第3章 評価の結果に対する対応方針



分科会の評価結果を受けて、国総研では、以下のような対応をすることとした。
(事後評価)
1. 地球温暖化に対応するための技術に関する研究
 評価結果を踏まえ、本研究の成果に関するフォローアップ、関連分野への研究成果の応用を図って参りたい。まず、予測、評価のためのモデルの検討については、今後、気候変動により、現在あるいは早期に現れる不可避の影響に対する対応策の実施、及び将来現れる可能性がある重大な影響への対応策に関する研究を継続して参りたい。また、研究成果による国際貢献については、当プロジェクト研究報告書を英語で作成する等、英語による成果の公表に努めて参りたい。
2. 道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究
 評価結果を踏まえ、本研究の成果を通じた施策・政策への継続的な貢献や、関連分野における更なる研究の実施を図って参りたい。本研究の成果の一つとして、交通事故定策マニュアルの作成、交通事故データベースの構築等による「交通安全対策の効果的・効率的実施方法」が挙げられるが、これら成果を用い、交通事故データの的確な収集・管理、分析・対策立案、現場へのフィードバック、効果の検証、これら一連の情報の蓄積・継承等を繰り返し実施し、施策・政策への貢献を継続的に進めて参りたい。また、安全性や快適性に関する費用や便益を勘案しつつ、量的評価手法の検討やそれに基づく業績目標の設定方法の検討、目標達成に向けた道路構造等によるハード的手法と教育・広報・キャンペーンなどのソフト的手法の役割分担の検討など、関連分野における更なる研究の実施を図って参りたい。
3. 市街地の再生技術に関する研究
 評価結果を踏まえ、本研究の成果に関するフォローアップ、関連分野への研究成果の応用を図る。本研究の成果については、研究発表会の開催、関連学会での発表を始め、プロジェクト研究報告書、国総研ホームページ等を利用して広く情報発信するとともに、外部の研究者との意見交換を通じて研究成果の一層の充実を図っていく計画である。
 特に、アーバンスケルトン方式については、本研究で提案した基本的な概念・仕組みをもとに、事業化を想定した検討・検証を進め、また、都市のコンパクト性評価については、都市の安全性や都市機能集積度等の人口集中度以外の指標の検討、様々な都市規模に応じた検討を行って参りたい。
4. 快適に憩える美しい東京湾の形成に関する研究
 評価結果を踏まえ、内湾の総合的な利用計画のあり方、管理方法等について、さらに検討を進めて参りたい。具体的には、沿岸域の包括的再生計画のあり方や技術の活用のための管理システムなどについて研究を実施し、沿岸域におけるユーザドリブンな計画・管理システムを提案する。その際には、人文・社会科学的なアプローチについても研究の充実に努め、合意形成手法の高度化等についても取り組んで参りたい。
 その他ご指摘いただいた事項についても、十分念頭に置いた上で今後の研究を進めて参りたい。
5. ITを活用した国土管理技術
 評価結果を踏まえ、国土管理の分野でのITの具体的な活用の推進に資するように、わかりやすいアプリケーションの呈示につとめ、日常からITに親しみ最新技術に熟達しうる環境を整え、業務相互での情報の利活用を可能とする標準化などの施策と連携を図りながら、現場における研究成果のフォローアップをしていきたい。また、技術革新の成果を積極的に導入して、このプロジェクトで先鞭をつけた国土管理分野のIT技術の利活用に関する研究のビジョンの構築をさらに進め、データベース・GIS・モニタリング・情報伝達などの新規研究課題の立案を図っていきたい。
 その他、ご指摘頂いた事項についても、十分に念頭に置いた上で、今後の研究を進めていきたい。
(中間評価)
6. マルチモーダル交通体系の構築に関する研究
 評価結果を踏まえ、制度技術の検討を強化し、マルチモーダル交通体系の導入策の実現性・実効性を意識した成果を得るよう制度・財源問題も含めて研究を進める。
 また、「マルチモーダル交通体系の評価に関する研究」においては、環境負荷やエネルギー消費・心理的評価を含めた検討を強化するとともに、各交通モードに対する提案施策の影響を相互調整しつつ、人流・物流を総合的に捉えた横断的な評価を目指していきたい。
 これらの研究においては、政策課題の分析や既存制度・研究のレビューを行うことにより各個別研究課題を位置づけるとともに、関係機関・業界団体との連携を強化して施策の検討を行う。なお、その際には効果の上がる施策が重要であり、そういったテーマに絞り込んで研究を進めることも考える。
 その他ご指摘いただいた事項については、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
7. 流域における物質循環の動態と水域環境への影響に関する研究
 評価結果を踏まえ、本分野に関係する既往の研究および知見を広く整理・分析し、課題解決のターゲットを絞り込み、その解決に向けた調査・モニタリングにおいて新たに必要となる事項を明らかにし、モニタリング・調査手法の提示を進めて参りたい。その際には、総合科学技術会議をはじめ関係する研究開発の動きを踏まえ、必要なコミュニケーションをとりながら、関係各機関等との連携が考慮されると同時に、国総研として果たすべき役割も明確な提示となるよう進めて参りたい。
 その他ご指摘いただいた事項については、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
8. 地域活動と協働する水環境健全化に関する研究
 評価結果を踏まえ、地域住民等が水環境の健全化に対しインセンティブを持つ仕組みを様々な観点から十分検討し、その結果に基づきインセンティブ形成を促すコミュニケーションのあり方を幅広く検討し、その効果の把握手法にも留意しながら、研究を進めて参りたい。
 その他ご指摘いただいた事項については、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
9. 下水道管渠の適切な管理手法に関する研究
 評価結果を踏まえ、統計解析に必要な維持管理情報の収集については、正確なデータの収集が可能となるよう検討した上で実施すると共に、予防的管理手法、管理改善によるライフサイクルコスト低減、他機関との協力方法についても検討して参りたい。
 その他ご指摘いただいた事項については、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
10. 気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究
 評価結果を踏まえ、降水量予測情報をリアルタイムに扱った洪水予警報、ダム運用等の検討にあたっては、降水量や流出量等の予測精度を科学的に評価した上で、下水道等の他分野とも情報交換を図りながら、予測情報を活用する手法の開発に取り組むとともに、リスク評価を実施し、国土交通本省、地方整備局等との連携のもと実務に適用可能な技術として取りまとめて参りたい。また、地球温暖化による影響とその対応策については、将来の変化に対してできるだけ柔軟な対応が図れるようソフト・ハード両面から幅広く検討して参りたい。
 その他ご指摘いただいた事項については、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
11. LRTの地方鉄道乗入れに関する研究
 本研究においては、マーケット・リサーチ手法を応用しつつ、正確な需要予測手法の開発を行うこととしており、さらに、将来の需要の変動などのリスクや資金運用方策も考慮に入れて、持続可能性を評価できるようモデルへの組み込みを図って参りたい。
また、本研究においては、交通事業者、住民、自治体、商店街などの関係者が、LRT計画を、それぞれの立場から評価するために必要な情報を提供できるよう、経済性、利便性、省CO2・省エネルギー、中心市街地活性化効果、コンパクトな都市構造への誘導効果など多様な視点での整備効果の把握手法を開発することとしており、環境負荷削減の効果や資金面・運営面での評価手法についても提案して参りたい。
さらに、合意形成をテーマとした国総研の研究にも参画しており、その中での成果や情報交換を踏まえ、様々な視点に配慮して研究に取り組んで参りたい。なお、平成16年度から調査に着手している欧米の都市内公共交通機関の政策・制度・財源については、現在、分権化・自由化等を踏まえた制度の見直しも進行中であり、これらの中から、日本に適用できるアイデアについても合わせて提案できるよう努力して参りたい。
12. 建築基準の性能規定化の一層の推進のための建築材料等の性能表示・認証システムに関する研究
 評価結果を踏まえ、JIS等の既存制度との関係に十分に留意しつつ、研究を実施して参りたい。また、フレームワーク作成に当たり検討課題を具体的に整理するとともに、製造者等に過度の負担が生じないようにすること、及び国際的な動向との整合を図ることに配慮したい。
 その他ご指摘いただいた事項についても、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
13. 建築空間におけるユーザー生活行動の安全確保のための評価・対策技術に関する研究
 評価結果を踏まえ、ヒヤリ、ハットを含めて国内外のこの種の事故事例に関するデータを広範に収集して、建築空間の事故事例のデータベース情報等の開示、利用法に関して十分に検討し、構築した知識基盤が設計者や生活者に利用されやすいものとなるように研究を進めて参りたい。
 また、視覚障害者や認知症高齢者への対応を含め、どのようなユーザ属性を対象として研究を進めるかについて研究の初期段階に明確にした上で、混雑時・パニック時における建築物の管理者等ユーザ以外の者の係わりについても十分考慮したい。
 その他ご指摘いただいた事項については、十分に念頭に置いた上で、研究を進めて参りたい。
14. 低頻度メガリスク型の沿岸域災害に対する多様な効用を持つ対策の評価に関する研究
 評価結果を踏まえ、対象とする津波、高潮災害の被害がどのように波及するかを十分に整理し、定量的評価が可能かどうかを考慮しつつ、本研究で検討する低頻度メガリスク型沿岸域災害対策の効用及び効用を計測する範囲の考え方を明確にし、研究を進めて参りたい。
 また、No-Regret-Policy(後悔しない政策)については、新たな概念もあるので減災対策による受益の概念の明確化、定量評価の可能性等について外部研究者との連携も含め十分に検討し、効率的に研究を進めて参りたい。
15. 国際交通基盤の統合的リスクマネジメントに関する研究
 評価結果を踏まえて、国レベルでの長期的、広域的なリスクに重点をおいて研究を進めて参りたい。研究においては、港湾、空港における利害関係者間のリスクシェアリングについて整理するとともに、相手方の港湾、空港との関係についても考慮して参りたい。
 その他、ご指摘いただいた事項についても十分念頭においた上で、関係研究部、国ならびに地方行政機関、学会等と連携を図りながら、可能な限り早期から成果が上げられるよう研究を進めて参りたい。
16. 温室効果ガス削減を目指した空港環境委のマネジメントに関する研究
 評価結果を踏まえ、空港におけるCO2 排出について、それを削減することが社会的に有意義であることを説明できるように研究成果のとりまとめを行いたい。
 また、空港における昼間工事について、運用停止等に伴う影響を極力抑えつつ実施できるような方策を検討して参りたい。
 さらに、舗装材料については、道路分野における研究成果も活用しつつ、空港での適用性について検討して参りたい。
17. 災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発
 評価結果を踏まえ、災害時に要援護者への情報提供を迅速、確実かつ的確に実施するための研究開発を大学、産業界とも連携をとりつつ進めて参りたい。
 研究の実施にあたっては、ご指摘をいただいた「コミュニティにおける連携・情報伝達」のための公助システム、状況に応じた情報端末の使い分けについて十分に念頭に置いた上で、所期の成果が得られるよう留意して参りたい。
18. 地域被害推定と防災事業への活用に関する研究
 評価結果を踏まえ、研究の実施に当たっては、まず、対象とする災害現象を十分に把握し、所要の精度を有する被害推定法が確立できるように努めて参りたい。その際には、各種手法の精度と必要とされるデータの多寡との関係、既往の手法による推定結果との比較、現象の不確実性等に十分に留意して参りたい。
 また、国土交通本省を始めとする関係部局と緊密な連携を図り、優先的に検討が必要とされる分野について事業としての費用対効果等に関しても考慮し、施策への反映が可能となる効率的かつ実践的な研究になるよう努めて参りたい。