研究をしている方がいる。
'郊外'は東京から見たものか、地方の都市から見たものかによっても変わってくるが、今回は東京圏であれば、都心から50kmくらいの範囲を想定している。地方であっても、地方の中核都市を中心としてその周りの郊外でも都心と似たような状況が起きており、そちらも対象としたい。
住宅地から住宅地という転用を想定した計画か、他の用途への転用を想定した計画か。
再生後の用途については、評価を実施し、環境の悪いもの、市場にのらないと思われる、住宅地を減らし緑地にすることも考えている。
郊外の定義についてはこれまでも議論のあるところであり、例えば地理学では、郊外等の類型化がされているので参考にして整理してはどうか。全体として、大変重要なテーマであり是非推進していただきたい。
3つのステップの中の衰退の予測手法の開発や、実際に何が起こっているかという実態把握調査が重要である。その中でもそれぞれの地域性をどう評価するかがポイントになる。国の政策として組織的に行われた郊外住宅地の形成が、現在どのような結果をもたらしているか、きめ細かく調査をした上で研究を進めていただきたい。例えば、首都圏と近畿圏では、住宅地の形成過程や方法が全く異なり、関西の方ではより早く衰退が始まっていると思われる。
衰退の予測手法については、ご指摘のあった通り、地域性を考慮した手法を開発していきたい。
研究の体制について、3年程度前から都市住宅学会では、この課題についての研究部会を立ち上げているので、連携を図ってほしい。
想定されているシナリオが明るい展望のものに偏っていないか。よりシビアな終末が考えられるのではないか。検討していただきたい。
予測手法、評価手法においては、再生できるものから撤退するものまで幅広いシナリオを想定し、また客観的な判断ができるような手法を提供できるよう研究していきたい。
他部会の委員や欠席委員の意見を紹介してほしい。
研究計画自体の必要性や有効性については問題ないという意見が多かった。民間企業を活用して税金を投入しない事業手法が必要ではないか、という指摘があったが、権利者を中心として民間の業者を含めた事業スキームを検討していきたい。また郊外が衰退していること自体がマイナスであることを考えると、実際にこの手法が使われていくかが疑問という意見があった。これについては、マイナスを減らすという観点で参画してもらえることも考えたい。最後に、他の社会基盤施設との連携が重要と考えるという意見があった。研究担当としても同じく他の社会基盤との連携が重要と考えており、本研究で下水道等のインフラの整備との関係を整理していきたい。
重要なテーマと評価する。ただし、人口予測となると、大都市圏ではなく小さな地区的なミクロの分析は難しいのではないか。研究を進めるに当たっては、10〜20年先にはどういった状況になるか、どの程度を将来の絵姿とするかという予測技術が大きなポイントになる。この研究の中で、将来予測についても重視して検討をしているか。
ケーススタディとして、地権者の顔が見える程度のある一定の範囲内で、住民の年齢や次世代への移行等の調査を含めて、ミクロ的な検討・分析を行いたいと考えている。
委員の指摘の通り、緑地が必要ないところでも、緑地をつくっていくというのは安易な印象があり、その他の対応方策も検討していただきたい。
バブル期に作られた郊外住宅地が、入居者がほとんどないままで荒廃しているといった状況がある。そのような郊外住宅地まで、本研究の対象に入れるのか。国土交通省として、そのような失敗のしりぬぐいをする必要があるか、という点を明確にして研究に着手して欲しい。
<評価のとりまとめ>
 国総研にふさわしい研究課題であり、大変重要なテーマであることから、実施すべきと評価する。なお、'郊外'の概念を整理すること、住宅地以外の用途への転換を含めた再生・再編の将来の展望をしっかり検討すること等が求められており、検討していただきたい。
B既存住宅の省エネルギー性能向上支援技術に関する研究
何か具体的に既存住宅を改修してCO2を減らした例やその効果を研究した例があれば示してほしい。
リフォームによって省エネルギーを達成したという研究例は、正確にはほとんどないのが現状である。改修だけでなく、新築での研究もほとんどない。この研究を通じて、実効性の確認することが重要と考えている。
省エネのためだけにリフォームをする人は皆無に近く、通常は、生活レベルを上げるためにリフォームすると思われる。このため、リフォームにはエネルギー消費量の増大が伴うのではないか。
お風呂やリビングのリフォーム等、他の目的で改修する際に、省エネルギー的要因を組み込めるストーリーを考えている。できれば将来的には省エネルギーのための改修をしてもらえるようにしていきたい。
私も同感である。住民の動機付けをきちんとしないとうまくいかないと思う。リフォームをすることにより、省エネとなり、環境にも良いという波及効果・展望を明確に打ち出す必要がある。
同様に考えている。省エネルギーになると言われている技術でも実際にはそれほど寄与しない例もあり、ライフスタイル等の影響も大きいのでそれらの前提条件を明確に設定した上で、このリフォームではこの程度の効果があるということを示し、確実に省エネルギーになることを示すことが必要と考えている。
国土交通省や国総研にとって、木造家屋の耐震改修が進まないことが一番大きな課題の一つになっていると考えるが、耐震や省エネルギー等それぞれの目的ごとに改修にすることは戸建て住宅の所有者にとって大変厳しい。分野別のそれぞれの改修ではなく、省エネ改修や耐震改修等を合わせて行う方向性を国総研で打ち出してはどうか。
ユーザーの立場に立って、耐震改修やバリアフリー改修と合わせてうまく活用してもらえるよう研究をしたい。
耐震改修をすると、建物の評価額が上がり、固定資産税や火災保険料が上がることによって、逆に損をしてしまうという話がある。省エネ改修を普及させるためには、個人にとってのメリットを生み出すよう、税制等に踏み込んだ施策を考えなければいけないのではないか。
「国土交通省環境行動計画」では既存建築の改修に力を入れるべきと謳ってある。行政サイドからリフォームに対する税制優遇や補助金といったインセンティブを与えるような動きが出ると予想されるが、その際に技術的な裏付けとなるデータを出せるよう、研究を行っていきたい。
税優遇等は大変重要であり、税制の支援等がないと省エネリフォームの実現が難しいと思われる。税制を含めた政策を立ち上げるためには、どれだけ税制支援をすると、CO2削減等にどれだけ効果があるか、明確に示す必要がある。施策を進めるための基礎資料を出せれば、大変意味のある研究になると思われる。
資料の研究マップでは、政策化・普及展開という欄にも研究範囲が及ぶように書かれているが、どこまでを本研究で実施するか、どういったことを目標としているのか。
目標年限である2010年まで6年しかないこともあるので、早急に普及させるためにも、実務者が使えるような技術情報を出していきたい。アウトプットとしては、省エネ改修の方法としてどのようなものがあるかといったマニュアルや、ある一定条件下での改修についてのコストや削減効果等の技術資料の提供をしたいと考えている。
マニュアルは誰に向けたものを考えているのか。
工務店、設計事務所を想定しているが、より簡単なマニュアルに作り直し、一般の方向けとして公表することもできると考える。
他部会の委員や欠席委員の意見を紹介してほしい。
本日の議論で出ていない重要な意見を1点だけ紹介するが、民間が実施すべき研究ではないかという事前意見があった。これに対しては、効果の高い技術であっても、企業が社会的信用をなくしたために普及していないという事例があり、既存住宅に手を加える工法・技術としては、公的な、信頼性を高める基準と合わせて提供することが必要であると考え、国で研究を実施すべきものと考えている。また、このような研究・技術開発ができる企業だけでなく、住宅市場の過半を占める中小の工務店等に対して、技術・ノウハウをオープンにし、活用してもらうためにも国総研で研究したい。
同様の意見であるが、既存住宅の改修のマーケットが生まれ、ある程度動き出すまでは、国が支援すべきと考える。
<評価のとりまとめ>
 本研究は、政府としての大きな使命の一つである地球温暖化対策として、大変重要なテーマであり、国総研で実施すべきものと評価する。ただし、研究計画等を一部見直し、メリットを明確にする等、住宅所有者にとっての視点を加えること、コスト面でペイバックするようなシステムや税制支援等の施策に資する技術情報を成果目標とすることを打ち出していただきたい。
(3) 健康的な居住環境確保に関する研究
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@社会資本整備水準の評価手法に関する研究
説明の最後にあった附帯決議は、衆議院ではつかなかったか。
参議院と聞いているが、再度確認させていただきたい。
建築基準法の改定に当たり、シックハウス関係の規制を強制法として定めたことは、画期的なことであった。今年5月には、韓国でもシックハウス関係の法律が制定されたが、研究よりも法律が先行したこともあり、混乱を招いている。この状況に対して、日本から協力しており、また、他の国々も関心を持っており、国際貢献の面からもこの研究を評価できる。
建築基準法の改正以降、そのフォローアップをどのようにするのか。
揮発性物質の実態調査を行っている。まだ公表されていないが、格段にホルムアルデヒドの数値が下がっている。今後も国総研以外の調査機関で実態調査を行っていく予定である。
この研究が進み、建築基準法が改正されてから、市場ではF2、F3等級の建材が見あたらなくなったという効果が出ている。また、民間企業で揮発性物質の測定をするサービスを提供している例も出てきており、本研究の成果・波及効果が大きいと言える。
(4) 他の分科会における評価対象課題の報告について
 事務局より、他の分科会において評価を受けるプロジェクト研究(事後評価)1課題、プロジェクト研究(中間評価)3課題、新規研究開発課題(事前評価)7課題について紹介があった。評価を担当する部会の委員以外からも事前に意見を伺い、それらを分科会の場で紹介することで審議・評価結果へ反映させることについても説明があった。
(5) その他
 事務局より、本日の審議内容については、議事要旨としてとりまとめ、各委員に確認をしていただいた上で確定するとの連絡があった。また、評価書の作成については主査に一任され、他の分科会の審議に基づき作成された評価書とともに、最終的には本委員会委員長の同意を経て決定されるとの連絡があった。
 さらに、評価書や議事要旨等をとりまとめた報告書を作成し、公表されるとの連絡があった。
 最後に、各課題の資料に添付されている政策評価個票(案)について、行政評価法に基づき国総研が作成し、国土交通本省に提出するものであり、外部評価の結果欄は本日の審議に基づき、主査の了解を得つつ作成する旨の連絡があった。