第2章 評価の結果



 本評価結果は、平成17年度第1回、第2回及び第3回国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会における審議に基づきとりまとめたものである。
平成17年11月5日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会
委員長 森杉 壽芳
1.「地球温暖化に対応するための技術に関する研究」の評価結果(事後評価)
【総合評価】
  国策として対外的にも国内的にも重要な課題について他機関と連携して網羅的に取り組んでおり、また実施に当たっては大きな研究領域を適切にマネジメントしていることから、本研究の目標、計画、実施方法、体制等が適切であったと評価する。
 本研究においては、我が国が進めるべき地球温暖化対策のいくつかの側面において優れた成果を得て施策に反映されており、概ね目標を達成できたと評価する。
 なお、時間スパンが長く、空間スケールの大きい問題であるので、予測、評価のためのモデルの検討が重要である。また、中長期的にも非常に重要なテーマであるため、本研究で蓄積された技術や成果から地球温暖化に対するベストモデルを開発して輸出するなどの国際貢献も視野に入れて、さらに取り組んで行くことを期待する。
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、実施方法、体制等の妥当性 1 適切であった
2 概ね適切であった
3 やや適切でなかった
4 適切でなかった
★★★★★ ★

研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった
★★
★★★★★ ★
【指摘事項】
なお、以下の指摘事項があったので参考にされたい。
地域の交通問題を解決するとき、地球温暖化の問題という切り口で住民の合意形成を図るのは難しいのではないか。
リモートセンシングを用いた都市緑地の把握は、研究としては成り立つと思うが、これによるCO2固定量算定は難しいのではないか。
土砂災害リスクの評価では、体制面まで検討しているが、他の研究についても地球温暖化対応の体制の検討がなされる必要がある。
100年先を見るのは理学的研究としてはいいかもしれないが、実際にこれからの流域整備をやっていく国策を考える研究所としては20〜30年先、50年先を睨んだ研究成果を出し、実際の施策への反映につなげていくことを期待する。
洪水リスク、渇水リスクの評価を、今後の都市計画、水資源計画、渇水対策等にどう活かかしていくのかが課題である。
将来的には、食料生産や生態系リスク等を含めた評価が必要である。
京都議定書のCO2削減目標値に対する達成可能性について、検討が欲しかった。
対象範囲が広範であるため、今後個々の技術のより詳細な研究の実施が望まれる。
研究成果の公表状況は、分野によって偏りがあり、特に交通部門における成果の発表に不十分な点がある。また、査読付き論文が少ない点、英語論文が少ない点など成果の公表について課題が残されている。
地球温暖化による災害に関する将来像とその対応策の公開を、幾つかのシナリオで示していただければよかった。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
2.「道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究」の評価結果(事後評価)
【総合評価】
 社会的ニーズが高い部分に着目し、実際のデータに基づき施策の効果を計測し、明確化したことは高く評価でき、本研究の目標、計画、実施方法、体制等が概ね適切であったと評価する。
 本研究の成果については、施策の効果を明確にして、マニュアル、データベース、事例集等が作成されており、今後の政策展開に向けた良い成果が得られていると評価する。
 なお、確実に施策や政策に展開していくために、本研究により作成されたデータベースの継続的なメンテナンスの実施、及びコスト面の評価や、安全性や快適性についての定量評価を取り入れて更なる検討を期待したい。
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、実施方法、体制等の妥当性 1 適切であった
2 概ね適切であった
3 やや適切でなかった
4 適切でなかった
★★★
★★★★★
研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった

★★★★★ ★★
【指摘事項】
なお、以下の指摘事項があったので参考にされたい。
交通事故リスクを減らす方法について、ハード的な対策が中心になっているが、ソフト的な対策についても今後検討が望まれる。
道路空間の安全性向上のために実施された施策が、予期できない安全の欠如をもたらすおそれがあることに十分配慮して、研究成果の社会的管理を実施していくべきである。
将来的に、安全性に関して快適性の便益も含めた費用対効果の検討を行うときは、安全性と快適性のトレードオフ関係も含めた展開を期待する。
道路空間に対象が限定されているが、快適性や景観の問題については、都市計画的な視点からまちづくりなどへの研究対象の拡大が期待される。
良い研究成果を得ているが、社会的なニーズや関心に十分に応えているとは言い難い。特に、快適性については、くらしのみちゾーンや自立移動支援において関係機関との調整や連携が必要であった。
将来人口が減ったときに、安全性、快適性に対して、どのような道路空間や道路配置が重要となるのかを考慮されたい。
安全性や快適性について、どのようなところを目指していくかや、アウトカム指標を設定するということが非常に大事である。また、それらをもとにキャンペーンを実施したり警告を発することも研究の使命である。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
3.「市街地の再生技術に関する研究」の評価結果(事後評価)
【総合評価】
 本研究の目的、研究計画、実施方法、体制等については、構成する中課題の相互関係が必ずしも明快ではないが、各中課題は革新性及び社会的意義を有しており、適切であったと評価する。
 また、研究の成果については、市街地の再生を図るための手法について、新しい切り口で具体的な提案がなされており、目標を十分に達成できたと評価できる。
 今後、アーバンスケルトン方式の研究の更なる進展を期待するとともに、研究成果の積極的な情報発信や施策化への具体的なプロセスの提示に取り組まれたい。
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、実施方法、体制等の妥当性 1 適切であった
2 概ね適切であった
3 やや適切でなかった
4 適切でなかった
★★★★★ ★
★★
研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった
★★★★★
★★★
【指摘事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
都市レベルでは、スケルトン・インフィルという物財システム上の区分のみの検討に限界があり、利用特性を考慮した空間・物財システムとしての把握が必要である。今回の研究では、建築レベルと都市レベルの関係の整理が必ずしも十分ではなかった。今後、両者の関係を改めて明確にし、事業のシステムと権利関係をどう結びつけるのか、どのようなプレイヤーを想定するのか、といった各レベルの課題の検討が求められる。
都市構造の評価の中に都市の安全性がより強く入っていれば、街づくりの中で利用される可能性が高まるのではないか。
人工地盤として公共施設の計画を利用して実証実験的な事をやってみても良いのではないか。
アーバンスケルトン方式の提案が、中心市街地の活性化にどの程度寄与するのかについての定量的な評価などにより、アーバンスケルトン方式の有効性が明示されるとリアリティが出たかもしれない。
類似の課題を検討している研究者もいるので、学会などで積極的に情報や成果を発信し、意見交換するとよい。
3つの研究の関連性が希薄であるように思われたので、これらが市街地再生にどのように貢献するのかについて説明があればよかった。
都市のコンパクト性評価については、30〜50万人規模都市を対象にしていると理解するが、社会的意義からみて、メガシティのコンパクト性は人口集中度だけではなく、例えば機能集中度に着目してモデル化していくことが必要であり、次のプロジェクトでは是非挑戦されたい。
コンパクトシティをどの程度のスケールでとらえるかをきちんと定義したうえで、今後の議論をされたい。
平成17年度10月26日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第二部会主査 村上 周三
4.「快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究」の評価結果(事後評価)
【総合評価】
 本研究は、自然環境の理解、政策支援ツールの開発などに大きな成果を上げており、研究計画、実施方法、研究実施体制等は概ね適切であり、成果としても概ね目標を達成したと評価する。
 今後は人文・社会科学的なアプローチについて研究体制の充実を図り、個別分野の成果の統合による湾全体としての総合的な計画策定やマネジメント技術さらには合意形成手法の高度化などについて、更なる検討を進めるべきである。
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、実施方法、体制等の妥当性 1 適切であった
2 概ね適切であった
3 やや適切でなかった
4 適切でなかった
★★
★★★★★ ★
研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった

★★★★★ ★★
【指摘事項】
なお、以下の指摘事項があったので参考にされたい。
自然環境の理解、政策ツールの開発では大きな成果があった。今後、それを東京湾全体の環境形成・管理に統合する上での課題を明確にして取り組んで頂きたい。
自然現象の解明とその予測手法については、レベルの高い成果を上げている。社会科学分野の研究については、日本沿岸域学会や科学技術論学会などでの議論を参考にされたい。
研究テーマに対して成果の中心が内湾の自然再生にやや偏っており、今後、大きなテーマの達成に向けて継続的な取り組みが望まれる。
課題が広いテーマのため研究が多方面に及ぶことは理解できるが、若干、的が絞られていない印象を受けた。人文社会学的なアプローチについては、研究体制の充実、研究の蓄積が望まれる。
現実に深刻化している生態系攪乱等(バラスト水や黒潮の流入によると思われる危険外来種の移入経路・分布・起源の特定など)も含むべきであった。
自然環境をめぐる合意形成よりも、東京湾の物流機能(海運・港湾等)との調整こそ重要であると思われるが、その点が明示的に扱われていないことは問題であろう。
要素技術を統合化し、政策提言に結びつけるための統合化、マネジメント技術、合意形成に関する技術の開発等が今後に残された課題であり、また、一般市民の水辺・水際へのアクセス性に関する調査・評価研究の充実が望まれる。
アウトリーチ活動を推進すべきである。特に成果を国際的なレベルに向けて発信すべきである。
平成17年度10月13日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第三部会主査 三村 信男
5.「ITを活用した国土管理技術」の評価結果(事後評価)
【総合評価】
 研究予算が少ない中で、テーマを限定し、ITに着目して横断的なプロジェクトを展開したことや、関係機関との連携や既存衛星データの活用などにより効率的に研究が実施されたことは高く評価でき、本研究の目標、計画、実施方法、体勢等が概ね適切であったと評価する。
 本研究の成果については、国土管理の分野のITについて国で基準を定めたことを始め、個別の目標設定に対して着実に成果が出ていると判断されるため、概ね目標を達成できたと評価する。
 なお、国土管理技術に対する社会的ニーズや期待は高いため、政策評価、国土モニタリング、防災、減災という観点から、今後の展開が望まれる。
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、実施方法、体制等の妥当性 1 適切であった
2 概ね適切であった
3 やや適切でなかった
4 適切でなかった
★★★★
★★★
研究の成果及び目標達成度 1 目標を十分達成できた
2 概ね目標を達成できた
3 あまり目標を達成できなかった
4 目標を達成できなかった

★★★★★ ★★
【指摘事項】
なお、以下の指摘事項があったので参考にされたい。
道路GIS、河川GIS等の共通化については数多くのメリットがあるはずであるため、今後とも施策ニーズ、計画ニーズの分析を進め、わかりやすいアプリケーションを示すべきである。
国で標準を定めることは、国土管理の部分ではIT加速にもつながる。ITの変化に伴い要求される機能や性能規定を変えていく必要があり、今後も検討を継続されたい。
汎用性の高いソフトによる開発は評価できる点であるが、GISなどいろいろなソフトが開発された後、末端である事務所組織でソフトを活用するに当たっては、人材を片方で育成し各事務所に配置するような仕組みが必要である。
データのモニタリングの技術としては、日常業務の中で、比較的自動的に、楽に必要な指標が蓄積されていくことが非常に重要である。
社会で使われる、実利用に耐えるシステムとするため、ビジネスモデルを考えたIT・データベースについての研究が望まれる。
IT技術をどう活用して国土管理に使うのかについて、今後の研究に関するビジョン的なものが示されることが期待される。
防災機関との連携により積極的に実施すべきであり、また一般市民が活用できるかという視点が今後重要である。
情報整備に加えて、効果的、迅速な通信・伝達も重要である。
環境保全について環境という言葉が漠然としており、内容が大分浅い。都市内のCO2の問題や生物情報については、もっといろいろなものにITを活用できるという印象である。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
6.「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」の評価結果(中間評価)
【総合評価】
 社会的ニーズが高く、テーマ設定も適切であり、また関係機関と連携して研究計画が練られていることも高く評価できることから、本研究の目標、計画、実施方法、体制等が適切であったと評価する。
 多数の論文が発表され、また研究成果も施策に生かされつつあり、概ね順調であると評価する。
 施策として効果が上がる研究を目指す必要があり、制度技術の検討を強化する方向に計画を修正の上、研究を継続していただきたい。
【評価指標別評価結果】
研究の目標、研究計画、
実施方法、体制等の妥当性
1 適切であった
2 概ね適切であった
3 やや適切でなかった
4 適切でなかった
★★★★★
★★
研究の進捗状況
1 順調である
2 概ね順調である
3 やや順調でない
4 順調でない
★★
★★★★★ ★
研究継続の必要性、妥当性 1 計画通り継続
2 計画を修正の上継続
3 計画を大幅に修正の上継続
4 中止
★★★
★★★★★
【指摘事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
今後とも政策課題の分析、既存研究のレビューなどを丁寧に行い、研究マップを見直しながら適切に研究を位置づけていって欲しい。
研究機関が連携して研究を進めることが必要である。異なるモードを研究するグループが共同で学会論文を執筆することに期待したい。並列するモードを上手に使うための研究についても、他モードに対する影響を相互調整し、コメントをもらいながら進めるなど、国総研であることのメリットを活かすことが重要である。
環境負荷軽減、心理的評価を含めた、総合的なB/C評価が必要ではないか。
マルチモーダル交通体系の導入方策や交通結節点の整備方策の検討では、制度・財源についての研究を含める必要がある。
研究成果の論文発表も大事だが、現場への適用可能性を常に考慮、配慮して欲しい。
施策として効果が上がる研究を目指す必要がある。交通政策は、CO2問題も含め、重要かつ早期に効果を上げる必要のある課題であるため、重点項目、実現性の高い項目にテーマの絞込みをしてもよいのではないか。
物流体系の検討に際しては、業界団体と協働し、うまく連携して考えていくことで実用性実効性の向上を図ることができる。
人流・物流を総合的に見るといった観点がとても重要であり、これまでの成果を踏まえながら、全体の評価の枠組みとなる「マルチモーダル交通体系の評価に関する研究」をきっちりやっていただきたい。
合理性、最適性をどこに持って行くのかについては、そのシステム(LRT)のサステーナビリティといった視点から時代の流れとどう調和をとるかが課題である。
マルチモーダルの重要性や必要性について、時間と費用だけでなく、エネルギーや環境負荷についても可能な範囲で視点に入れ、もう少し踏み込んだ形で成果を取りまとめられたい。
平成17年度10月26日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会委員 古米 弘明
7.「流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 流域からの水物質流入の影響を強く受ける閉鎖性水域や沿岸海域に関して、生態系を含む水域環境の健全化に向けたモニタリング・調査手法を提示する重要な課題であり、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。なお、二年間という研究期間を考えると、ターゲットを絞った方が良い。現在の研究についてじっくり再考し、従来のモニタリングでは何が問題なのかを踏まえて、国総研として解決すべきことや目指すところを明確にすべきである。また、総合科学技術会議の第三期科学技術基本計画の動きを踏まえて、かつコミュニケーションを図りながら研究を進められたい。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
この分野の課題はアウトプットが共有できずに、漠然としてしまう傾向がある。ゴールを見据えて、どのような技術的な対応が可能か、具体論として攻めて行くべきである。
何で評価するか、また良い状態と悪い状態をどう定義するかを決めることが重要である。
目標設定では、科学論だけでなく地域的な決定があって然るべきである。
沿岸域では、上流の悪い影響を受けることもあり、上流域、下流域を含めて、また関連研究部で一体的に実施すべきである。
対象とするフィールドを選ぶ条件としては、川のデータや土地利用情報がしっかりしていることが重要である。
効率性の観点から、リソースの有効配分について考慮されたい。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
8.「地域活動と協働する水環境健全化に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、水循環の健全化を実践する上で必要な地域との協働を推進する観点から重要な課題であり、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。なお、研究の実施にあたっては、どの様にして水循環の健全化に関するインセンティブメカニズムを作り、コミュニケーションの推進を図るかに留意されたい。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
テーマとしては重要であるが、水質だけでは事業の効果が現れにくいため、生物多様性や河川の構造、植生を含む構造的な問題を取り入れた水環境の健全化の議論が必要である。
協働といっても簡単ではなく、地域便益を個人便益と思わない人々に対しては、強制的に規制のような方法をとらざるを得ないところもあるため、制度設計に際しては、従前の規制対策や協働の仕組みをもう少し取り入れて検討してはどうか。
研究であることを考えると、ファシリテーターやリスクコミュニケーションという新しい概念や手法の導入や検証をして欲しい。
水環境や水循環の健全化に、地域の人達がどのように貢献し、いかにベネフィットを得て水環境や水循環が良くなるかを明確にする方が、わかりやすい研究テーマになるのではないか。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
9.「下水道管渠の適切な管理手法に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、下水道管渠のストックの維持管理を効率化する観点から、有意義な研究課題であると認められるため、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
研究を実施するに当たっての留意事項
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
下水道管理主体におけるデータの保存状況を考慮すれば、維持管理の情報をアンケートにより収集した場合、記憶だけに頼った回答がなされる恐れがあるため留意されたい。
道路陥没が生じる程ひどい箇所をターゲットにして、ひどい箇所はどこで、どのような現象で道路陥没が起きたのかを検討する立場でアンケート調査をするということであるが、そのような状態に至る前にどこをどの様に直せば良いかという視点も重要なので留意されたい。
将来的に、下水道管渠をモニタリングし、延命化を行うことで、維持管理にかかるコストが安くなることを提示出来るよう検討されたい。
警察・道路管理者と下水道管理者の間、さらには国総研との間で、必要な情報が自動的に収集できるような仕組みを作ることで、アセットマネジメントにつなげるような検討をお願いしたい。
むしろ、遅きに失したテーマであり、緊急かつ重点的に検討する必要がある。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
10.「気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、頻発する豪雨、渇水への対応や地球温暖化による将来の影響への対応策を検討するものであり、重要な課題であると認められるため、国総研で重点的に実施すべき課題であるものと評価する。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
気象庁のデータや予測モデルを活用するだけでなく、水量に変換するモデルなど国総研として力を入れる部分を明確にされたい。
雨の予測の確度は高まったかもしれないが、依然として不確定性があることから、そのような不確定性も踏まえたインプットに対する事前放流の仕方を図式化できると良い。
確度の向上が期待される将来のリスク評価に対し、既存の施設や現在あるいは今後整備する施設を20〜30年後に拡張できる設計法についても視野に入れて検討を進められたい。
住民から、利水や洪水回避の両方からの訴訟も将来的には起こりうると考えられるため、予備放流の空振りリスクなどについても、納得のいくリスクの評価により、合理的判断だったといわれるような枠組みつくりを期待する。
気象情報の予測精度があがるにつれて、都市地域においては河川と下水道のポンプ調整のあり方など、下水道との関係も出てくるので、研究を進めるにあたり配慮すべきである。
リアルタイムスケールでの予測について、降雨量予測情報や実際の降雨量情報をリアルタイムに扱うことを含めて検討されたい。
海岸については、河川の物質動態の変化も考慮すべきではないか。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
11.「LRTの地方鉄道乗入れに関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、既存のストックを有効に活用するLRTの地方鉄道乗入れの導入を進めるための研究であり、非常に重要な課題であると認められるため、国総研で重点的に実施すべき課題と評価する。ただし、国内外の事例を踏まえながら、渋滞解消、環境負荷、資金運用等の視点も考慮するとともに、持続可能性のある有効な提案ができるよう、地域を巻き込んだ実験的な研究展開も視野に入れながら研究を実施されたい。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
合意形成についても、資金運用等の観点を追加しながら、サステイナブルなものであるかという観点から、LRTの地方鉄道乗入れについて評価されたい。
効率性だけでなく、環境負荷項目も評価軸に入れれば、少々赤字になっても頑張るという住民も含めた合意形成ができるかもしれない。
合意形成については、国総研の他の研究でも考えられているため、国総研全体として統一的な考え方・視点が必要であり、事業者と地方自治体の間の合意形成だけでなく、もっと高いレベルの合意形成もあり得ることに配慮して検討されたい。
資金調達、運営管理、リスク等のマネジメントなどに対する考え方が出てくるような研究を行うと、実際にLRTの導入を進めるための参考になる。
平成17年度10月26日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会委員 古米 弘明
12.「建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、性能規定化への対応や建築材料の実効性のある品質の確保という観点から、建築材料等の性能表示、認証システムの新たな仕組みについて検討するものであり、極めて重要な研究であるため、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。なお、研究の実施にあたっては、JIS等既存の制度との関係に留意されたい。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
フレームワークを作るとき、材料の種類や性能項目に応じた課題を整理し、ネックになっている部分や、実現に向けて克服すべき点などを具体的に示していくべきである。
このシステムにより、製造者等に過度の負担が生じないよう配慮されたい。
このシステムが、国際的に適合しているかという点が大事である。認証というのは社会的規制であり、ある国が突出することは貿易上の障壁にもなり兼ねないため、国際的な歩調と合わせるような研究のやり方とすべきである。
平成17年度10月26日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第二部会主査 村上 周三
13.「建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、建築空間におけるユーザー生活行動の安全を確保する観点から重要な研究であり必要性が高いことから、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。なお、研究の実施にあたっては、本研究で構築する建築空間の事故事例のデータベース情報等が、設計者や生活者に利用されやすいものとなることに留意して進められたい。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
国総研というメリットを活かし、民間では集まりにくい事故事例もしくはヒヤリ、ハットを幅広く集めていただきたい。
プロジェクト終了後において、知的基盤としてのデータベースを、誰がどのようにメンテナンスしていくかも一緒に検討する必要がある。また、集めたデータをどのように開示し、利用していくかを早期に設計されたい。
リスク分析として、どこまで掘り下げるのかよく検討されたい。
建築設備昇降機センターに昇降機の事故事例のデータベースがあるので、活用されたい。
既往研究をレビューし、可能であればそのフレームあるいはデータを使っていく方がよい。
米国は遊技施設の事故事例について生きたデータベースをもっているので、どう収集し、どう活用されているのかも含めて、活用されたい。
ウクライナやモスクワなどは、エスカレーターを倍速で運転しているが大きな事故につながっていないようである。よりリスキーなところで情報を調べてみるのも一つの手ではないか。
人間特性に関しては、混雑時やパニック時といった時間的状況において、ユーザーだけでなく、管理側も大きく関わってくることが考えられる
非日常なところに潜在化したリスクをどのような形で考慮していくかは課題である。
建築計画分野で必ずしも十分に研究されてこなかった視覚障害者や認知症高齢者なども含めて検討されたい。
ユーザー属性をどこまで考えるかは、研究のスタートラインで想定しておくべきである。
日常性の中での事故の理由は、その物に内在する問題よりも、人間の不注意やぼんやりした行動であることが非常に多いので、注意喚起の看板をかけるなど比較的常識的な解決策であるとも考えられる。
平成17年度10月26日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第二部会主査 村上 周三
14.「低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用持つ対策の評価に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、将来の沿岸域災害リスク災害のリスクに対してどのように備えるかという重要な課題であることから、メガリスクとして想定する事象の範囲やNo-Regret-Policyのあり方などを明確にしつつ、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
ケーススタディー地区の選定に当たっては、想定する災害の規模・影響が大きいことを考慮し、大都市域での検討も考慮されたい。
メガリスク型沿岸域災害のイメージが解りづらい。災害の設定に当たっては、地域の視点から見るのと、日本全体から見るのとでは違ってくるため、その点を明確にして検討されたい。
キーワードとしてノーリグレット(後悔しない)を提案されていて、この考え方は面白いと思うが、定式化するのは難しいのでは。後悔に関する基本的考え方(後悔の基準)や評価の見方など基礎的な部分に関する研究には十分配慮願いたい。
平成17年度10月13日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第三部会主査 三村 信男
15.「国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 これまでに想定していなかったリスク要因による輸送の中断やサービス水準の低下が懸念される昨今の国際的な情勢に対して、空港・港湾といった基幹的な交通施設の安全性を確保し、危機管理に資するとの観点から、本研究は、国総研で重点的に実施すべきものと評価する。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
面白いテーマであるがリスク範囲について、数日間以上空港が閉鎖されるとか、港湾が使えないとか、国がかなりの損失を被る等、長期的、広域的に渡るリスクに重点を絞って研究を進めることが重要ではないか。
港湾や空港はステークホルダーが多数存在することからリスクマネジメントを実施する際には、まず関連する主体の間でのリスクシェアリングの関係を整理することが重要である。
港湾や空港は、施設が正常に機能していても、輸送・離着陸の相手側が機能しなくなったことによる影響で麻痺するなど、相手側のダメージレベルによって危機管理態勢が変わってくる可能性もあるので、そこまで検討の枠組みを広げて頂きたい。
研究実施体制を見るとゼロから始める態勢に見えるが、4年間の計画で本当に可能なのか心配である。もう少し連携先を決めておくとか等の準備態勢が必要ではないか。
平成17年度10月13日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第三部会主査 三村 信男
16.「温室効果ガス削減を目指した空港環境マネジメントに関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 空港における温室効果ガスの排出量は、上空において航空機が排出する量に比べると少ないものの、各分野が積極的に地球温暖化問題への対応に取り組む中、空港における総合的な温室効果ガス排出対策を検討することは社会的に重要であり、本研究は国総研で重点的に実施するものと評価する。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
空港でのCO2の削減は、絶対量としては大きな比率を占めないので、その効果について明確な結果を出し、社会的にきちんと説明出来るようにされたい。
削減することも良いが、逆に空港の広いスペースを利用して、エネルギーを生み出す視点での検討もあるのではないか。
航空機のスムーズな走行は、これまでも努力が行われてきており、さらにどこまで改善できるのかと思われるし、昼間工事の実施についても、照明を減らす効果はあるものの昼間に行うことによる問題も出てくると思われるので、そのあたりに留意すべきである。
舗装材料について、道路舗装では不適切であっても空港での適用の是非を検討する価値はあるため、舗装関係の部門との研究連携についても検討する必要がある。
平成17年度10月13日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第三部会主査 三村 信男
17.「災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、独居老人や身体にハンディキャップのある方など要援護者への災害時の情報提供を迅速・確実かつ的確に実施する観点から、重要な研究課題であると認められるため、国総研で重点的に推進すべき課題と評価する。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
高齢化率が高い中山間地域の独居老人などが非常に重要な対象となるため、コミュニティにおける連携・情報伝達が不可欠であり、そうした共助を支援するための公助システムを開発するという視点も取り入れて研究を進められたい。
農作業に出ている場合など、状況によって使える情報端末が異なることについても考慮のうえ、研究を実施されたい。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生
18.「地域被害推定と防災事業への活用に関する研究」の評価結果(事前評価)
【総合評価】
 本研究は、種々の災害に対するリスクを、個々の施設や保全対象のレベルで評価する手法を確立し、効果的な対策の実施や、発災時の緊急対応の効率化に資する重要な課題であると認められるため、国総研で重点的に実施すべき課題であるものと評価する。
【研究を実施するに当たっての留意事項】
なお、研究を進めるに当たっては、以下の点についても配慮されたい。
ミクロな予測と簡易な推計があり、災害に応じて使い分けるということだが、洪水については、技術的に可能であれば詳細なシミュレーションを入れて検討してみてはどうか。一方、モデルを精密化しても解析に要するデータ入手が難しいなどの逆のトレードオフになるという問題もあるので考慮されたい。
既に設定されている土石流危険渓流のデータの活用など、既存のリスクマネジメントの実績と比較し、新しい手法の効果や精度のチェックが必要である。
政策の費用対効果についての検討を期待する。災害の分野ごとに税金でカバーする範囲が決まっているが、それの見直しにもつながるのではないか。また、色々な災害のトータルなリスクを考えて対策費が高い場所への居住を制限したり、そのような場所への居住は自己責任としたりする基準もできるのではないか。
災害規模や発生確率の評価には不確実性があり、人の意識にも避難に際して逃げるか逃げないかという不確実性がある。このようなダブルの不確実性の中で判断される災害対応に最適という表現を使うとミスリードになる可能性もあるので注意が必要である。
ミクロな地域の災害予防や防災技術については、局所的な現象を支配している物理現象を解明し、その結果に基づいた新たな技術の開発や導入を行うことが必要である。
対象とする災害が広範であるため、研究対象や目標とする研究成果を絞り込み、社会貢献への道筋を明確にすべきである。
平成17年度11月1日
国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
第一部会主査 石田 東生