各種資料

平成16年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
議事要旨について





平成16年度第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会議事要旨

1.日   時: 平成16年7月27日(火)9:30〜13:00
2.場   所: 虎ノ門パストラル4F ミント (東京都港区)
3.出席委員: 森杉主査、井口委員、日下部委員、辻委員、三村委員、屋井委員(以上、第3部会)
熊谷委員(第2部会)
4.配付資料:
資料1 平成16年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会(第1部会担当)委員名簿
資料2 評価の方法等について
資料3 国土技術政策総合研究所プロジェクト研究一覧
資料4 ゴミゼロ型・資源循環型技術に関する研究(中間評価)関係資料
資料5 海辺の自然再生のための計画立案と管理技術に関する研究(事前評価)関係資料
資料6 AIS情報を活用した海上交通による沿岸海域の効率的利用に関する研究(事前評価)関係資料
資料7 アジア経済統合時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究(事前評価)関係資料
資料8 地域の観光力の維持向上に資するストックマネジメント方策に関する研究(事前評価)関係資料
資料9 他の分科会における評価対象課題資料
【参考資料】
国土技術政策総合研究所研究評価委員会設置規則
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会設置規則
国土技術政策総合研究所研究方針(平成15年度改訂)
Project Concept 2004(要覧)
国総研アニュアルレポート2004
5.議事次第:
1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について
(2) プロジェクト研究の中間評価
@ ゴミゼロ型・資源循環型技術に関する研究
(3) 新規研究開発課題の事前評価
@ 海辺の自然再生のための計画立案と管理技術に関する研究
A AIS情報を活用した海上交通による沿岸海域の効率的利用に関する研究
B アジア経済統合時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究
C 地域の観光力の維持向上に資するストックマネジメント方策に関する研究
(4) プロジェクト研究の中間評価の取りまとめ
5. 報告
(1) 他の分科会における評価対象課題の報告
6. その他
7. 国総研所長挨拶
8. 閉会
6.議事内容:
(1) 評価の方法等について
 事前評価の方法等について、事務局より説明した後、委員の了解を得た。
(2) 議事「プロジェクト研究の中間評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答、議事「プロジェクト研究の中間評価の取りまとめ」についての評価状況、質疑応答及び取りまとめ
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@ゴミゼロ型・資源循環型技術に関する研究
<研究概要、資料等についての質疑応答>
評価をするのに十分な情報がない。建築廃棄物関係の論文の内容が見えてこない。補足資料をいただきたい。
論文を整理したものを再度提示させていただきたい。
建築廃棄物について、どのように再資源化されているのか。特に塩ビ管等の有害物質を含んだ再資源化についてはどのように処理するのか。その流れ等をご説明いただきたい。
建築廃棄物発生抑制技術については、ご指摘のあった有害物質等の環境負荷を含めて、全体でどのように処理を行っていくべきか現在検討中であり、平成17年度に最終成果が出た暁には、詳細報告ができるかと思っている。
建築廃棄物についての今一番大きな問題は、鉄筋コンクリートではないかと思う。その実績として、現在そのほとんどが路盤材へ転用されているが、需要としてはそれほどいらなくなってきているのではないかと思う。たとえばその他の転用の例として、コンクリート用の骨材として、空港舗装のエプロン等に使用できないものか。
本件については「処分」がメインとなっているようだが、「処理」についての部分をもう少し検討されても良いのではと思う。
「海面処分場の建設管理技術」の課題のうち、「立地のための社会的受容性」という研究課題について、15年度に事例収集を行ったとの事だが、現時点でどのレベルに到達していて、今後どのように進めていくのか具体的に説明願いたい。
当初「分析手法の構築」という目標を掲げ着手したが、実際に海面処分場の立地事例を調べていくと、海面処分場特有の問題事例が存在しなかったため、陸上処分場の事例も含め資料を集めている。実際には顕在化していないが潜在的に存在するであろう課題について検討し、留意事項としてとりまとめたいと思う。従って、分析手法を構築することは難しいという判断をしている。
静脈物流ネットワークの計画手法について、今までの成果を踏まえて現在、あるいは将来及ぼす問題を踏まえ、どのような対応を考えていくのか。「物流ネットワークの計画手法」ということで、機関分担という背景があるのかもしれないが、それはどんな形の所までを到達目標にされているか、説明いただきたい。
例えば、金属くずを対象とすると500km以上において海運輸送分担率は非常に高くなっている。流動量推計モデルとしては、現在、各県別というモデルについて検討中であり、県別の発生量・行き先の処理能力・距離等を要素とした流動用モデルが出来るのではないかと考えている。
そのモデルは何のために作ろうとしているのか。またその成果を踏まえてどういうことが解決できるか、どういった施設計画が出来るか、ご説明いただきたい。
港湾における静脈物流拠点の計画に際して寄与できると考えている。
2つの点についてお伺いしたい。一つは静脈システムの形成ということで、ディスポーザーの件で生ゴミとか有機系廃棄物の処理に対し、ディスポーザーがどの程度の重要さをもっているかということを教えていただきたい。
というのは、現在のシステムの中でディスポーザーが普及し、今の収集システムに代わるような展望があるのかどうか、それとも、限定条件の下ならば使え、置き換えればこのようなメリットが発生するという主張なのか、それがよくわからない。
2つ目は、海面処分場立地について、どういう物質ならば海面埋立に受け入れ可能なのか、海面埋立をする際に考えるべき条件という研究はされていないものか、お教えいただきたい。
まず、どのような場所でディスポーザー導入を行えばメリットがあるかということだが、国内では下水道の処理区域についてはディスポーザーの普及がほとんどゼロに近いような状態であり、なおかつ下水道事業は地方公共団体が実施しているがディスポーザー導入影響の情報が皆無であるため、今後本研究を通して参考となるようなデータを地方公共団体に提供していきたいと思っている。
現在、本研究における実験を北海道歌登町にて実施しており、そこでのデータを取りまとめ、参考値として提示していきたいと考えている。ただ、唯一の導入事例であり、北海道で行ったデータがどこまで適用できるかをよく考えながら取り扱いたいと思う。
それともう一つ、ディスポーザー導入について、ライフサイクルアセスメントの研究は既に行っており北海道歌登町で試算したところ、ゴミ処理が軽減される代わりに下水道処理の手間・エネルギー等が増加して来ることに伴い、炭酸ガス発生量、消費エネルギーいずれも9%増加するという結果が出ている。
ただ、試算しているのがこれ以上ゴミ処理での節減が困難であるほど小さな市町村のため、もっと大きな都市での想定を行えば、エネルギーメリットなどが試算値として出てくるかもしれない。
我々の評価というのは具体的な成果根拠を基にしか行えないため、それをはっきりと明示してもらいたいということと、本文の記述とが対応していることが必要である。たとえば「廃棄物海面処分場の建設・管理技術」を例に取ると、廃棄物埋立護岸の大地震作用時の変形量を把握してから遮水シートの追随性を検討したとあるが、論文が20編出ているうち、地震時の変形挙動については1編だけである。これを見ると、記述と実態はどうも違うようにしか思えない。
資料として、しっかりとしたエビデンス(根拠)を基に、どういう事を行い、どういった手順で行ったかを明示していただかないと、誤った評価をすることになってしまう。
具体的な成果が本文に一切書かれていない。「行った」「データベースを作った」「調査をした」というのは成果ではない。これまでどういう具体的成果が出てきて、その成果を踏まえ最終的にどのような成果を出したいという流れで報告を書いていただかないと評価が出来ないと思う。他省庁の中間評価等でも厳しく言われていることであるため、そのような形で資料を作成いただきたい。
今回の意見として、少し中身を整理した格好で取りまとめる工夫が要るだろうと思われるが、根本に関わるコメントであるため、即答する訳にはいかないだろうと思う。
非常に大きなテーマの中で、3つの柱があると解釈したが、その中のそれぞれを個別に行い、それぞれのテーマ毎にうまく位置づけられていないように感じた。例えば建築物の廃棄物のテーマからすると、本研究内のどういう位置づけで行っているか、観点としてはこういった部分をやっているとか、具体的な位置づけを行うことによりテーマがより明確になっていき、研究成果がより明確になっていくのではないかと思われる。
2点目として、静脈システムの形成についても、現時点では生ゴミだけの観点であるが、生ゴミを出した際の汚水・下水の処理はどのように行っていくか、特に汚水・下水の処分は現状でも大変なものがあるため、そういった中で生ゴミはどうなっていくのかというのが必要であると感じた。
3点目として、極大地震動についてだが、海面処分場の数値として50年〜100年想定であるとの事だが、本来そのようなものなのかどうか。大抵は100年では収まらない可能性もあるかと思う。
200年とか300年耐久性のあるような多重バリアシステムのような事を考えていかないと、地域の方がシビアになってきたときには対応できなくなるのではないかと考えている。全体の中でそういった個別の部分が従来型のままなのではないかということを感じた。
欠席の委員の方々からの意見をご説明いただきたい。
本日いただいた意見と同様であるが、研究成果が資料では具体的に示されていないため評価が困難である、事前評価の留意事項の反映が不明であるという意見があった。また、研究全体をつなぐ説明性のあるコンセプトがほしい、評価が困難な部分も少なくないが、研究の目標、計画、実施方法は概ね適切であると思われる、個々のテーマは順調に進捗しているように思われるという意見があった。さらに、事前評価の際にも意見のあったことだが、市場に乗せること、リサイクル材の市場育成方法がさらに重要度を増してくるため、今後このことを研究に取り入れてほしいとの意見があった。
本テーマは非常に難しいテーマである。事前評価の際、リサイクル市場の社会的コストや、国際的な市場にまで広げて検討すべきとの意見が出たり、海面処分場の社会的合意形成の基準をまとめよといった要望が出たりした中で、ゴーサインが出ているが、ちょっとハードルが高かったように思う。研究課題は意義のあるものであったが、その内容を勘案するならば、当初のスケジュールに少し無理があったような気がする。その点を、ここでどう考慮し、評価するのかも考えなければならないと思う。
本件に関する意見で一番大きな問題点は、研究成果が具体的に示されていないため、評価が非常に困難であると言うコメントであるということであり、それをどう評価するかが今回の重要なポイントである。困難であるが遂行いただく、あるいはテーマが困難であるため資料整理をやり直すか、いずれかだと思う。
本研究はH13からH17の間の研究ということで、本評価の研究継続の継続性、妥当性で「中止」に○を付けたとしても、今年度の予算は既に付いているのではないか。
4年度目に入った段階での中間評価ではなく、前3年の成果がある程度出てきた時点で、後の2年予算要求するかどうか、その段階で中間評価すべきだと思う。
予算執行の問題は先方にて考える問題のため、いろいろな手はあると思う。実質的に予算が付いているかどうかではなく、3年間の成果がどうあって、今後2年間どういう計画か、この観点だけで評価して良いと思う。この段階で評価をする方向で行いたい。
<評価シート集計結果(段階評価結果)>
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切である
2 概ね適切である
3 やや適切でない
4 適切でない

☆☆☆☆
☆☆
 
研究の進捗状況
(中間達成度)
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない

☆☆☆
☆☆☆
 
研究継続の必要性・妥当性 1 計画通り継続
2 計画を一部修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
☆☆☆
☆☆☆☆
 
 
※より詳細な「評価シート集計結果(コメント含む)」は、別紙をご参照下さい。
<評価シート集計結果等に関する質疑、評価>
ご指摘いただいたように、成果のご説明が必ずしも十分ではなかったので、後日分かりやすい資料の整理について検討させていただきたい。
研究継続の件については、処分場の立地に関する社会的受容性に関する研究で、当初は分析手法を構築するということを目標に掲げていたが、データ収集を行った結果、そこまでたどり着けないだろうと考えている。立地に当たっての紛争の予防・回避のための留意事項の取りまとめという形に計画を見直した上で、継続したい。
当初計画から見直しを行い、再設定をするということについては問題はないかと思うが、当初計画されていたことの実施を行わないニュアンスで取られる可能性もあるため、対応策として全体として実施しない項目が出てきたので、その代わりに別の項目を実施するとか、現在の項目のどこかにウエイトをかけることによる見直しが出てくると、バランスが取れてくるのではないかという気がする。
廃棄物の点でいうと、遮水シートの事を細かく勉強されているようだが、これは今までなかったことであるため、遮水シートを使ってその性能を高める研究にした方がすっきりするのではないか。
遮水シートの実験についてはこれまで取り組んできているものだが、それと並行してフェイルセーフ機能を有する土質系材料等による遮水構造について現在独法港空研・民間も含め研究を行っている。信頼性の高い遮水構造として提案する際には、遮水シートとそのような材料を組み合わせた構造を提案していきたい。
それは同感だが、資料をそのような形で読みとることが出来ない。
そういった事柄がわかるように整理していただきたい。内容としては大いに実施していただきたいテーマである。
50年とか、100年とかではなく、もう少し長期的視野をターゲットに入れてどうするかという説明責任が要求されると思う。
遮水シートの耐用年数について、100年以上のケースを検討範囲にし、その上で多重バリア等を組み合わせた構造等で提案していくのも一つの案ではないかと考えている。
何百年も保つような材料が必ずしもあるわけではないので、本研究の中では材料が永遠でない前提で、モニタリング手法や補修工法等の組み合わせで信頼性を確保していく方向であろうと思っている。
事前評価の際にお話しした内容で動いていただいているのは非常にありがたいことだと思う。そういったコンセプトを前面に出した方が、行政としても正しい方向ではないかと思う。
本件については、具体的な計画の一部修正ということにはあてはまらないかと思われるが、いかがなものだろうか。ご意見がなければ、「一部修正」ではなく、「計画通り継続」ということになるが。
結構だと思う。ただし、現時点では中間評価の段階であるため、次回の最終評価の段階で目標と違う方向へ進むのを防ぐため、今回の段階で修正すべきものがあれば、修正をしておいた方が良いと判断されるが、いかがなものか。
細かいところだから適宜対応して行ってください。もちろん、計画としての修正もあって良い。ただし、同様に細かい事であるので計画通り継続していただきたい。
審議内でいただいたご指摘や、ご議論いただいたこと等を踏まえ、資料を再整理したい。
研究所として考えていただきたいのは、中間評価のフォーマットを抜本的に変えていかないと、事前評価のフォーマットと比較的似てしまっている。中間評価というのは、途中でここまで成果が出たということを明確に記載できるような形式に変えていただきたいと思う。
<評価のとりまとめ>
計画通り研究を継続していただきたい。なお、得られた成果は何か、今後得られるものは何か、これらの一覧表を整理していただくと非常にわかりやすいものになると思うので、お願いしたい。
(3) 議事「新規研究開発課題の事前評価」についての評価委員の評価、意見及びそれらに対する国総研の回答、とりまとめ
評価、意見等は、分けたり、重復のものをまとめて、話題ごとに整理した。
凡例 ○:委員からの意見及び評価、→:国総研の回答
@海辺の自然再生のための計画立案と管理技術に関する研究
必要性は非常に高いと思われるが、有効性の点で伺いたい。本テーマはかなり新しいテーマであり、人間の手で自然がどの程度戻ってくるかという面について必ずしも十分な知識を持っていないと考えられる。一般的な結論を得る前に、地域ごとに現場経験をたくさん積むことが必要なのではないかと思うが、そのようなことに十分配慮されているかどうか。
特に影響伝播のモデル化ということだが、どういう影響が起こり、どういうものが外力として起きてくるかによって出てくる影響は非常に様々なので、何か特に意識しているようなものはあるか。
サイトスペシフィックな(地域特性の強い)ものであるから、どこら辺をフィールドに考えているかという質問だが、現時点で具体的現場は確定していない。東京湾を一つ大きな目標とし、湾内で幾つかのサイトですこしずつ連絡を取りはじめている。配付資料に候補地名を記してあるが、全ての場所で行うことは無理なので、一緒に行うことが出来そうな所を見つけて行っていきたいと考えている。
東京湾での影響する外力としては、赤潮・青潮といった水質の影響外力、あるいは個々の場を市民的に利用するといった人的攪乱、これらが想定されている大きな外力である。地域変化のモデル化という意味では、少し波の荒い、波の影響を受けやすい場所の方が良いと思うが、ここでは物理外力に依存する地域変化の研究のみを意識しているのではない。
これまで研究された成果の中で、本研究が一番最後の位置づけであり、研究されてきた成果との間があまりにも飛びすぎているため、全ての研究を統合していくことから「包括的計画手法」となったのか。
これまでの研究成果を説明いただいたが、最後に本計画手法を提案していくとなると、今までの研究成果との関係がよくわからない。
海辺の自然再生を考える際、要素技術だけをもってしても地域で実施させていただけないという事実がある。要素技術については、以前から干潟実験施設などを作り基礎的研究を行ってきた。この海辺の自然再生に関して、大きくは3つの柱が必要であり、@個別要素技術の開発A配置論も含めた計画手法B維持管理、といったところである。維持管理の議論が他の必要要素と比べ出遅れ気味である。このテーマを特に意識し勉強したいということを発想した。
また、「包括的計画」とは、計画・設計・施工・管理まで含めて、全体を利害関係者の共通意識の基に計画していくという概念である。これは、「ストラテジック・プランニング(戦略的計画)」などという言い方で、ラムサール条約の事務局や海辺の自然再生の国際的議論の中で、少しずつ提案されてきている概念である。ただ、これを国内にどのように持ち込むかという所については、もう少し考えなければならない。先程のご指摘のように、サイトスペシフィックな面があると思っている。
大変重要なテーマだと思う。交通計画学も含め、分野共通のフローである。
非常にオーソドックスなフローで、プラン・ドゥ・チェック・アクションのように目標設定型で、そのアウトカムをどう達成していくかということをストラテジック・プランニングにて実施する方法もあるのだなという理解をしている。
しかし、計画立案の手法を開発する事に対し、実践によりフローを再現してみると、そこに研究の意義や意味があるように感じる。
このフローを作ることが成果ではなく、それを運用し得られるものが成果なのではという気がする。
東京湾など色々な意見が錯綜しそうな部分で、計画立案手法という形が組み立てられるだろうか。もっと一般的な計画論からすれば、自然再生が目標にあり、そのための計画のプロセスを、あるいは合意形成の仕方のようなものを提案したいと限定的に考える方が良いと思われているか、それによって特殊な成果、固有の成果が得られると思われているか、考えがあればお伺いしたい。
色々な現場で、必ずしも自然再生だけではなく、防災等別のファクターでの造成といった意見があることも承知している。研究としては、自然再生という切り口での計画論の検証ができれば、1つの前進ではないかと考えている。
例を挙げると、大森ふるさとの浜辺整備事業などは、自然再生的なところを意識し、地元の人たちが浜を作っているという現場もある。ご指摘の点のように十分にサイトを探し、実践研究を行っていきたいと思うが、必ずしも自然再生オリエンテッドの現場が見つからないとしても、計画概念やフローが試されるチャンスになるのではないかと思っている。
他の部会からの委員の方々からの意見を紹介していただきたい。
大きくは3つ指摘をいただいている。
1つは、局所的と言いながら片方で大局的と言っているとか、いろいろなスケールの記述が錯綜しているのではないかという記述の不備である。これはご指摘に従い直せるところは直していきたい。
2つ目は、研究の効率性ということで、他分野、特に生物・生態の研究成果を十分参考とするような研究体制を取りなさいというご指摘があった。こちらについては、生物・生態関係の先生と議論する場を努めて作っていきたい。
3つ目は研究内容についてだが、再生とか管理を考えるときに、人がどのように自然再生を応援できるのかという技術メニューを事前に考えておいたらというご指摘である。こちらについては具体的なメニューが事前にあるのではなく、現場で見つけながら組み合わせていく事になるかと思う。
里山と里海という魅力的な話があったが、里山と同じように里海でも何か入会権のような法的適用があって、ベネフィット(利益)も感じられる所まで展開しそうなのか。
難しい。例えば落ち葉が自分の畑の肥料になるような関係性を、海辺の市民と浜との間では作れていない。なかなか目に見えるリターンや利益を見出すのが難しいところだが、一方で社会的要請として、「遊びに行きたい」、「海に足をつけたい」という要請は高く、「海に行って気持ちが良い」というある種のリターンは受け取っている。それが、日常生活の中での経済活動に組み込まれた形でのリターンとして成立するのは、特に東京湾では難しい。
<評価のとりまとめ>
今後の方針について公表するときはコメントを整理していただくこととして、実施すべきであるという評価としたい。
AAIS情報を活用した海上交通による沿岸海域の効率的利用に関する研究
世界的に先行的にやっている事例はあるか。
ヨーロッパでは一部で始まっているという情報が来ているが、具体的な成果まではまだ把握することは出ていない。なぜならば、AISの正規の稼働は来年以降であるため、まだ準備段階だからだと考えられる。今後は、一気に色々なところから情報が出てくることを予想している。
今回3箇所設置されたら、どの程度の精度で情報を収集できるのか、本システムを全国展開をしていく方向なのか、これらについて本システムによりどの程度のものが予測できるのかがよくわからなかったのでお聞きしたい。
ローカルルールとTDM方策の全国展開は可能である。AIS自体のコストは1機200〜300万円程度であり、それほど高額ではないことから全国各地域での観測は可能だと考えている。しかしながら、我々が直接に全国展開して観測することまで考えていない。
3箇所に配置した場合、制御する精度が個別に違ってくるのではないか。つまり、仮に東京湾の場合この航路はこの幅は要らないとか、大きくしなくて良いとかそういう議論になってくる。それを全国色々な所でやっていく。そのための最初のテストラン的イメージを受ける。
ご指摘の通り、東京湾の気象・海象条件は良いが、全国には厳しい海域もある。代表して東京湾をやるが、全国的なローカルルールとして展開するまでには、そのように条件の厳しい場所でもやる必要はあると考える。
AISというシステムは非常に有効だと思うが、TDM(交通需要マネジメント)の提案について、今、どのように船が動いているかを知っただけでは十分ではないのではないか。実際に船の動きをはかるというところと、それがTDMにつながるという部分は、どういう考え方になるか。
そこは一番勉強すべき点である。バースとのリンクが必要だと思っている。航路の混雑度では、どこへ行く船でどこに着くという時間との関係の分析が必要である。ご指摘いただいたように単純に航路部分の通航だけではなく、最終的なバース利用とのセット、具体的には、東京湾入口だけでの観測ではなく、最後の東京港でのバースの最終的利用とのリンクでデータを集め分析する必要があると考えている。
AISというのは、一定規模以上の船舶に付けるという理解をしているが、バースは良いが航路についてはつけていない船舶も多数運航していしるのではないかと思う。よって分析する上で取れないデータも考慮し検討していくことになるのではないかと想像するが、いかがか。
AISを装備していない小型船は検討の対象外とした。仮にそれを含めると、かなりハイレベルのレーダーによる観測が必要になること、航路の幅は大きな船を対象にして決まるということ、TDMの対象は大型船となることから、対象を絞り込んだ。
今取れているデータで何割くらいいるのか。隻数で考えて良いのか。
一般船舶では、隻数の半分は把握できないと言われている。漁船他の小型船まで入れるときりがない。
重さ換算とか、違う指標でいったら、ほとんど取れないのでは。
重量トン換算であれば、大半は把握できると考えている。
他の部会の委員のご意見を説明いただきたい。
2つあり、1つはリアルタイムデータの必要性が不明であり、活用性を検討すべきだとの指摘をいただいている。ご指摘の通りであり、当面ローカルルール、あるいはTDMの方策の検討に際してはリアルタイムデータを対象としてない。ただ、データ取得に関して、リアルタイムデータを常に見ておかないと、欠落した際にすぐに復旧できない。将来的に海上保安庁と連携するときには、当然リアルタイムデータは重要であるので、次のフェーズとしては十分検討して行きたい。また、ローカルルールのイメージが不明瞭であるとのことであるが、それぞれの地域の海象・気象条件、あるいは利用状況に応じ規模を算定することである。
2番目として、AIS情報の有効性に関して、初年度の成果分析が重要だとの指摘をいただいている。これはまさにご指摘の通りで、規格の通り情報が発信されればすごく重要となるが、間違った情報が入ることが想定される。それをどう取り除くかというのが、初年度にはかなり議論・検討しなければならないと考えている。
<評価のとりまとめ>
これも、実施すべきという評価としたい。
Bアジア経済統合時代の国際物流ネットワークとインフラ整備政策に関する研究
題名だが、「アジア経済統合時代」という時代認識は、政府として認識されているのか。この形容詞は、本当に時代認識として共有されているのかが重要なポイントではないかと思う。
政府としてどうかといわれると即答は出来ないが、経済連携に向けた協議を進めていくのは大方針であり、特に昨年度末からASEANの各国を中心とし経済連携に向けた交渉のための会合が数ヶ月おきに開催されている。そのような状況下にあるため、今の時代を表すキーワードとして、「経済統合化」というのは非常にインパクトがあると思い、名前を付けた。
法律的に「統合」というのはすごくセンシティブな用語だと思っている。「統合」という言葉は慎重に使わないといけないのではと思う。
「経済連携」の方が、より一般的な言葉であると思う。
幾つかモデルについてお伺いしたいのだが、1点目は物流のモデルとして、対象は世界全体の物流を対象にしているのか、それとも、アジア地域を中心に考えているのかということ、2点目は日本とのやりとりというのを考えたのだと思うが、相手を東アジア地域とか、東南アジアとか、地域でとらえているのか、それとも、国別の解析等細かく取り扱おうとしているのか。
それから、GTAPモデルというのは細かくいくつもの国に分けて扱うような精度はないと聞いている。それに基づき、どの程度具体的な政策につながるシナリオ・分析が出てくるのか、見通しを伺いたい。
まず、物流モデルの対象についてだが、全世界を対象にしないと答えが出ない。ただ、アジアについてはよりきめ細かくモデル上は扱うこととしている。
次に、国毎に扱うのか、ある程度国のグループとして扱うのかという質問だが、小国については一定のグループとして扱うが、中国のような大国、あるいは我が国については、地域を分割し、地域間貿易量という形で、より詳細に扱うことを考えている。
次に、GTAPモデルの精度についてだが、最新バージョンでは国の数が確か50あったかと思われる。主要国は1国をそれぞれ1国として扱っている。小国については、複数の国で1つの地域として扱っている。なお、中国についても1国で扱っているため、その分割については本研究で検討させていただきたい。
他の分科会からの委員の意見をお願いする。
まず、研究の必要性、有効性は高いと思われるという意見を複数の委員からいただいている。次に、政策のあり方を決めるとき、物流が増え経済効果が生じることという判断基準は、人口減少社会において正しいかというご意見があった。これについては、分析モデルにおいては人口の動向といったものも織り込んで予測を行うこととしており、特に問題はないと思われる。そのほか、港湾物流の情報化やカボタージュ(外国籍船による国内輸送を禁止する制度)など、より幅広いシナリオのもと研究を進めてほしい、モデルや分析手法の開発に加え、政策提言に重きを置くことが重要であり、シナリオライターとの連携が重要である、他分野におけるシナリオアプローチによる研究成果を有効活用した、効率的な研究が期待される、不確実な予測入力変数の与え方や係数設定に関し、わかりやすい論理説明に留意してほしいとのご意見があった。これらのご意見については、研究の実施にあたって配慮して参りたい。
非常に重要な研究だと思うし、モデルの限界を踏まえ、インフラ整備政策というところまで言及していけるかというのは非常に期待できるが、現状でインフラの拠点集中投資、あるいは分散投資シナリオの2つがあり得るという考えだが、確かに背後圏等を考えると分散というのもあり得るのだが、本当にこのモデルで分析し、分散が良いという結論が出てきそうなものか、現段階でどういった結論が想定されるかお伺いしたい。
北米や欧州の幹線物流については集中が適切であるというのは自明の答えだと考えている。ただ、例えば日中間の関税ショックを与えると、中国物流というのは劇的に増大する。そういった場合、中国物流についてはどの程度分散が適当か、どの程度の集中が必要であるかは、モデルにより評価をしていきたいと考えている。
<評価のとりまとめ>
必要性、効率性、有効性の観点から本部会として実施するに値すると評価する。
C地域の観光力の維持向上に資するストックマネジメント方策に関する研究
非常におもしろそうなテーマであるが、観光地を100選ぶ話があったが、どのように選ぶかは難しいと思われる。例えば「日光」と選ぶのか、「東照宮」と「輪王寺」と分けるのか、どのようにとらえるかをきちんとしないと、まったく意味のないものとなってしまうと思うが、考えをお聞きしたい。
課題になっている点であり、「観光地」と呼んだときに、それぞれのエリア範囲にはかなりの幅がある。過去の取り組み例として、名称として示される範囲はどこまでなのかとか、あるいは、被験者にどのエリアまでを一連の観光地として捉えるかという実験もあるが、今回は例えばガイドブックの中でのエリアの区切り方、あるいは実際に客送している観光業者がどのように商品作りをしネーミングしているかという、間接的データを中心に検討していくことになると思う。
もう一つ、観光地を100選ぶことについては、最初にケーススタディのケースを選定する上で、全国著名観光地を100ぐらい想定しているが、これらにある程度のストックがあるということと、ある程度我が国を代表するという2つのフィルターをかけようと思っている。昭和初期あたりからインバウンドの方策の中で、全国の観光地域を指定するといった動きや、新聞社主催の「日本観光地100選」という選択もやられている。そういったものを参照しながらの選定になると考えている。
研究の背景に観光立国懇談会とか、美しい国づくりとかがあるため、インバウンド、アウトバウンドの差のような現象が意識されていると思われるが、国際的に見た時の我が国の観光の魅力ということが大きな要素としてある。そうしたときに、日本といえば東京ではないか。例えばフランスでいえばパリであるし、イギリスではロンドンであろう。そういった観点からすると、地方の色々な観光地をスタディする前に、まずは東京を研究の対象にすべきであろう。つまり、東京を魅力化させずに、どうして外からの流入を増やすことができるか、ということなのである。
観光であるため、これからも重要なテーマであることは異論はないが、観光資源があり、そのために社会資本がどのように役立つかということが視点であると理解した。その真に誇れるということが具体的に何をもってできるのかまで踏み込んでいただくと、従来の研究との違いがあるのではという気がする。本研究は重要だが、どちらかというと大学で行いそうな研究テーマの設定ではという感じがして、政策や民間の動きなどと結びつけていくことが示されると、研究所の研究という印象を強く受ける。
もう一つは、空港研究部としての研究であり、観光地の魅力を高めることが間接的には空港にとっても・・・という理解は不可能ではないが、空港は空港でもっと研究テーマがたくさんあるのではないかという考えがあるのだが・・・。
空港研究部が一つの中心になり行うということであり、国総研全体の力を集めながら、あるいは、他の観光に関係するところ等も集めながらということであるので、空港研究部というのは一つの担当する部署と考えていただければと思う。
出だしは空港研究部だとしても、それを国総研全体に広げて取り組んでもらえばと思う。
インフラ等の観点からすると、従来の観光地は政策的にコンベンションセンターを整備するという観点で行ってきたが、それとは別の視点もありうると考える。要望であるが、一つぐらいそういう観点を入れていただくと、別な見方も出来るのではないかと思う。
東京にはすばらしい建物が幾つかあるが、全然インテグレート(共存)されていない話を聞く。そういった印象を皆さんお持ちではないか。汚している所を直していただきたいというのが印象である。
<評価のとりまとめ>
観光地の栄枯盛衰をパネルデータ的に並べ整理した研究を見たことがないが、そういう意味でおもしろい結果が出るのではないかと思う。ただし、こういう研究は他で実施している可能性があるため、結果の整理にあたっては既存の研究を見つけ、今回解ったこととどう違うか意識していただくと、より成果があがるのではないかと思う。
大変よく整理されてまとめ上げてこられたと思う。実施すべきという評価とさせていただく。
(4) 他の分科会における評価対象課題の報告について
 事務局より、他の分科会において評価を受けるプロジェクト研究のうち、中間評価2課題、事後評価1課題、新規研究開発課題(事前評価)6課題についての説明があった。評価を担当する部会の委員以外からも事前に意見を伺い、その後の資料の修正等が一部あったため、最新版の資料を提出し説明は省略した。
(5) その他
 事務局より、本日の審議内容については、議事要旨としてとりまとめ、各委員に確認をしていただいた上で確定するとの連絡があった。また、評価書の作成については主査に一任されることとなったことと、他の分科会の審議に基づき作成された評価書とともに、最終的には本委員会委員長の同意を経て決定されるとの連絡があった。
 さらに、評価書や議事要旨等をとりまとめた報告書を作成し、公表されるとの連絡があった。
 最後に、各課題の資料に添付されている政策評価個票(案)について、行政評価法に基づき国総研が作成し、国土交通省本省に提出するものであり、外部評価の結果欄は本日の審議に基づき、主査の了解を得つつ作成する旨の連絡があった。