平成17年度 第3回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会
分科会 議 事 録



第3回研究評価委員会分科会 第一部会 議事録 (平成17年8月1日開催)

1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) プロジェクト研究の事後評価
@道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究
A地球温暖化に対応するための技術に関する研究
BITを活用した国土管理技術
(3) プロジェクト研究の中間評価
@マルチモーダル交通体系の構築に関する研究
(新規課題:「LRTの地方鉄道乗入れに関する研究」を追加)
(4) プロジェクト研究の事後評価の取りまとめ
@道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究
A地球温暖化に対応するための技術に関する研究
BITを活用した国土管理技術
(5) プロジェクト研究の中間評価の取りまとめ
@マルチモーダル交通体系の構築に関する研究
(6) プロジェクト研究等の事前評価
@流域における物質循環と水域環境への影響に関する研究
A地域活動と協働する水循環健全化に関する研究
B下水道管渠の適正な管理手法に関する研究
C気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究
D地域被害推定と防災事業への活用に関する研究
E災害時要援護者向けの緊急情報発信マルチプラットフォームの開発

5. 報告
(1) その他のプロジェクト研究の報告
@自然共生型流域圏・都市の再生<事後>
AセカンドステージITSによるスマートなモビリティの形成に関する研究<事前>

(2) 第1回及び第2回分科会での評価対象課題の報告
6. その他
(1) 今後の予定について
7. 国総研所長挨拶・閉会


〈開会〉

(事務局) それでは時間になりましたので、ただいまより17年度の第3回国土技術政策総合研究所国総研の研究評価委員会分科会を開催させていただきます。

 委員の皆様におかれましては、ご多用中にもかかわらず、この分科会にご出席いただきまして、まことにありがとうございます。

私、事務局を務めさせていただきます研究評価・推進課長の○○でございます。議事に入るまでの間、進行を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

本日の分科会は第一部会の担当会議でございまして、平成16年度の終了プロジェクト研究の事後評価、それから18年度からの新規プロジェクト研究等の事前評価、及び中間時期の中間評価をお願いするものでございます。

それでは初めに配付資料の確認をさせていただきます。

まず本日の議事次第と座席表がございます。その後に事後評価、中間評価の課題の評価シートがございます。その後配付資料がございまして、配付資料の一覧によりまして、資料1から17まで配付をしております。

資料1が本日の分科会の委員名簿。資料2が評価の方法等について。資料2−1として、研究評価委員会分科会の議事録等の公開方法の案。資料3が国総研のプロジェクト研究一覧。以下、資料4から資料16まではそれぞれの課題の関係の資料でございます。それから資料17といたしまして、他の分科会における評価対象課題の資料を添付しております。それから参考資料といたしまして、規則等をそこに書いてある資料をお配りしております。

資料の不足等ございましたら、事務局の方までお願いいたします。

それでは議事次第に従いまして、○○国土技術政策総合研究所長よりごあいさつを申し上げます。

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〈国総研所長挨拶〉

(国総研) おはようございます。本日は大変お忙しい中、この国総研の研究評価委員会分科会第一部会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。大変お暑い中、またお忙しい中、ありがとうございます。

 本日の評価委員会でございますけれども、お願いしております事項大変多うございまして、事後評価につきまして3件、中間評価につきまして1件、また事前評価が7件ということでございます。そのほか報告事項といたしまして、さらに2件ということでございます。

ということで、朝10時から夕方の8時まで大変長い時間でございますが、ご評価をお願いしております。大変恐縮でございますが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

全般的な状況といたしまして、国総研5年目に入ったわけでございまして、さまざまな成果があがってきておりますけれども、こういったことにつきましては、事後評価の中でまたいろいろとご評価、またご指摘いただければ幸いでございます。

また、我が国全体としましては、現在第3期の科学技術基本計画につきまして見直しが進められているところでございますが、国土交通省としましても、これに向けましてのいろいろな検討を進めております。あわせまして、国総研といたしましても研究方針の見直しということにつきまして検討しているところでございます。この見直しにつきましても、今回の評価の委員会の中でのさまざまな議論が大変参考になるというふうに考えております。そういう意味でもぜひ評価の、あるいはさまざまなご指摘よろしくお願いしたいと思います。

それではどうかよろしくお願いいたします。 

(事務局) それではご出席の委員の皆様をご紹介申し上げます。委員の皆様には、本年度より2年の任期で改めて委嘱させていただいております。まず本日の分科会の担当部会であります第一部会所属の委員の皆様をご紹介いたします。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいますけれども、しばらくおくれていらっしゃるというふうに聞いております。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 ○○委員でいらっしゃいます。

 数名の委員の方は早退されると伺っておりますので、ご了承をお願いいたします。

また、分科会設置規則に基づきまして、研究評価委員会委員長の指名により、他部会に所属の委員にもご出席をいただくことになっておりまして、本日は第3部会より○○委員にご出席いただいております。

また、第2部会の担当につきましては都合がつきませんで、本日はご出席の方はいらっしゃいません。

国総研の幹部の紹介につきましては、座席表をもって紹介にかえさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

それでは分科会規則に基づきまして、研究評価委員会委員長より第一部会の主査として○○委員が指名されております。○○委員にごあいさつをいただきまして、以後の議事をお願い申し上げたいと思います。○○主査、よろしくお願いいたします。

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〈分科会主査挨拶〉

(主査) おはようございます。主査を務めさせていただきます○○でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。暑い中、最後の坂でどっと汗が出てきましたけれども、ペース配分を考えればきょうの長丁場も乗り切れるんじゃないのかなというふうに思います。

委員の皆様方も、きょうはたいへんな1日なんですけれども、私自身心しておかなければならないなと思っておりますのは、ここに積んであります資料準備を各ご担当で、これまたすごい思いと努力でされていると思うんで、この努力に報いるためにも、ぜひ真剣かつ今後の研究の向上に資するような、そういう評価にしてまいりたいというふうに思いますので、ぜひ委員の皆様方のコメント、サジェスチョン等を含んだ評価をいただきますように、よろしくお願いをいたします。ということで、あいさつにかえさせていただきます。

それでは、もう議事に入ってよろしいんですね。

それでは早速、お手元の議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。まず評価の方法等についての確認でございますけれども、事務局よりお願いいたします。

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〈評価の方法等について(確認〉

(事務局) 事務局を担当しております、評価研究官の○○でございます。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料2でございます。本日の「評価の方法等について」ということでございまして、事前評価、中間評価、事後評価を行っていただくことになっております。なお、議事次第を見ていただきますと、進行の都合上事後評価、中間評価、事前評価の順になってございますが、説明は先ほどの順番でしたいと思います。

 まず事前評価でございますが、第一部会が評価責任分科会となっております18年度、来年度の新規プロジェクト研究と重要な研究課題でございますが、これが6課題。実は6課題と、もう一つ中間評価の課題のところで同時にLRTの地方鉄道乗り入れに関するという研究がございまして、それを入れると7課題の事前評価ということになります。

 2番で、評価に当たりましては第二、第三部会から事前に伺っている意見を含め、本日の分科会の審議に基づいて行われます。

 3番でございますが、評価に当たっては必要性、効率性、有効性の観点を踏まえ、以下の比較の評価の視点でよろしくお願いしたいと存じます。必要性につきましては、国総研で実施することが妥当な研究課題であるとともに、研究の掲げる目標が技術政策課題の解決に向けて適切かつ明確に設定されているか。また、効率性の観点では研究計画や研究体制が目標を達成するために妥当であるか。さらに有効性の観点からは、研究成果の国土技術政策等への反映を通じた社会への貢献の道筋が考慮されているかということでお願いをしたいと存じます。

 それから中間評価は1課題でございますが、研究期間が5年以上の中間年に当たるプロジェクト研究についての評価を行うということでございまして、他部会の委員の意見も参考にするというのは事前評価と同様でございます。

 3番の評価の視点でございますが、必要性、効率性、有効性の観点から、中間評価でございますので、これまでの研究が妥当であったか、また今後研究を継続することが妥当であるか、また進捗が適切であるかというような観点から必要性、効率性、有効性でお願いをしたいと存じます。

 それから裏をめくっていただきますと、事後評価でございます。これは16年度末で終了したプロジェクト研究、3課題についての事後評価をお願いしたいと存じます。それで、事後評価につきましては、他部会の委員の意見を含め、本日の審議とそれから資料の後についていると思いますが、事後評価シートという評価シートがございます。これで説明をした後、評価を30分していただきますが、その間にこちらの事後評価シートの記入をいただきまして、評価指標の1から4までの数字とコメントがございますれば、コメントをお書きいただくというふうにお願いしたいと存じます。それで、記入していただいた後、しばらく議事を進行いたしまして、事務局で取りまとめをしてその後取りまとめを行うというふうにしたいと存じます。

 また、この会の評価の観点につきましては、終了ということを踏まえて必要性、効率性、有効性の観点からお願いしたいと存じます。

先ほど、中間評価のところでちょっと言い落としましたが、中間評価につきましても同様に評価シートを記入いただきまして、取りまとめを行っていただくようにしたいと考えておるところでございます。

なお、時間配分でございますが、事前評価につきましては説明10分、評価が15分。それから中間評価につきましては説明が20分で、評価が30分。それから事後評価につきましては説明が20分で、評価が30分でございます。それで、先ほど説明いたしましたように、中間評価、事後評価につきましては評価シートの記入をいただき、すべての中間評価、事後評価の説明が終わった後、評価の取りまとめを各課題ごとに10分間ずつ行っていただくというふうにしたいと存じます。

とりあえず説明はここで区切らせていただきます。

(主査) ありがとうございました。何かご質問等ございますでしょうか。今、説明された方針に従って進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

(事務局) ちょっとまた事務局から一つだけ説明、ちょっと長くなって恐縮でございますが。

 それから資料2−1というものがございます。評価研究委員会分科会の議事録等の公開方法(案)ということで、これは本委員会と他部会、第二部会、第三部会と共通にしたいと考えておるところでございますが、これまでは議事要旨ということで発言者名なしのものを要旨に取りまとめて公開してきたところでございますが、今年からは各分科会共通というふうな取り扱いで速記録を議事録として公開したいと考えてございます。ただし、従来のように発言者につきましては個人名称ではございませんで、「主査」、「委員」、「事務局」等と表記をしたいと存じます。

 なお、取りまとめに当たりましては、発言に含まれる内容、数字、固有名詞等の誤りの修正や、その他文章を整える等必要最小限の修正につきまして、それぞれ委員にご確認をいただいた後に公開をしたいと考えてございます。それで、評価結果、配付資料とともにホームページ上に掲載をしてまいりたいと思っております。

 もう一つ説明事項がございます。資料の一番後ろのところに参考資料というものがございまして、委員会や分科会の規約の後に「分科会委員が評価対象課題に関与している場合の対応について」という一枚紙の参考資料というのが後ろの方についているんでございますが、おわかりでしょうか。今年度に初めて生じたケースでございますが、分科会委員が評価課題に関与しているケースというものが発生いたしました。1番で関与するケースということで○が三つ掲げてございまして、共同研究、また業務委託や請負業務の受託と。三つ目として研究会・勉強会等に委員として参加しておられるケースというふうなケースが生じてまいりましたので、対応の考え方ということでございます。

 1番の共同研究でございますが、共同研究でかかわっておられる委員の場合には、第2段落でございますが、評価対象課題のうち、かかわりがある部分の評価を行わないことにするということでございまして、かかわりのない部分の当該課題の評価は行っていただくというふうに取り扱いをしたいと存じます。

 また、分科会委員が主査である場合には、当該部分の評価を行うか、あらかじめ委員長が他の分科会委員から指名した分科会委員が主査の職務を代理することとしたいと存じます。

 それから裏のページにいきまして、業務委託や請負業務を受託している場合でございますが、共同研究の場合と同様の取り扱いをしたいと存じます。

 それから3番で、研究会・勉強会等に参加しておられる場合でございますが、この場合にはかなり、かかわりのレベルがいろいろあろうかと思いますが、密接にかかわっておられる場合につきましては、共同研究や業務委託の場合と同じような対応ということで、当該課題のかかわりのある部分についての評価は行わず、かかわりのない部分の評価を行っていただくという取り扱いにしたいと存じます。

 説明は以上でございます。

(主査) ありがとうございます。よろしいですか。

 それでは早速、本日のメインでありますけれども、事後評価に進んでまいりたいと思います。まず最初に道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究についてですけれども、この研究課題に関しまして、事務局から説明があるというふうに思うんですけれども、お願いいたします。

(事務局) 先ほど最後に説明しました、委員の関与しておられる場合の取り扱いについてということでございます。本研究課題につきましては、研究マップの課題リストのうちの4番、9番、13番、18番、21番、22番、23番、ちょっとさっと見ていただければ結構なんですが、その七つの課題に関しまして、株式会社長大が業務を受託しておられますので、長大に所属の○○委員につきましては、かかわりのある今申しました課題以外の部分についての評価をお願いしたいと存じます。

 以上でございます。

(主査) ということですので、○○委員にはなかなか難しいかもわかりませんけども、よろしくお願いをいたします。

 それでは説明をお願いをいたします。

 

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〈事後評価@道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究〉

(国総研) それでは道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究として、ご説明をいたします。私、プロジェクトリーダーを務めております道路研究官の○○でございます。よろしくお願いします。

 関係研究部は道路研究部のみでございまして、研究期間は平成13年度から16年度まで4カ年間。それから総研究費は行政部費であるとか道路調査費、あるいは測量費、試験費というようないろいろな費用を込み込みにしまして、12億6,600万円というようなことになっております。なお、本研究は道路を取り巻く社会環境の状況とか変化に対応しつつ、安心して暮らせる生活環境として道路空間の安全性や移動環境、それから道路空間の快適性を向上させていくことを目的に研究を実施してきたというものでございます。

 次に研究の背景について若干簡単にご説明申し上げます。まず安全性に関してでございますが、一つ目として依然厳しい状況にある交通事故ということでございますけれども、死亡に至る大事故というのはこういうように減少傾向にございますものの、事故件数というものは増加の一途をたどっているというような状況にもございます。

 もう一つといたしまして、高齢社会の進展ということがございまして、その進展と相なりまして、65歳以上の高齢者がかかわる死亡事故、交通事故は増加傾向にあると。これは死者数でございますが、増加傾向にあるというようなこと。

 それからここに書いてございませんけれども、高齢者の自動車運転中の事故というのも増加しておりまして、その死亡者を取り上げますと増加が著しくて、例えば平成16年度は元年度の2.8倍ぐらいまで上がっているというような状況もございます。

次に道路空間の快適性の方でございますけれども、研究の背景でございますが、ここに道路に関する世論調査の結果が書いてございますが、ここをごらんいただいてもわかりますように、歩行者空間あるいは生活道路に関する要望の割合が多くなっている、こういう状況も見てとれると思います。トータルでいいますと人口の少子高齢化を受け道路利用者が変化しているということとか、ノーマライゼーションの考え方の浸透でありますとか、ニーズの変化・多様化というものがございまして、車中心から人中心への道路政策の転換が必要になっているというような状況にございます。

次に研究マップがございます。これはお手元の資料にもございますので、説明は時間の関係でちょっと省略をさせていただきまして、これからの説明につきましては、ご理解をなるべく得られるように事前に提出しております研究概要書の構成と若干変えまして、最初に安全性に関してを説明して、次に快適性に関して説明するというふうにして、まとめてご説明をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

まず道路空間の安全性に関する研究の成果目標でございますけれども、ここに書いてございますとおり、事故危険箇所対策につきましては、交通安全対策効果を定量的に把握することであるとか、それから道路構造と事故との関係をこれも定量的に把握をすること。それから三つ目は、交通事故データだけでは安全対策に向けた分析に関して十分に言えないということもございまして、ヒヤリ地図の作成・活用方法を検討して提案をすることと。それから交差点照明、あるいは歩行者照明に関して照明の必要な明るさレベルを明らかにすることと。ここでは、交通安全性の改良と書いてございますが、そのような内容でございます。

それから交通安全対策展開の効率化でございますけれども、交通安全対策をシステム化するというような観点から、事故危険箇所対策を体系的に検討する仕組みを構築すると。それから人間特性、高齢者特性の把握と対応につきましては、高齢者の運転特性あるいはヒューマンエラーを抑制する観点からの道路整備が必要であるというようなことから、高齢者特性等を踏まえた道路整備のあり方を抽出、あるいは道路の安全性を評価する手法を確立するというような成果目標を立てて研究を実施してまいりました。 

それからその研究成果の活用方針でございますが、基本的には技術基準を作成したり、あるいは通達に反映したり、技術指針をつくったり、あるいは技術資料を作成するなどに研究成果を反映するというようなことが基本でございますけれども、そのようなことによりまして、効果的な交通事故安全対策を適用することとか、事故が発生しにくい道路構造を採用すること。あるいは交通安全施設に対する技術基準を改定すること。それから、現場におけるより体系的で的確な交通安全対策を実施、展開すること。それから人間特性の方でございますけれども、高齢者の運動特性を踏まえた安全な道路環境を実現するというようなことがございまして、ひいてはそこの下に書いてございます交通事故の削減であるとか、安全な道路交通環境の実現ということに結びつくというようなことでございます。

研究実施体制もここの図に書いてあるとおりでありますので、ちょっと説明を省略させていただきます。

次に、ここからは道路空間の安全性に関する研究内容の中身を若干ご説明するということになるんですが、ここでは交通安全対策の効果分析の話と、交通安全対策展開の効率化の2点について、時間の関係上簡単にご説明をさせていただきたいと思います。

まず交通安全対策の効果分析の研究内容でございますけれども、これに関しましては交通安全対策の工種別の定量的な事故削減効果を明らかにするために実施をしたものでございまして、データについてはここに書いたデータを使いまして、交通安全対策工種別に、あるいは事故類型別に、対策が実施された場合とされなかった場合の、事故の変化率、事故件数の変化率を分析するというようなことをしたわけでございます。ここに示しますのは、その分析結果の1例でございます。この1例というのは歩道設置した場合の事故の削減効果というようなことでございまして、実際にデータを使って24事例を分析した結果でございますけれども、ここに青いグラフになっている事故の削減の効果があったものと、逆に事故がふえたものというようなものがございますが、歩道設置によってこういうような結果が得られております。実際に歩道設置した現場を調べて、事故件数の変化を調べたらこうだったということでございます。

ここから言えますことは、この下に書いてありますが、事故発生類型に応じた対策を適切に選択する必要があるし、あるいはこの複数事故類型を対象とするためには交通事故対策の複数を組み合わせるような検討も必要だというようなこともございますし、あるいはここをごらんいただいてわかりますように、対策と対策効果に因果関係があるものとないものというのもございますので、その辺もきちっと分析をして、適用していかないといけないというようなことでございます。

次に交通安全対策展開の効率化ということでございますが、これに関しての研究の内容についてでございますが、まず事故多発地点緊急対策事業を実施しておるわけでございますが、その事業を実施する際の問題点、課題というのが抽出をされておりまして、それが三つございます。

一つ目としては、対策検討手法が体系的になっていないというようなこと、体系的に整理されていないということ。二つ目は、過去の知見が次の対策にうまく活用されていないというようなこと。三つ目は、発生要因がなかなか複雑で従来の発想ではうまく対策がとり切れないというような状況もございまして、それを解決するために何かうまい方法がないかということで、ここでは誰でも精度の高い分析が可能とする仕組みであるとか、様々な知見、ノウハウを現場にフィードバックする仕組みであるとか、専門的な知識、経験といいますか、最近の動向をうまく取り組むような対策、検討手法を確立するということで、とにかくこのような検討手順の体系化とか、事故抑止対策を検討するための仕組み、システムを構築をするというようなことを今後の目指すべき方向性として取り上げております。

それで、それらを検討した上での具体的なアウトプットというものがこのようなイメージでございまして、四つの対応策ということで、一つ目は交通事故対策評価マニュアルを整備をしようということ。二つ目は、交通事故対策の事例集を作ろうということ。それから三つ目は、専門家の意見を取り入れるということで、都道府県のアドバイザー会議をうまく活用すること。それから四つ目は、事故対策データベースのシステムを構築をして、いろいろなデータを入れて共有化できるようにすること。この四つの手法をとるべきであるというようなことでございます。

この図は、交通事故危険箇所対策における対策立案・評価の流れを図化したものでございますが、先ほど申し上げました四つの方策、マニュアル、事例集、それからアドバイザー会議を使う、事故対策データベースに情報を蓄積をする、それがまた次にフィードバックされるというようなことでございまして、こういう仕組みで対策立案・評価をしていこうというようなことを提案しているわけでございます。

次に、ここからは道路空間の快適性に関してでございます。まず研究目標でございます。人中心の道づくりという観点で言いますと、歩行者空間のバリアフリー化を実現するための道路構造を確立しようということ。それからもう一つとして、生活道路における快適性改善手法やその効果を把握することとか、その実施に向けた合意形成手法把握をうまくしていこうということ。それから既存の道路空間の有効利用、あるいは望ましい景観づくりということに関しましては、道路空間再構築のための分類や考え方を整理しようということ。それから道路景観形成・保全に向けた技術的方法や事例を把握して整理すること。また、その景観形成をする際の合意形成方法を把握、まとめようという、こういう四つの成果目標を持っております。

その成果の活用方針でございますけれども、これも先ほど安全性のところで言いましたように、技術基準や技術資料等々に研究成果を反映するというようなことでございまして、一つ目として道路幾何構造基準の改定をするというようなこと。それから二つ目として、生活道路における快適性改善の手法であるとか、合意形成方法等につきまして、Q&Aとかパンフレットを作成して提供あるいは配布をすること。それから道路空間再構築資料を作成して、またこれも提供するというようなこと。それから道路景観形成資料集でありますとか、合意形成のガイドラインを作成して提供するというような活用方針でございますが、それたがひいてはここに書いてあります人中心の道づくりであるとか、道路利用者のニーズを受けた道づくりに生かされていくということでございます。

快適性に関する研究体制でございますが、これもちょっと図だけ見ていただいて、説明は省略させていただきます。

それでは道路空間の快適性向上に関する研究内容の一部をご紹介するというようなことでございまして、ここでは歩行者空間のバリアフリー化と、生活道路の快適性向上の二つについて、内容をご説明をいたします。まず歩行者空間のバリアフリー化でございますが、ここではその中でも歩道に車を乗り入れる、車両乗り入れ部を設ける際の幾何構造に関する研究の内容を説明致します。歩道には沿道民地へスムーズに車両を乗り入れることができるように、段差をなくすようにつくられております。この勾配が問題になるわけでございますが、ここの勾配の部分を少なくして、なるべくこの平坦部分を大きくとれるようにしたい、広く確保したい。そのためのこの道路構造をうまく提案をしようというようなことでございます。

具体的には模型等を製作して実験を実施いたしまして、ここでは二つに○がつけてございますが、ここの縁石の種類によってちょっと異なりますが、二つの方法を提案しているというようなことでございます。こういう方法をとることによりまして、従来の基準にあります場合よりも広く平坦部分が確保できる車両乗り入れ部の構造が提案できたというようなことでございます。

次に、生活道路の快適性向上に関してでございますが、これは全国で展開されておりますくらしのみちゾーンにおける速度抑制施設、ハンプ等でございますが、それの対策効果について検討するということと、もう一つはいろいろな対策を講ずる場合に住民の方々の合意形成方法を把握して、うまくいけばそれを提案したいというようなことでございます。これはハンプを設置した場合の速度抑制の状況グラフでございます。これは1例でございますが、このようにハンプを設置することによって抑制効果があるというようなこともございますので、このようなデータをきちっと整理をいたしました。それで、それをQ&Aやパンフレットに用いて、いろいろな地区で水平展開される場合の有用な参考資料として使用しようということでございます。

もう一つは合意形成方法についてでございますが、例えばアンケート調査であるとかワークショップの開催、あるいはニュースの発行、通行体験、社会実験の実施あるいは交通シミュレーション、あるいはほかにも専門家のご参加というのもございますが、そのような方策をとるというのは非常に有用だということがわかりましたので、そういう有用な方策もやはり同じようにQ&A、パンフレットを通じて他の地区にうまく反映していこうというようなことで取りまとめたわけでございます。

もう一つ快適性に関して簡単に説明します。自律移動支援の話でございます。これに関しましては、ユニバーサル社会実現のための技術でございまして、ここでは自律移動支援システムの要素技術を開発すること、実施するための技術仕様を作成しようというようなことで、研究の成果目標を立てております。その成果の利用でございますが、当然のことながら自律移動支援システムの実用化に用いるというようなことでございます。

研究実施体制は省略をいたしますが、これに関しましては他省庁との連携をうまくとって実施をしているというようなところがございます。

研究の内容でございますが、一つとしてはこのICタグであるとかマーカとか、無線LANにつきまして、機能や精度、耐久性、耐候性等を確認するというようなこと。それから二つ目としては、先ほど仕様の作成と申しましたが、技術仕様の作成をするということで、これはこのプロジェクト研究以降の内容も含んでおる全体の仕様の図でございますが、当研究につきましても、二重線で書いてあるようなものを作成をしておるというような状況でございます。

それでは研究成果のまとめをしたいと思いますが、一つは交通事故危険対策箇所に関しましては、交通安全対策工種別の定量的な事故削減効果を明らかにしたということ。二つ目として、道路線形、沿道状況と事故の関係を定量的に明らかにしたということ。三つ目としては、ヒヤリ地図、事象を活用して、要対策箇所の特定あるいは対策立案、実施に向けた情報を容易に知り得るような方策を提案したということ。それから道路照明に関してですが、交差点照明と歩行者照明の必要照度について取りまとめたということ。また、景観に配慮したような防護柵について提案をしたということ。

交通安全対策展開の効率化でございますけれども、事故危険箇所対策を体系的に検討するような仕組みを構築したということ。それから、事故対策の立案から評価までの手順を体系的に整理した交通事故対策・評価マニュアルを作成したということ。それから事故分析、対策の事例を収集して道路特性、あるいは事故類型ごとに分析結果をまとめた交通事故対策事例集を取りまとめて作成したということ。それから交通事故データベースシステムを構築したということ。

人間特性の関係につきましては、高齢者の運転特性あるいはヒューマンエラーに関する指標について整理、分析を行いまして、幾つかの特徴的な傾向を把握したというようなことがございます。

快適性向上に関してでございますが、これはバリアフリー化を実現するための道路幾何構造に関してそれを把握したということ。それから生活道路につきましては、個別の対策手法の効果や合意形成のためのキーポイントを得たというようなこと。それから道路空間の再構築に関しましては、その分類を整理するとともに、道路空間再構築の考え方を取りまとめたというようなこと。それから景観に関しましては、道路景観形成に向けた資料集を作成し、道路景観形成のための合意形成ガイドラインを作成したというようなこと。

自律移動支援につきましては、要素技術を開発したということと、技術仕様を取りまとめたというようなことがございます。

成果が、実際に既に活用されている状況でございますけれども、一つとしては道路構造令の解説と運用の改定に際しまして、道路線形と事故の関係に関する研究成果を反映したということ。防護柵に関しましては、防護柵の設置基準でありますとか、景観に配慮した防護柵の整備ガイドラインに調査研究の成果を反映したというものでございます。

それから交通事故対策・評価マニュアルにつきましては、16年9月に国土交通省と警察庁から事務連絡が発出されまして、そのマニュアル等が各道路管理者に配布をされたこと。車両乗り入れ部の道路構造基準に関しましては、ここにありますように「歩道の一般的構造に関する基準」、これは国土交通省の局長通達でございますが、その中に反映されているということがございます。

次に、研究成果の活用の予定でございますが、交通事故データベースにつきましては、今年度に道路管理者に配布する予定にしています。それから、くらしのみちゾーンにおける対策手法等につきましては、まとめたものをホームページ等を通じて関係者に情報提供することと。これも今年度をめどにやっております。道路景観形成に向けた合意形成方法につきましても、ガイドラインを取りまとめて配布する予定であり、自律移動支援につきましては今、実証実験が別途のプロジェクトで進行中でございますが、その中でその内容が使われるというようなことでございます。

説明は、以上でございます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。この研究につきましては、私が事前に検討を仰せつかっております。詳細とは言えないんですけれども、一応資料をいただいたものを読んでまいりましたので、今のご説明も含めて論点となるべく点とか、こういうふうにした方がいいんじゃないのという個人的な意見なんかも述べさせていただきますので、すみません、口火を切らせていただきます。

 この研究、非常に社会的なニーズが高い、身近な道路の安全性とか快適性に正面から、しかも全面的に取り組もうという非常に壮大な研究でございまして、まず安全性からいたしますと、事故データを用いて3,200カ所の施策の効果をきちんと計測されたと。それで、いい効果があるものというのをきちんと明確にされたということが非常に大きいのかなというふうに思います。普通はこういうのができると、それをマニュアルにしてそれでおしまいということになってしまうんですけど、もう一つこう非常にいいなと思いました点は、そういうマニュアルをつくると現場では思考停止ということが往々にして起こりますので、その施策の展開の効率化とか向上ということを考えて、マニュアルだけじゃなくて事例集とかデータベースとかアドバイザーという、事故と安全性という非常に個別具体的な環境が大きな要因である、そういうものにきちんと肉薄できるようなそういうシステムも含めて提案されていると。そこにいろいろな研究成果が盛り込まれているというのが、非常にいい研究だなというふうに思いまして、ニーズにこたえているんじゃないのかなと思いました。

 一方の快適性につきましても、これもくらしのみちゾーンですか、全国でもう1,000カ所近く指定されているんではないかなというふうにも思いますけれども、そこのデータを用いていろいろな検討をされておりますし、ITを使った自律移動支援のための研究、あるいは快適に暮らせるための道路空間であるためのいろいろな技術基準というふうに、こっちは地道な方から攻めておられるなというふうに思いました。

 それぞれいい成果を上げておられると思うんです。ですから、いい研究をされているなというふうに思いました。

 褒めてばっかりではあれですので、これからちょっと批判めいたことを申し上げたいと思いますけれども、まず第一にこれは冒頭申し上げましたように、非常に社会的なニーズ及び関心が高いところでありまして、そのニーズとか関心に従前に十分にこたえているかというと、非常に大きなテーマでありますだけに、なかなかその辺まだまだ不足している部分があるのかなというふうに思いました。特に快適性につきましては、例えば安全性については施策展開の効率化というところまで踏み込んでられるんですけども、快適性についてはくらしのみちゾーンでは公安委員会との関係もあって、なかなか苦戦しているところもあるというふうに聞いておりますので、その辺についてもうちょっと踏み込まれてもよかったのかなとか、道路研究部単独でやられているんですけども、自律移動支援ということなんかでいきますと、やっぱり高度情報化研究センターとの連携というのが必要だったんでしょうと。

出会い頭の事故なんていうのはですね、多分スピードの抑制をどうするかというところで大きく効くと思うんですけども、例えばこれも思いつきみたいで申しわけないんですけども、カーナビにそういうゾーンに入ったら、連動させても30キロ以上出ないようなそういうカーナビを販売をして、それをつけている人には保険料を安くするとか、そんなことだって考えられると思うんですけど、そういう連携がもっとあればいいのかなとかですね。

快適性といったときにやっぱり、あるいは景観とかといった場合に特に民地との関係が非常に大事になってくると思うんですけれども、やっぱりまだ何か道路空間内、道路時期内だけに、地道にやれるところからということだと思うんですけれども、そういう問題があるのかなとかですね。あるいは安全にしろ快適にしろ、やっぱり地域の人たちとの関係が大事で、それは今合意形成という形ではこの中に収められているんですけれども、もうちょっとプロアクティブに積極的にまちづくりとか、道路の維持とかというところと関係を求めていくというふうな、さらに広げていくという、空間的にも人的ネットワーク的にも広げていくようなことが、社会的なニーズが非常に高いので、今後多分こういった研究というのは引き続き必要性が非常に高いと思います。ですから、そういう点もご配慮いただければなというふうに思いました。

長くなっても何ですので、まず意見として述べさせていただきました。

それで、これからは委員の皆様方のご自由なディスカッション、評価というところに進んでまいりたいと思いますので、どなたからでも結構でございますので、お願いをいたします。

(委員) 非常に興味深い研究だと私も思いましたけれども、安全性を高めるためにも快適性を高めるためにも費用がかかると。そういう費用のことも考えて、施策展開の効率化みたいなことをやっぱりやっていただきたいなと。この研究は、多分ずっと継続して重要なテーマとして引き続いてやられるだろうということを想定して申し上げたいんですけれども、いろいろなプロジェクトが含まれている中で、既存の道路をやりかえて安全性を高める、快適性を高める場合に余り費用のことは考慮しなくてもいいんでしょうけれども、やはり道路構造を変えるとか、新しいITシステムを入れるとか、結構投資し、新しい施設をつくってみたいなことがやっぱり中に含まれてますから、そういったときには費用対効果みたいな考え方というのはどうしても欠かせないかなというふうに思うんですね。

 特に交通安全の方はB/Cのマニュアルというのが既にあって、その中で交通安全、交通事故減少便益というのは便益の1項目であるわけですね。そうすると、費用対効果の中で速度向上効果と事故減少便益が総合的に評価されて、どちらの投資がより効率的かということの意味での総合化が図れるということですね。

 そういうことを言うと、例えば快適性は今B/Cに入ってませんけれども、将来的には快適性も入れるかもしれない。そうすると、それらのトレードオフ関係、快適性を高めるために安全性を犠牲にするとか、安全性を高めるために速度を犠牲にするとかいうことまでやっぱり投資の問題としては出てくると思うんですね。今、どちらかというと既存の道路をやりかえる方が重点だったのかもしれませんけれども、やはり投資の問題も出てくるみたいに思うので、その辺を含めて将来展開いただければと思います。

(主査) ほかにいかがですか。あるいは○○さん、何かベストを尽くすということなんで。

(国総研) 参考にさせていただきます。

(委員) このプロジェクトのなかで、過去にこういった問題があったときにこういう対策が効果があるということを整理する考えのもとで、マニュアルなり事例集が出てきていると思うんですが、それらをデータベース化されたということは、どこかにシステムとして電子的に情報がストックされていて、いろいろな地区からアクセスしてそれを参考にすると。紙ベースの事例集だけでなく電子的なシステム化がこの中では実際に行われているんでしょうか。

(国総研) 先生が言われましたのが、紙ベースの交通事故対策事例集のことではないかと思いますが、これは対策を定型化したようなものでございます。データベースにつきましては、データベースシステムを構築をして、その中にいろいろな事故データを順次蓄積をしていくというようなものでございまして、詳しくはここではなくて、研究概要書の11ページにございます。このようなデータベースシステムを構築をして、一番最後にありますように、事故データベースシステムのシステムを配布して、かつデータを順次道路管理者に提供するというようなことで、今年度を目途に、交通事故対策データベースシステムを各道路管理者に配布をする、提供をするというような予定にしております。

(委員) それはもう既に運用され始めていると。要はシステムをつくった段階であって、既にもう使われている段階に来られたのか、まだ作っている段階なのか。

(国総研) ですから、つくったものはまだ道路管理者には配布をしていない状態ですが、ものはつくっております。

(委員) そういった中で、非常に管理者が知るべき情報と、そうではなくて今回の場合、住民だとか老齢者の方々を対象として、要は道路管理者以外のいわゆる住民に対するPRみたいな、情報提供みたいなものがこういったものとリンクしていると良いのでは。すべての情報を提供できないんでしょうけれども、そういうところはどうなのかなと。今の話ですと、少なくとも電子化されておられて、過去の事例がわかっていて、それは道路管理者に利用できると。しかしながら、一方でどういう道路が危ないんだという情報だとか、どういう状況で事故が起こりやすいということが、ある程度一般の人にも伝わるような形での成果物もあることが望ましいのかなとちょっと思いました。

(国総研) これは、今のところは道路管理者向けのシステムというようなことでございます。

(委員) 研究体制の件についてお伺いしたいんでございますけれども、研究マップというのを見ておりますと、研究課題を予算計上されているのが35課題あって、その下の目標達成に必要なアプローチというのが11あって、研究成果というのは13に分類されているんですね。だから、一体どういう研究体制で効率的な研究をしていこうかというのがちょっと見えてこないので、ちょっとご説明いただきたいと思います。

(国総研) 今のご質問は、ここの研究課題が全部で35課題乗っかっておって、アプローチが10ずつあって何とかでよく関係がわからないということですか。

(委員) 研究成果が13に分かれています。だから、どういう研究の管理をされて、効率的な研究をされたかというのは、ちょっと理解しにくいと。

(国総研) 何ていいますか、内部的な話に若干なるので恐縮です。研究課題名の左上に予算計上課題名と書いてございますが、研究の成果目標と予算をいただくための課題の設定と若干ずれておりまして、予算科目上はこのように課題1から課題幾つまでというように並んでいるんですが、その中で縦横のようなものがございまして、予算の課題的にはこの内容とこの内容を含んでいるけれども、利用するときはそれぞれを、例えば交通安全対策の立案と何かの改良とか、今の事例ですが、両方にその内容を使ったりしておるというようなことです。

 こういう説明の方がよろしいかも知れません。例えばこのマップの中にアプローチ2と3のところに二つに重なっているようなところがございます。白抜きをしてあって、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(34)と書いてございますが、こういうようなテーマはこの交通事故データ等の収集と分析と交通安全対策の立案の両方にかかわるテーマといいますか、その内容を得るために実施をしているものでございます。ですから、どのように有効な管理をしているかと言われると、ちょっと難しい回答になるんですが、その研究のテーマ設定と予算科目とは必ずしも一致してない、具体的に成果をまとめる際には、ここの下のマップに書いてあるようなアプローチでまとめておるというようなことでございます。

 回答になったかどうか、恐縮ですが。

(委員) 初めての出席で的外れなのかもしれないし、この手の部門、門外漢ということで質問なんですけど。最初に説明されるときに、この手の研究って、今までは多分データベースとまではいかないにしても、ある程度データを集約されていたような気がするんです。ということでお聞きしたかったのは、今までどんなことがもう既にわかっていて、今回のこのプロジェクトによってどこを明らかにしたいとかという、そのリサーチクエスチョンの部分が今ひとつ僕には見えなかった。最初から、何もわかっていないような状態で説明されたのが、ちょっと僕には。もう少し今までの研究のレビューといいますか、そんなのを、時間の関係もあったのかもしれないんですけど、教えていただけて、今回のプロジェクトでまだここがわかってないと、ここを狙っていくといったような、そういったのをお聞かせ願いたかったなと思いました。

 あとデータべースについては、継続性の問題というのは大丈夫なのかなと。このプロジェクトでデータを収集し、多分5年後になれば、また違う状況が出てくると思います。その時の継続性、モニタリングというか、常にそのデータベースをリニューアルしてかないと、多分使えないようなものになってしまう可能性があります。その辺の、このプロジェクトが終わった段階でも続けていかなくちゃいけない、特にデータベースの更新問題はどうなっているのかなというのをお聞きしたかった。

 最後なんですけど、これは道路だけの問題ではないと思うんですけど、例えば人口が減ってきますよね、予想でいくと。どんどん減っていく過程における安全性と快適性とか、そういった問題というのはどういうふうにこういう中で位置づけられていくのかなと。ちょっと話が、このプロジェクトからは離れてしまうのかもしれないんですけど、多分近い将来もう人口が減っているときに、どういう道路空間なり道路配置が重要なのかなというのは、こういうものの中では考えられないのかなと、感じたのでその辺を教えていただければと思います。

(国総研) 3点ご質問をいただきました。

 1点目は、事前に何がわかっていて、だからこのプロジェクトは何をしたかったのかというのが、説明ではよくわからなかったということですね。先ほど、最初に○○先生から言われましたように、個別の話がまとまりのない形、分散的にあるけれども、それをきちっとした形でわかるようになっていなかった。先ほどの交通事故対策展開の効率化でも申し上げましたように、何となく知識としてはあるけれども、体系化されていない、あるいは、ある人のノウハウにとどまっているというようなことがありまして、それをシステム化する、あるいは、水平展開するというのは非常に重要だという認識でやってきたというのが、このシートの内容になります。ですから、そのわかっていたことも含めて、きちっと知識としてまとめると、それが交通事故対策事例集の形になったり、交通事故データベースシステムという形で取りまとめられるというようなことになったと思います。

 また、ヒヤリ・ハット関係の研究というのは、もちろん国総研だけでなく、ほかの大学等でも研究されていますけれども、高齢者特性というんですか、人間特性を踏まえた道路構造のようなところも新しい分野ではないかと思います。

 それから二つ目のデータベースシステムでございますが、おっしゃるとおりそのデータベースシステムの中身が陳腐化してしまうということもございますが、これは今後初期のデータから逐次データを充実し、更新していくというふうに施策展開する予定になっております。

 それから三つ目の人口減、少子高齢化社会の人口減との関係でございますが、これは例えばでございますが、道路空間の再構築で言いますと、当然その道路の使われ方が変化してくるというようなことがございますので、それに伴って、例えば車中心の道路体系からもう少し歩行者の通行部分を確保するとか、あるいは自転車通行帯を確保するとかいうように、これもニーズ対応になるかもしれませんが、その交通需要の方が異なってくると思われますので、それに応じて道路空間等を再構築する。そういうことをすることによって、交通事故の安全対策にも寄与するだろうと。これは私見でございますが、多分そういうふうになるのではないかと思います。

 ここには書いてございませんが、研究概要書の中に書いてあると思いますが、道路空間の再構築の絡みで、人口減というわけではないんですが、こういうような方向性があるんじゃないかとのことは若干書いてございました。14ページの表5−4には、人口の絡みではないですが、道路空間再構築でこういうような方向性があると。2とか3とかのところは、そういうことを踏まえてなされるのではないかと、これは具体的な施策のことを言ってませんが、こういうことではないかと思ってます。

(委員) 安全性の向上ということですと、リスクを減らすということだと思うんですよね。それで、ヒヤリ地図ですか、そういったものを取り扱ったりしておられるわけですけれども、問題の抽出あるいは分析にとどまっているような感じがするんですけれども、どういうふうにあのリスクを減らすのかというようなことで、何かやられた成果があるのかどうか、あるいはまだそこまで行っていないのかですね。それで、リスクを減らすのに特にハード的な対策、施設の対策が中心になっているような気もするんですけれども、ソフト的な対策として何か成果が得られたのか、あるいはこれからの課題なのかですね、そういったところをお聞きしたいと思いますが。

(国総研) 端的に申し上げますと、これからの課題のところが多かろうと思います。これはやはり説明の途中で申し上げましたけれども、そのための手法をうまく提案できればということで、事故危険箇所等の抽出のための手法を提案できればというようなことで、ヒヤリ地図の作成方法に関する提案とか、そのヒヤリ事象自体を抽出するための手法までは、論文の形では報告をいたしましたけれども、今のところそこまでということで、今後それをほかのところに反映するというんですか、うまく使う方法についてやるべきことはまだたくさんあろうかと思います。

(委員) きょう○○委員は欠席でございます。○○委員、あるいは他の分科会の委員からのご意見等あろうかと思いますけれども、ご紹介いただけますでしょうか。 

(国総研) まず欠席をされております○○先生でございますが、事前にいただいています事前意見シートでは必要性、効率性、有効性すべてあると判断しますということのみでございます。

 それから他部会の先生に関しましては、第二部会で○○先生の事前意見シートでございますが、まず必要性についてはおおむね良好であったものと思慮される。それから効率性については、研究計画、実施方法は妥当である。有効性については若干あるんですが、中央分離帯の新設によって右折やUターンの際の追突事故などが新たに発生することもある。したがって、道路空間の安全性向上のために実施された施策が、予期できなかった安全性の欠如をもたらすおそれがあることに十分配慮して、研究成果の社会的管理を実施していくべきであるというようなことでございました。

(主査) ということで、他の分科会からもいただきましたけれども、それに関連してさらにご意見をいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

(委員) 今回の研究の大きな目標は、安全性と快適性という大きな二つの項目があるようですが、先ほど○○委員からもご指摘があったように、どういうレベルまでいったら安全であるとか、目標がただ言葉だけになっていては不十分では。定量的に評価することは、非常に難しい問題ではあると思うんですけれども、安全性をどこを目指してどこまでやろうとしているのかと。その対策はどこまで効果を果たしたのかというものもあるでしょう。快適性やバリアフリーなどの言葉はありますけれども、何か評価軸なり評価指標の数値化などで、どこまで快適性が上がったんだというようなランキングでもいいんでしょうけれども、そういったことは考えられてはおられないのでしょうか、この道路環境の分野では。

(国総研) 安全性のレベルを設定して、この研究によって、今までこうだったけれども、これぐらい上がったというようなことでございますか。あるいはこれぐらいのレベルを目標とするけども、今ここだけども、これを研究することによってこれぐらい上がるとというようなことでしょうか。

(委員) 具体的には、対策でこういった事例のときにはここまで安全性が向上しているというような評価をすることによって、非常にわかりやすく対策事例も生きてくるでしょうし、快適性も同じようにこういったことをすることによって、その道路空間がこれだけレベルアップしたというようなものがないと、言葉でただよくなったとか、快適になったと言われてもなかなか評価がしにくいと。先ほど○○委員が言われたように、どれだけのお金をかけてどこまでよくなったという、数値化は困難なのでしょうけれども、何がしかのABCDランクみたいな概念で対策効果を考えるというのは、この道路の分野では余りされないんでしょうか。

(国総研) 行政側のアウトカムとして、施策を打ち出する際に、例えば交通事故件数とか、そういうものが用いられることはあろうかと思います。ただ、何か研究をしますと、その研究成果が具体的な施策に反映をされて、その施策が実行されることによって、その結果として交通事故件数が減るというようなことでございますので、どちらかというと先生おっしゃっているのは、ここの一番最後のところかなという気もいたします。

 ただ、施策の評価としてはそういうアウトカムを持って評価しているというのはございますので、我々としては、本省の行政担当のところとうまく連動、タイアップをして、そういう施策にうまく使われるようなものを研究成果として出す。それを使って、施策が実施されて安全性をレベルアップさせるというようなことでございますので、ここでどれぐらい安全レベルがどうこう、あるいは快適性レベルがどうこうというと、なかなか言いづらい部分かと思われます。ただ、今後いろいろと検討するとか、研究する部分はあろうかと思います。

(委員) 私の質問の仕方がよくなかったんだろうと思うんですけども、このプロジェクトの中でそういったことをやるべきだという意味で言ったんではなくて、単純に交通量がどれぐらいだとか、あるいは事故件数がどうだとかということでは表現できないようなことを対象に、安全性であるとかあるいは快適性であるということを研究対象にされておられるのではと思いました。そのような場合には、例えば水環境の分野であれば、水質環境基準という望ましい姿を示す判断基準みたいなものがございますよね。この基準の達成の有無のようなわかりやすい評価方法があるように、今回の安全性や快適性などなかなか評価できにくいものを対象に研究をされる場合には、それはどこを目指してて、こんな指標や判断基準を利用して評価することによってこの技術対策によりここまでよくなりましたよというような評価軸を持っておられないと、ただ快適性あるいは安全性と言われてしまうと、次の評価がしにくくなりますので。

 逆に言うと、そういった評価をランキングするような研究をするという必要性は、この分野では余り議論されてないんですかという、そういった質問だったわけです。

(国総研) 安全性に関しましては、評価指標として例えば死傷者率、あるいは死者率、あるいは死傷事故件数率といったような指標があります。それは自動車の走行台q、10億台qに対して何人の死者があるか、あるいは何人の死傷者があるかといった指標です。

 それで、こういった指標があって、そしたらそれの目標レベルをどこに置くかという話でありますけれども、例えば死者率というのは大分低下してきているということは対策が進んできたということかと思っておるんですけれども、ただそのレベルをというと、具体的には定めておりませんけれども、例えば欧米先進諸国と比べて我々はどのレベルにあるのかというようなところを見ますと、やはりまだ高い部分がありますので、そういうところは欧米先進諸国レベルを目標とするんなら、そういったところにまで下げていくというようなことが考えられるかと思います。

(主査) ちょっと補足というか意見を述べさせていただきますと、欧米先進諸国と日本の交通事故って大きく違ってまして、歩行中とか二輪自転車乗車中のお年寄りの事故が多いんですね。欧米は運転をしているときの事故が多い。あるいは人口比率と老人で亡くなる方の比率ってそんな日本ほど格差があるわけじゃない。ちょっとやっぱり特殊だと思うんですね。そういう意味でいくと、この安全性の話とか、あるいは快適性のくらしのみちゾーンの話なんていうのは極めて重要で、どういうところを目指していくんだというところの姿とか、あるいはそれをどういう形で記述するんだというアウトカム指標の設定とか、そういうことも非常に大事だと思うんですね。それをもってやっぱりキャンペーンをしていくとか、ウォーニングを出していくということも、これもまた研究の立派な使命だと思いまして、○○先生のご意見に啓発されてこんなことを申し上げました。

 事務局から渡されている進行時間表から若干おくれております。こういうことを言った後で、何か意見ありませんかとか言っても、多分どなたも何も言われないと思うんですけれども、評価シートへの記入をお願いしたいということとですね、もし言い忘れたことがありましたら、その中で書いていただけましたらありがたいと思います。よろしゅうございますか。

 じゃあ、この第1番目の道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究についての議論をこれで終了させていただきます。どうもご苦労さまでございました。

 じゃあ、次引き続いてでございますけれども、2番目の事後評価でございます。地球温暖化に対応するための技術に関する研究と。これまた非常に大きな、巨大なテーマでございますけど、よろしくお願いいたします。

 

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〈事後評価A地球温暖化に対応するための技術に関する研究〉

(国総研) 環境研究部長の○○でございます。よろしくお願いいたします。座って説明させていただきます。

 地球温暖化に対応するための技術に関する研究ということで、平成13年から16年度まで環境研究部、河川研究部、建築研究部、住宅研究部、高度情報化研究センター、危機管理技術研究センターと、非常に多くの部、センターにまたがってやっております。

 もうよくご存じのとおり、地球温暖化というのは非常に幅広い分野にまたがりまして、それの総合的な取り組みが必要なわけですけれども、なかなかそういって一つの研究部だけで完結することでもないということもあります。それから官・民いろいろな分野にまたがるということもありまして、内閣府の総合科学技術会議の中でも地球温暖化研究イニシアチブというものがございます。こういうところとも分担、連携をしながら進めているということでございます。

 第2期の科学技術基本計画の中に、重点4分野の一つに環境がございます。その中に、地球温暖化研究イニシアチブというのがございまして、六つのプログラムが決められております。この六つの中で各研究機関、大学等分担して研究をしているわけですが、うちの研究所に関しましては、このモニタリングプログラム、それから影響リスク評価プログラム、それと温室効果ガス排出抑制技術開発プログラム、それから抑制政策研究プログラムと、この四つに含まれる研究を行っております。

 少し全体を俯瞰してみますと、ここにモニタリングというのがございます。それから気候変化研究、これは地球シミュレーター等でやっているやつですけれども、すみません、将来予測研究が先ですか。将来予測・気候変化と。これらを受けまして、影響リスクの研究、それから対策技術の研究、政策研究とこう大きく六つの分野があるかと思います。この中で、我々がやっている研究をそれぞれ当てはめていきますと、まずこのモニタリングに関しましては、リモートセンシングによりまして、緑地のCO2の固定量の算出手法。それから現場調査も含めました、土砂の移動現象把握、土砂移動の把握手法がモニタリングというところに該当します。

さらに影響のリスク評価につきましては、土砂災害、洪水・渇水リスクというようなことをやっております。さらに対策技術ということで、これは民間部門が中心になりますけれども、エネルギー自立型の建築・都市システム。それから建築・設備の環境負荷低減技術。それから木材活用型の低負荷建築構造技術。さらに木質廃棄物の抑制技術というような抑制の技術を研究をしております。さらに次の政策ということで、交通部門における二酸化炭素の排出削減。交通起源のCO2排出予測モデルの構築。それから、これは住民も含めました温暖化防止行動の実行のための方策というようなことを研究を実施しております。

削減の方に住宅関係、それから交通部門のことがございますけれども、住宅関係につきましては、この家庭部門の13%の中の一部を担っていると。それから運輸部門は21%あるわけですけど、その中で自動車交通が約9割近くを占めておりまして、この中の削減方策を検討するということになります。

先ほどこの4分野を申しましたので、これはもう省略させていただきますが、まず地球環境の衛星モニタリング技術に関する研究ということで、リモートセンシングによりまして、都市緑地のCO2の固定化の算定をしようと。これは京都議定書に基づくものになっておりまして、まだ2007年までに決めるということになっております。予備段階といたしまして、高分解人工衛星と航空機レーザスキャナを組み合わせた方法。それから、ハイパースペクトルセンサによる方法というようなことをモデル地区を選定いたしまして、検討をしております。その結果、様々なCO2固定量算定手法のメリット、デメリットを整理いたしまして、さらには自治体が行っております緑の実態調査にも、それを適用していこうというようなことの有用性を確認をしたところであります。

今後の話も一緒にさせていただきますが、このCO2の都市緑地の算定方法につきましては、今後また別途の研究におきまして具体的な方法を特定していくということにしておるところであります。

次にグランドトゥルースデータを活用した土砂移動現象把握手法ということで、崩壊地ですとか地滑り地がございます。これが地球温暖化でいろいろな気象条件が変わってくると、当然いろいろな事象に応じて変わってくると。それの前段階として、今まで余り衛星を使って個別のデータを把握をしておりませんでしたので、それを現在の段階できちっと把握をしていこうというようなことを検討したところであります。今後、土砂移動現象の経年変化をきちっと把握をしていって、温暖化の影響等を調べていくベースにしていきたいというふうに考えているところであります。

次に、災害リスクの軽減対策に関する研究というところ、これは実際に起こったときに、温暖化になったときにどうなるかと。それに対してどう対処していくかということの基礎的というか、まだ完成ではありませんが、途中までの研究ということになります。まず土砂災害リスクにつきましては、地球温暖化になりますとピークの雨量強度がふえたり、連続雨量が増加するということが言われております。地球シミュレータ等でもそういうのが出ております。それに基づきまして、土砂災害のリスクがどれだけふえるのかというようなことを検討していこうという研究を行いました。モデルとしまして、この水俣で2003年に大災害が起こりましたけれども、その地区を事例としまして、その当時は実最大雨量が90o/h、それから222o/dだったんですけども、これが温暖化になりますと110o、350oに、それぞれ増加するというような予測が、推計がされております。

そういうものを使いまして、実際に滑ったところはもうちょっと対象になりませんので、その近辺というようなことで対象地区を選定いたしまして、そうしますと、こういう温暖化になりますと、現時点の予測では0.25%の崩壊地だったのが、10倍の2.5%の地区が崩壊すると。それから崩壊のタイミングが1時間早くなるということが予測をされております。こういうような検討に基づきまして、今後避難体制の構築ということをやっていかなければならないというふうに考えているところであります。

次に、土砂災害リスクの防災体制の脆弱性評価ということで、これは実際の各自治体の防災体制を広島と水俣、広島は1998年に大災害が起こりまして、相当きちっとした災害、防災体制のマニュアルをつくりました。一方、水俣は2003年の時点では非常にまだ貧弱なものしかありませんでした。それをきちっと評価をいたしまして、その防災体制の診断表を提案をしております。こういうものにつきまして各自治体に提案をいたしまして、砂防計画とか避難計画に資していこうというふうに考えているところであります。

次は洪水リスクにつきましてですが、洪水リスクは気象庁が水平分解能力20qの温暖化後の予測をしております。これが近年出たわけですけれども、これに基づきまして洪水リスクがどうなるのかというのを検討しました。これは100年確率の最大日降水量の変化率と、100年に一遍降るであろう日最大の降水量が何倍になるかというのを見た図であります。これを見ますと、この赤いところというのは2倍程度になると。北海道、東北、北陸というようなことで、たまたま去年大災害が起こりました新潟が赤になっています。つまりこの辺よりも北陸、北日本の方が雨量がふえていくというような傾向が出ているのかなというふうに思い、若干寒気がしたところもございますが、そういうような結果が出ております。今後これを使いまして、治水計画等にまた反映をしていきたいというふうに考えているところであります。

次に渇水につきましてですが、渇水を見ますと、この赤が100年後に季節別降水量がふえるところ、青が減るところでございますが、見ていただくと春と冬が減るということになります。夏は洪水シーズンはふえて、渇水、特に太平洋側の渇水がひどい、春、冬は降水量が減ると。さらに非常に大きな問題は、この右側にありますようにこれは河川の流出に今回換算をしました。換算をしますと、1、2、3月が流出量がふえますと。5月、6月が流出量が減るということになります。これは要は今まで上流で雪でたまっていた分が雪にならず雨で流れてしまって、5月、6月のちょうど水田に水がたくさん要るときにもう流れてしまった後で流れてこないという、非常にまずい状況が予測されております。これもこの結果、これが利根川のダムの運用の様子ですけれども、現在では20年間で1回ぐらいしか空っぽにならないのが、もうしょっちゅう空っぽになるというようなことが予測をされております。こういうことも考慮して、これからの河川管理をやっていきたいというふうに考えているところであります。

次に環境負荷の低減ということで、主に建築関係の分野の研究を説明させていただきます。まず資源・エネルギーの自律循環型建築・都市システムの技術開発ということで、今いろいろな、例えばホーム・オートメーションですとか太陽光発電を利用したり、省エネの冷蔵庫を利用したり、ヒートポンプを利用したり雨水・中水を使ったりというようなことがあるわけですけれども、こういうものを総合的にシステム化して、エネルギーの消費量を50%低減できるというようなシステムの提案をしました。実態のモデルハウスと言ったら変ですけども、実験ビルをつくってやっております。この結果、自律循環型住宅への設計ガイドラインという、民間が活用できるようなガイドラインにまとめたところであります。

さらにもっと細かくなりまして、それぞれいろいろ自動運転、自動制御がされるようなシステムが、エアコンですとか窓の開閉ですとかブラインドの開閉ですとか、水のコントロールだとかいろいろそれぞれ独立してコントロールされているわけですけれども、それを一括して、トータルとしてエネルギーを少なくするシステムというのを開発をしたところであります。これも民間に提案して活用していくということで考えております。

次にCO2の削減のためには、森林による固定化、またそれを木材にしてその木材が長期間使われるということがCO2の削減につながるわけですけれども、そのためにこの5階程度の木造建築を複合建設、ハイブリッドの建設を進めていこうという研究をしております。これはこういう耐震ですとか防火設計だとか、そういうのを今回は新たに取り入れまして、木質複合建築計画マニュアルですとか、建築基準法の基準解説書の改訂に取り入れられるということで、活用されるというふうになっております。

次に、今混合廃棄物で木質が入った廃棄物が非常に問題となっておりますが、そういうのを減らしていこうということで、分別・再資源化しやすい木造の建築はどうあるべきかというような、それから再資源化にはどうしたらいいかというようなことをまとめまして、廃棄物発生抑制型木材建築物の設計施工事例集にまとめたり、木造建築物の再資源化技術指針というのをまとめて提案しているところであります。

次に、4番目の交通部門における二酸化炭素排出量削減施策の効果に関する研究ということで、先ほど21%が運輸部門で、その9割近くが道路交通ということがありましたけれども、その道路交通におけるCO2をいかに削減していくかということで、いろいろな提案がございます。交通の円滑化をして渋滞をなくす。それから低公害車を導入する。さらには、他の交通機関へ転換させる。それから、もっと根本的に都心を高度化したり、在宅勤務をしたりという土地利用も含めた検討。さらには環境税というようなことが提案されております。こういうのをどういうふうにしたらどう減っていくかというモデルをつくっていこう。さらには、例えばパークアンドライドですとか、ロードプライシングなんていうのは、住民の運転者の方にも協力いただかなければなりませんので、それを協力をいただくためにはどうしたらいいのかというような方策を検討していこうということであります。

今回、CO2の排出量予測モデルというのを新たにつくりました。これは一番大きな違い、今までとの大きな違いは、交通手段別のトリップを推定して、公共交通機関等へ移動するであろう、それによる現象の交通量をカウントしようというものを取り入れました。さらには、ボトルネックのサブモデル、低公害車導入のサブモデル、環境税のサブモデル、それから都心高度化とか、いろいろなサブモデルでいろいろなことの施策を行った場合に、最終的にどういうふうにガスが減っていくか、CO2が減っていくかというようなモデルを作成をいたしました。

施策としては、この14、繰り返しになりますので省略しますが、こういう14の施策を取り入れました。こういうものでいろいろなケースが検討できるわけですが、例えばこういうふうにしたらどうかというようなことを推計をしてみました。例えば都心の高度利用を1.2倍にする、3次産業を1.2倍にするだとか、低公害車を4%転換するだとかというような、いろいろな設定をします。先ほどのモデルは大都市の東京、それから中枢都市の福岡、さらには中核都市の宇都宮というような、こういう都市の規模別にそれぞれ推計をして、それが全国に敷衍できるようなシステムにしております。それで、例えば鉄道割引ですと東京では非常に効くけれども、ほかのところでは効かないとか。ロードプライシングというのは、福岡みたいな規模の都市には非常に効くけれども、ほかのところはそれほどでもないとか、そういういろいろなおもしろいデータもわかりますし、どの施策がほかの施策に比べてこうだということもわかるようになりました。

さらに、例えば先ほど言いましたように、パークアンドライドだって協力してもらうかというのは、そういう温暖化防止の、住民が行動していくためにはどういうような施策が要るのかというようなことを検討しております。これは例えば環境についての知識が深い人や浅い人、それから行動するときに抵抗の大きい人小さい人、こういうようなふうにいろいろなことが考えられるわけですけれども、そういうのを得るために人文系、社会科学系の学識者ですとか、市民活動のリーダー等からなる研究会により検討しております。例えば環境意識の低い人というのは非常に抵抗があるわけですけれども、一方そういう人は例えばキーパーソンとかにマスコミ、タレントを活用する。それから高い人については、逆に積極的に参加してもらうというようなことを考えていこうというふうなことです。

さらにこういう、初期に抵抗が大きなもの、例えば低公害車の購入なんていうのは初期に大きいけれども、後はそれほどない。一方、パークアンドライドですとか公共機関活用なんていうのは、初期も継続も大きい。そういうときにはどういう施策をとったらいいかというようなことを、検討をまとめておるところであります。

その成果ですけれども、これは先ほど成果等、一緒にご説明をさせていただきましたので、この辺は先ほどの説明で省略させていただきたいと思います。

ちょっと雑駁な説明になりましたが、以上で終わらせていただきます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございます。それでは分科会につきましては、○○先生に事前にお願いしておりますので、まず意見表明をお願いしたいと思います。

(委員) パワーポイントファイルで要点といいますか、取りまとめをしておきましたので、それをごらんいただきたいと思います。

 この地球温暖化の対策、対応ということは国策としても対外的に重要でありますし、国内でも実効を上げていかねばならないということで、大変重要な課題ですので、平成14年の1月のこの委員会のご評価でも重点的に推進すべきという評価をいただいておられる。

 実際にそういう対外的に重要であり、国内でも実効を上げていかなければならないということと、実際にこの段階で影響らしきものが現象としても、特に気象、水文関係でも出てきておりますし、今後とも進めていかなければならない課題だろうと思っています。

 この4年間の研究の評価ですけれども、事前にいただきました資料から取りまとめたものでありますが、まず全体としましては大きな研究プロジェクトでありますので、内容が多岐にわたっておりまして、一部十分進展し切れなかった点もありますけれども、我が国が進めるべき地球温暖化対策の幾つかの側面におきまして、優れた成果を得ているのではないかと考えております。

 次お願いいたします。大きく四つのサブテーマがあったわけですけれども、最初の二つは特に流域ですとか河川ですとか水害ですとか、そういった関連のものにつきましてはこのスライドでまとめております。まず一つ目は、高分解能のリモートセンシングというものを用いまして、都市環境保全、改善、炭素固定という観点から重要な都市内緑地の量的評価。炭素固定量評価の手法が成果を挙ています。土地被覆、あるいは土地利用、それから土砂災害リスク評価の観点からもリモートセンシングの利用を検討しています。また、地球温暖化時に想定される豪雨に対する土砂災害リスクを評価するとともに、市町村の防災体制の脆弱性を評価するリスク診断票を開発したと。それから三つ目ですが、流域規模で地域気候モデルのアウトプットを自主データで検証するとともに、将来の豪雨、洪水・渇水リスクを定量的に評価していくということで、優れた成果を得ているというふうに評価いたします。

 次お願いいたします。三番目の課題は、特に建築関係の分野の成果でありますけれども、環境負荷を軽減する建築分野の地球温暖化対策として、自立循環型住宅技術というものを多角的に、(多角的にといいますのは、一つは通風、断熱、エネルギー、照明といった分野ごとに多角的にやっているということ。もう一つは実証実験、それから理論計算、実態調査、政策反映といった観点からも検討しているというようなことで、)適用可能性技術の評価法を確立して、ガイドラインですとかマニュアルですとか、そういった出版物の形に取りまとめたということで、実際的に大変有用な成果を出していると思っております。

 それから分別解体、再資源化というような観点から地球温暖化対策を考えて、木質系建築廃棄物の取り扱いについて、数量的あるいは材質的、あるいは工法的に検討を広範に行っていって、資源循環型社会の一つの方向性を提示したんではないだろうかと考えております。

 最後は交通部門でありますけれども、交通部門においてCO2排出量削減につながる各施策を列挙して、それらが相互の連関を示すモデルを提示し、その効果を大都市、地方都市を対象に試算しております。今後の交通施策、通勤形態の中における温暖化対策展開の足がかりの基準だというふうに考えますが、ちょっと交通部門は私門外漢ですので、このような評価が適切かどうかは、また専門の方からご批判いただきたいと思っております。

 それで、各課題で、例えば最初の都市の緑地関係のモニタリング指標ですが、限られた範囲での手法はある程度できているわけですけれども、これを炭素固定、日本全国でどうなのか。あるいは、緑地が日本全国でどうなっているのかということになると、どういうふうに全国的に広げていくのか、日本国全体としてどうなのかというような、そういう空間的な広がりをどうしていくかと。それから、あと衛星データの精密機器補正ですとか、自動補正アルゴリズムの開発というものを挙げておられたわけですけれども、成果としてはこれも、もう既にGISの分野なんかでかなり進んでいますので、論文にしにくかったり、なかなか新しい技術が開発しにくいようなところもあるでしょうけれども、地球温暖化対策あるいは気候モデルから地域気候モデルへ落とし込むというような、そういった部分での位置合わせみたいなことに焦点を絞るのか、もっと細かな都市域の中のそういったものに絞るのか、その辺が、どっちをターゲットにしているのかちょっとわからなかったところがございます。

 それから、あとは洪水リスクですとか渇水リスクの評価ですけれども、平成14年1月の評価のサジェスチョンでもありましたように、都市計画との関連とか、そういったところを視野に入れてほしいということで、洪水リスクの評価については多少あるわけですけれども、渇水リスクの評価につきましても、将来の水資源計画にどう反映していくのかとか、そういった都市計画、水資源計画等へどういうふうに反映していくのかというところを、もう少し踏み込んでいただきたいという気がしております。

 建築の方はかなり、発表数がものすごく多いんですね。もともとのテーマが環境負荷低減・自然共生型の建築・都市整備技術に関する研究というところ、建築技術、建物の方についてはかなり成果を挙げられたわけですけれども、都市整備技術というところにつきまして、十分踏み込めてなかったんではないかというふうな気がしております。

 交通の方ですけれども、ちょっと門外漢ですので余りわからないんですけど、きょうは当日配付資料で5−4−3ということで、施策の社会的受容性向上方策に関する研究というものを、事前配付資料から追加されたわけですけれども、都市交通でどういうふうに施策展開するかということに加えて、それを社会がどういうふうに受け入れていくかということで、事前の資料ではその辺がないのかなと思っておりましたが、きょうはありましたので、多少研究としてはちゃんとまとまってきているんだなというふうな印象を持ちました。

 研究成果の公表状況ですけれども、特にこの建築系が膨大な件数、3ページ、4ページぐらい、5ページ、6ページ以上にわたりますけれども、交通部門は論文発表が二つぐらいしかないというようなことで、そのあたりの研究の進捗状況のマネージメントとか、発表方法のマネージメントとか、そういったグループとしてのこの4年間の進め方といいますか、バランスといいますか、そういったところが今一つうまくできていなかったのかなというような感じがしております。

 以上でございます。

(主査) どうもありがとうございました。何かレスポンスされることがありましたら。

(国総研) 一つずつよろしいですか。

(主査) 手短に。

(国総研) CO2の緑地による吸収を全国的に広げるかというような話がございましたけれども、これは全国的に広げるためのモデル検討をしております。これはぜひ2007年までには広げていきたいということで、今年度、来年度引き続き、別のプログラムになってますけれども、研究を実施する予定でございます。

 それから衛星のアルゴリズムについては、限られた地域のことをやってますけれども、これは若干地球温暖化とどれだけまた絡むかというのがこれからの議論になりますので、余り詳しいことを述べておらないところであります。

 それから洪水・渇水につきまして、都市計画、水資源計画、今後の計画との関連という話をどう考えているかということでございますが、実は今回の事前評価をしていただくものの中に、河川と海岸につきまして今後の地球温暖化に対する影響に対する研究というのがございまして、そちらの方に引き続きやっていくということにしております。

 それから、都市整備というのが余りないという話がありまして、若干名前のつけ方が悪かったかなという感じがしまして、もともと建築、あとビルという、建築物という関係での研究を最初から想定してまして、「都市」という名前が若干大き過ぎたかなという気はしております。都市につきましても、今後検討していかなければならないかなということを思っております。

 それから公表のところで、ちょっとグループによってばらばらに連なっているということで、もともと建築関係は民間に使ってもらわなければならないということで、それで積極的に発表するという面がございますので、非常にたくさんになっておりますけれども、若干バランスが欠けているなんていうことで、その辺も今後気をつけていきたいというふうに思います。

 とりあえず以上です。

(主査) ありがとうございます。ほかにもしご意見ございましたら、お願いしたいと思います。

(委員) この次に評価を行なう予定のITを活用した国土管理技術というプロジェクトでの高度情報化研究センターのGIS研究といったところの成果とうまく連携しながらこのプロジェクトも前半部分は動いていたのかなと思うんですが、改めてその研究概要書を見せていただくと、どちらの方でどちらをやったのかが非常にわかりにくい書き方をされているようです。研究予算額からするとこちらの方で大部分をされたのかなという気もしますけれども、一方でITの方のプロジェクトでもかなりやっておられるのかなと。そこら辺の状況は、次でお聞きするべきなのかもしれませんけれども、研究成果への貢献振り分け状況のような点について一応ここでお聞きしたいと思います。

(国総研) この特別研究の一環といたしまして、同じサブ研究をこっちのテーマでもあるし、こっちのテーマでもあるというふうにしております。今のITの方もそうですし、社会的重要性につきましても、後ほど説明いたします自然共生型流域圏・都市の再生なんかにも、住民活動をどうしていったらいいかというプログラムがあるわけですけれども、そういう中でも生かせるということで、この研究はこちらのプロジェクトにも参加しているし、こちらのプロジェクトにも参加しているという形になってますんで、どっちが主でやっているということでは必ずしもないということにしております。

(委員) そういったときにですね、やはり評価しなくちゃいけない立場に立つと、ある程度どちらでどの程度の割合で重点的にやって、一緒にやったことによって非常に効率的で、相互に大きな研究成果がでてきたと言っていただくなり、書いていただく方が、ともにやりましたとだけ言われてしまうと、なかなか評価が難しいかなというのが感想です。

(委員) 興味深いモデルが出されていて、例えば洪水リスクだとか渇水リスクのモデルと、16のパワーポイントですね。それで、一つはどの程度このモデルの結論というか、今の現状が正しい予想なのかということが欲しいなという感じがしたんです。

 というのは、これほど変わってしまうと、これは全般性の計画のところにはちょっと書かれているんですけど、洪水・渇水だけじゃなくて、それこそ生態系リスクというか、種も絶滅していくだろうし、食料生産もうまくいかない地域がどんどん出てくるだろうなという感じがするんですね。例えば北海道、東北なんていうのは融雪にディペンドしているようなシステムを持ってますから。それが全部変わってしまうという感じになるんで。

 ある意味で、この情報がオープンになったときに非常に大きなインパクトを与えると思うんです。その辺でこのモデルのバリデーションというか、今現状でわかっているどのぐらいまでの精度なのかということはちょっとお聞きしたかった。

 こういう情報というのは、将来的に今言った食料生産だとか生態系リスクみたいなものも含めてとらえていくべきなんじゃないかなということで、その辺についての情報公開と今後についてどうお考えなのかなというのを教えてください。

(国総研) まずここの16ページに書いてありますけれども、前提といたしまして使ったシナリオというのがA2シナリオということになっております。このIPPCでシナリオを基本的に四つ出してまして、A1、A2、B1、B2。A1は高度成長シナリオ。それからA2というのは、持続性を考えた多元化社会型シナリオ。B1はもうちょっと、若干みんなで辛抱しましょうといった持続的発展型社会シナリオ。B2はもっと下、比較的緩やかな成長を前提とした、地域共存型社会シナリオ。こういう四つのシナリオがあって、A2自体が少し真ん中よりちょっと上ぐらいの設定になっております。

 この設定で結果自体がどれだけ信頼性、信憑性があるかという自体、今地球温暖化非常に難しいわけで、シナリオがどうなるかということによって、これからの削減効果がどうなるかにもよりますし、実際にどうなるかというのも非常にわからないところであって、ちょっと私からどれだけ信頼性があるかというのは非常に、正直言って答えられないというところであります。

 逆に、一方で地球温暖化の中では、2℃から5℃上がるという話がありまして、5℃なんか上がったら、それこそ今○○先生が言われたように生態系から何から大変だよと。2℃ぐらいだったら何とかなるんじゃないのという、そういう意味では2℃以下に何とか抑えたいという、そういう中でこれから大変だよという話は、結構そういう地球予測のグループでは盛んにもう言われているところで、今回出してもそんなに驚かないなという気もするんですけども。学会等にはもう出している話ですので。

(委員) 多分それが驚かれないというのはまだシナリオの議論とか、今言ったモデル自身もいろいろな問題点も含んでいるんだということで驚かれていないんだと思うんです。

 市町村の対策、リスク計画、対策に関する研究という形でやっておられるので、そういった悪い言い方で言うとオオカミ少年的じゃなくて、もっと角度の高い議論として今後この地域、例えばここでやられているような東北とか新潟、北海道、それについて重点的に対策的な問題を提示していくのか、この議論から。

(国総研) 今ちょっとお話ししましたけれども、今後河川、海岸については来年度から新規のプロジェクト研究でそういうのを立ち上げようというふうに考えておりますので、そっちの方で、言いわけみたいですけれども、引き続いてやっていければというふうに思っております。

(委員) 先生にお聞きしたかったんですけれども、このモデルの辺については相当妥当性が高いと思ってよろしいのでしょうか。

(委員) 関連して。国総研さんということは、実際的に近い将来地球温暖化絡みでどうなっていくかというようなことをやっぱりやってほしいなという気がするんですよね。これは100年先ですからね。やっぱり流域の河川整備計画をするにしても、これから2、30年先を見てやるわけですから、100年先にこうなるというのは理学部的研究としてはいいのかもしれないけれども、実際のこれからの流域整備をやっていく国策を考える研究所であれば、2、30年先どうなるのかなとか、50年先ぐらいどうなのかなとか、それぐらいをにらんだアウトプットを出していただいて、それで実際の施策にどう反映していくかというようなことを狙っていただきたいなという気はするんですけどね。

(委員) 最後の交通の地球温暖化防止行動のための方策のところで、ちょっとコメントしたいと思うんですけれども。こういうふうな合意形成の研究に取り組むのは非常に有意義なことだと思うんですけれども、地域の交通問題を解決するときに、地球温暖化という切り口でいった方が合意形成がよりスムーズにいくのかどうかということを含めてやらないと、やはり問題がこじれちゃう可能性もあるんじゃないかと思います。

 ロンドンのロードプライシングは混雑解消で訴えたから成功しました。環境問題じゃなくてですね。東京はどちらかというと、混雑よりも環境問題でロードプライシングをやろうとして、そこら辺の戦略の違いはあったと思いますけどね。

 地域の問題、地域の人たちの合意形成をするときに、いろいろ抵抗感の高い人と低い人がいるということをここで言っているわけですが、その抵抗感が大きい人には別の戦略というのも、これは非常におもしろい発想だと思いました。しかし、今まではどちらかというと、建前としてはごねる人に対してもごねない人に対しても正義はこうであるというか、何かある種の一つの筋を通す中で説得していくということがあったと思うんですね。

 だから、そこはどこが方針転換しているのかわかりませんけれども、そこら辺はちょっと理論武装してまた教えていただければなというふうに思いました。

 ちょっとこれは全く素人で教えてほしいんですけれども、都市緑地をリモートセンシングで把握するのは非常におもしろかったと思うんですけれども、これは地球温暖化と関係あるんですか。都市の緑地というのは、木材を生産するわけでもないし、エネルギー生産するわけでもないので、余り都市の緑地が、地球温暖化とどう関係あるのかがよくわからなかったんですけれど、どうですか。

(国総研) 実は都市の緑地というのも少しずつふえてます。公園がふえたり、それから個人の家でもいいんですけども、そういう緑がふえているという、それから木が大きくなるという部分があります。そういうものについてはカウントできます。

それと、量的には森林に比べると非常に小さいんですけれども、実はなぜこれを一生懸命やるかというと、森林というのは全部で3.9%しかもう削減できないというのは決まってます。これ以上どうがんばってもふえないんですけども、それは森林での二酸化炭素吸収量となってまして、開発地での緑による吸収量というのは別途カウントできることになってます。ですから、絶対量は小さいんですけども、そういうふうにきちっとカウントできて、これだけ何年までにふえますよというのがきちんと提案できれば、じゃあその部分は日本はCO2削減できますねということができるように京都議定書上なっていまして、そういう意味でできるだけ少しでもふやしたいということで、今一生懸命検討しているというところです。

(委員) 首都圏の緑地はどんどん減っているんです。これは逆にマイナスに計算しようとしているわけですか。

(国総研) 緑地がどんどん減っている、緑地の定義の問題もありますけれども、その辺も含めて検討していくということになります。

(主査) 交通分野の論文数が少ないんじゃないかということですけれども、今、国土交通省の道路局で地球温暖化防止のための道路政策会議というのをやっております。その中でその成果、イメージ的には使われておりませんけれども、議論の参考にさせていただきまして、その成果については、もう来年度の概算要求に反映するということでございますから、そういう意味では政策研究として役に立っているんじゃないのかなというふうに、私自身は感謝をしております。

ありがとうございましたというお礼を申し上げたいということと、もう一つ、これ全体で申し上げますと、この成果をCDMとか、クリーンディベロップメントメカニズムとか、中国の問題とか途上国の問題とか、日本でいいモデルを開発をして、それをベストプラクティスとして外国に輸出するみたいな、そういう玉といいますかね、材料ってこの中にいっぱいあると思うんですけれども、どうもそういう視点が、きょう発表を聞いていただいたり、あるいは報告書を読ませていただいて薄いんじゃないのかなと。もったいないなという感覚なんですよね。

先ほど話題になりました気象庁の全球モデルを、スケールダウンするのでこの範囲かもわかんないですけど、全球でもうシミュレーションしようと思えばできるわけですから、中国の問題とかというのはもっとすごいことになるんじゃないのかなというふうに思ったりするわけですね。ですから、そういうところにも、ぜひここでいろいろやった成果を輸出できるような、そんなパースペクティブをぜひ持っていただければ、国際貢献というのも国総研の非常に大きな役割だと思いますので、重要じゃないかなという感想を持ちました。

ほかにございますでしょうか。もしなければ、他分野の他分科会の先生とかからのご意見をご披露願います。

(国総研) 1件、欠席された○○先生の方からいただいてまして、もっと総合的に研究成果をまとめていただければ、地球温暖化の問題がよく理解できるんではないかというご指摘がございました。ちょっと今回できるだけいろいろ総合的な説明をさせていただいた、努力をしたつもりですけれども、今後ともそういう努力をしていきたいというふうに思います。

 もう一点、先ほどの○○先生とダブるんですが、地球温暖化による災害に関する将来像とその対応策の公開を幾つかのシナリオで示していただければという意見ですけれども、これは先ほども述べましたけれども、この後の継続する研究でやっていきたいというふうに思っているところであります。

 以上です。

(主査) よろしゅうございますか。それでは、このプロジェクトについての評価はこれぐらいで終了したいと思いますので、評価シートへの記入をお願いをしたいと思います。

記入をしていただきつつ、あとは事務連絡といいますか、これで午前の部は終了でございますので、これから休憩に入りたいと思いますけれども、若干おくれぎみですけれども、開始は40分ぴったしということで進めたいと思います。どうもありがとうございました。

(事務局) お食事の用意をさせていただきますので、しばらくお待ちいただければと思います。よろしくお願いします。

(休憩)

(主査) それでは、12時40分にまだなっていませんけれども、皆さんおそろいですので、午後の部を始めたいと思います。

 ITを活用した国土管理技術でございますけれども、この研究課題に関しまして、関係者がおられますので、そのことについて○○さんからご説明をお願いいたします。

(事務局) 本研究課題につきましては、研究マップの課題リストがございますが、そこに課題13のハイブリッド型高精度位置特定技術仕様の作成という項目がございまして、この部分に関しまして株式会社長大が業務を受託されておりますので、長大に所属の○○委員におかれましては、かかわりのあるこの課題13の部分以外の部分についての評価をお願いいたします。

 以上でございます。

(主査) それでは、ご説明をお願いいたします。

 

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〈事後評価BITを活用した国土管理技術〉

(国総研) ご紹介いただきましたITを活用した国土管理技術の開発につきまして、私、取りまとめをさせていただいております高度情報化研究センターの情報研究官をしております○○でございます。私の方から20分ほど使いまして、ご説明をさせていただきたいと思います。

 まず、お手元にあるペーパーの研究概要をこの1枚にまとめてみました。大もとにあります研究の柱としましては、安心・安全で活力ある社会の構築ということでございまして、そのためにITというツールを活用して国土管理技術を効率的に行う、そのための技術開発を行うという内容でございます。

 一応、プロジェクトということでございまして、幾つかの機関と連携して行っております。国総研内部といたしましては、環境研究部、総合技術政策研究センター、高度情報化研究センター、危機管理技術研究センターの四つの部局と連携してございます。また、ITという専門技術を活用するということで、それぞれ特殊な専門知識を持っている外部機関と連携してございます。具体的には土木研究所、宇宙航空研究開発機構、情報通信研究開発機構及び産業技術総合研究所でございます。期間としましては、平成13年度から16年度までの4年間。費用は約1億8,000万ということでございます。

 この課題でございますが、その題名からいたしまして、まず国土管理というこれから国土交通省が大きなテーマと考えている政策にIT、いわゆる情報技術をどのように活用していくかという切り口で、初めて国総研として取り組んだテーマでございます。ただ、ITといいましても非常に幅が広いということと、国土管理という目的をとってみても非常に幅が広くございますので、このわずかな期間、わずかな予算の中で効率的に進めるという意味で、幾つかポイントを絞ってやろうという当初のもくろみはございます。

 具体的に言いますと、まず従来やっていた災害対策のうち、被害を最小化すると。いわゆる減災という新しい発想に使える技術として、被害を予測すると。先回りしてピンポイントで対策を打つ。そのためのITの活用。それから二つ目としまして、観測、むしろ計測でございますが、環境パラメータと言われているものを具体的に数値化するということにITを活用する。三つ目といたしまして、そういう災害対策や環境保全対策として集約したさまざまな情報を関係機関で共有化していくとか、あるいはそれを国民の方に情報公開していくといった共有化技術、この三つに絞って課題構成を考えました。

 なぜ、このようなプロジェクトを構成したか。その目的でございますが、この個々のテーマは別物ではございますが、使っているITについては共通しているということでございますので、ばらばらに個々に研究するよりも、そのテーマごとに得意な分野を重点的に研究し、その成果を他の研究分野にも応用するということで、効率化や重点化が図れるのではないかということと、やはり国土管理という国土交通省の大きな政策に対して新しい異分野の技術を積極的に活用していくんだといったことを広くアピールするといったような効果を考えまして、このようなプロジェクトという仕立てを考えたわけでございます。

 具体的にIT、いわゆる情報技術として今回使った三つの分野の技術の一覧でございますが、それもこれだけのものをすべて今回使ったわけではございませんで、この中から効率的にピックアップしてやるということで、観測技術では、主にここの研究が始まったころに欧米で打ち上がった高精度のセンサーを用いた、光学センサーとか、スペクトルアナライザーとか、こういったものを搭載した、そういった新型の衛星観測技術に絞ってやってございます。また、予測に関しましても各国土保全の分野で対策技術がございますが、特に洪水関係と土砂災害関係に絞って重点化してございます。また共有化につきましても、さまざまな技術がございますが、今回はそのうちの中でモバイルですとか、CADとか、親しみのあるツールを中心に対象としてございます。

 また、これを国総研の従来の蓄積の中からピックアップするのは非常に難しいということもございまして、先ほど言いました他の筑波の地域にあります専門の研究機関に協力を頼みまして、さまざまな人的、物的な支援をいただいています。また、つくばWANという光ネットワークで、このような研究機関が接続されているということがございまして、その研究自体もITを活用してやっていくという一つの試みの中に入れてございます。

 またもう一つ、国総研の一つの特色としまして、現場での解決ということで、さまざまな災害とか、環境の現場の事例で検証を行うと、それで研究の成果の精度を上げるということを一つの特色としていますが、そのときにも国土交通省が当時整備を始めました光ファイバーのネットワークをうまく活用して、各現場のさまざまな経験なりを吸い上げるというような体制をとってございます。

 では、具体的な内容について、その研究の目的と今回4年後どのようなふうな成果が上がったかを説明したいんですが、最初のテーマは、災害時の被害を最小化するための研究ということで、災害対策として大きな流れとしまして現状を収集し、そのデータをもとにさまざまな被害を予測・推定をすると。その結果を関係機関に伝達し、共有するという大きな情報の流れがございますので、それぞれの流れに沿ったテーマを考えてございます。収集系につきましては、さまざまな収集手段がございますが、今回は比較的現場で使うことが多いヘリコプターですとか、それからランドサッドなど、従来からある衛星モニタリングの技術を対象にして、それをいかに現場で容易にだれでも使いこなせるようにできるかというマニュアルを構築するような目標を立ててございます。また、それをベースに洪水の予測とか、土砂害の予測をするわけですが、これにつきましても大型のコンピューターを使ってやるような仕掛けの大きいものではなくて、現場の事務所にあるようなパソコンとか、オフコンとか、そういったもので市販のソフトをなるべく使って、実際の業務に役立てるようなマニュアルの作成を目標としてございます。

 また、伝達につきましても、当時中部地方で東海豪雨ですとか、東海、東南海の地震の対象エリアが拡大したなどがございまして、この中部地方整備局での防災システムをベースに地元市町村、あるいは他の応援をいただく地整などとの連携を円滑に行うためのシステム構築といったものを目的にこの研究を仕立ててございます。

 先ほど収集・解析・伝達と三つの流れに沿って、それぞれテーマを構成しているご説明をいたしましたが、収集につきましては衛星、あるいは国土地理院などが持っている通常の航空機を用いたりやり方と、航測会社が提供してくれる、いわゆる航空レーザデータ、こういった身近な現場が手に入れられやすいデータをうまく活用して災害状況を広域的に把握するマニュアルを目標としましたので、ここに書いてあるようなデータ利用マニュアルや加工ガイドラインといったものが、今回4年間の中でつくり上げることができてございます。

 それから、このメインとなります予測の部分につきまして、パソコン、オフコンなどで使える、しかも市販のシミュレーションソフトベースとして解析モデル、予測モデルを作成していこうと。しかも、それが実際の災害に適応するかどうかをさまざまな災害事例で検証していこうということで、ここにあります洪水を対象にした予測ソフト、それから土石流災害を対象とした予測ソフトを作成して、例えば東海豪雨ですとか、当時有珠山などの噴火の被害がございましたので、そういった現場の実際データとこの予測データをつき合せるようなことをして、具体的なシステムを構築してございます。

 それから、その結果を伝達・共有化するという意味では、東海地震を想定した新しい中部地方整備局の災害情報システムの構築にかかわりまして、この整備がいよいよ来年度から始まるということで、その基本的な部分に我々の提案したものを採用していただくというような内容になってございます。

 それから2番目の研究テーマでございました良好な生活環境、地球規模の環境保全のための総合研究ということでございます。これにつきましても、別途同時に進んでおりました地球温暖化に対するプロジェクト研究と連携して、環境部との連携テーマでございます。地球温暖化の方は、将来の相当中長期的な予測技術の確立を目標にしてございまして、そのために土砂害と緑地の計測、あるいはそこからそこに吸収されるCO固定量の計測といったものをメインテーマにしてございましたが、私どもの方では、それの前段階で現時点で必要となる緑地計測、特に市町村などが緑地法などで計測や報告が義務づけられている、そういった緑地総量の計測といったものを衛星を使ってできないかといったようなところを中心にやってございます。また、そのほか土石とか、洪水災害に非常に重要な影響の環境パラメータがあります土地被覆度ということで、こちらの緑と土の観測を中心にこのテーマで扱ってございます。

 それから、それがモニタリングの手法でございますが、具体的に使う衛星データの精度、これは非常に均一性がないということが、いろいろ問題になってございますが、この幾何学的な補正をすることによって、精度を画一化しようという研究をこの中でしてございます。まず前段のモニタリングの手法でございますが、IKONOSですとか、ASTERなどとの当時欧米で打ち上がった非常に高性度の観測機器を搭載した衛星データをうまく活用して、都市内の緑地総量の計測手法などの研究をしています。またあと水害、あるいは土砂災害などに非常に影響のあります土地被覆係数、こういったものを衛星データ、あるいは航空機データから定量的にピックアップする。そういったものにつきまして、具体的な手法を提案することができました。また、その衛星から得た映像、あるいはヘリコプターから得た映像が非常に地表面に対して、必ずしも正対していない場合が多うございまして、これをいかに幾何学的に補正して正規化するかといったことにつきまして、さまざまな手法を検討した結果、衛星についてはちょっとまだ今回は至りませんでしたが、ヘリコプターにつきましては東北地方整備局のみちのくという国土交通省のヘリコプターの画像補正技術として採用されるに至っています。

 それから、三つ目のテーマでございます国土管理情報を円滑に運用し情報公開するための総合研究ということで、目的といたしましては、防災情報、環境情報、こういったものを関係機関や国民との間で共有化していくといったことにつきまして、具体的なツールの開発をしようということで、今回はインターネットなどを活用した、いわゆるモバイル系でのデータのピックアップの手法について具体的なモデルを導入して、現地で施行実験をしてございます。それから、そういって集まったデータを具体的に利用する手法ということで、今回はGISデータをうまく活用して、冬期間の維持管理作業車の自動運転など、そういったものに活用できないか。あるいは建設CALSなどで電子納品されるCADデータの統一的な基準づくり、こういったものを目標に行いました。

前段の共有化手法につきましては、当時GISというものが非常にはやりになってございましたが、道路系、河川系でそれぞれ目的が違うことから個々の情報基盤を構築されてございましたので、これを連携するための今後導入する場合に、どのような指針を持って構築すべきかといったものをまとめて提案してございます。また、その具体的な例としまして、当時から将来性を見込まれていました携帯電話などを使って個々のGISにアクセスするようなものを開発してございます。これも中部地方整備局の木曽川上流河川事務所などで、実際災害時に活用していただくようなことを、モニタリングをお願いしております。

 それから情報の利活用につきましては、GISの活用の例としまして、そこから抽出した車両の位置情報を使いまして、冬期間の除雪ですとか、凍結防止剤の散布車両などの自動運行などに活用することをやってございまして、これは北陸地方整備局の長岡国道事務所などで実際に使っていただくような成果を得てございます。それからCADデータの電子納品基準につきましては、既に建設CALS/EC標準となっていまして、現在電子納品されるものは、この規格に従って納品されているのが現状でございます。

 このような研究成果を得たわけですが、今後これをどのように活用していくかにつきましてですが、当初立てました方針は、そのような標準を実際の地方整備局の管理業務に活用していただいて、日ごろの、あるいは災害時の業務を迅速化したり、効率化すると。もう一つは、いわゆるe−Japan計画というのが当時からございまして、国土管理の分野でも、これは例外ではないということで、行政面、研究面での情報化を推進する上で、このツールを活用していただくといった方針は立ててございます。これにつきまして、現在どのような状況になっているかでございますが、行政面につきましては、京都議定書などや国際気候パネルなどに基づきまして、自治体がCO吸収源の算定手法などの具体的な構築を急いでいるわけですけれども、この場合に衛星モニタリングや航空レーザを活用していくという方法につきまして、いろいろ複数の自治体で既に計画が進むということで、このようなこの研究成果が一つ活用された事例と言えると思います。

研究面につきましては、同じ国土交通省の砂防部が消防庁・気象庁と連携しまして、火山災害に対する減災対策計画を立ててございますが、その中の研究テーマとして、このハザードマップを、リモートセンシングを活用してつくっていこうといったものが研究テーマに挙がってございます。これも一つの活用の事例ではないかと。

 また、業務の実際の効率化としましては、冒頭にご説明しました光ファイバーネットワークが具体的に管理事務所間を接続するに至ってございますが、その具体的な利用方法としまして、災害時の例えばCCTVなので収集した映像を個々のパソコンで監視するようなシステムが既に導入されて、日々の業務や管理業務などに成果を上げてございます。

 最後に、研究のまとめでございますが、この4年間を通じまして当社のプロジェクトの目的でありました、いわゆる初めての国土管理へのIT利用に対して何かリーダーシップ的な役割を果たしていくべきだといったこと。それから、さらに日ごろの日常の業務や災害時の業務などで、なるべく基礎的、基盤的なツールを使ってITを身近なものとして業務改善につなげていくといったような目標を立てたわけですが、このような目標については今回、の幾つかご紹介した成果という形でまとめることができましたので、ある程度の役割が果たせたのではないかと考えてございます。

 今後の展開でございますが、まだまだITというのは技術革新が進むことでございまして、なお、今後国土管理の問題もさまざま、まだまだ着手していない分野もございますので、そのような技術成果をうまく活用して、今後の科学的な取り組みをしていきたいと考えてございます。このような形で行いました。よろしくお願いいたします。

(課題説明終了)

(主査) どうもありがとうございました。

 それでは、この件については、あらかじめ○○さんにお願いしてございます。冒頭、○○さんの方からありましたけれども、一部関与されておりますので、その部分を除いたものについての評価をお願いしたいと思います。

(委員) それでは、ご意見をちょっと申し上げさせていただきますが、冒頭にご説明がございましたようにITも、それから国土管理という言葉も非常に範囲が広いものでございますので、大変なテーマだったんだろうなというふうに推測しております。ただ、実際に行われたところについては範囲が絞られたということでございまして、その部分におきましては、大変よくできているんじゃないかと思います。特に、災害の予測技術につきましては、例えばハードの対策というのは、今非常に予算の逼迫した状況で限界がございますので、ソフト対策として行っていくと。その中で例えば災害に遭わない、あるいは災害を検知するというような形でのソフト対策というのも重要じゃないかというふうに思います。そういうところに位置づけていただいたということについて、大変よかったんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味での情報の収集、いわゆる観測技術という面においてはよかったのかとは思いますが、一つちょっと残念だなと思いますのは、情報の提供という意味で情報共有という、いわゆる国交省、あるいは都道府県、自治体といったところの情報共有については十分なされているというふうに見受けられますけれども、住民や地域の方々への情報提供というところと連携するような形といいますか、いわゆる災害を減災という、減災という言葉を最初に使われましたけれども、そういったところに持っていくということが今後必要なんじゃないかなというふうに思います。

 それから成果といたしまして、先ほどいろんなCAD標準ですとかというようなことをおっしゃられましたが、そのほか道路通信標準等につきましても整備されておりますし、そういうことから考えますと、いい成果が出ているのかなと。国総研としてやるべき範囲は十分に満たしているのだろうというふうに思います。特に、そういった標準仕様といいますか、基準、基準まで行かないまでも、仕様書というのが特にこのITの世界の中においては、従来いわゆるメーカーさんやソフトベンダーが突っ走った結果、情報共有できないシステムというのが非常に今多く氾濫していまして、それが例えば道路分野でいいますと、先ほど少しやりましたけれども、道路の通行規制情報の共有ですとか、中部地整さんあるいはほかの地整さんでも全部やられていますけれども、そういったところが同じ通信の仕方、同じ情報の交換の仕方、情報の記述の仕方で情報共有できているということが、それを今さらに自治体に向けて情報共有しようというふうに今動いていると思いますけれども、そういうものが可能になってきたということは非常にいいことだろうと思います。

 中でも、そういった標準という部分において、こういった国で定められるということが、逆に今度参入するメーカーさんですとか、ソフトベンダーさんが、一定の基準のもとにその上にアプリケーションをつくれるということになりますと、さらにそのIT化の加速、こういった国土管理の部分でIT化の加速ということにもつながると思いますので、その辺は私どもとして非常に期待するところであります。

 あと最後になりますけれども、先ほどの今後の課題でも少し出ていましたけれども、ITの進化が非常に早くて、なかなかこの平成13年からでしたか、その中でも恐らく最初にやられたところと最後の16年度までの間で大分変わってきちゃっていると思います。そういうことがありますので、いわゆる標準という部分についても要求機能だとか、性能規定、そういったものがいろいろアプリケーション、いわゆる災害なら災害というところから見たときに、いわゆるITでできることが変わってきていますので、そういう部分についても今後見直しを継続的にやっていかないと、今の標準が意味のないものになってしまうという可能性があるのかなと思いますので、そこの部分の今後の継続性を期待したいというふうに思います。

 以上です。

(主査) ありがとうございました。

 それでは、ご質問あるいはコメント等をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

(委員) ちょっと簡単に質問させていただきます。道路のGISと河川のGISが共通化して、どんな具体的なおもしろいアプリケーションができたのかということと、それが今後どういうふうに発展していくのか、教えてください。

(国総研) この4年間では、共通化するために今後どのようなシステム構築をすべきか、アーキテクチャーな提案はいたしましたが、まだ実際には共通化には至っていないのが実情です。

 ただ、我々が目標としているのは、例えば河川の橋の近くにたくさんカメラがついていると。その映像は当然その橋とか、道路管理にも使えるだろうというふうに考えてございますので、その逆のケースもございますので、相互別々の目的でとった映像をお互いに横流しというんですか、共同利用するときに一つのGISの上で検査ができれば便利かなといったことを想定した提案をしてございます。

(主査) よろしいですか。何か言い足りなさそうな感覚もありますが。

 では、○○先生お願いします。

(委員) 今のご質問に関連して、今映像のことだけおっしゃいましたけれども、河川堤防上道路が走っているとか、それから河川を橋で道路が横切っているというようなことで、従来別々に管理されていたものが同時に管理されることによって、道路計画と河川計画、あるいは道路工事と河川工事を統合的にできるとか、そういうことがあると思うんですね。

 それから洪水氾濫の問題にしても、従来川沿いのことをやっていたんですけれども、たとえば洪水氾濫が道路にどういう影響を与えるかとか、そういう河川と道路の接点はいろいろあるわけで、都市計画、防災計画、そういったものと河川計画との接点があるわけです。河川GISはもう10年以上なりますかね。構築される当時から私も委員会に参加させていただいて、そういった他部局のGISとどういうふうに統合していくかというところを多少議論したことがあるんです。そんなことで道路に限らず、いろんなGISと統合していくということになっていくんだろうと思っております。

 別の話なんですけれども、よろしいでしょうか。

(主査) どうぞ。

(委員) ITという言葉なんですけど、これはインフォメーション・テクノロジーととらえておられますか。

(国総研) はい。情報技術という。

(委員) ICTという場合もあるんですけど、その場合はインフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジーと。ですけどITというとき、インフォメーション・アンド・テレコミュニケーション・テクノロジーと思えば、IT、ITでいいわけなんですね。ですからITは情報と通信を含んでいるということで、今回はちょっと情報の方に力点を置いておられたと思いますけれども、その情報がいかに効果的に素早く伝達できるかという、そういう通信の方も結構重要だと思うんですね。ですからIT、ITという場合に、インフォメーション・アンド・テレコミュニケーション・テクノロジーと認識していただいて、IT技術ということで、通信の方も同時にどんどん進んでいくと思いますので、視野に入れていただきたいというふうな気がしております。

(主査) ありがとうございます。どうぞ。

(委員) 一つは、これは感想です。災害対応的な課題というのは、やはり国総研の一つの売りであるし、比較的そういったモデリングについても、もしくはこのおっしゃったような収集と解析と伝達という議論についてもわかりやすかったと思います。一方、環境保全については内容が大分浅いなという印象です。正直言ってこれは国環研とか、いろんなほかの場所と共同してやっていくしかないのかもしれないんですけど、内容的に環境という言葉が余りにも漠然としているからかもしれません。先ほどの都市内のCOの問題みたいな形での項目が並べられているし、まだ環境という例えば生物情報については、もっとたくさんいろんなものがITを活用できるなという印象を持ちました。

 それから、この手の議論、各事務所で例えばGISのソフトとか、いろんな解析のソフトとか開発された後、事務所レベルで本当にできるのかなという疑問があるのです。例えば整備計画なり何なりにどう使っていくかとか、そういう問題になったときに、もしくは災害時にどう対応したらいいかと。その辺の先ほどの情報共有のところと重なるかもしれないのですけど、いかに末端である事務所組織でそういったソフトをうまく使える。そのためにソフトを非常に簡単、簡素化していくのか。でも簡素化してしまうと別な要求が来たとき、また新たなソフトを立ち上げなくちゃいけないといったような問題が起こってしまう。ならば、そういうトレーニングされた人、もしくは研修プログラムのようなものを終えた人を各事務所に配置するような仕組みが必要です。その人材を片方でつくり出さないと、きっとうまくいかないだろうなという、そんな気がします。だから、その辺についてもしお考えがあれば教えていただきたいなと思います。

(国総研) 人材の育成というのは、この情報の場合は、非常にそれを成否を分ける大きなポイントであります。その意味で、日ごろなるべく業務もそうだし、個人的な趣味でもそうですが、なじみのあるソフトをベースに操作にもなれたものを日常業務で使えるようにというのを今回の一つのターゲットにしてきたわけで、それなりに市販の製品をベースにした開発ができているんですが、やはり業者同士でいろいろ連携がされていなかったり、次々と新しいソフトが出てきていて、なかなか一つ統一したと思うと、また次のものに移ってしまうといったようなことがございまして、市販のソフトばかりに頼っていくのもよくないのかなというのが、今回の反省の一つです。おっしゃるように中長期的に人材を育成し、事務所に派遣し、その一つのソフトをほかの目的にも使うという応用動作を臨機応変にできるようにしていくことは必要だと思っています。

(主査) いかがですか。どうぞ。

(委員) 対象とするインフラであるとか、あるいはそこから提供されるサービスとかを研究の対象として研究実施するものに比べると、情報だとかというのは多分、そちらが横型だとすると縦型というか、少し違う軸で研究を実施しなきゃいけないということで、今回のプロジェクトの目的の中にも、それを特徴とした目的をセットされているというふうに理解いたしました。研究の評価の視点としての効率性に関係するのかもしれませんけれども、従来の横型にやるのに比べて縦型でやるその苦労というのがあったんじゃないかと想像されるんですが、そこについて何か特に工夫をされた点とか、何かこの種の研究を進めるに当たって課題と考えた点とか、その辺お感じになったことを少しお聞かせいただければと思いますが。

(国総研) 縦型というのは、一つのツールを複数の目的で使うということで、そういう効率的な研究をするということだと思うんですが、今回そういったいろんな多目的活用できる情報のあり方といったものについて、国総研として余り知識とか、経験がなかったものでございますから、さっきも言った産総研ですとか、他の機関にいろいろご教授いただいて方向づけをしたと。それで、割と短期間に比較的長持ちする技術ベースができたんじゃないかというのが、一つ成果だと思っています。

 他方、非常に今回対象とした国土管理というのは、ごく国土管理の中の一部にしか過ぎないということで、しかもその一応、複数の事例で検証しましたが、災害とか、環境のアプリケーションは非常にさまざまでございまして、今回検証したものだけで、すべてがカバーできるかどうかがよくわからないと。まだまだやはりさまざまな事例に適合して、今回つくったものが汎用性があるかどうか、時間をかけてきめ細かく検証していかなきゃいけないんじゃないかというのが反省でございます。

(委員) 私がお伺いしたかったのは、研究のアウトプット、成果というよりは、それを導くに至ったプロセスでお感じになった、例えば河川のGISと道路のGISをくっつけるといったときには、道路のGISの専門家というのは、それぞれの今ここに挙がっているセンターの中にいらっしゃるんですか。

(国総研) 一応、おられます。

(委員) それをどう使うかというののノウハウも、そこにおられる方がみんなご存じだという理解でよろしいんですか。

(国総研) そうですね。基本的なところは皆さん理解しています。

(委員) なるほど。そうすると必要な人材は一応このセンターの中に皆さんそろっているという理解でよろしいんですか。

(国総研) そうですね。知識として最低限のものを持っている者は、この国総研の中にいると。

(委員) なるほど。これ以外の部署、あるいは現場も含めて、そういうところと連携するというところでのご苦労は余りなかったということでよろしいんですか。

(国総研) それはですから、先ほど言いましたように実際の災害とかの経験は余りしている人間は少ないもんでございますから、やはりさまざまな事例に当てはめた検証は現場と情報交換してやっていかなきゃいけない。それはこの研究の中の一つの目玉になってございまして、その部分については、さっき言ったようなネットワークを活用したりして、ある程度の成果が出るんじゃないかと思いますけれども。

(委員) わかりました。ありがとうございました。

(主査) よろしいですかね。どうぞ。

(委員) 午前中の地球温暖化に対応するためのという区分けがございましたね。それでパワーポイントで決して批判しているわけじゃないですけど、使い回しで同じようなのが幾つか出てきたなと、こういう感じがするんですが、資料3のプロジェクト研究一覧を見ると、随分違う分野のご研究の間で連携がとれていると。私、ポジティブにとらえているつもりなんですが、この1から7本の間でもう少し今のご研究のところと関連のある、あるいは意識的に関連をしたというところがあれば、教えていただきたいんですが。

 7本の柱の1本目と6本目で連携はされているんですが。

(国総研) 例えば2番目は安全・安心な国土づくりということでございますので、これはまさに私どもの最初の課題でございます、減災のためのIT活用といったことでございまして、この辺の例えば検証に使った災害データなどは、こういう研究プロジェクトからいただいて、また私どものITがそちらの目的にかなっているかどうかの、そういった点で意見をいただくといった意見交流をしてございます。

 それから5番目のところにあります、いわゆる住宅社会資本のマネージメント手法ということで、これはさまざまな評価手法とか、成果手法の標準化、統一化を目的としているところですが、これは私どもの情報共有のためのあり方のところで、具体的にどのようなマニュアルをつくれば、実際の現場とか、業者の方が理解して使っていただけるか。そういったようなやり方について教えていただくとかですね。どちらかというと、災害面、標準面で他の柱と連携してやっているんじゃないかと。

(委員) 私どもはこれ評価の3本柱で研究の効率という、効率性をどう評価するかということを求められているわけですが、そういう面でたくさんあるところを連携することによって、もう少し効率的な研究が進んだり、人的資源についてもうまくいくのかなという気持ちがあったものですから、ぜひ今後ともお願いをしたいというふうに思います。

(国総研) ありがとうございます。

(主査) ほかはいかがですか。

(委員) 私自身は非常に明快に目標設定をされたので、それに対してしっかりと成果を出されたという部分は、私は評価したいと思ったんですが、言いかえると一個一個がそれぞれ独立で動いていて、軸になっているIT技術というものが、こういう形では適応できるよねという例が幾つか出てきたというところにとどまっているようです。まず初めてそのITという切り口で壮観する、俯瞰するような形でプロジェクトを立ち上げられて、最終的に何か今後の研究の方向性だとか、そういったところについてもう少しビジョンというかな、何かこのプロジェクト全体を通じて出てくると一個一個ではない総合的な部分が、例えば次のIT技術をどう活用して国土管理に使うのかというものが見えてくるので、そういったところの記述が研究成果としてちょっと弱かったかなと感じました。

(国総研) そのご説明が足りませんでございました。先ほどご指摘もあったんですが、どちらかというと関係機関の間での情報活用にとどまって、いわゆる川上でとどまってしまって、それを具体の現場でどう活用するか。いわゆる川下部分の普及といったことが、やはりこれからの我々の進むべき方向じゃないかと、そういうふうに考えています。

(主査) 施策とか政策の評価って、これからますます重要になってくると思うんですけれども、やはりデータの収集部門といいますか、モニタリングの部分が非常に弱くて、そういう意味で、こういう技術って非常に必要だと思うんですけれども、何といいますか、日常業務の中で比較的自動的に楽に必要な指標が蓄積されていくという、そういうことが非常に重要だろうと思うんですね。評価のコストを下げる、評価行為のコストを下げるためにも。そういう観点からすると、先ほどヒューマンウエアというのがありましたけれども、ビジネスモデルとしてどういうふうに展開していくかというところが、一つ今後の課題だろうかなという気がしました。何か純然技術的なところに興味がというか、ウエートがあって、その辺が多少薄いのかなというふうに思いました。

 それともう一つは、例えば国土計画局では、国土のモニタリングという結構でかいデータベースを動かしていられますし、国土地理院もそうですよね。コピーライトの問題があってなかなか難しい部分があると思うんですけれども、その辺との共有とか、連携とかということを考えていくのかなと、そういう中での守備範囲というと何か変ですけれども、そういうことがより高目的かつ有効になっていくのかなという感想を持ちました。参考にしていただければと思います。

 一当たりご発言あったんですけれども、よろしいですかね。そうしましたら欠席の先生とか、他の分科会の……。

(国総研) それは事務局の方からいただけるでしょうか。

(主査) 言うんじゃなかったっけ。○○先生の方からじゃなかったでしたっけ。

(国総研) 私の方から。筑波大学の○○先生、必要性につきまして解決、行政課題の解決に向けて有効であるものの、今後の目標の設定がよく見えないと。この辺について明確化を期待すると。それから効率性につきまして、防災機関と連携をすることにより、より積極的に実施すべきであろう。それから有効性につきまして、今後社会への普及に伴って、その有効性が発揮されるであろうが、専門的知識を有しない一般の住民にどこまで受け入れられるか、この視点が今後重要というご意見をいただきました。

 以上です。

(主査) ○○先生、欠席されておるんで、もしありましたらお願いします。

(国総研) ちょっと一行だけなんですけど、必要性、有効性、効率性ともに特に問題ないと思う。今後、有効性は徐々に増していくであろうということをいただきました。

(主査) ありがとうございます。よろしゅうございますか。

 それでは、委員の先生方につきましては、評価シートへのご記入をお願いしたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 それでは、多少時間が余りましたけれども、この課題についてはこれぐらいにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、次のものですけれども、プロジェクト研究の中間評価ということで、マルチモーダル交通体系の構築に関する研究でありますけれど、これは私何か関係者になっているみたいですので、その辺のご説明を○○さんの方からお願いしたいと思います。

(事務局) 本課題は中間評価ということでございますが、今回新たに一部の課題を追加いたします。LRTの地方鉄道乗入れに関する研究を追加いたしますので、その事前評価を中間評価に続けて行っていただきたいと思います。

 それから、今○○主査の方からお話のありました関係する件につきましては、本課題につきましては、研究マップの課題リストが後ろについてございますが、課題の8番につきまして、株式会社長大が業務を受託しておるということ。また課題の6番の商慣行の部分でございますが、その研究に関連いたしまして設置されました研究会の座長を○○委員が務めておられます。したがいまして、長大に所属しておられる○○委員と研究会の座長を務められておられます○○委員におかれましては、かかわりのある部分以外の部分についての評価をお願いしたと存じます。また、同じく研究マップのリストの課題1番、公共交通の利用促進する複数交通モード間のシームレス化技術の開発に関しましては、○○主査の研究室が共同研究を実施されておられますので、○○主査にもかかわりのある部分以外の部分の評価をお願いしたいと存じます。また、主査の職務につきましては、○○主査がかかわりあるということでございますので、委員長の了解を得て、○○委員に代理をお願いしたいと存じます。

 以上でございます。

(委員) それでは、○○主査にかわりまして、このマルチモーダル交通体系の構築に関する研究という評価について、職務の代行をさせていただきたいと思います。

 この課題については、マルチモーダル交通体系の構築に関する研究の中間評価と、今回新たに追加するLRTの地方鉄道乗入れに関する研究の事前評価の二つを行います。

まずはそれぞれについてのご説明をいただいて、その後に中間評価、そして事前評価の順で行いたいと思います。

 それでは、説明をよろしくお願いいたします。

 

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〈中間評価@マルチモーダル交通体系の構築に関する研究〉

(国総研)それでは、マルチモーダル交通体系の構築に関する研究の中間報告をさせていただきます。プロジェクトリーダーは、私、道路研究部長の○○でございます。関係研究部は道路、都市、港湾、空港の4研究部。研究期間は平成14年度から18年度までの5カ年であります。総研究費は約2億4,000万円でございます。

 本研究の概要ですけれども、大きく三つの部分からなっています。一つ目は公共交通の利便性向上と利用促進に関する研究、これは対象を人流としております。二つ目はマルチモーダル物流体系に関する研究。そして三つ目がマルチモーダル交通体系の評価に関する研究であります。大きくは、この一つ目と二つ目におきまして、それぞれ施策提案をいたします。そして三つ目で、その施策効果の評価をする、このような関係になっています。

 研究の背景ですけれども、ご承知のとおり、現在さまざまな交通モードがございます。しかし、その間のサービス水準の格差、相互の連携が不十分です。その結果、利便性の高い自動車への過度な依存が生じている。そして交通に関する諸問題として、交通渋滞、環境問題、さらには物流の非効率、都市交通サービスの低下といった問題が発生しています。こういった問題を解消、あるいは緩和するために、マルチモーダル交通体系の確立が必要と考えています。今申し上げました、例えば渋滞によりまして日本では年間53億時間がむだに使われている。それを金銭換算いたしますと、年間約12兆円になります。また旅行速度が渋滞のために4分の1に仮になったとしますと、エネルギーの観点からは燃料消費量が2.5倍にふえます。また排気ガスは約2倍ふえて、環境への負荷がそれだけ増すことになります。

 本プロジェクト研究の成果目標及び活用方針ですけれども、一つ目の人流につきましては、複数の交通モードを組み合わせた統合型交通システムの導入シナリオを提案します。二つ目として、まちづくりと一体となったLRT導入計画ガイダンスを提示いたします。そしてLRTと地方鉄道間の相互乗入れにかかわる技術開発を促進します。

物流につきましては、空港・港湾の物流結節点と鉄道や高速道路の結節強化策の提示をいたします。そして港湾貨物の経路・手段選択モデルを構築します。そして国際航空貨物の国内流動モデルを構築します。そして、これら港湾・空港貨物につきまして、物流拠点の機能の提示をいたします。そして商慣行の改善によります物流交通の合理化策の提示とその実施シナリオを提示いたします。

 最後の評価につきましては、上記のマルチモーダル交通施策の評価手法を提案いたします。そして都市交通のサービスレベルの評価方法、交通結節点の乗りかえ利便性の評価方法を提案します。

 アウトカムとしては、以上の成果が活用されてきますと、各種交通モードを組み合わせた円滑な都市交通サービスを提供できるようになります。交通渋滞、環境問題といった問題が軽減されます。物流効率化によりまして、産業の国際競争力が強化されます。といったような効果が出てくると思います。

 次に研究実施体制でございますが、先ほど申し上げました四つの研究部が、それぞれ分担・連携して内部的にはやっております。さらに外部の機関としては、関西文化学術研究都市推進機構、そして、つくばの交通を考える研究連絡会、こちらは先ほどお話のありましたように筑波大学とも共同研究させていただいております。さらに商慣行と物流の研究会を立ち上げております。これにつきましては、○○先生に座長で参加していただいております。さらに運輸政策研究所、道路新産業開発機構等々の組織と連携しながら研究を進めています。

 それでは、ここから16年度までの研究成果の中間報告を申し上げます。約10枚のスライドを使って説明いたします。

 一つ目は、けいはんなITS社会実験におけるデマンドバス、カーシェアリングの利用満足度調査をしました。その結果が下のグラフに出ております。左のグラフはデマンドバスの利用理由でございます。デマンドバスの方が早い、デマンドバス以外に利用できる交通手段がない、デマンドバスの方が安いといったような利用理由が挙げられています。

 一方、カーシェアリングの利便性につきましは、会員になれば自由に使える、保守整備を任せておける、マイカーと比べて費用がかからないといった利便性が挙げられています。両者とも非常に利便性が強く意識されて利用されていますが、ただ、こういった事業の採算性になると余り芳しくありませんでした。こういったところ、交通施策としてだけ考えていくと、なかなか難しゅうございますけれども、例えば高齢者のモビリティ確保、あるいは環境負荷低減といったような環境施策とあわせて交通施策を考えていくところが、今後採算性も含めまして検討しなきゃいけないところと考えています。

 次に「まちづくりと一体となったLRT導入計画ガイダンス」の策定であります。既にガイダンスとして約140ページのものを作成いたしました。その内容ですが、第4章のところがポイントになりますが、導入計画づくりのフレームワークの作成方法、まちづくりの目標設定、LRT導入計画の検討方法、都市交通施策・まちづくり・ソフト施策との連携策の検討方法といったソフトの部分を中心にして作成しております。そして、自治体に向け配布する予定でございます。

 次に、既存施設や技術を活用した新たな物流システムですが、左の方で地下鉄を活用した都市内貨物輸送システムを提案しました。そのコンセプトですが、輸送時間帯としては地下鉄の昼間オフピーク時、夜間の非営業時間を利用する。対象貨物としては、都市部のオフィス街の宅配軽貨物を念頭に置いております。そして地下鉄への縦持ちですが、バリアフリー用のエレベーター施設の利用、そして駅上に荷捌き所を整備するといったことがあります。その下の方に今申し上げたことを絵で示しています。

課題としては、集配輸送の共同化が必要であるということとか、地下鉄事業者との調整が必要であるといったところが課題としてございます。このようなコンセプトを提案しました。

 次に道路法に基づく路上駐車施設の整備推進と料金施策導入の提案であります。そこにあります絵は道路上に路上駐車施設を設けるなら、このようなものになりますという平面図です。歩道部に若干の切り欠きを設けまして、そこに駐車マスを設けるという簡単なシステムです。この特徴は、このような路上パーキングは、現在道交法でもなされているわけですけれども、その料金設定は手数料を徴収するという考え方になります。一方、道路法の路上駐車施設につきましては、その料金設定の考え方はかなり自由度がございまして、例えば15分までの短時間利用は安く、15分以上の長時間利用は高くするといったことが考えられます。このようにして、駐車場の利用効率を上げていくことが考えられます。

 次に高速道路と港湾・空港の結節強化策であります。これは新規課題として16年度から始めました。左の方のブルーの棒グラフですけれども、インターチェンジと直結している港湾の数の比率ですけれども、日本は20%弱、アメリカ、EUは50%程度と大きく異なっています。こういったところを改善しなきゃいけないと考えております。右の方はちょっと割愛させていただきます。

 次に港湾貨物につきまして、内貿バルク貨物の輸送機関選択モデルの構築をいたしました。これは北海道と関東地方の金属機械工業品の輸送についてのモデルをつくりました。左下の表の中には、そのモデルで用いるパラメータを記載しています。右の棒グラフですけれども、色づけしてある方が、このモデルによる推計値であります。もう一方の白抜きの方が実績値で、経路選択、輸送機関の選択につきまして、かなりよい推計ができていると思います。

 次に航空貨物ですが、その現況と課題について、まず航空貨物のフォワーダーの役割が変化してきたことがございます。以前は混載者で混載差益をねらうという業務運営でしたが、徐々に商品加工・在庫管理といったロジスティクス全般を扱う業容に変わってきています。ロジスティクスシステムにつきましては、産業の国際的な分業化、そして国際的サプライチェーンの進展がございます。さらに荷主による物流コントロールが徐々に浸透してきています。

 左下の円グラフですが、運送契約パターンごとのシェアでありまして、Type1からType5、6までございます。Type1から5、6の説明ですけれども、契約方式が随契か入札方式、あるいは輸送方法、運賃の決定者としまして、フォワーダーと荷主の力関係が書いてあります。Type1は従来のものですが、Type4、5と進むにつれて、最近の契約方法に変わってきています。随契から入札へ、そして決定者もフォワーダーから荷主の方にだんだん移ってきている状況がわかるかと思います。

 次に商慣行の改善によります物流交通の合理化につきましては、どのような商慣行の改善が合理化に資するだろうかというものを示したものが、これでございます。ちょうど真ん中のところに、店着価格制の是正がありますが、これを進めることによって、多頻度・小口輸送の是正が行われると考えています。店着価格制というのは、輸送費と商品価格が合わせて含まれていますので、それらを分離してやることによって輸送費がどれだけ含まれているのか。そして、それを低減しようとするインセンティブを与えるものですが、ここに着目しております。

 そして、その実現シナリオとしましては、企業への訴えかけ、啓発活動としまして、今申し上げたようなこと、さらには企業の社会的責任、物流の全体最適化を訴えるということを基本的な考えとしまして、その下の物流合理化策の考え方の普及、ベストプラクティス集の作成、グッズマイレージの表示に関する研究等々を進めています。

 次は、施策効果の評価で、さまざまな評価指標を提案しているというものを示したものです。

 次に、都市交通サービスの評価手法ですが、いろんな交通手段に対して評価指標を設けて、それで多角的に評価することを考えています。その評価手法の使い方ですが、右上に行きますと経年的変化、モニタリングとなっています。これは縦軸が人口当たりの交通事故死傷者数です。これにつきまして、札幌、広島、福岡と3都市について見ますと、平成6年度を1.0としますとそれぞれ伸びて悪くなっていきますが、福岡市につきましては12年から13年にかけて、かなりの改善が見られます。ちょうどこのあたりに福岡高速道路で約10キロメートルの新規供用がございました。それに応じて、このような改善がなされたと考えています。

 その下の都市交通の特徴づけ、キャラクタライズですが、これは3大都市県と地方都市を見たものです。偏差値50を中心にして書いておりまして、地方都市は大体50弱のところにありますけれども、3大都市はそれよりも大きくなっています。特に歩行者、自転車、鉄道・軌道といったようなところの充実度がわかると思います。

 次に交通結節点の乗りかえ利便性の評価ですが、一般化時間により評価する手法を開発しました。ここに等価時間係数がございますが、これが歩行モードには、例えば平たん部を歩くのほかに、階段を上り下りするといったような、いろいろなモードがございますが、これを平たん部を歩くといったことに換算するというものが、この一般化時間です。事例としましてJRの浜松町駅でモノレールとJRとの間の連絡が大きく改善されましたが、その前後でどのようにこの一般化時間が変化したかというのを見たものが、右の棒グラフであります。上の方はJRからモノレールへ乗りかえるとき、例えば通勤目的ですと150秒から92秒と大きく改善されています。一方、モノレールからJRの方向を見ますと、改善はされているものの逆方向と比べて、その改善量は小さいという結果を得ています。

 今まで中間成果を申し上げたわけですけれども、この成果の活用状況ですけれども、まず一つ目の人流につきましは、LRT導入計画ガイダンスを作成いたしまして、この夏ごろに配布予定でございます。物流につきましては、総合物流施策大綱の改定がちょっとずれ込んでおりまして、この8月、9月になる予定と聞いておりますが、その改定に合わせて、そこにあります5項目の施策を提案させていただいております。一番下の評価につきましては、先ほど申し上げた一般化時間によります交通結節点の評価マニュアルを作成しまして、今秋に予定されています「都市鉄道等利便増進法」の施行に合わせて配付する予定でございます。

 今後の研究方針ですが、一つ目の人流につきましては、統合型運用交通システムのケーススタディをつくば市で行い、そのシステムの導入シナリオを提案する。そして二つ目のLRTと地方鉄道の相互乗入れに関しては、自治体と事業者が計画・評価に用いるツールを提供する。また施設・鉄道等の技術開発を誘導促進するということを考えています。物流につきましては、物流拠点と高速道路の結節強化策を提案する。そして国内民間企業の物流プローブデータの活用に向けた分析を行っていく。

 そして三つ目が、主要港湾の貨物取扱いの分析を進めまして、流動モデル・拠点需要の検討を進める。そして航空貨物施設については、施設拡張や運用時間延長等の政策提案を目指す。そして商慣行の改善策の実施にむけた広報・啓発活動を行っていく。

 さらに評価の部分につきましては、マルチモーダル施策効果の評価手法を提案する。そして都市交通サービス、交通結節点の評価手法につきましては、その活用促進に向けてマニュアルを作成するということを今後の研究方針と考えております。

 以上でございます。

(課題説明終了)

(主査)どうもありがとうございました。

 それでは、続けて新しいテーマの説明をお願いいたします。

 

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〈事前評価 LRTの地方鉄道乗入れに関する研究〉

(国総研)それでは、引き続きLRTの地方鉄道乗入れに関する研究、これはマルチモーダルのプロジェクト研究に追加課題として加えるものでございますが、ご説明いたします。

 この図は、金沢市の夜間人口の推移を見た図でございますけれども、高度経済成長あるいは都市への人口集中といったことを受けて、都市の人口はふえておりますがこの図に示しておりますように郊外に拡散的に広がっているという状況でございます。これに対しまして、交通網の整備ということでいきますと、道路については後追い的ではございますが、放射環状道路の整備が順次進められておるということでございますが、公共交通網については、特に地方都市では新規投資がこれまでほとんど行われてきておらず、人々のニーズに対応してきていないということでございます。

 例えば、この左の図にございますように、都市の拡大に従いまして、人々の平均移動距離というのはどんどん伸びてきているということでございまして、これに公共交通機関のネットワークが追いついてきていないという状況でございます。

 この右側の図は金沢におきまして、公共交通を利用する条件として、どういったものを整備してほしいかということを住民に問うたアンケートの結果でございますけれども、この赤で示しておりますように、直通路線を新設してほしいですとか、あるいはバスや鉄道への乗り換えを便利にしてほしいというようなネットワークの充実というのを求めている声が大きいということでございます。

 また、これは最近の新聞記事を切り抜いて持ってまいりましたけれども、皆様ご案内のように、ことしに入りまして日立電鉄が廃止され、岐阜でも名鉄が廃止されるということで、地方鉄道は、危機的な状況になっているということですけれども、一部明るい話題としては、和歌山にあります南海の貴志川線を岡山電気軌道という岡山の市内で路面電車を経営している事業者さんが引き継ごうというような話も出てきておりまして、ここにありますように、そのための決め手としてLRTというのに注目が集まっているという状況でございます。

 こういった背景を踏まえて国土交通本省におきましては、特に京都議定書が発効して地球環境に優しい公共交通体系をつくっていくという観点から、本年度鉄道局ではLRTに対する助成制度を創設しておりますし、また省を挙げてESTモデル事業、これはEnviromentally Sustainable Transportということで、環境的に持続可能な公共交通の先導的な取り組みを国として支援しましょうという制度でございますけれども、この制度が創設されて、その第1号地区として下にありますように富山市の富山港線というのをLRTに置きかえていくというような工事が始まっておるということでございます。また来年度に向けても、引き続き都市・地域整備局あるいは道路局の方で補助制度の充実を検討中というような状況でございます。

 次に既存ストックの有効利用という観点から説明させていただきますと、この図は東京圏におきまして、鉄道の相互乗入れの延べ延長の推移を見たものですけれども、ご案内のとおり、郊外から来て東京都内の地下鉄に乗入れるというものが、年々強化されてきておるという状況でございますが、このような技術は、世界の大都市の中でも日本において特徴的でございまして、日本の世界に誇る鉄道技術であるというふうに言えるかと思いますが、地方都市では今まで事例はないという状況でございます。

 部分的に改良した事例として、これはJR高知駅前で路面電車の土佐電気軌道を直轄国道事業でJRの駅舎の近くに移設した例でございますけれども、ここにありますように利用者は15〜20%増加たということでございまして、直接乗入れることができれば、さらなる効果が期待できるのではないかということでございます。

 世界で見ますと、ドイツにおいて積極的にこのような技術を取り入れておりまして、ドイツのカールスルーエ市というところで、1992年に都心部を走っている路面電車のネットワークと、郊外部で走っているドイツ国鉄のラインを相互直通乗入れの工事をしてつないでいるわけですけれども、そうした場合に効果としては、これ鉄道区間ですけれども、乗客が6倍にふえたということですとか、あるいはその内訳を見てみますと自動車からの転換が40%、新規の誘発交通が12%ということで、大きな効果を上げているということでございます。この技術はフランスなどでも適用されつつあるという状況でございます。国内においても既に各都市で、今申し上げたような相互乗入れの検討がされているというところでございますけれども、なかなか実現化が図られていないという状況でございます。

 こういった背景を踏まえて研究課題の絞込みを行っておりまして、一つ目の課題として、合意形成のツールの開発をしたいということでございます。ご案内のとおり、自治体、財政が非常に厳しい中で、新規の税金投入について説明責任を果たすことが従来以上に求められています。地方の鉄道・軌道事業者というのは、地方の経済界では老舗企業に当たりますけれども、最近、銀行の不良債権処理が非常に厳しくて、例えば公益企業ではあるけれども、赤字を垂れ流しているようでは新規の融資はしませんというようなことを銀行から言われるというふうに聞いておりますが、そういう意味では正確な需要予測をもとに投資計画を組み立てていくという必要があるのではないかということでございます。

 具体的な中身としては、例えば左側の図では、日本の軌道事業をプロットしておりますけれども、経営規模が大きくなるほど運営コストは下がるというような一般的な原則がございます。またこれは富山の事例で、郊外線と都心部の路面電車を相互乗入れしたときに、これぐらい利用者がふえるだろうというようなことで、試算はされておりますが、もう少し客観的、定量的な方法が必要だということでございます。

 その際、マーケットリサーチ手法を利用した新たな予測手法を開発したいということでございます。これは東京都の江東区で先進的にこの沿線に住んでいる方に意向を把握した調査の結果ですけれども、例えば鉄道へのアクセスの手段として路線バスとか、自転車を使っている方がLRTに乗りかえたいというような意向がありまして、例えばこの自転車の方が転換したいという意向というのは、当初、事務局の方では想定していなかったんですが、新たにニーズとして把握できたというようなこともございまして、こういう地域に密着したデータを予測手法に取り込んでいきたいということでございます。

 二つ目の課題として、今コンパクトな都市構造への転換というふうに言われておりますけれども、そのツールとしては土地利用の誘導ですとか、あるいは公共交通、都市内の交通施設整備が挙げられますが、そういった整備についてのコンパクトな都市構造への転換の効果についても、このスタディの中で把握してまいりたいというふうに考えております。

 三つ目の課題でございますけれども、コストダウンのための規格化というのを提案してまいりたいということでございます。この表にありますように鉄道、路面電車、さまざまな規格がございまして、これをうまく一つの方向に誘導していくことにより、例えば車両の開発ですとか、いろんな面でコストダウンが図れるのではないかということで、こういったところは国の役割ではないかということで、一定の方向を示すことによって利害調整の促進、コストダウンにつなげてまいりたいというふうに考えております。

 以上をまとめて、ここにあります三つのテーマで研究を進めてまいりたいということでございます。成果としましては、地方都市において地方鉄道と連携したLRT導入の計画・事業調整が促進され、LRT導入が実現すること。公共交通機関の利用者が増加すること。さらにそういった公共交通機関を軸とした都市構造のコンパクト化、促進化というようなことで、こういった方向を目指して新規研究に着手したいということでございます。

 以上で説明を終わらせていただきます。

(課題説明終了)

 (委員) どうもありがとうございました。

 2件続けてご説明いただきましたけれども、まずは中間評価を行いたいと思います。まず最初にこのマルチモーダル交通体系の構築に関する研究ということで、○○委員にこの研究課題にかかわりのある部分以外の箇所について、詳細なご検討をお願いしておりますので、論点となるべき点だとか、あるいはそれに関するご意見をいただきたい。

 では、よろしくお願いします。

(委員) それでは、まず必要性ですけれども、事前評価結果に示されていますように、このテーマの社会的ニーズは高く、国総研の研究テーマとして適切だと思います。ただ、その中で政策ニーズとして緊急性の高いテーマとか、あと学術的成果が得られやすいテーマというのは何なのかということは、やはりそういうのを見極めるのは容易でありませんので、政策課題の分析とか、既存研究のレビューなどは丁寧に行うことが求められる分野だと思います。その意味で研究マップというのが、とても大事だと思います。事前に送られた資料には、こういう研究マップがあったわけですけれども、きょうのプレゼンにはありませんでしたが、私はそれじゃあ4枚目を出してもらっていいですかね、4枚目の大きいやつ。この三つのブロックの中でもやはり全体の位置づけを与えることができる、この3番目のマルチモーダル交通体系の評価に関する研究というのをやはりちゃんとやっていただきたいと思います。これは実はどちらかというと後半部分、プロジェクト研究全体期間の後半部分ということで、これから先着手するようなことになっているようですけれども、ここをこれまでの成果を踏まえながら、きっちりやっていただければ、ちょうどこのアウトカムが前の二つを全部カバーするような、こういう箱になってプレゼンされているんでいいと思います。これは事前に送られてきたのと全然イメージが違って、前のやつはちょっとこの7とか8の位置づけがちょっと中途半端でした。人流と物流を区別すること、それを総合的に見ることと、そういうふうな観点がとても大事じゃないかなというふうに思いました。

 それから有効性については、事前に送られた資料を見て、たくさんの論文が学会等に発表されていますので、その意味で高く評価したいというふうに思います。ただ、この点についても論文リストを見ていただければわかるんですけれども、マルチモーダルという言葉が入った研究が1本しかなくて、マルチモーダルで位置づけてやっていたはずですから、今後発表されるときはマルチモーダルというようなことを意識して、特にこういう全体的な位置づけを論文にするような形のものも含めて、ぜひお願いしたいなというふうに思います。

 効率性を言うのを忘れました。効率性というのは2番目のテーマですね。効率性については、いろいろな研究組織が連携して進めているということで、それはこの手の研究、マルチモーダルの研究にとっては大事なことで、この点、今後とも配慮して進めてほしいと思うわけですけれども、私が思いますに、そのマルチモーダルというのは、直列につながったモードの連結性を高める、シームレスという言葉が何回も研究計画に出てきますけれども、横にうまくつなぐという観点と、並列のモードをうまく使い分ける、あるいはインターモーダルのいろいろなルートをうまく使いわけると、そういうふうな二つの意味があると思うんです。この特にシームレス化みたいな話ですと、どうしても港湾と道路とか、そういう違ったモードの共同研究みたいなものになっていくでしょうから、論文なんか書くときも研究機関が協力して、それで共同で学会論文を出してもらうというようなことが、あっていいんではないでしょうか。今のところは、そういうのはまだやはりそんなに多くないというふうに思います。

 それから並列するモードを上手に使うという研究も幾つか、例えば地下鉄で貨物輸送するとか、何かそういうのもテーマとして非常におもしろいと思いますけど、この場合もそういうことを行ったときに、他モードに対してどういうふうな影響があるかということを相互に調整し合いながら、コメントをもらいながら進めたらどうでしょうか。国総研であることのメリットをやはり生かすことが非常に重要だというふうに思います。

 最後のところで、研究成果が施策立案に活用されているという絵がありまして、後ろから2枚目にありましたね、研究成果がたしか。控え目に論文に比べて、まだ数が少ないと思います。これからあと2年間進めることによって、たくさん施策に直結するような具体的な提案ができる分野だと思いますから、またそういうことが成果として発表できるように今後とも進めてほしいと思います。控え目ではなく、こんなふうに役立ったと、どんどんアピールできるようにしていただきたいと思います。

 以上です。

(委員) どうもありがとうございました。

 それでは、他の方から関連した質問であるとか、あるいは評価のご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

(委員) 中間評価ですので、これまでのところは順調に進んでいるんじゃないかという印象を(細かいところは私はわからないんですけれど)受けました。利便性の向上と利用促進ということが一つのテーマですけれども、これについて物流の合理化というような場合に、だれにとって合理的なのかということですね。その輸送業者の効率というものと客の利便とは、往々にしてトレードオフ関係になりがちですよね。それから複数のモード間で最適というんですけど、どういう意味で最適なのかということなんですね。消えかかっている地方鉄道をLRTを導入して利用者が、先ほどお示しされた6倍になるような例があれば、それはサステーナブルだと思うんですけれども、その収益がしばらく上がったとしても、それが長続きしないと、決してそれは最適な結果ではないのかもしれないと思うわけですね。ですから、どの辺をもって合理的であるとか、最適であるとかというのかということですね。

 それから特に人流の場合は、だんだんみんな年をとっていくわけで、金沢でも郊外に人がはりついたとしても、その人たちもどんどん年をとっていくわけですから、年とともに年齢とともに交通機関の選好が変わってくるということもあり得ると思うんですよね。ですから、その合理性とか、最適性をどこに持っていくのかと。一つは、そのシステムのサステーナビリティといったことだと思うんですけど。そのあたりの視点が、ちょっとはっきりわからなかったなと思いましたので、コメントです。

(委員) いかがでしょう。何かご回答とかありましたら、お願いしたいと思います。

(国総研) それでは、商慣行の改善による物流交通の合理化というところを先ほどの説明に補足したいと思います。この店着価格制は、商品を店まで搬入して幾らだよという取り引きスタイルになっていますが、その価格の中には商品価格と輸送費が含まれています。ですけれども、どちらがどれだけというのはわかりません。これを是正するには、その店着価格の中の商品価格と輸送費を分離して、それぞれわかるようにまずしなきゃいけない。そうすると輸送費がこれだけかかっているとわかってきますと、下げようという努力が働くはずです。今はそれがないから、例えばあしたまで10個持ってきてくれというような、不合理な要求が出てくるわけです。それが多頻度・小口配送につながっている面もあるかと思っています。そういうところがわかってくると、輸送費を下げるには、多頻度・小口輸送で注文すると下がらないんで、大口注文して大口で配送してもらおうというインセンティブが働くかもしれません。そうなってきますと、貨物車の積載率の向上、そして走行台キロの低減とつながっていくと思います。社会全体としても合理化でありますし、荷主にとっても合理化になると思います。

(委員) だけどそれは業者側の効率性ですよね。ユーザーの方は、とにかくすぐに物がほしいわけですよね。それと一遍に10個で済むところを100個も持ってこられたら、在庫として持っておかなきゃいかんわけですよね。そういう不利益が今度は生じてきますしね。だからそこまでトータルには考えないんですか。

(国総研) 今のところはそういうことも考えるということにはなっていなくて、今おっしゃったようなことが例えば商品の買いつけ側が、それを望むならそれでいいし、そうじゃなくて、私は輸送費を削りたいから大口配送をお願いしますという選択肢が出てくるわけなんですけれども、今はそういう選択肢を考えることもできない状況ということです。

(委員) わかりました。とにかく頑張って、伝統的な商慣行によって不合理が多々あるが、それをいかに改善するかと、そういう視点でやっておられているんですね。

(委員) それではどうぞ。○○先生。

(主査) 何といいますか、オーソドックスな研究としては、きちんとやられているなという感じなんですけれども、これだけやっていて本当にこういうマルチモーダルな交通システムが実現していくかというと、多分可能性はほぼゼロだと思うんですよね。どうしてかというと、やはり制度ですよね。事業化とか財源の問題をどうするかというところに踏み込んだ政策提言のための研究をしないと、ちょっと難しいんじゃないのかなという気がするんですよね。例えばLRTの導入計画ガイダンスの概要というのがありますけれども、これ財源の話、全然入っていませんから、これだけでよっぽどお金があって勇気がある首長さんじゃないと、まあ無理ですよね。あと結節点なんかも大事なんだけれど、鉄道業界では言い出し者負けという、そういう言葉があるみたいですし、そこと町の商店街さんとの関係なんかを考えると、まあ絶望的な状況があるとか、港湾の電子化とか、シームレス化ということもフォワーダーさんによって随分システムが違うんで、統一化が非常に難しくて、ハード面でも外国に負け、ソフト面でももう負けつつあるという、そういう状況ですし、カーシェアリングもこういう実験をしているのはいいんだけれども、これも大赤字で多分京大で引き取られたんですね、この。京大は便利にされているかわからないけど。

 ところが、スイスなんていうのは、1,000台とか、2,000台規模でもう実際にこういうクラブをやって、ビジネスベースで動いているわけですよね。そういう研究の側面もぜひ追加をしていただければ、こういうオーソドックスな研究というのが、さらに生きていくと思うんですね。そういうところをちゃんとしないと、なかなか今の閉塞感というのは打開できないんじゃないかなという気がしました。

(委員) ほかにいかがでしょう。特によろしいでしょうかね。

(なし)

(委員) それでは、私の方から一つ申し上げると、専門ではないので的外れになるかもわかりませんけれども、一番最初の研究の背景のところで、問題意識として時間と費用というのと、エネルギーと環境負荷みたいなものがあって、マルチモーダルの重要性や必要性があるという流れだとお聞きしていたんですが、最終的にそのマルチモーダルにすることによって、どれだけ効率的で、評価できるのかという話になった途端に、比較的全体的な話と、特にサービスレベルで時間だとか、どれだけ結節点がどうかというところにシュリンクしてしまって、いわゆる時間と費用のあたりだけなのかな。一方で、今の時代でやはりエネルギーだとか、環境負荷という点を出してマルチモーダルが意味があるんだと。それがまさにサステイナブルというキーワードにもつながるので、可能な範囲内でそういった視点も入れていただければいいかなと。それがマルチモーダル交通体系の施策効果の評価項目の中には環境だとかが入っていますけれども、もう少し突っ込んだ形で成果を取りまとめていただくといいかなというように私は感じます。

 ほかにご意見はございませんでしょうか。もし、ないようでしたら、他部会あるいは欠席委員からのご意見をいただいていると思いますので、○○部長さんの方からご紹介いただけますでしょうか。

(国総研) それでは、マルチモーダル交通体系に関しまして、本日欠席なさっている委員、他の分科会の委員からの意見を紹介させていただきます。

 少し多うございますので、主なものに限らせていただきます。2)の効率性について、広範にわたる研究項目の必要性は個別には理解できるものの、全体の成果や目標への達成などを考慮すると、重点を置くべき項目を絞り込む必要があるのでは。3)の有効性について、マルチモーダル交通体系の評価の対象が比較的、個別的な側面に偏っている。渋滞発生による損失や環境負荷低減などの全体的評価にも言及すべきではというところでございます。一つ目の点につきましては、広範にわたる項目ということで、例えば地下鉄による物流新システム、あるいは既存鉄道についても研究してまいりましたが、それらについては16年度までで、ほぼまとまりがつきましたので、残りの部分に努力を集めていきたいと思います。ただ、5年もやりますと行政的ニーズもその間に変化してまいりますので、例えば今回入れようとしておりますLRTの研究は、新たな項目として入れたいと考えています。

 次の有効性についての評価ですけれども、先ほど○○委員からもお話がありましたようなご意見をいただいていまして、まず、この全体構成としては、人流、物流について施策を提言していこうと考えておりまして、それについての評価をパート3ということでやっていく構成をしております。しかし評価していくときに、例えば交通渋滞ですと旅行速度といった指標で評価するとか、あるいは環境負荷につきましては、CO排出量の低減といった指標で、共通的に評価していくように考えています。

(委員) ただいま欠席委員及び他の部会からのご意見もお聞きしましたけれども、これに関連して、本日ご出席の方で。どうぞ。

(委員) 先ほどLRTのご発表でしたっけ、合意形成の話がございましたですね。前回この委員会の第三部会でも話が出てきたんですけど、だれとだれの合意形成なのかということと、それは評価とも関連するんですけれども、その評価軸によって合意できる人とできない人が出てくるわけですから、合意形成もいろんなレベルがあるというのと、それと対象がいろいろあるということで、どういうところを想定しておられて、どういう軸で合意形成を図ろうとしているのかというところについてお聞きしたいと思うんですが。

(委員) 今のご質問はLRTの。両方あわせてですか。

(委員) そうですね、両方あわせてですけど。まずLRTの方で合意形成……。

(委員) この後、事前評価の時間をとりますけれども、関連でご意見、ご回答があればお願いしたいと思います。

(委員) そうですね。お二人からいただけたらと。

(委員) いかがでしょうか。

(国総研) LRTのプレゼン資料で合意形成と申し上げたのは、研究対象がLRTの地方鉄道乗入れですので、軌道事業者と鉄道事業者間で、そのお互いに規格をうまく合わせないといけないものですから、当然投資が必要という中で、それをお互いにどう負担していくのかということと、あとそれをバックアップするために地方自治体が財政的な支援をすると。それについても財政厳しい中で、どこまでなら負担できるのか。議会、住民の合意はどこまでならやられるのかというのを踏まえて、その投資額を決めるわけですので、主に軌道事業者、鉄道事業者と自治体の三者です。その合意形成を促進するためのツールを開発したいということでございます。

(委員) そのときにやはりどういう評価項目があるかによって、環境負荷項目も評価軸に入ってくるとすれば、少々赤字になったって頑張るんだという住民も含めて、そういう合意形成もできるかもしれないし、単に効率性だけですと、先ほど申しましたように効率、あるいはサステーナビリティにしても、いつまでも使っている問題もあるんで、どういうふうに評価項目を考えてやっていくのか、これからちょっと広げて考えていただいたらいいと思うんですけれども。

(委員) では、今のコメントも含めて、何か○○部長さんからご回答があれば。

(国総研) 私見になりますけれども、LRTを導入しようというときの基本的な考え方として、日本の場合ですと往々にして、その採算性は事業者が全面的に考えなきゃいけない。それに対して公共でどの程度補助できるかというスタンスですけれども、そういうスタンスをいつまでも取り続けていていいのか。例えば特にヨーロッパですと、軌道系の交通システムは、都市の装置として必要だという考え方が根強くあって、そのために採算性もあるけれども、装置として必要だ、インフラだという考え方から整理する。事業者ができるだけ採算性を確保してもらうけれども、足らん部分は装置として公共団体も考える。そういうような立場があるかと思うんですね。

 例えばフライブルグの例ですと、路面電車網が発達していて、市内はトランジットモール化していますが、彼らの思想としてはそうすることによって、中心市街地への流入客数がふえる、彼らが中心市街地で買い物をして税金が落ちる、そういったことも考えると、あながち補助するのは理不尽ではないという考え方があります。そういった広い視点もまちづくりと一体化したLRTという文脈の中ではあり得ると思います。

(委員) 先日、第三部会の評価会でも国総研のキーワードとして、リスクマネージメントですとか、合意形成というものがいろんなセクションで考えておられるけれども、その国総研としての統一の見解というか、ある程度研究所全体としての位置づけというものをはっきりした方がいいんじゃないかという話もありました。先ほど○○先生の方からも投資の話が入っていないとかということもありましたけれども、それもやはり合意形成のレベルが事業者プラス自治体ぐらいですと、ちょっと低いレベルになりますが、もっと高いレベルでの合意形成もあり得るということもあるわけですから、その辺をちょっと研究所としても合意形成の方を考えていただいたらどうかなと思いますけれども。

(委員) 全体的な評価の中で合意形成のポイントもあって、いろいろと重要なご指摘をいただいたと思いますので、LRTの地方鉄道乗入れに関する研究プロジェクトの事前評価もございますけれども、とりあえず、こちらの方のマルチモーダル交通体系の構築に関する研究に関して、特段ご意見がございませんでしたら、中間評価の評価シートの方にご記入をいただきたいと思います。

 それでは、記入の方が皆様終わったようですので、LRTの地方鉄道乗入れに関する研究が先ほどのマルチモーダルの新しい研究課題、新規課題として入りまして、既に10分ほどご説明をいただいております。合意形成の点については、関連でもう既にご質問が出ておりますけれども、LRTの地方鉄道乗入れに関する事前評価として、皆様の方からご意見だとか、あるいはコメントがあればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

(委員) 先ほど○○先生からも既にご指摘がありましたけれども、この研究の成果目標のところにキーワードとして、例えば資金調達であるとか、運営管理方法であるとか、先ほども出たリスクマネージメントも含めて、そのマネージメントの仕方ですね。そういうものが、この成果の中から、それに対する考え方が何か出てくるような研究をしていただけると、実際にこれを前へ進めるための参考になるんではないかというふうに思います。合意形成を支援するというよりは、そもそもこういうものを導入するには、どういう考え方でやれば、うまく前へ進むのかというところを具体的に示していただくことが必要なのかなというふうに感じているんですけれども、例えば今まで採算性が悪かったところに何かをして、本当にうまくいくかというのは、多分みんな疑問に思うと思うんですね。ですから過去の失敗をよく見ていただいて、何がうまくいかなかったのかと、何が失敗の原因だったのかというところもよく見ていただいた上で、こうすればうまくいく可能性があると、こういうふうにうまくいく可能性があるというところをできるだけ具体的に示していただくことが、この事業を前に進めるに当たっては必要な部分なんじゃないかなというふうに感じておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

(委員) 研究体制として地方公共団体の役割というのは、現地情報の提供などやはり第三者的ですよね。今までのお話をお伺いしていると、やはりこれは地域の人たち、あるいは地方自治体がどれだけコミットするかが大切です。コミットメントをどれだけ引き出すかみたいなところに大きなポイントがあるような気もするんで、道路の社会実験とか、暮らしの道づくりとか、都市再生とか、ああいうところでやっているような地域の人たちを巻き込んだ調査。調査しているんだか、まちづくりを実践しているんだかわからないような、そういうふうな実験的な研究手法みたいなのが、何かあったらいいんじゃないですかね。客観的に国が入っていって、どうでしょうか、こうでしょうかとやったときに、やはり向こうは補助金をできるだけもらえるような形の対応の仕方をしてくると思うんですね。補助金があればうまくいきますよと。それは、被調査主体と調査者との関係だと、やはりそういうふうな対応になると思う。自分たちの問題として考えないかもしれませんよね。だからほかの施策でも展開しているように実験的に地域へ入っていく方がいい提案が出てくるんじゃないでしょうかね。

(主査) 余り言い過ぎると嫌われるかもわからないですけど、○○部長は地方公共団体からの補助とかっておっしゃっていましたけれど、地方公共団体、そんな余裕全然ないですね、今金なくて。それよりは、むしろ道路特会で使えるようなことをもっと使うようなところを、そのための国民からのサポートと、ドライバーからのサポートが得られるような研究ということが大事なんじゃないかなと思うんですね。それは環境への問題であり、公平性の問題であり、あるいは渋滞解消への効果とか、あるいはまちづくりの効果とかいろいろあろうかと思いますけれども、そうしないと、あと数年たつと本市のお金、改修が終わってあれですよね、余剰金というのが現実問題になってきちゃいますので、ぜひそれまでに非常に大事な課題だと思いますので、ぜひそういうふうなこともどっかに置いていただければと思います。希望ですので、聞き流してくださって結構ですけど。

(委員) ほかにいかがでしょうか。

 ちょっとよろしいですか。今回のLRTの地方鉄道乗入れに関する研究というのは、来年度からスタートされて、マルチモーダルの方はもう14年ですか、スタートされて、18年度までということで、18年度がつながっているというか、連結しているわけですね。こういった場合の新規課題というのは、私、委員、ちょっと初めてなので、どういった形で運営されて、マルチモーダルの成果がまたLRTの方に反映するとか、そこら辺のつながりはどういう関係になるんでしょうか。

(国総研) プロジェクト研究全体としては新規課題、LRTの部分については、18年度から始まります。予算上の整理はそうなっていますが、先ほどの私の説明の中でもLRTのガイダンスを16年度の成果としてつくったと申し上げましたけれども、LRTとしては16年度からの新規課題です。16年度はあのような成果が出ているし、17年度につきましては直営で来年度以降に向けた準備検討をするということで、18年度までがプロジェクト研究期間ですが、LRTの部分はそれ以降も若干続きます。最終評価のときに、やはり区切りですので、18年度まででプロジェクト研究として評価いただきたいと思っております。そのときLRTの部分については、そのときまでのまとめでお願いしたい。それ以降若干出てくる部分はあるかとは思いますけれども。

(委員) 今のご説明ですと、18年度これがスタートしたとするならば、その18年度分はマルチモーダルのプロジェクトにもある程度反映させた形で成果報告され、それに対して評価されると。今もう既に動いているプロジェクトを継続しながら、さらに18年度からスタートするならば、LRTは継続的にマルチモーダルのプロジェクト成果を受けながら、さらに新規課題としても動いていくというような形ですね。

(国総研) はい。

(委員) わかりました。

 ほかにご意見だとか、ご質問等ございますでしょうか。正直申し上げて最後、私が、評価の取りまとめをしなくてはいけない役回りになっているので少々困惑しておりますが、ここで、他の分科会の委員等からのご意見があればご紹介いただきたいと思いますけれども、いかがでしょう。

(国総研) それでは、ご説明します。○○先生から海外事例分析において、都市政策や国民性などの特性の違いに着目して解析し、日本へのLRTの導入の仕方も含めて研究すべきというご意見をいただいております。

 また第二分科会の○○先生からは、LRTの導入が我が国で進まなかった本質を見極めるべきというご意見をいただいております。それに関して簡単な資料を持ってまいりました。これは横軸に路線の沿線の夜間人口密度をとって、縦軸にその路線の輸送密度という用語があるんですけれども、これは鉄道の路線のある断面を切ったときに、そこを1日何人の人が通過しているかということで、どれだけ乗っているかという、そういう指標に当たるわけですけれども、大きな傾向としては沿線に人が多いほど、利用もされているということですが、日本は平均とるとこのあたりにあるのに対して、欧州ではこのあたりにあるというように、相当乖離があるわけですけれども、逆に言うと日本はその沿線にたくさん人が住んでおられるという意味では、ポテンシャルはあると考えられます。これをどう公共交通機関に誘導していくかということが課題かなというふうに思っております。この中で、特に利用されている都市に着目してみますと、例えば国内でも広島はネットワークとして結構しっかりしたものがあるですとか、あるいは長崎も都市の構造が軸状で、路面電車の路線に適した都市であるというようなことが言われております。あと欧州の都市も比較的ネットワークが充実している都市が上位に来ているということから、今回ネットワークの強化をしてみるとどうなるだろうかと、そういうことで研究課題をセットいたしております。

 もう1点、○○先生からLRTの導入、さらには地方鉄道との相互乗入れが行える地方都市は限られており、研究成果の社会への貢献は限定的であるというご意見をいただいております。これはフランス・ドイツ・日本のLRTの過去の経緯を簡単にまとめたものですが、これはここにありますように戦前においては、数千キロメートルというような路面電車のネットワークがありました。フランスは一時ほとんど廃止して、最近かなり復活させてきております。ドイツの方は途中で近代化を行いまして、かなりストックを有効に温存してきており、今も2,000キロぐらいの路線を国内に持っています。日本は最盛期に1,500キロぐらいあって、今はもう200キロで消えゆく運命というところですが、一部、富山のように鉄道からLRTに置きかえて若干路線がふえるというような状況です。路線網を各国の特性を見ながらどうやって有効利用していくかということですが、日本も路面電車に限ってみると200キロぐらいしかないんですが、地方鉄道路線、特に国鉄から第三セクターに転換したものを含めると、3,600キロも路線がございますので、こういったものを地方都市の公共交通網に組み入れて有効に使っていくということを研究したいということでございまして、先生のおっしゃる、その特殊解を求めるというのではなくて、ある程度将来に向けた汎用性を見て研究してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

(委員) ありがとうございました。

 他の部会等からのご意見もいただきましたけれども、本日ご出席の委員の方から追加で何かご意見だとか、新規のプロジェクトとしての事前評価でご指摘があればいただきたいと思いますけれども。

(委員) 最初のグラフの縦軸のうちのLRTが占める割合みたいなやつはわからないんですか。

(国総研) これはすべてLRTです。

(委員) これはすべてLRTだけですか。

(国総研) LRTのみの乗降客数です。

(委員) そうですか。全体の輸送量に対するLRTの比率みたいなやつはわからないんですか。

(国総研) それはちょっとわかっていないんですけれども、フランスの幾つかの都市で調べた感じでは、都市によって地下鉄を持っているところ、さらにはバス、ほとんどの都市がバスを持っておりますけれども、その中のLRTのシェアでいくと、大体半分ぐらいをLRTが占めているような状況です。

(委員) わかりました。

(委員) よろしいでしょうか。

 そろそろ予定の時刻も来ておりますので、この辺で評価の取りまとめを行いたいと思います。いろいろとご意見いただいた点を私なりに整理しますと、まず、非常に重要な課題ではあるという認識ではあります。研究の手法であるとか、あるいは研究の視点等で追加、修正をしながらプロジェクトを実施していただくというのが妥当なところであると思います。特に海外の事例のレビュー等もしっかりしていただく点もございますし、実際上導入の過去の日本における事例の失敗も含めて、本質的に本当LRTを導入するのであれば、どういったメリットがあるのかといった点において、従来の視点だけではなくて、もう少し資金運用であるとか、コスト面であるとか、あるいは環境負荷であるとか、渋滞解消だとか、もう少し他のさまざまな視点からも含めて評価をしていただくということもございました。

 また合意形成の研究の課題も提示されておりますけれども、その点に関しても今言ったような視点も追加されながら、サステイナブルなものであるかどうかというような観点で、LRTの地方鉄道導入についての評価をいただくと。さらには可能かどうかわかりませんけれども、実験的な研究展開というんですかね。具体的な現場を意識して、実験的なまちづくりといいますかね、そういった現場実験的な手法で地域に根差したような導入検討の可能性があるのであれば、そういったことも検討されるとよいというようなご意見もあったと思います。

 ○○主査からのご意見は、私が十分には理解できていないかもしれませんけれども、あくまでもコメントとして提示されたものだというようにお断りがあったので、それは必須条件ではないと思います。ご参考にいただくということで、幾つか修正点なり、コメントをいただいた形で、ぜひ実施をいただくというような評価が妥当かと思っております。

 以上のような、少々中途半端なまとめになりましたけれども、よろしいでしょうか。

(異議なし)

(委員) それでは、これにて事前評価の取りまとめを終えます。

 休憩を挟んで何時からでしょうか。

 では、時間どおり55分から再開したいと思いますので、○○主査にその後、主査の職務をお返ししたいと思います。

(休憩)

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〈事後評価の取りまとめ@道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究〉

(主査) それでは、事後評価の取りまとめという、きょうの非常に重要な部分だと思いますけれども、そちらの方に移ってまいりたいと思います。

まずきょう最初にプレゼンテーションしていただいて、ディスカッションしていただいた「道路空間の安全性・快適性の向上に関する研究」の評価結果がパワーポイントで映し出されております。評価は研究計画、実施方法、体制等の妥当性については「適切であった」が3票。「おおむね適切であった」が5票でございます。成果及び目標・達成度では、「目標を十分達成できた」が1票、「おおむね」が7票でございました。

この研究評価はお手元に配られていると思いますけれども、多数のコメントをいただきました。個別については読んでいただければと思うんですけれども、私の感想で申し上げますと、皆さんのコメントを見た上での感想でございますけれども、高齢社会における安全あるいは快適というものの研究の必要性は非常に高いということで、そのことについて非常に精力的によく取り組んでおられるということだと思います。特に実施策いろいろもう現実に行われているわけでありますけれども、それの効果を計測をして、その取りまとめをされて、それをマニュアルとか事例集等に反映していかれたということは、従来ともすればマニュアルだけつくっておしまいということに比べますと、実際の政策展開に向けた提案ということが、非常に高く評価されていたというふうに思います。

 ただ、こういう力を入れてつくられた、いいデータベースのマネジメントをこれからどうしていくんだろうかとか、対象が若干道路空間ということで限定されているのではないのかなと、特に快適性とか景観の問題に関しては都市計画的な視点というのをもうちょっと入れていただければよかったのになということでございましたし、コストの評価が若干欠けていたのではないのかなというふうな、そういう意見が大きかったように思います。そういうふうにこのシート取りまとめを要約いたしましたけれども、委員の皆様からご意見とか質疑がございましたら、お願いをしたいというふうに思います。いかがでしょうか。よろしいですかね。

(なし)

(主査) それではご意見もございませんので、評価の取りまとめを行いたいと思います。段階評価の集計結果を踏まえまして、本研究としてはやはり「おおむね目標達成できた」というところの評価かなというふうに思います。それでよろしゅうございますか。上から2番目というところで、日本人らしい中庸な評価を皆さんされたのかなというふうに思います。

先ほど申しましたように社会的ニーズが高いところで、かついろいろな実施されている施策を踏まえて、今後の政策展開なんかも考えたいい研究だというふうに思いますけれども、先ほど申しましたように、これからさらにより確実に政策、施策に展開していくために、データベースのマネジメントの問題とか、対象の拡大のご指摘とかコストというふうなところが重要なんじゃないかというご指摘がございましたので、そういう論考をぜひ重要な研究だけに今後とも形を変え、姿を変えて続いていくと思いますけれども、ぜひまたそういう点も加味していただければと思います。

 というふうな方向で評価を取りまとめたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。

(異議なし)

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〈事後評価のとりまとめA地球温暖化に対応するための技術に関する研究〉

(主査) うなずいていただきましたので、そういうふうに取りまとめたいと思います。ありがとうございました。

 では引き続いて、次は「地球温暖化に対応するための技術に関する研究」でございます。これは研究計画、実施方法、体制等の妥当性の結果でございますけれども、「適切であった」が6票、「おおむね」が1票、「やや適切でなかった」が1票でございます。目標達成度は「十分に達成できた」が2票、「おおむね達成できた」が6票でございます。評価シートの要約版がお手元に配られていると思います。

これについては、先ほどの議論を非常に大きな研究をうまくマネジメントをされてというふうな評価が高かったんだろうと思います。その意味もあって実施方法とか体制等については非常に高い「適切であった」という評価をいただいたものというふうに考えました。ただし、目標達成度については、例えば予測モデルのバリデーションというのが必要なんじゃないかとか、国総研のするべき研究なんで、20年から50年ぐらいがいいところじゃないか。100年先と言われてもちょっとという、そういうご意見とか、生態系リスクの評価が必要なんじゃなかったかなとか、大きなフレームであって、それはそれで大事なんだけれども、それを構成する個々の要素技術についての着実かつ確実な研究も重要なので、今後お願いしたいということとか、次に取りまとめます「ITを活用した国土管理技術」との関係というのは若干もうちょっと交通整理が必要なんじゃないかとか、あるいは今後の課題になろうかと思いますけれども、国際指導力等もこれ私が申し上げたんですけれども、視野にぜひ入れて、かつ成果の活用をさらに有効にしていただきたいというふうなご意見でございました。そういう意味で若干注文がつきまして、それが目標達成度では「おおむね」というところが6票だったのかなというふうなことだったというふうに考えました。特にご意見がありましたら、承っておきたいと思いますけれども、いかがですか。どうぞ。

(委員) お聞きしたかったことで、京都議定書への先ほどの都市の緑地の問題とCOの問題いかがなものかというコメントが出ていますし、○○先生からもあったんですけれども、そのCO問題、京都議定書に対するパーセント、3.9%森林で、あと京都メカニズムであと幾つかが0.9%か何とかが技術的な対応みたいになっていますけれども、新聞報道ではもう無理だというような、その評価は100%もう達成できないんじゃないかということもどんどん上がっていると、90年からもう上がっているから、さらに6%の上乗せの部分も出てきていて、その辺についての技術的な対応というのはどうなんですか。

(国総研) これは研究ベースというよりも、もう行政ベースにもなっていく話で。

(委員) そうですね。

(国総研) 確かに今は6%もう余分になっていて、12%下げなければいけないという状況です。ただ政府としては目標達成計画というのをきちんとつくっていまして、一応どの分野をまず下げるというのは全部割り振られています。ですから実はそういう意味では今ここで例えば交通なんでやった部分というのは、第1約束期間の中ではなくて、その次の段階を考えているシステムです。

都市ので考えてみれば中で考えているんですけれども、ほかの部分というのはもう全部外の、先のことということで、ですからちょっと実は今回の研究の中でも最初はシナリオをつくってどれだけ減って、どうしたらいいというのを、もうそこまでやろうというのが最初の目標だったんですけれども、その次の段階になってしまいますと、今度どこまで下げるかというのはまだはっきりしていません。450でいいのか300にもっと下げるのか、それによってはもうCOを半分にしなければだめだという議論まで、そういうところの目標もあって、そうなるとちょっともうシナリオが書き切れないというところの条件になっていますので、ちょっとそこまで行けなかったというところがあります。ですから京都議定書は一応政府の見解としては今の目標達成計画でできますよという行動計画になっている。いろいろ研究をやっていますから、それは先取りでどんどん入ってくる、ないしはそれが先だというふうに考えていただければというふうに思います。

(主査) よろしいですか。ほかにございますでしょうか。

(なし)

(主査) ではないようですので、これも評価の取りまとめということに入りたいと思います。計画とか実施方法とか体制等というのは、非常に高い評価をいただいたんですけれども、目標達成度はやはりこれも先ほどと同様に「おおむね目標を達成できた」というふうな判断をすべきかなというふうに思いました。繰り返しませんけれども、先ほどいただいたご意見でご紹介いたしました。バリデーションの問題とかいろいろございましたけれども、そういうことを踏まえて「おおむね目標を達成できた」ということにしていただければと思います。

 ただし、これも非常に重要な研究でございまして、今の議論からもありましたように、京都議定書で終わるわけではなくて、そのさらに先の中長期におきましても非常に重要なテーマでございますので、さらにこういう方面の研究というのは必要ですし、ここで蓄積された技術、研究成果、技術は本当に純技術だけじゃなくて、制度技術も入ってくるかと思いますけれども、そのことについてのベストモデルを世界に輸出するぐらいの気構えで、さらに邁進していただければなというふうに個人的には思いました。どうもありがとうございました。

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〈事後評価のとりまとめBITを活用した国土管理技術〉

 次がBの「ITを活用した国土管理技術」でございます。これは票田の結果でありますけれども、最初の方が「適切であった」が4、「おおむね」が3、「やや適切でなかった」が1であります。目標達成については「目標を十分に達成できた」が1票で、「おおむね」が7票でございました。評価シートの取りまとめが今配られました。委員の皆さんがおっしゃっていたのは、これ予算規模が結構少ない予算で、そのためにいろいろな工夫をされた。テーマを限定したとか、そのことがよかったんじゃないのかなということであります。ITに着目するという、そういう視点のよさもあったんでしょうということで、「おおむね」をいただいたんだろうと思います。

 目標達成度に関しましても書いてありますけれども、結構この書いているものを拝見いたしますと、目標達成できたというふうに評価してもいいと思うんですけれども、何か皆さん「おおむね」というところにつけておられています。私の解釈ですけれども、期待が大きくてなんか実際には今後についてのコメントが多かったのかなと、それが多少目標達成度についての評価を引き下げちゃったのかなという、そういう印象を持っております。

例えば下水道GISというのがあるから、それを追加したらどうだろうかとか、ITは急速に進化をし続けているので、それの対応を見てと、これも今後の課題だと思いますけれども、対応を考えるべきだとか、国民への情報提供について、もうちょっと力を入れた方がいいんじゃないかとか、具体的なアプリケーションで実践を考えるべきだろうと、その辺がちょっと薄かったんで、これも今後の課題かなと、私はビジネスモデルというのを申し上げましたけれども、また今後のいちょうもおもしろいネタとした方が、ITというせっかくいい、○○先生は「縦軸」とおっしゃいましたっけね。見つけたのにということでありまして、とにかく今後の発展についてのコメントが多いという印象でございました。私このように皆さんのご意見を勝手に取りまとめておりますけれども、何か追加すべきところがあるというふうにお考えの委員の皆さんがありましたら、ぜひ賜りたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですかね。

(なし)

(主査) ではまたすみません。評価の取りまとめでありまして、これも「おおむね目標を達成できた」というふうにせざるを得ないと。その結果を尊重するのであればというふうに思いました。むしろ「ITを活用した国土管理技術」ということで、これもターゲットが非常に大きくて、その分予算との制約もあって具体的に展開された部分についてはテーマを絞り込まれて、それは非常に評価が高かったんですけれども、国土管理技術ということが、これ非常に皆さんの期待感、この研究に対する期待感が大きかったということで、今後についてのコメントが多かったんだろうというふうに思います。政策評価とか国土のモニタリング、あるいは災害防災という観点から、非常に社会的なニーズも大きなかつ強い大事な研究テーマだと思いますので、今後についてのコメントを活用しつつ、さらに展開していただければなという期待を込めて、「おおむね目標を達成できた」という判断にさせていただければと思います。

 ということで、よろしゅうございますか。

(異議なし)

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〈中間評価のとりまとめ@マルチモーダル交通体系の構築に関する研究〉

(主査) どうもありがとうございました。それではこれであれですけれども、次は「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」の中間評価の取りまとめでありますけれども、○○先生に代理していただきますので、よろしくお願いします。

(委員) それでは中間評価の取りまとめに入りたいと思います。評価の対象は「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」ということで、前のスクリーンにあるように研究計画、実施方法、体制等の妥当性については、「適切である」が5、「おおむね適切である」が2、「やや適切でない」が1。中間達成度に関しては「順調である」が2で、「おおむね順調である」6。研究継続性の妥当性については、「計画どおり継続」が3で、「計画を修正の上継続」というのが5ということで、全体的にこういったまとめられております。

 お手元の方には、残念ながら時間的に余裕がなくて、各委員のご意見等がまとめられた資料が配付されておりませんで、私のところに皆様の委員のご意見のものが一式来ており、まとめろと。少々人使いが荒いなと思いましたけれども、事前に一応ざっと読ませていただきました。要は前のスクリーンにあるように研究計画は「適切である」、実施状況は「おおむね順調である」ということと、「計画を修正の上継続」ということになっておりまして、研究の目標自体は非常に重要性があるので妥当であろうということだと思います。

ご指摘や気になる点としましては、やはり今回やられていることが最終的にいろいろな環境面だとか資金面だとか、あるいは交通に対する公平性であるとか、あるいはまちづくりとの兼ね合いからの評価のように、多様な視点なり評価軸で研究成果をレビューしていかないと、やはり従来どおりのやり方で研究成果は出てきたけれども、本当に現実に適用できるのかどうかというところに、各委員の方々が若干不安を持っておられると。そういう意味においては実現可能な施策へ反映できるような形でアウトプットを出していただきたいというところが重要な指摘かと思います。

そのためにも従来の評価軸だけではない、新しく持続性みたいなものの環境負荷低減であるとか、あるいはまちづくりへの貢献力といったようなものも評価されていかなければならない、渋滞時間だけではないというところをしっかりと評価に入れられることによって、実現可能なものに変わっていくんじゃなかろうかと。そういった点に関しては、既に多くのトライアルがなされていて、国内での失敗事例を改めてレビューされることであるとか、海外でうまく行っている事例であるとか、やはり海外の失敗事例等をしっかりレビューされるということが今後の研究継続に大きく寄与するだろうというようなご意見がありました。以上を踏まえると、プロジェクトはおおむね順調であり、そういった点を修正していって、最終的に継続して大きな取りまとめにしていただきたいというようなご意見が書いてありました。

 一応こういったことが意見として集計されておりますけれども、○○部長さんの方から何かご意見があればお聞きしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

(国総研) まさにおっしゃっていただいたとおりでございまして、幸いこの研究は中間報告でまだ後半が残っておりますので、そういった点、十分踏まえて後半実施したいと思っております。本当によろしくお願いいたします。

(委員) それでは私の取りまとめも、十分ではないかもしれませんので、もし皆様の方から追加でご意見だとかありましたら、お願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

(委員) 修正の上継続の「修正」というのはどういう意見が出されておられますか。

(委員) 具体的な。

(委員) どんなことを修正してほしいという意見があったのでしょうか。

(委員) 研究の継続の妥当性の修正の上、継続に関しては、「制度技術の検討を強化してほしい」というのがございました。記入がない方が丸がついている場合がありますけれども、あと「物流体系の検討に際しては実用化、実効化を構築するため、業界団体と協働、うまく連携して考えていくことが実現可能性が高まるだろう」というご意見と、あとは修正の上に関しては、「総合的なB/Cの評価等を考える、あるいは環境負荷、軽減といったようなものも含めた形で評価をすることによって、継続がいいんじゃなかろうか」というご意見。あとは「マルチモーダル交通体系の導入方策、交通結節点の整備方策、制度についての研究を含める必要がある」というようなご意見がございました。よろしいでしょうか。

(委員) ありがとうございました。

(委員) 他にご意見がないようでしたら、これは中間達成度としての評価は「おおむね順調である」という点と、継続の妥当性については3票の「計画どおり継続」がございますけれども、計画をただいま申し上げたような点に関して修正いただいて、継続していただくというような評価の取りまとめとさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

(異議なし)

(委員) では今のように取りまとめさせていただきます。

 それでは休憩を入れますか。

(主査) 入れなくてもいいんじゃないですか。

(委員) それでは予定では「休憩を挟む」と書いてありますが、それでは○○主査にお返ししたいと思います。

(主査) すみません。私研究を担当された○○道路研究官とか、○○環境研究部長とか、○○情報研究官から意見表明をする機会を奪ってしまいまして、勝手にやってしまったのですけれども、何かおっしゃりたいこと。今さらなんですけれども、ございますか。すみません。もしないようでしたら、このまま淡々と進めをさせていただきますけれども。そんなこと言われたって違うというふうなことがありましたら、ぜひ伺っておいた方がいいかと思いますので、ごめんなさい、すみません。ちょっと。

(国総研) すみません。○○ですけれども、2番目の地球温暖化の件で2点、○○先生の方からCOの固定量算定は難しいんじゃないかというのがございましたけれども、量の算定はできるけれども、実際はそんなにプラスにならないんじゃないかという意味でしょうか。計算自体はできるだと思うんですけれども、結果絶対量としてふえるかふえないかということが問題ではないかというふうに。

(委員) そうですね、私もこの専門じゃないんで、素人判断なんですけれども、まずボリュームとして都市緑地というのはどの程度なのかということがよくわかんなくて、中国なんかで植林するとかというのとボリュームに比べると物すごい少ないでしょう。だからそのことが気になったのと、あと固定というのは僕の考えでは燃料として使うとか、木材として使うというCOを固めたやつを取り出して利用しなければだめなはずなのに、都市の緑というのは大体朽ち果てたり燃やしてしちゃったりとかということで、余り固定ということのメカニズムが働かないんじゃないかと、こういう素朴な質問です。そういう二つがあって、固定ということに関連した原単位でもし都市緑化と中国の山奥で荒れ地に木を植えるときの原単位が違うのならば、その原単位の違いというものを教えてもらいたいと思うんです。

(国総研) 原単位的には樹種によって違いますから、それは違うと言えば違うんですけれども、基本的に都市の場合は木の場合は20年ぐらいわっとCOを吸収して、それであと吸収しなくなっちゃうということに普通なっていまして。

(委員) もうちょっと長い。

(国総研) もうちょっと長いですか。そういう中で今都市の緑化で考えているのは、例えば今のある公園をもっともっとどんどん木を生やそうという話だとか、それから街路樹を今ひょろひょろっとした街路樹になっていますけれども、緑陰といってばあっと道を覆うような道路にしてしまおうとか、そういう木の量を本当にふやそうというようなことはできるのではないか。それに対してどのぐらい、じゃそれでCOが還付できるのか。COの還付も、ずっと未来永劫何百年もためていこうというわけではなくて、この30年、50年ぐらいが一番厳しい問題になるわけですから、そのぐらいのスパンでCO固定できるんではないかという、一応そういう考え方です。

(委員) それは昔は緑だったところを開発して、まず取り払って全部住宅地にしちゃったけれども、そこから数えて多少とも街路樹を植えて、大きくなるまでの間だけですがCO吸収できますね。それが定常状態になるまで。

(国総研) 基本的にはそういうことです。定常状態になれば変わらないです。

(委員) 変わらないですね。

(国総研) 基準が90年ですから、90年からどうなったかという判断でいいわけですから。1990年が基準です。

(委員) じゃ90年から都市化したところをマイナス計算しなきゃいけない。

(国総研) 原則で言うとそうですね。

(委員) やはりそうですね。ただそういう意味では京都議定書にどれだけコントリビューションしているのかがわからないんです、これ。

(委員) 森林の議論って多分科学的じゃないと思います。政治政策論的なところが非常に強く出ていて、もちろん細かく成熟期からもしくは老齢過熟期に達してプラスマイナスCOゼロだという、そこに至るまでの議論としては確かに吸収している。でも先生がおっしゃるように、ではそれはせいぜい60年とか70年ぐらい前じゃないかということはそのとおりだと思うんです。今は多分拡大造林期の手入れ不足の森林を間引いて正常な発達をさせることによって、ある程度3.9というのは認められています。これがでも何をやっても3.9に収れんしていくということは非常に変なところでして、だから僕は余り科学論的にやっていないなという感じが実感としてはしております。第2期になったときには日本の森林が成熟期に達しちゃっていますから、ますますその森林の吸収量というのはそういうものでカウントできなくなる気がします。

(国総研) 今の3.9というのは森林の話で、今緑化というのは開発地というとこで、まだちょっと区分が違いますので、そこはまだ決めつけるわけにいきません。

(国総研) 今の3.9というのは森林の話で、今緑化というのは開発地というとこで、まだちょっと区分が違いますので、そこはまだ決めつけるわけにいきません。

(主査) ありがとうございます。

(国総研) すみません、失礼しました。

(主査) ○○さんと○○さんと何かございますか。ありません。すみませんでした。ちょっと手順前後で申しわけございませんでした。ご迷惑をおかけしました。

 それでは、これから評価書の取りまとめ作業ということに入っていくわけでございます。課題ごとの評価の取りまとめ、先ほど私と○○先生が口頭で申し上げました。そちらで速記録つくっておりますので、確認しながら作成をしたいと思います。「マルチモーダル交通体系の構築に関する研究」については、○○先生に。それ以外の課題については私にそれぞれご一任いただければなというふうに思いますが、よろしゅうございますよね。

(異議なし)

(主査) それではそういうことで、異議がないというふうにご承認いただきました。それではこれで事後評価及び中間評価の取りまとめについては終了させていただきます。

 どうしましょうか。休憩をとりましょうか。何分開始。

(事務局) 3時40分開始にしましょうか。

(主査) ということだそうです。10分休憩して40分でプロジェクト研究等の事前評価という6番目の議題に進んでまいりたいと思います。

(休憩)

(主査) 休憩すぐ済んでしまいましたけれども、6番目の「プロジェクト研究等の事前評価」であります。お疲れではあろうかと思いますけれども、引き続き活発な議論をいただきますようにお願いをいたします。

 まず第1番目が「流域における物質循環と水域環境への影響に関する研究」でございます。○○環境研究部長の方から説明をお願いしたいんですが。よろしくお願いいたします。

 

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〈事前評価@流域における物質循環と水域環境への影響に関する研究〉

(国総研)環境研究部長の○○です。よろしくお願いいたします。「流域における物質循環と水域環境への影響に関する研究」ということで、事前の評価をお願いしたいというふうに思います。

 まず最近海がおかしくなっているのではないかということが盛んに言われております。これは三河湾ですけれども、三河湾で言えば矢作川の人口はこんなに倍になっているだとか、下水処理もどんどんふえているですとか、それからダムの貯水量がふえて物質循環に影響を与えているんじゃないかとか、それからそれによっていろいろな要因によりまして、赤潮が非常にふえている。それで赤潮の延べ日数が一時期は450日まで行ったわけですけれども、幾分低くなったとはいえ昭和40年代からまだまだ相当高いレベルにある。またアサリの生産高もどんどん減り続けているというようなことがございます。例えば麻痺性貝毒の発生による貝類の出荷の規制というのが、昭和80年前後はこのぐらいの件数しかなかったのが、2000年前後にはこんなに頻繁に起こるようになってきたと。海、湾などが不健康ではないかというようなことが言われています。

世界に目を移すと、いろいろな意味で人口はふえたり、それから農地の面積がふえたりということで、ある説によるとこういうような地域においては沿岸海域が攪乱されているのではないかというような発表もございます。こういう中で、いろいろと原因とされることが言われていまして、例えばシリカが減っているからこういう影響が起こっているのではないかとか、あとフミン質が逆にふえたり減ったりすることによって、生態系に影響を与えるのではないか、また微粒元素、鉄とかマンガンとかそういうものの流出が変わっているではないか。一方では山は海の恋人とかということで、山を整備すると海が非常によくなるというようなことも言われて、それの信憑性というのはまだ仮説の段階に過ぎない。けれども非常に宣伝されているということがあります。

 そういう中で、では流域と海との関係といいますか、流域から海まで、特に閉鎖性の水域までの物質循環というのを、もう一度考えてみようかというのがこの研究でございます。普通うちの国総研のプロジェクト研究というと、具体的な成果を何かを出そうということで施策につなげようということで、普通プロジェクト研究で提案するんですが、今回は非常に問題が漠としておりまして、どういう成果が得られるかというのが正直言って今のところまだよくわかりません。それでも基礎研究と言えば基礎研究なんでしょうけれども、少しこういうよくわからない研究をみんなで考えるような場を考えてみようかと。そういう中で新しい発見、それから新しい方向性が出てくるのではないかという方向の研究でございます。ちょっと若干毛色が変わっていますので、よろしくお願いしたいと思います。

 どういうことをやろうかというと、結局今何を重要な物質かというのもよくわからない。そういうようなことについて現在の知見でまずそういうものを特定してみよう。それでそういう物質のモニタリングをどのようにやったらいいのかというのを提案してみよう。その後これはいろいろな多分野にわたりますので、森から川から都市から海から、各分野、各研究機関をまたぐような基盤を構築していきたい。本当の概略ですけれども、窒素、リンだけではなく、シリカとか細粒土砂、こういう細粒土砂に微量元素とか有機物というのはくっついているということがありますので、そういうものの経緯を調べていこう。それから流域が今までどう変わってきたかというのを調べてみよう。それのインパクトレスポンスをある程度解析して、それによってモニタリングの提案を行って、統合的な研究基盤の構築というものを考えてみたいということです。

 これは今のことを図にしたわけですけれども、この窒素、リン、炭素、シリカ、細粒土砂、それに付随するバランスの崩れがいろいろな問題を起こしているのかどうかというところを検討していこうということです。流域についてはこういうダムができたり用水路ができたり、都市が発展したり下水道が整備されたりというようないろいろな変化が起こっている。それからダムができたり、河口水域の粒子動態というのは非常に複雑ですので、そんなのも影響しているのではないかということで、それを年度計画ですけれども、そういう物質を抽出して、陸域の動態の変化を検討して、インパクトレスポンスを検討して、モニタリング調査の検討をしよう。ここに研究プラットホームの検討という言い方をしていますけれども、研究開発の戦略ですとか、研究体制の要件ですとか、情報の蓄積と共有化の方法をどうしたらいいかと、そういうようなことをまず2年ぐらいで検討しよう。ここでこの段階で、ではどういう方向に進んでいこうというのがある程度わかってくるのではないかということで、さらに次の段階でそういう管理手法の検討に移っていこうか。本来だったらここまで含めて研究ということに普通はなるんですが、ちょっと今のところ方向性も絵をかくのもまだ難しいということで、とりあえずここで1回考えてみようということにしております。

 対象の領域としましては、割と水産系のデータがそろっているこの三河湾というのと、あと非常に開発が進んでいる東京湾というのを主体にしよう。また必要に応じいろんな比較対象フィールドを各地でつくっていきたいというふうに考えております。この研究については非常に広い分野と一緒にやっていかなければならないということなんですけれども、実は平成15年、16年に国土総合開発事業調整費の調査の部というのがあるのですが、その中で国土交通省の河川局、林野庁、水産庁から下水道部と共同で調査をしております。その調査の結果も海域の生産にどのような物質が寄与しているかというのを概括的に断片的なケーススタディーをもとにつくったというようなことで、必ずしも方向が見えているというわけではありません。ただそういう中でいろんな研究機関なり学識者とネットワークができつつありますので、そういうネットワークを十分活用して、そういう研究のコーディネート役みたいなことをやっていきたい。そういう中で方向性を見出していきたいというふうに考えております。

 いろんな地域からいろんなものが流れてくる。それの正直言って実態把握診断というところまでぐらいの今回は範囲にしております。ここに政策化というところがありますけれども、これはこれからどういう研究をしていくかというのを入れるということで、このマップに落としていますけれども、中心としてはここの実態把握診断で研究のプラットホームをつくっていこうというところ、そういうプロジェクト研究を考えております。

 以上です。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それでは今までのプレゼンテーションに対して、ご意見、コメント等をいただければと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

(委員) このテーマ、前段におっしゃっていたような各研究機関とも連携して、既にやられたような内容がありますよね。それから例の総合科学技術会議で、環境イニシアチブでやっているテーマの一つの中にもこういった物質循環系、例えば東京湾と関東全体とか、淀川での話だとか、そういう議論もあったと思います。ちょっと心配するのは、部長がおっしゃるとおり何かアウトプットがみんなで共有できないと、テーマが漠然としてしまう可能性があって、一体何が不足しているのかというのがまだ見えていないんですね、まだ。

モデルの問題なのか、それを検証するデータがとれていないのか、データをとろうにもどのデータをとったらいいかわかっていないのかとか。その辺がいろいろあるものですから、もうちょっと固めてかからないと、結果が出にくいと思います。次期のプロジェクト提言型の結果を取りまとめる的なお話だったのですけれども、もうちょっと既存研究のレビューで今現状的に穴があいている所は何なのかということを突きとめてからいかないと、結果としてはいろんな要因の複合経過だと。例の環境ホルモンみたいなもので、ホルモンが見つかっても対策が何も見えてこんと言ったような、なんかそういう怖さがあるなと思います。だからその辺をぜひとも、もう少し絞った形でゴールを見据えて、少なくともこれだけは明らかにするといったような、そういう視点がないと結構難しいなという感じが正直言ってします。

ということでちょっと言いにくいんですけれども、例えば生態系の評価なんか、水域生態系の評価を何によってどうするのか、どうなったら何が悪いんだということもある程度提示していただかないといけません。例えば水生態系が悪いという評価は、そこは一体どうなったことなんだということをまず決めておくべきです。いわゆる水域生態系自体の健全性が評価できない状態のときに、じゃどうやってそのデータをとったりするんだということも含めて、難しいテーマだなというような印象を持ちました。

(国総研) まさにそのとおりの難しいテーマでして、ただ例えばケイ酸が減ったら珪藻類が減ってきて、藍藻類や渦鞭毛藻類がふえるという、そういうような断片的な情報は幾つかあるわけです。だからそういうのを中心にある程度そういう断片的なやつをきちんと整理して、じゃそういうものは幾つか仮説が既にあるわけです。そういう仮説を少しつぶすなり残すなりというところをやっていけば、ある程度の先の方向が見えてくるのではないかというふうに、まだ漠然という感じですけれども、そういうふうに手法としては考えています。

(主査) ありがとうございました。

(委員) テーマ的には非常に重要だと私も思うんですけれども、例えば今「美しく良好な環境の保全と創造」という政策課題の中で、健全な水循環系、粒砂系の構築に関する研究が今戻っていたり、沿岸域における包括的環境管理システムに関する研究も行われていたりして、それに比べて若干は違うような気がしますけれども、一方で環境省でも同じように東京湾をターゲットにして研究をしていて、合流式下水道雨天時越流水の研究をやっていたり、荒川流域全体の物質循環の研究などが先ほどのイニシアチブで動いていると。

そうすると今回やられるところは一体どこに特徴があって、他の大きい研究プロジェクトとどこが違うのかというのが、今お聞きした範囲内では明確に特徴を私は余り感じなくて、一番最初の導入の説明のところで三河湾で下水道の処理水が多くなるという表が出てきたりすると、やはり下水道部と一緒にやるのかなと思うとそうでもないというように、どこがねらいでどこがポイントなのか。最終的に物質動態のモニタリング方法が提案されて、それがわかると他分野連携で新しいプロジェクトをどう流域全体の動態解析をすればいいかというようなチームをどうつくればいいのかという提案が出てくるというところが重要だと。

確かに研究手法の提案は重要なんだけれども、本当に2年間でできるのかなと、若干気がするし、そうであれば従来のモニタリングではどこか欠陥があるという、既に認識がないと新しいモニタリングの提案もできないような気はします。そうすると従来から環境省国土交通省が実施しているモニタリングデータ、今はたくさん水環境情報のストックありますよね。それでは何が問題だったのか。例えば水質もはかっているんだけれども、生態系に関する指標である魚だとかあるいはそれ以外のデータがないなど、何か問題意識を持っておられると、そこを集中的にやるべきだと。データや情報がとれているところを見て先ほど三河湾みたいなところは水産データがあるから、それを使うというだけでは研究戦略がわかりにくい。どこが不足している、あるいはどの部分が大事だから、新たなモニタリングの方法が重要だという、何かそういう方向性を打ち出すのか、そこら辺は何かある程度目星を立てておかないと。逆に言うと2年間で本当にどこまで行くのかなというのが、ちょっと心配なような気がするんですけれども。ある程度戦略はお持ちなんですか。

(国総研) 今主にやっているデータ、窒素、リンとかある程度そういうところですね、流域の生態系を考えた場合、いろいろ例えばトリハロメタンのためにフミン酸であるとかってそういうのはやっていますけれども、それが生態系にどう影響しているかという観点でははかっていない。だから鉄、マンガンも、そういう微量物質もいろいろ言われているけれども実際にはそれは沿岸域の魚なり貝なりにどういう影響をきちんと与えているかというのを調べようという観点で河川を調べていない。だからそういうところをさっき使いましたけれども、メインとしてはシリカそれから細粒土砂とそれに付随する微量物質という、そこにある程度ターゲットを絞って、それは今まで余り体系的に調べていないので、それを中心にやろうかというふうに考えています。

 それから2年間でというのはありますけれども、実は今まで2年間調査してきたということもありますし、今年度もその延長で少しやっていますので、実態とすれば今年度も踏まえて3年ぐらいでそういうところまで、その前の2年も含めると5年ぐらいである程度行けるのではないかなというふうに考えています。

(主査) よろしいですか。どうぞ。

(委員) 先週第三部会でしたっけ、それで東京湾の環境についてお話伺って、それこのテーマとかなり近い部分もあったかなという気がするんです。それから後、港研でも同様なことをやられている。先ほど来ずっと沿岸のことは大事だ、大事だと言いましたけれども、研究体制を見ると沿岸関係が全然入っていない。沿岸海洋研究部というのが一つおありなんですよね。どうしてそれとペアにならないのかなという大変疑問に思っています。

(国総研) 相談はしているんですけれども、今ぴったりするテーマがないということで、とりあえず河川と環境でやるということに今回なりました。

(委員) 同じようなお答え、港研なんかのこういう評価のときは、同じようなことですね、上流部は上流部で。やっぱりもうこの際一緒にやっていただかないと、こういう問題は一歩進まないんじゃないかという気がしますけれどもね。

(国総研) 東京湾の話のときには環境研究部も一応一緒に入っていて、そういう情報交換はやっていますので、特定の一緒にやるテーマはないということですけれども、そういう情報交換は十分図りながらやっていきたいというふうに思っています。

(主査) ほかにいかがですか。

(委員) よろしいですか。森から海のプロジェクトでもコメントしたのを自分で覚えているんですけれども、インタビューで。森林分野が調べるとさっきのお話ではないですけれども、森林がなんか栄養を海に供給している議論になって、栄養を供給しているのなら富栄養化に貢献しているのか、森林は、という話になります。そういう面もないとは言わないですが。森林総研がやっているデータというのは多分そういう非常に小流域の、切ったか切らないかぐらいのレベルの話がほとんどだと思うんです。

でも今おっしゃるような沿岸域というのは、土地利用がどんどん入ってくるような構造に徐々になってきますよね。そうするとそこでのギャップが埋められない。大きな流域における森林でやっているデータというのは、非常に小流域なんです。海域に及ぼした影響は、僕は明らかに土地利用による負の影響の方が森林の影響よりずっと大きいと思っています。歴史的に見ていくとやはりこの経済成長時期も含めて、こういう負荷量をたくさん出すことによるマイナスの影響、技術論的に評価できるのはマイナスの影響をどれだけ軽減するかという議論だと僕は思っているんです。

それをどんどん正の影響を海岸に与えていくというような、森は海の恋人的な発想というのは、歴史的に言うとちょっと理解しがたいところがあって、先ほどの栄養を供給するという意味も今一つよくわからない。何の栄養なのか、窒素やリンならむしろ森林は循環系として回しているのであって、川に対して出していないはずだと。だからこそ森林の水はきれいだと言っているはずだというのが僕の認識なんです。

 その辺でぜひとも考えていただきたいのは、最終的な技術論を見ておいていただきたい。この手の研究でやっていくときに特に国総研がやるならば、技術的な対応としてどんなものが可能なのかな。先ほどの藻類の発生ならば、一体どのぐらいニュートリエント負荷を落とせば、例えば今言った藻類発生とかダム湖水の植物プランクトンのアオコの発生とか、そういうものをとめられるのか。そのための低減技術として上流域の森林でやれることはどんなことで、ダムの貯水池内でできることはどんなことなのかとか、そういう具体論として攻めていかないと、やっぱりいいアウトプットが出ないだろうと思います。

(委員) いい影響、悪い影響っていうことは、何か評価しているわけですね。その評価というのはやはり今生きている生物はずっと生きていてほしいというのがあるんですかね。今、東京湾はアナゴが有名だけれども、100年前は何か別の魚だったかもしれない。都市の総人口は動かないかもしれないけれども、住まい方はいろいろ違うわけで、そういうある住まい方のパターンに応じて生物の定常状態ができるわけですよね。そのときにちょうど住むのに適した生物が住んでいるんですよと言っちゃえば、別にいい影響も悪い影響もないんじゃないかというような、ちょっと皮肉な見方もあるんじゃないかと思うんですけれども、そういう立場、そもそも論みたいな非常に素人的な発想ですけれども、どうなっているのですかね。

(国総研) 非常に難しい課題です。環境目標はいかにあるべきかという、この前シンポジウムがあって、○○先生おられなかったですか。

(委員) 発表しました。

(国総研) そうですか。それだけでもう大シンポジウムができるような問題なんで、私が一言で答えられるようなものではないのですけれども、一つの答えは多様性がなければならないんじゃないかというのがそういう環境については必要なものと。じゃどういうところまで行けばいいのかというところは、今はまだ議論百出でもう人が住む前とかという話、それから江戸時代という話、明治時代という話でもなくて、もうちょっと新しくてもいいんじゃないのといういろいろな議論が。だけどいつの時代に戻ればいいという話もおかしいねという、そういう議論百出の段階で、正直言って。○○先生何かありますか。

(委員) 多分いろんな方のいろいろな意見、どこまでという議論については地域の合意ですべきだとか、どこまで投資できるかというお金の問題とか、いろんなものが当然あります。したがって、その目標は地域的な決定が当然あってしかるべきで、科学論だけじゃいけない。今の先生の違うシステムなら違う生態系ができてそれでいいんじゃないかという議論については、リオの地球サミット以降もこれ以上絶滅させる種を増やしてはいけないという明確な宣言があの段階で出されて、日本も新生物国家多様性戦略を国として批准したということは、今の生物多様性を下げるということに対しては極力抑えていかなくてはいけないという宣言を国としてしたと思っています。

(国総研) そういう中で、ですからそういう意味での目標というのはまだ確とはしていないんですけれども、といって今の状況をそのままいろんな仮説がいっぱいで飛び回っているやつを、それはもうないよという話ぐらいは少し出すべきではないかというようなところから方向性を見たいなという、そういう非常に漠とした言い方で申しわけないんですが、方向です。

(主査) ほかに何かございますか。どうぞ。

(委員) 国総研としてこういったテーマで、特に環境部と河川がセットになるということは、やはり河川上流のダムであるとか、河川の管理状況であるとか、あるいは場合によっては都市化していれば下水処理水が入ってきます。さらに、内湾の奥までは行かないまでも沿岸域の港湾設備は国土交通省が管理しているように、人為的に管理したり、人工構造物をつくったり、あるいはそれを整備しているようなところで何が起きていて、何が改善すべきなのかというところを目指すことが国総研のテーマとして大事ではないかと。そこまでは目指さないで、シリカだとか、ダムだとかを対象に、河川の状況に応じて土砂の動きも変わるだろうというのを意識して、研究するところが新しいという見方をしたときに、私はそれでもいいと思うんですが、最終的には先ほど申し上げたような土木構造物や人為的な管理とのつながりを検討すべき内容に行くような気がします。2年間はそこまで行くには困難なようにも思いますけれども、方向性を見たときに、本当に三河湾をターゲットにして、そこに入ってくる河川のどこまで把握すべきかどうかだとか、本当に東京湾がいいのかという対象とするフィールドとして、本当にそこがいいんでしょうか。

水産のデータがあるということからフィールド選定するよりは、プロジェクトで連携する相手分野から見るとその湾までに入ってくるところの汚濁負荷量や物質循環だとか、そちらの方までも含めて対象にされた方が、この研究チームとしては非常に強さが出てくるし、面白みも出てくると思います。砂やシリカの動きにつながっていて何か水産のデータがたくさんあるからここを選びましたという発言があったような記憶がしたので、そうではなくて流入河川のデータがしっかりしているとか、流域の土地利用情報がしっかりしているとか、そちらの方がフィールドを選ぶ条件としては非常に重要なんじゃないかなという気が私はしたんですけれども、そこら辺はどうでしょうか。

(国総研) 国土交通省で管理をしている中を中心にそこである程度勝負しようということではなくて、もっと広い範囲を考えたい。森も入るだろうしもう少し海にも入ってもいいだろうし。そういう中でちょっとここはっきり決まっていませんから言いにくいんですけれども、例えばもうそういういろんな研究機関なりいろいろな大学の先生から、いろんな分野から成る研究会みたいなものをつくって、そういう中でいろいろ議論をしながらやっていこう。場合によっては、じゃ森では何をしようね、海では何をしようね、川では何をしようね、陸では何をしようね、そういうところの議論まで発展したいというふうに考えています。ですから必ずしも川のデータがあるところだけということでは、今のところ考えていない。そういうのはもう少し広い検討をできればしたいなという。

(主査) 川を中心にとにかくコンソーシアムをつくる核になりたいと、そのイニシアチブをとりたいという。

(国総研) 大げさに言うとそうです。大げさ過ぎますが。

(主査) よろしいですか。欠席の方とか他部会の方からのご意見がありましたら。

(国総研) 欠席の○○先生からご意見をいただいていまして、研究は非常に重要性は高いけれども、資料がどの程度そろっているかによって完成度が左右されると。モニタリングをどのように実際の流域管理に生かすかという点を具体的にしてほしいということを言われていまして、そのとおりなんですが、それに向かって頑張っていきたいというところです。

 以上です。

(主査) いかがでしょうか。ほかにございましたら。

(委員) まず一つは、18年度からの第3期の科学技術基本計画が始まりますよね。それをにらんでそこが重点と思っているところと、これ必ずしもフィットしなくてもいいんですけれども、国としてやる研究ですから、どうせ環境はまだ水絡みで続くと思いますので、その辺とどう整合しているのかなということが一つと、それと研究実施体制ですけれども、「他機関との連携(予定)」と書いてあるわけです。土研とそれから港湾・空港技術研究所、海洋、水道部、これはまだ調整中ということなんですか。あと学識者等との連携とか、行政機関との連携と、これはもう連携と書いてあって、この予定の方はこの2年間で7,000万という金額を、そっちの土研とか港湾・空港技術研究所の方に幾らか配分するとか、そういうことで予定になっているということでしょうか。

(国総研) 2番目の方からですけれども、まだ始まっていませんので、ちょっと予定なんですが、先ほど事業調査調整費でいろいろ準備を進めているという話をしましたけれども、実はその後に昨年度科学技術振興調整費を要求して、同じようなことをやろうということの準備をしました。その中でいろいろな大学の先生ですとか研究機関と一緒に協働で研究のペーパーをつくりまして、その中でいろんな情報交換もやりましたので、そういうベースがある程度ありまして、そういうメンバーを中心に一緒にやっていきたいというふうに。ですからまだ決まっていないけれどもある程度想定はしているということです。でもお金についてはまだちょっと全然どうするかというのは考えていないんですけれども、基本的にはそれぞれのところでそれぞれやるというのが、今のところ基本的に考えているところです。

 それから総合科学技術会議との関係ですけれども、総合科学技術会議で、具体的などういうテーマになるか今のところまだはっきりしていませんけれども、水循環、生態系の保全という中でのテーマとしては入ってくると思いますけれども、逆に研究の中身が非常に基礎的ということで、どこまで総合科学技術会議の議論と合うかというのが、今のところまだわかっていませんので、そこのコメントは今よくわからないというところです。

(委員) 効率性という観点の評価からしますと、これ2年間で7,000万というのは、どこにどう使われるのかなというのはちょっと考えるところもあります。先ほどお話聞いていますと、結構、萌芽研究的なやり方でやられるような気もしまして、リソースの有効配分というんですか、その辺は考えていただきたいと思うんです。

 以上です。

(主査) ありがとうございました。議論も尽きないところではございますけれども、時間が迫っておりますので、このあたりで評価の取りまとめということにしたいと思います。出されたご意見、多分二つに分かれるんだろうというふうに思います。今まで東京湾を初め、こういう水環境における物質循環の話をいろいろやられてきて、難しいのでもう一度じっくり腰を据えて考えてみたいということで、それについては重要だろうというふうなご意見だったと思いますけれども、でも2年間という短い時間を考えると、余りじっくりあっちもこっちもと言っているのはちょっと難しい面もあるから、もうちょっとターゲットを明確に絞った方がいいんじゃないでしょうか。そのためにやっている研究でもあるんですけれども、そういうことは重々ご承知の上でそういうご意見だったと思います。

 それともう一つは、今も出ていましたけれども、第三分科会で審議された研究テーマでも、科学技術会議、あるいは環境イニシアチブ等での研究等との関係がありますから、その辺の関係については十分配慮いただいて、かつコミュニケーションをきちんとしていただきたいということでございましたけれども、そういう意見はありましたけれども、それを一部修正してというほど強くはなかったような気がするんですが、いかがですか。ですからそういうご意見をいただいたということで、きょうの研究計画を実施すべきというふうな評価の取りまとめに私としてはしたいんですけれども、そういうことでよろしいですか。

(異議なし)

(主査) ではそういうことにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 それでは次、引き続いてこれも○○部長ですけれども、「地域活動と協働する水循環健全化に関する研究」でございます。お願いをいたします。

 

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〈事前評価A地域活動と協働する水循環健全化に関する研究〉

(国総研)では「地域活動と協働する水循環健全化に関する研究」ということで、先ほど科学技術会議の話がございましたが、実はこちらの方がそれをちょっと意識した研究になっております。今までいろいろ土地利用の変化ですとか都市化とかということで環境が劣化してきたと。一時期最悪の状態は脱したけれども、なかなか横ばいないしは若干下がり気味みたいな状況で、これからどうしていったらいいのかということが、今少子高齢化みたいなことも含めて曲がり角みたいなところにあるわけです。

 今までは行政主体でいろいろな事業をやって、この辺の改善はしてきたわけですけれども、これからは多分行政だけではそんなに効率的ではないし、うまく行かないのではないか。何もしなければさらに悪くなるだろうけれども、行政ハード主体だけでもそんなによくはならない。今後は例えば住民がごみを流さないとか、いろんな清掃活動をするだとか、そういういろんなことで環境をよくすることが必要だろう。さらには産業や生活スタイルを変えるようなところまで行くようなことも考えられるのではないか。いろいろなシナリオといいますか、ビジョンといいますか、そういうのがこれから考えていかなきゃならないんだと思います。

 そういうことを先ほど合意形成の話のところですとか、私のところでも地球温暖化の中でも地球環境だけでは住民は活動しないんじゃないかといういろんな議論がございます。こういうビジョンを設定したときに、どういうビジョンがいいか議論をしたり判断をしたり、絞り込みをすることが必要になってくるわけですけれども、それにはどうしたらいいのか、また地域活動、住民が参加したりライフスタイルを変えるみたいなことをどうしたらうまくやっていけるのかというようなことを考えることが非常に重要なわけです。

 特に住民が何かを活動しようというとき、問題となっているのは環境指標、例えば水質で言えばBODが幾ら、CODが幾らと言っても普通の人は何が何だかわからない。それから環境改善、では私が何か活動したらどれだけよくなるのというのもなかなか見えてこない。それから後は行動に移すときにいろんな……、先ほどもちょっと話がありましたけれども、活動に移るときのいろんな意識の低さなり抵抗の大きさなりの問題がある。こういう問題を解決しなければならないわけですけれども、そういう環境というのはどういう程度のもの、今現在なり、変わったときの環境ってどういうものなのかというのを実感する。それから自分が何かしたときにどの程度効果があるのか、それから自分が活動するときの参加をしやすく、積極的になるような手法は何なのかというようなことをまとめていく必要があります。

 これは一般論で、では実際に何をやったらいいのかというのは、具体的にはなかなか難しいわけですけれども、そういう中で先ほど○○先生から話がございましたように、具体的に地球温暖化だけでは人は動かないよという、何かの目的だけでやりましょうと言ってもなかなか動かない。じゃいろんな効果があるだろう。例えば雨水の貯留という、それぞれ皆さんのうちに雨水升をつくってためてくださいよと言ったときに、それは今まで河川管理者が治水効果があるからやってくださいと言うこともあるし、ただ治水効果だけではなくてその水をうまく使えばヒートアイランド効果にも役立ちますし、それからもちろん水質改善にも役立つわけです。

こういういろいろな効用がある。それから例えば今非常にソウルの清渓(チョンゲチョン)川が復活して、東京の渋谷川でもいろんな議論になったりしていますが、水路再生ということにしても、治水効果だけだとなかなか同意をもらえない。それが水面ができるとヒートアイランド効果になりますよ、それから火事のときには延焼防止にもなりますよ、それから浄化用水導入みたいなことをすれば水質改善になりますよ。いろんな効果があるわけです。

逆にある施策をとらえるときにいろんな効果を、もうすべて評価をして、それも例えば個人的な便益、ヒートアイランドで言えば電気代も節約になります。それから気温も下がります。もう少し地域的な便益、それから電力のピークカットとかCOの排出抑制とかいうような国家的な便益、さらには地球的な便益、こういうのを重層的にきちんと把握する。いろんな分野を網羅的に把握する、こういうのをとらえてそれぞれの施策の効果を評価してやろうと。それをいろんな活動の支援の手法を使って現実化をしていこう。こういうことをやるときにはなかなか頭の中で考えているだけではうまく行きませんし、いろんな現実にトラブルも起きますので、ケーススタディーを並行してやって、それとフィードバックしながらこういう手法をまとめていこうというのがこの研究の全体像です。

 特にこれは水路再生につきましては今非常にトピックな話題になっていまして、いろんなところでやりたいという議論があるわけですけれども、なかなかうまく行っていないところもあります。水路再生については特段便益というのを、今言ったいろんなレベルのいろんな効果をそれぞれ網羅的に取り上げて、それをできるだけ経済便益に評価をしてやろうというのを考えています。そういういろんな経済水域は水路体制に特化したものですけれども、それだけじゃなくていろんな施策についていろんな効果を、じゃ実際にどういうふうに一般の住民に見せるのか、実体験をしてもらうのか、そういう手法を今回特に新たに開発するというわけじゃないですけれども、今までいろいろなシミュレーションとかバーチャルリアリティーとかといろいろありますので、そういうのを1回整理して、こういう手法がこういうときにはいいんではないかというのを考えていこうということです。

 さらに先ほど社会受容性ということで、こういうグラフの市民活動について初期の抵抗が大きいとか、継続的な抵抗が大きいとかというところの説明をしましたけれども、それを踏まえて、ではそれをうまくやるには具体的にどうしたらいいのかというのを考えていこう。これは例えば水質でいいますと、いろんなそのモチベーションの人がいるだろうと。モチベーションが高い人はもう何も言わなくたって行動に移すだろう。モチベーションの非常に低い人は何を言ったってやらないという人もいるだろう。少しはあるけれども低いグループについて抵抗がいろいろあるけれども、じゃ例えば先ほどの指標を的確に伝えるだとか、効用をあなたがこうやったらこれだけよくなりますよというのをきちんと伝えるということによって、モチベーションを上げて行動に結びつけよう。それから逆にこういうことでも余りよくわからないけれども、例えばイベントに参加するような気持ちだったら、この抵抗が減ってすっと行動に行くとか、あとはマスコミだとかタレントをうまく使えば余り考えなくてすっとこっちへ移るとか、行動の抵抗を下げてやる、こういうようないろんな手法が先ほどのいろんな人に対して考えられるというのがあるわけです。

 つまりこういうのをきちんとある程度、先ほどの地球温暖化研究でいろいろ社会科学の先生にもまとめていただいたので、それを参考にしながら具体論としてこういうのをまとめていきたい、そういうふうに考えています。それを先ほど言いましたように実際のモデル地域に適用して、モデル地域でシナリオをつくって、それを議論しながら皆さんがうまく行動に結びつけてくれるような手法をまとめていきたいというふうに考えております。これが先ほどちょっと出ました科学技術基本計画の話で、今第3次の前で基本方針を出したわけですけれども、その中で環境と経済をよくし、持続可能な発展を実現というのが大政策目標にあって、その効率政策目標の中に持続可能な生態系の保全と利用、健全な水循環と持続可能な水用途があります。こういう中で他の研究機関等と連携しながらやっていきたいというふうに考えているところであります。

これは年度別のフローですので、そろそろ時間がなくなってきましたので、とりあえず以上で説明を終わらせていただきます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それでは質疑に進んでまいりたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

(委員) ちょっと質問なんですけれども、地域住民の方々がこれは主体的に活動するというためのものという解釈でよろしいんでしょうか。そのときにNPO企業ということも出ておりますけれども、情報を与える、あるいはモチベーションを上げるというようなことで、なかなか地域の方々って本当にここに書いているような理想的に動いてくれるんだろうかというのが、やはりたまたま私は道路なんかでやっているんですけれども、難しいところがありまして、そういった具体的にこういうことをしたらこうなりますよみたいな実際の絵を見せるみたいなところが、ちょっと必要なんじゃないかなという気がします。

 以上です。

(国総研) 住民活動だけということではなくて、ある施策をきちんと理解してもらうということにもなるわけです。例えば水質改善で言えば下水道をやればこうなりますよというのをきちんと実体験として把握してもらって、ああそれだったら下水道料金払いましょうとか、下水道事業に賛成しましょうとかいう、そういうことにもこれは使えるというふうに考えています。ちょっと前の方に負担と活動というふうに書いたと思うんですけれども、負担するという意味と活動するという意味と両方での参加ということを考えています。それからまさに、おっしゃったようになかなかわかってもらえないというところをいかに今までいろんな手法がシミュレーション等でありますので、そこを1回きちんと整理して、どういうときにはどういうふうなものが使えるというのをきちんと整理して、マニュアル的に提供したいというふうに考えております。

(主査) ほかにいかがですか。

(委員) テーマとしてすごく重要ですし、国土庁の水循環の健全性の指標に関する委員会に出たとき覚えがあります。水質についてはもうある程度できていると思います。問題は水質だけでは今のいろんな事業をやっていくときの効果があらわれにくくなっているのが今の現状かなという感じがします。この水循環の健全性について確かに公害問題から水質がずっと取り立たされていたんですけれども、それこそ80年代かもしくは70年の後半ぐらいから変わりました。例えば清渓(チョンゲチョン)川の問題だとか、川の再生とか、そういう議論というのは、どっちかというと川の構造やそこに住んでいる生物種の問題です。その評価が、必要になってきていると思います。

だから水質で事足りた時代から実はもう少しそういったそこにいる生物との問題と、あとは川の構造みたいな物理的な、もしくはせいぜい植生を含んだような構造的な問題を取り入れた水循環の健全性みたいな内容でないと、水質だけになってしまうと弱いなという感じがしています。最後の研究マップでは水質指標になっちゃっているので、それはもうほぼ終わったのじゃないのかなと、正直言って思います。むしろ水質資料以外の今言った生物種とか川の構造だとか、そういった形での指標化が重要で、水質ももちろん入るとは思うんですけれども、トータルとしての水循環の健全性の指標化というのは、多分今後の事業評価にとっても重要なのかなという感じがしました。その辺をぜひお願いしたいなと思いました。

(国総研) おっしゃるとおりで、ちょっと水質の方が説明がしやすいものですから、使って説明していますけれども、要するにここにいろんなことを、ここにはエコツーリズムとか書いていますけれども、まさにこういう生態系の多様性というのはそういうところが点々のところで入っていまして、なかなかうまく書けないのでちょっとこんなふうになっていますけれども、そういうことを十分検討したいと思います。

(委員) 地域活動を協働するというところが研究プロジェクトのポイントで、水循環の健全化ということが重要なテーマであることは概念的に言われているようです。一方で今の説明の中もそうですし、この概要書の中でも水循環健全化という用語と、水環境健全化というものが混在しています。要は水の循環の中で水環境というのをどうとらえていくのとか、水の問題はどうしても地域住民本位での議論になるので、そこに住んでいる人にとって水辺の空間だとか水環境がよくなるためにはとか、水の流れとしての健全化と水環境が何か断りもなく一緒に混同されているのかなという気がしました。水環境の健全という話になると、今私実は環境省からの受託の水環境健全性指標の検討委員会のメンバーに入っていて、これまた手ごわいテーマですが、水の量や流れ、循環だけでなく、さっき言った水質もそうだし、生態系もあるし、場合によってはそこに水文化なり水環境に関する歴史的なものだとか、文化だとかという点も含めて議論をすべきというように、水環境の健全性の概念は複雑なものではという検討を今実はやっていると。

そこまで議論しないまでも、もう少し地域の人たちがどう水循環や水環境の健全化に貢献する中で、いかに自分たちもベネフィットを得て水循環や水環境がよくなるというようなところをはっきりと書かれた方が、シナリオや施策が実際に動くわけですから、全く無垢の自然のところではなくて人が住んでいるところで、水循環や水環境をどうしようかというようなところを明確にされた方がわかりやすい研究テーマになるのかなと感じます。タイトルを変えろというんじゃなくて、中身自体がそうなのかな。やはり地域活動というところがポイントなので、そうかなと思いました。

 もう一つは、最終的には地域活動を活性化するマニュアルみたいなものができて、モデル地域での実践をやるという話が書いてある点についての質問です。私もその委員会に入っていたんですけれども、この前の都市水路の検討委員会で提案があって、モデル事業をやりましょうということで大津市など何都市かが手を挙げておりましたけれども、そういうところを意識されてモデル地域の選定を考えておられるのか。これは質問です。

(国総研) ちょっとそこまで具体的にモデルをどこにするかというのはまだ特定していません。例の都市水路ですか、あれもいろいろなケースがあって、どれが一番なじむかという問題もありますし、ただふたしたやつを取るみたいなだけのところもありますし、いろんなケースがありますので、ちょっとその辺もきちんと見ながらモデル地域を選定したいと思います。

(主査) いかがですか、どうぞ。

(委員) その絵を見ると、個人便益、地域便益、国家便益、地球便益というのでそれが全部うまくつながっていって、一人一人が便益を感じる仕組みだとすれば、それがインセンティブになってそういう仕掛けとかを普及しよう、あるいは協力しようとかなっていく。それが地域便益になると、いいわけですけれども、必ずしもそうならないわけですよね。

(国総研) なりません。

(委員) そのときにやっぱりそう思わない人に対して、それを強制的に規制みたいな方法でやっぱり守ってもらう。水質に関し、これ以上汚いものは出してはいけませんよとか。散歩道をつくりましたから一緒にみんなでそこで楽しんで利活用しましょうねということと、どうしても強制的にお願いしなきゃいけないこと、好き勝手にやってもらったら困ることもありますね。

そういうようなことでこの辺の規制の仕組み、あるいはインセンティブメカニズムというのかな、そういうものがやっぱり一番制度設計では大事になってくるような気もするんです。そのときにさっきのわがままな人たちとかごねる人たちをなんか説得すればいいという……、これがちょっと余りにも単純なモデルで、こうは行かないでしょうと思っています。関心の低いグループはタレントを活用すれば大丈夫という、そういう話じゃないような気がするんで、もう少し制度として今までの規制政策とか、あるいはボランタリーな仕組みでうまくやっていく仕組み、そういうやつがやはり王道じゃないかと思う。タレントの活用というのは邪道じゃないかと思うけれども。

(国総研) それは必ずしも「規制」というところについては、規制でやれるようなところは既にもう相当やってきていますし、ある程度それはこういういろんな仕掛けがなくてもそれだったらしようがないなというところ、よほど汚くなったとかよほど悪くなったとかという、そういうところは規制で多分行けるんだと思うんですけれども、今ある程度そこそこ規制までは行かないけれども、みんなで納得しようねというようなところが今一番手法としては確立していないのかな。そこを中心に考えていきたいというふうには考えています。ここに書いてあるのはちょっと例としていろいろ書いていますので、若干書き過ぎたところがありますが、そういういろんな手法でいろんな人に対して、先ほども地球環境のところでも言いましたけれども、いろんな人に対していろんな手法でいろんな手を使ってやっていこうというのが、この図の趣旨であります。

(主査) ほかにいかがですか。どうぞ。

(委員) 今、流域では河川整備計画をつくるということで、いろんな都道府県で川づくり会議とか住民が入った活動がどんどん展開されていると思うんです。そういったところ、既にもう動き始めているものをどういうふうにとらえるのかというのが一つで、今回この国総研が、新たにそういうことをやっていないところでやろうとするのか、あるいはもう既にやっているところ、そこは結構府県なんかも絡んでいたりして、研究実施体制の方は地方整備局、事務所とは書いてありますけれども、そういう地方自治体は余り配慮していないような感じもするんです。

 それで、こういったものを取り扱うときに、例えばファシリテーターとか、それからリスクコミュニケーションとか、そういう新しい概念なり手法がありますよね。そういったものが余りここの文書の中には入ってこないし、漠然とやりたいことはわかるんですけれども、何か新しい概念の検証をするとか、あるいは何か研究として得られる成果というんですか、この概念が提示されているけれども、うまく行くのか行かないのか、その辺を検証するとか、研究である限りは何かこういったやり方の目玉とか検証結果とか、なんかそういうものが欲しいなという気がするんですけれども。

 以上です。

(国総研) 確かに今いろいろもう既に動いているところは、先進的に結構あるんですけれども、今割と特に都市部での動きの中で問題なのは、本当のごく一部の人だけやって、なかなかみんながついてこない。もう結果的に何か全体……、多くの人にやってもらって、もっと環境をよくしようと言ったときに、なかなかそういう大きな動きにならないというところがあると思います。ですから、そういう本当はごく一部しか動かないところをもっとたくさんの人に広げていくような手法を考えたいというのが今回の一番、今までのこととは違って考えていきたいところと考えています。

(主査) それでは例によりまして、欠席委員とか他の分科会の委員からの意見がありましたら、紹介をお願いします。

(国総研) ○○委員から意見をいただいていまして、研究の必要性は高いと思うが、地域活動活性化手法の具体的なイメージがわかりにくい。地域住民を取り込んだ水循環健全化に向けた地域活動活性化手法が構築されれば、社会への貢献は大きいという意見をいただいていまして、もう皆さんからご意見いただいたとおり、具体的なイメージというのがまだはっきり出ていないところがありますので、モデル河川を動かしながらきちんとさらに具体化をしていきたいというふうに考えております。

(主査) ほかにございますか。それではこれも取りまとめをするという角度で取りまとめたいと思いますけれども、多分実施すべきということでいいんじゃないのかなというふうに思いました。研究マップにあらわれていますように、今まで基礎研究をされてきたので、蓄積が出てきたからそれを実践していく上で解決すべき問題があるのでやりたいと。地域活動ということで、地域との協働というところをくくりにするということが高く評価されて、これが大事なんだろうということだと思います。

 ただそのときに、○○委員からのコメントにもありましたように、イメージがよくなかなかわかりにくいということで、それに関してインセンティブメカニズムをどうつくっていくという制度設計に関する話を○○先生からいただきましたし、リスクコミュニケーションとかファシリケーションというのをどうとらえていくんだということも、これはやっぱりコミュニケーションをする上で非常に重要な話ですし、そのときにコミュニケーションで何が議論の中心なのかというときにいろいろあるかとは思いますけれども、「水循環の健全性」とか「水環境の健全性」という言葉が混在しているんだけれども、その中身をもうちょっと詰めると、さらにその辺のイメージがはっきりしてくるんじゃないのかなという、そういうご指摘だったように思いますので、その辺を考慮していただいて、大事な研究ですので実施に進んでいただければなという評価の取りまとめにしたいと思います。よろしゅうございますか。

(異議なし)

(主査) ありがとうございました。それでは次でございますけれども、「下水道管渠の適正な管理手法に関する研究」でございます。説明をお願いいたします。

 

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〈事前評価B下水道管渠の適正な管理手法に関する研究〉

(国総研)下水道研究室長の○○でございます。私がご説明申し上げます。

 課題名は「下水道管渠の適正な改築修繕時期等の推定手法に関する研究」でございます。まず研究の背景でございますが、下水道は戦前から大都市の一部で整備が行われてまいりましたけれども、本格的な整備は昭和33年ごろの新下水道法の制定、ないし水質汚濁が社会的問題となりました昭和45年の公害国会のころでございます。下水道整備の進展に伴いまして、下水道管渠のストックの延長も急速に増加いたしまして、昭和40年代には3万4,000キロだった延長が、今では平成14年度末で35万9,000キロという大変な量のストックとなっております。ちなみに地球と月の距離が39万キロメートルでございまして、それには及びませんが地球1週の4万キロの約9倍といったような距離になってございます。

 これだけ膨大なストックが大部分道路の下に埋まっております。下水道管渠の損傷を原因とした道路陥没事故も多数出ております。ここにあります写真は、これはつくばの国総研の南側にあります県道で発生しました道路陥没事故の様子でございまして、緊急にマンホールから下水をくみ上げるためのバキューム車が来ております。国総研の平成14年度の調査では、全国で約年間3,000件、陥没事故が発生しております。

 次に研究の背景についてでございます。一つにはこのように膨大なストック量となってきましたので、本省下水道部ではアセットマネジメント導入のためのガイドライン策定の検討を始めました。またこの6月16日でございますけれども、発表されました小泉総理が議長を務める総合科学技術会議からの意見提示におきましても予算人材配分で推進すべき分野として、社会基盤を適切に維持管理再生する技術の技術開発が掲げられております。

 次に研究の必要性でございます。下水道管渠の維持管理の現状といたしましては、下水道管渠の中にラジコン戦車のような自走式テレビカメラを入れまして、傷み具合を画像で目で判定するといったことで、必要な改築修繕工事をしているというのが実態でございます。下水道管渠が傷む原因としましては、年数の経過による老朽化はもちろんのことでございますが、場所によっては下水やたまった泥から腐食性ガスである硫化水素が発生し原因になることがございます。

 下水道管渠の傷みを放置しておりますと、破損して土砂が流入するなどして道路陥没の原因となります。当研究室が行ったある種の調査では、ここの表に示しましたとおり、道路陥没の原因となりました下水道管渠の不具合の種類は46.4%が破損、クラックが12.5%、それから継ぎ手のずれが23.1%、それからその他が17.9%というふうになっております。このような現状を踏まえまして、保守点検、特に調査方法や点検箇所の抽出、補修清掃の頻度について適正化、効率化を図り、下水道管渠の適正管理及び道路陥没の防止を図っていく必要があると考えております。

 ところで、下水道を管理する地方公共団体も限られた予算の中で適正管理に努力しておりますけれども、ストックが膨大ですから十分な点検調査や補修改築工事が行われていないというような実態がございます。どのようにしたら効率的、適切な点検調査や改築補修工事ができるのかといった評価手法につきましては、個々の公共団体の中だけでは限界がありますので、国が全国規模で見渡して調査検討を行う必要があり、よい研究成果が得られましたら、国庫補助金を使って建設された下水道管渠が長持ちしまして、道路陥没の危険も減らすことができるようになると考えております。

 次に研究の概要ですが、下水道管渠の改築修繕時期など、維持管理の効率化の指標になりそうな項目を評価指標候補として選定いたします。例えば人口1,000人当たりの下水道作業員とか、毎年全管渠延長の何%をテレビカメラで調査しているかとか、建設、年次別、管材別、下水濃度別の管渠延長などを考えております。どの評価指標が管渠寿命や道路陥没件数や維持管理費用などの現状の維持管理に大きく影響しているのかを評価、解析しまして、寄与度の大きいものを評価指標として選定しまして、合理的客観的な管理方法を明らかにしていきたいと考えております。

 次に年次計画でございますけれども、初年度18年度は国内の民間企業、公共団体での適用事例、及び国外において下水道事業に適用した事例の調査を行います。これによって下水道管渠の維持管理水準について、評価指標の考え方及び評価指標の抽出方法として適切なものを検討してまいります。これは先ほど出てきました表の再掲でございますけれども、下水道原因の道路陥没事故の事例調査を行いまして、陥没事故の原因やそのもととなる現象を分類分析しまして、維持管理方法との関係を調べてまいります。研究内容につきましてですが、下水道維持管理実態調査をアンケート及び現地ヒアリング方式で、下の方でございますけれども、評価指標抽出の予備情報を集め、整理解析して必要に応じて全国データベースの骨格構成を検討します。

 道路陥没事故のメカニズムを解明するために、現地から抜き取ってきた下水管渠を破壊試験し、それから地山の土質調査をし、模型実験により土砂流入のメカニズムを調査したいと考えております。それらの試験値や調査結果と、管渠破損や地盤空洞化現象との関係を検討しまして、評価指標による破損、老朽化度の推定精度を検証していきたいと考えております。

 次に19年度からの調査内容ですが、評価指標の抽出を行います。それを統計分析によりまして寄与度が高い指標を選び出して重みづけもあわせて算出します。また道路陥没事故のメカニズム、すなわちどのような条件で地山の土砂が下水管渠内に流入するかを解明しまして、陥没事故防止に必要な要因条件を分析し、評価指標の抽出に反映していきたいと考えております。さらに平成19年度以降、1、2の事例でケーススタディーを実施しまして、適用性を検討した上で総合的な推進方法の検討を行い、マニュアルを作成してまいりたいと考えております。

 本研究の目標としましては、こういった手法を用いました評価手法を策定しまして、効率的な維持管理を実現し、維持管理の効率化、施設の延命化、道路陥没事故の減少を図り、もって国民福祉の増進を図ってまいりたいと考えております。

 最後に研究成果の活用についてでございますが、一つには本研究成果のマニュアル化によりまして、全国の下水道事業への普及を考えておりまして、二つ目としましては本研究成果の下水道事業への適用が先鞭となり、あるいは足がかりとなりまして、社会資本全般、つまり下水道以外の社会資本の維持管理業務についても有効な評価手法として活用されていくと、こういったものを期待しております。

 以上でございます。

(課題説明終了)

(主査) どうもありがとうございました。ではご意見をいただきたいと思います。どうぞ。

(委員) 下水道に限らず維持管理の高度化といいますか、適正に管理して延命効果並びに第三者被害の防止というのは重要なので、ぜひやっていただきたい研究だと思います。ただその中でこういう維持管理という世界でいいますと、なかなか情報を集めるのが難しいんじゃないかなと思います。この先ほどのナンバー9のところですか、アンケート、技術ヒアリングによって下水道の維持管理実態調査を行うということになってございますけれども、もう少し違うページでF市の状況というのもございましたけれども、実際に今下水道の維持管理されているのが市町村もしくは市町村が集まってきた流域下水道の事業だなと思うんですけれども、なかなかそういったところでデータを今まできちんと保存しているかというと、多分ほとんどないんじゃないかなという、ちょっとうがった見方をすればそういうことかなと思いますので、そのあたりをどうやって調査するのかというのを少し数の問題と精度の問題といいますか、記憶だけに頼って答えるようなアンケートだとちょっと問題が出てくるかなという気がしましたので、そのあたりをご注意願えればと思います。

 以上です。

(国総研) コメントをさせていただきます。確かに回収率の問題が難しゅうございまして、全国で事故3,000件と申し上げましたけれども、これは回収率で割り戻ししていまして、回収率は7割ぐらいだったと思います。まだまだ補助事業で国庫補助金が入っているので、一定の協力は得られるんですけれども、だんだん維持管理の時代になりますと国庫補助金がなくなってきますので、協力度は下がってくるというような実態があります。ただこれは最終的には公共団体自身の経営改善に役立てられることになりますので、ご理解がいただけるんじゃないかと期待しております。

(主査) いかがですか。

(委員) そういったストックマネジメント、アセットマネジメントが非常に重要になってきていると思います。下水道自体は非常に見えにくい、見えない施設なので、これらのマネジメントがやりにくい部分があって、それのマニュアルができると非常にありがたいことだと思うんですが、若干気になっているのは大都市はある程度管理をするパワーがあって、実際に下水道管理台帳も電子化されていて、かなり効率的にどこで問題が起きそうだということが検討できる状況にあるけれども、逆にそうではない自治体では台帳データは紙のページのままで残っていると思います。維持管理指針で電子化することが推奨されているということはありますけれども、今の状態ではなかなか進まないといったような中で、どう正しい情報を集めてくるのかということが非常に難しい点になると思います。

 そのときに、今回の対象はとにかく道路陥没が起きるぐらいのひどいところについて、それでも3,000件近くあるので、そこをターゲットにしてとにかくひどそうなところはどこで、どういう現象で起きたのかを集中的にやるんだという立場でアンケートをやられるということで、この段階としてはいいんでしょうけれども、実はそうならない前にどこをどう直せばいいかというのが本当に知りたいところだと考えます。その次に対してどうステップアップできるのかという部分も、例えば20年度の3年度目のところでは議論いただくことが非常に重要なのかなというような気がしましたので、ぜひ可能な範囲内で検討いただければと思います。

(主査) ほかにいかがですかね。どうぞ。

(委員) 施設を延命化すると、ライフサイクルコストはやっぱり安くなるということが証明できれば、今その整備の進んでいないところにも進んでやった方が得だという気持ちになりますよね。その証明はもうできているのですか、それともこれからするんですか。壊れたら直しにいくという対応だと、結局高くつきますよということはもう証明されているんですか、それともそれはこの研究の範囲の中なんですか。

(国総研) この研究の一つには、スクリーニングというか、調査費が限られていますので、なるべく調査した区域に多く故障箇所が見つかるように場所選定をするというのがあります。それからまだアセットマネジメントの方が十分研究されていましたので、どのような補修をすればどのような延命が図れるかというのがまだわかっていません。だからそれが明らかになってくるのを待たないと、今ご指摘のようなことは難しいかなと思います。

(委員) そういうのを将来含めてもらえるといいですね。そうするとわかりやすいですね。

(主査) ほかにいかがですか。どうぞ。

(委員) 10番目のパワーポイントのところで、破壊試験、土質試験等々とありますけれども、これは現場で何か実験をおやりになるという理解ですか。こういったいろいろ今まで年間3,000件もありながら、そのメカニズムいまだにわかっていないのかなという、ちょっとがっかりしているところがあるのですが、さらにこういう基礎的な研究をしないとわからないという現状だと理解してよろしいですか。

(国総研) 破壊試験、土質試験全く行われてきておりません。破壊試験は調査のために掘り起こしてくると非常にお金がかかりますので、何とか地方公共団体の協力を得て、陥没事故が起こった、補修するといったそのときに、隣接管を何とか調達していきたいというふうに考えています。それから土質試験は、現場の土質を調べることもさることながら、地表面の土質はかなり文献でいろいろ出ておりますので、それから統計処理をして事故が起こったような場所がどういう土質の山のところで起こっているかというような解析をしてまいりたいと考えております。

(委員) これは、上水道の方でもこういった研究は全くされていないと理解でいいですか。

(国総研) 私の知るところ、ございません。

(主査) よろしいですか。きょう午前中の最初にやった交通事故も、10年ぐらい前全く同じ状況だったんですよね。警察は事故調書をつくっていたんですけれども、それは責任追及のためだけに使われていて、インフラの整備とかヒューマンエラーの発見とか、そういうのに全く使われていなかったんです。それで警察と道路管理者で協力をして、組織的な事故データのアキュレーションを組織的にやり始めたら、事故多発地帯とか、どういうところに特徴があるかとか、それに対して対策が出てきましたので、多分そういうことをきっかけになる研究だと思うのです。ですからアンケート調査もいいんですけれども、もうちょっと何かその辺の自動的にデータが入ってくるような仕組みとか、そういうところもぜひ視野に入れていただきましたら、いろいろな意味で非常に大事な問題だと思いますので、いい政策とかアセットマネジメントにつながっていくんじゃないのかなという気がいたしますけれども。

 ほかにございますでしょうか。では欠席された方から何かございますか。

(国総研) 1点ございます。それでパワーポイント1枚準備してきましたので、それをお示しながらご説明したいと思います。

ご指摘は欠席の藤田委員からでございまして、「研究の必要性は理解できます。しかし新たな管理手法が現在の管理手法よりどれくらい広範囲かつ精度よく下水道の問題箇所を発見することができるのかということを具体的に示していただくと、研究の効率性、有効性が判断できます。」このようなご指摘をいただいております。先例がありましたら、数値的にご紹介できるんですけれども、未開の分野を拓くということで本当は本研究が仕上がってみないとわからないんですけれども、せめて現状で言える範囲でちょっと情報を集めてみました。A市とB市、これ政令指定都市ですけれども、ここでテレビカメラ調査をやって、一番下の青のところがA判定といって、一番ひどい状態です。それからB判定もそれに準じてです。だからこの二つは直さなければなりません。それに対してC判定というのは直すほどではありませんというもので、できれば調査するときはこれは省きたいんです。これをつかまないように、このAとBをつかむように調査をしたいというふうに考えています。

 そうすると例えばこの研究成果でスクリーニングをすることによって、この60%が半分にできれば3割調査費がカットできて、それだけ幅広く調査範囲を広げることができるといったような効果が期待できると考えております。

(主査) ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。皆さんのご意見は非常にこれからの維持管理の時代に大事な研究であるというご意見だったと思います。ただ情報収集が難しいので、その辺に留意されてぜひお願いをしたいということであります。特に大都市じゃない、余り実力のないところで、むしろこれからこういう問題が深刻になってくると思いますので、その辺もぜひよろしくお願いをしますということでありました。

 相当先の話になりますでしょうけれども、こういうモニタリングを担当すると、結果的に安くなりますよということなんかもぜひアウトプットとして出せればいいなというご意見がありましたことを申し添えて、ぜひ実施していただきたいという評価を取りまとめとしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは次ですけれども、4番目であります。「気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究」でございます。説明をお願いしたいと思います。

 

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〈事前評価C気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究〉

(国総研)「気候変動等に対応した河川・海岸管理に関する研究」ということで、河川研究部と危機管理技術研究センターとの協力で取り組んで行く予定です。平成18年度から21年度までの4カ年の研究で考えております。

 これは気候変動による河川・海岸管理への時間的、地域的な影響を予測して、影響レベルでの各段階においた対策について検討するわけですが、二つの背景があります。気候変動の短期的な問題として、最近気候変動の激化による異常豪雨とか異常小雨の増加がございます。また中長期的な気候変動によりまして、例えば先ほどの地球の温暖化等、50年後、100年後の影響というのがありまして、それらに対しての河川・海岸管理への影響が予測されております。それらはIPCCの話でありますとか、午前中の議論で出てきましたので、詳しくは省略させていただきたいと思います。

 これが研究背景の説明の一つ目の短期的な影響についてのものでございます。特に昨年10回も台風が日本本土に上陸するというようなことがございまして、これはこういった短期的な異常気象等に対応するための豪雨対策の委員会等が開かれて、例えば中小河川における洪水予測でありますとか、警戒避難体制等々の重要性がうたわれておりますし、またことしの6月は異常な渇水があって、7月に入って雨が降ったんで、何とか救われたんですけれども、こういった状況がいつ起こるかわからないということで、これらの短期的な問題に対しては、降水量予測情報の活用した水管理、特に気象庁の降水予測が非常に最近精度が向上しておりますので、それを活用した水管理手法の開発というのが求められているということであります。

 これは長期的な影響といいますか、50年後、100年後を目指してあらわれると考える影響について示しております。これは年降水量でいいますと、10%、15%程度の降水量の増加が想定される。またシナリオによってはもっと大きな変化があらわれるというようなことで、これらについて河川海岸部分に非常に大きな影響があるということの対策を考えようというものであります。

気象庁の降水量予測情報の高度化というのを示した絵でありますけれども、現在は全球地球モデルで60キロメッシュで12時間更新、216時間予報といったようなものが、例えば18年度以降でありますと全球地球モデルで20キロメッシュで6時間の更新ができると。また雲解像大気モデルの5キロメッシュの予測が3時間更新で18年度から始まるというような、こういう高精度化が進められる。こういう予測の高精度化を研究の背景にしております。

これは総合科学技術会議のイニシアチブの図でございますが、午前中も出てきましたが、この研究については地球温暖化の研究でありますとか、水循環の変動研究が関係してくるのではないかと考えております。これは午前中にも出てきた絵でございますけれども、二つの大きな流れを考えております。研究として一つ目は上段であります降雨予測情報を活用した水管理を検討しようと。下の流れは非常に長期な気候変動の影響に対して河川・海岸管理を考えていこうと。トータルあわせてこういった気候変動、短期的な気象変動も含めた水災害の防止軽減を図っていこうというものであります。

これは研究の年度計画でありますが、一つ目の大きな流れの降雨予測情報に関連いたしましては、降水量予測情報を用いた洪水判断予測に関する検討、または避難基準水位等の設定に関する検討、またダムの効率的運用手法に関する検討と、こういう三つの流れでありまして、上段については大体3年ぐらいをめどにしてケーススタディー、また取りまとめを行い21年度には実管理への応用を図っていきたいというふうに考えております。

下の大きな流れで、温暖化による長期的な河川・海岸への影響と対応策ということに関しましては、四つの大きな項目があって、河川管理といいますか、河道を中心とした部分、また2点目として氾濫域の安全度への影響と対応策の検討、また3点目としてダムや利水を含めた水管理への影響と対応策、それと4点目は海岸についての検討というふうに考えています。それぞれについて気候変動予測データの分析を行い、モデル地域のケーススタディーをして、4年目には最終的な対策面の検討ということで考えております。

それぞれの中身でございますが、一つ目の柱の降雨予測情報を活用した次世代型水管理の中の降水量予測情報を用いた洪水・氾濫予測に関する研究と、避難基準水位の設定に関する研究、この二つを一つの絵にしておりますが、従来左にありますように洪水被害を拡大する原因として、降雨量の予測情報というものが十分活用した予報がされていなかったということがありますので、そういったものをうまく活用できないかと。なお右の流れにございますように、最終的に洪水予報を警報に生かし、また避難勧告とか指示の基準水位の設定にもこれらを活用していきたいというふうに考えております。研究計画としてはいろいろ新規の氾濫モデル等の検討も進めていきたいと考えております。

これは一つ目の柱の3点目になります降水量の予測情報を用いたダムの効率的運用手法に関する検討ということで、左が非常に粗いメッシュで予測しておりますので、一つの色になっておりますけれども、右側の流域の図面、これはダムを五つほど配置した図面でありますが、非常にメッシュの細かい、例えば5キロメッシュの予測ができますと、それぞれの効率的なダム運用を図れるというようなことをちょっと模式的に示しております。これはダムの効率運用の一つで、要するに大洪水が予測されて降雨量予測を予測された際に、事前放流というものを行いまして、利水容量を使って、それをポケットをあけることによって実際に洪水が来たときに、台風等が来たときにその容量で洪水を防ごうという、利水容量の有効活用でございます。

二つの柱がありましたけれども、二つ目の柱、これが長期のものでございます。左が全体のイメージを示しておりますが、将来的に豪雨の頻発、渇水の頻発があった際に、いろんな対策を個々にちりばめております。ハードな対策、ソフトな対策ありますけれども、ハードであれば堤防のかさ上げ、ダム・遊水池の新設等ございますが、全体として計画等の見直し等もあるわけですけれども、ソフトの対策として下流域でいいますと、洪水予警報、それと利水の水利権の転用等々を考えるわけであります。

その細目でありますが、長期の検討の中でもこれは一つが河川管理に関する研究でありますが、特に堤防の破堤リスク等の評価することによりまして、破堤リスクの増大を評価して、それをそれぞれソフト対策、ハード対策考えながら河川管理手法の提案をしていこうというものであります。

次は温暖化による海面上昇予想や河川のことも含めまして、流域を視点に置いた検討を考えております。氾濫源の対応について検討したい。特に氾濫域の安全度評価指標の開発といったものを、それと対応策について検討したい。これは水管理ということで、ダムでありますとか、水資源の関係でございます。最終的には水利権の転用、ダムの容量の振りかえ等々が考えられると考えております。

これが最後でございますが、長期的な検討の中でも海岸防護方策の検討ということで、海面の上昇、IPCCの報告などでも大体0.09メートルから0.88メートルという、かなりの上昇が予測されていることで、将来的な人々の住まい方も踏まえた中での検討を進めていきたいと思います。研究マップは、特に対策技術のところについて弱い部分がありますので、それを重点にやりたいということでございます。

最後に研究の実施体制でありますが、特に気象予測の部分については、気象庁と綿密な連携を図っていきたいと考えておりますし、特に気候変動の長期的な部分につきましては、既に大学の関係者ともいろいろ意見交換を進めて、こうした研究を進めようということで考えております。

以上、雑駁な説明になりましたが、ご説明を終わります。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それではご意見あるいはコメントを賜りたいと思います。どうぞ。

(委員) 既に事後評価があった○○さんのプロジェクトのフォローアップのテーマですので、ぜひとも進めるべき課題だと思っております。一つの弾力的なというか柔軟な管理方法の件につきましては、雨の予測の確度が高まってきたということですけれども、まだそれでも不確定性があるわけですから、その不確定性がこれだけのときに事前放流ですか、これぐらいしたらいいという、そういうインプットの確からしさと、それに応じた予備放流の仕方、そこの図式化をうまいことできるとおもしろいんじゃないかなと思っております。

 それからもう一つは地球温暖化対策の方ですけれども、ハードな対策もやはりある程度必要だとも思いますので、将来10年後か20年後かだんだん予測の確度が高まってくると思うんですけれども、そうしたときに既存の施設、あるいはこれからつくる施設がまた20〜30年後に拡張できるような設計法というんですか、そういうようなものを考えていったらどうかなと思うんですけれども。ですからリスクを評価するだけではなくて、リスクがわかってきて、その確度が高まったときにそれじゃもう絶対これだけは上げないといけないなといったときに、拡張できないような施設ですとまた1からつくるとか、何か抜本的にやり直さないといけないんで、今からそれに備えて拡張可能な設計方法を考えるとか、そういうようなものも視野に入れてもいいのじゃないかなと思っております。

 以上です。

(主査) ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

(委員) 今の質問に絡むのかもしれないんですけれども。私も事前放流できたら確かに良いと思います。でもこれ失敗すると利水容量を食ってしまうということで、大変な社会的問題を起こす可能性もあります。その予測の程度が今の現状でどのぐらいまで行けるのか、検証した方がよいと思います。過去のデータからシミュレーションがある程度できますよね。仮にこの段階で落としていたらこれだけの洪水容量が実は確保できていたとか、現状である程度シナリオ的にチェックはかかるはずなので、今回新たにした場合にどこの精度上げていくのか、どうも今のお話を聞いていると、気象庁のモデルが相当重要なのかな、という感じがします。インプットの部分が非常に予測精度として重要で、例えば空間的なサイズと時間的な整理の問題として、そこから流出に変換するところはある程度もうできてしまっているのかなという感じもしました。共同研究で国総研河川部としてはどの辺に力を入れるのかなというのがわかりませんでした。気象庁が非常に強くご説明の中で出ていたので。

(国総研) 予備放流については、ことしの3月に昨年の新潟の刈谷田川の水害等を契機にして、ダムの容量を有効に使うということで通達も出されておりまして、実際各ダムで、今までの知見の中でどこまで出せるのかというのを検討するということで、大きなダムについては今盛んに検討している最中です。ただしそれをさらに効率よく容量のセットの仕方をするか、どうするのかということについて国総研にも宿題が来ておりまして、そういった中でこういった気象予測をどういうふうに使っていくかということを考えていきたい。

 それであと信頼性といいますか、気象予測の信頼性、どこまで信頼性を持って、何時間予測だったらこの程度のパーセントで信頼ができるといったようなことの信頼性のチェックもしながらやっていくということになると思います。それと流出モデルについては、今まで貯留関数のモデル中心でやっていますけれども、分布型モデルについてもいろいろこれから検討していかないといけないということになろうかなと思います。ただしこの中の研究では、今実際の管理に使っているようなモデルがベースになって、それのインプットデータはどういうふうにしていくかと。それとあと流出とのキャリブレーションがどうなるかと、そういうようなことが一番のポイントになるんじゃないかなというふうに思っております。

(委員) 予備放流の空振りリスクを最小化するとか、そういうような研究。

(国総研) もうそれは実際に管理をする立場になってくると、責任問題になりますので、どこまでやるかというのは非常に大きな問題です。だから余りいいかげんなアウトプットは出せないというふうに思っております。

(委員) でもある程度みんなが納得できるようなリスクの評価ができていたら、空振りしてもみんなが納得してもらえるというか、それは合理的な判断だったんだという、そういう枠組みづくりができたらいい。

(委員) 逆に自然に予測できた場合に、これが将来的に「予備放流できたのにしていなかったじゃないか」と、訴訟的な、そういう問題もいずれはあり得るだろうな思います。地域住民は常に人間がピークを予測できるように思っているので、人間わざとしては今言ったような空振りというのは当然あり得ますよね。それが訴訟的な議論になったときに利水の方でも訴訟が起き得るし、洪水時に避けられたんじゃないかという議論も起こり得るなという、非常にその意味では諸刃の剣というか。

(国総研) ことしの3月にそういう事前放流について、ある一定のダムについては検討しなさいという通知を出す際にも、そういった大きな議論がありました。検討してその上で予備散流はちょっと難しいよねということであれば、ダムの管理の一つのルールとして、これはやむを得ないと、今までのやり方でやりましょうということになる。検討もせずに予備放流もしなかったというのはちょっとまずいだろうということで、そういう通知が出されています。ただしこれからは気象予測がどこまで使えるのかということも含めて、予備放流のことを検討する。もう既に降った雨であれば、あとは流出だけですからいいんですけれども、これから降ろうとする雨についてはかなりそういうリスクがあるというのは十分踏まえた上で検討しようということになっています。

(委員) 対応策の中にダムの新設とございますけれども、新しい有効的で経済的なダムサイトというのは、どのぐらい残されて、この議論の中でどのぐらい重要度があるかちょっと教えていただけますか。

(国総研) ダムサイトは物理的にはたくさんあると思うんですけれども、社会的にそれが認知されるようなダムサイトになるかどうかというといろいろあろうかなと思います。例えば109ある1級水系でも、将来的にダムを考えられるサイトというのは、1級水系それぞれに幾つかあるかもしれませんし、県の管理している河川もありますし、ただし今の社会状況を考えると、それは物理的なものと社会的なものとを考えながらやらないといけない。「ダムの新設」というのを書いていますけれども、これは選択肢の中から落としてしまうというのは問題だろうということで挙げております。ダムの新設と言ってもいろいろなタイプのものがあろうと思います。小さな小規模ダムの地域生活に供するダムってあるとか、いろいろなものもあると思います。選択肢の一つとしてはあるというふうに認識しております。

(主査) いかがですか、ほかに。どうぞ。

(委員) 降雨予測情報を活用した次世代水管理のプロジェクトで、新しい洪水氾濫予測モデルをつくるという部分で、今回の場合かなり大きい流域に対して外水氾濫をイメージされた研究を行なうものだと思うんですけれども、実際上の水害被害というなかには都市の内水氾濫による被害もかなり重要で、既に河川と下水道が一体化して氾濫解析するような議論が進んでいます。今回はその研究の対象ではないんでしょうけれども、いずれはそういった気象の降雨情報の予測が上がれば上がるほど、要は河川と都市域の下水道のポンプ調整のあり方だとかというところに今回の研究成果が反映されるので、今回の年度内には入らないと思いますけれども、それのための布石というか、どうあれば将来の展開があるかの議論もしていただきたいと思います。流域レベルでの降雨予測の精度が向上してくると、流出解析も分布型のモデルで実施すべきだとか、あるいは地理情報システムについてはこういった解像度のものを組み込むと下水道とのつながりを考慮可能になるのではというようなこともぜひ視野に入れて、研究を進めていただければと思います。

(国総研) 今直ちに手を広げると、どこまでできるかというのがありますので、今回の研究の中でそういったことについても配慮しながら考えていきたいと思います。次のステップにつながればというふうに思います。

(主査) いかがですか。それでは欠席された方からの、あるいは他部会のご意見の紹介をお願いします。

(国総研) きょう欠席された○○委員の方から、既に問題化している課題であって、早急に実施すべき課題であるという認識の下で、二つほどご意見をいただいております。まず時間スケールについての記述が書かれていなかったけれども、リアルタイム予測も含めていろいろ時間スケールでの予測を考えてもらいたいというのが一つと、海岸の環境問題については河川の物質動態の変化も考慮すべきではないかという、この二つをいただいています。時間スケールについては、特に降水量予測情報についてはリアルタイムも含めて少ししっかりした形で考えていきたいと思います。長期の視点では、午前中の議論でも出ていましたけれども、100年後ではなくて途中の段階もという話もありました。正直申し上げて気象庁とかいわゆる気候変動を予測というのは、今は100年後しかやっておらず、こっちが勝手に外挿して予測するわけにもいかないので、気象庁ともそういう予測ができないかということで、今いろいろやりとりしている最中でございます。 それと海岸の環境問題で、河川の物質動態の変化、例えば水質問題とかまでターゲットを広げると、ちょっとしんどい部分があるんですけれども、そういったことも将来的な問題として視野に入れて、いろいろ海岸のことを検討する際に検討していきたいと思います。ただしそれをメインのターゲットにやるのはちょっとしんどいのかなというふうに考えております。

(主査) どうぞ。

(委員) 今の「リアルタイム予測」ってどういう意味ですか。

(国総研) リアルタイムというのは要するに将来の降雨量を含めて、今現在時点で即時的に予測するという、そういう実管理に時々刻々生かすように、その予測を使っていこうという、そういう意味合い、私はそういうふうに認識してこの○○委員のお話をお伺いしましたけれども。

(委員) 3時間ごとに気象庁が将来の降雨量を予測するわけだから3時間ごとに計画を見直すというのが一つ考えられるのかなと思ったんですけれども、ただ河川の方はずっと上流の方まで実際の降雨量を自分でデータ持っていたりするから、そのデータはリアルタイムで入ってきますよね。だから水が流れてくる時間のことを考えたりすると、リアルタイムで予測情報を含めてどうなるか、ということをある程度精度を高くできるのかなというふうに思ったんです。

(国総研) おっしゃるとおりだと思います。実際このリアルタイムで予測する場合にはもう既に降っている雨の予測情報も入れながらやらないとできませんので、そういう前提のモデルになろうかなと思います。

(主査) ありがとうございました。僕は疲れてきましたし、これでうまく取りまとめられるかどうかわからないんですけれども、「実施すべきである」という話だったと思います。午前中のフォローアップ研究なので、ぜひやってくださいと。降雨予測の詳細度も精度も上がるので、それをぜひ積極的に活用すべきなんですけれども、気象庁だけではなくて、ここから先の話もぜひカップリングしてお願いをしますということでありました。

 あと私よくわからないんですけれども、こういう降雨予測の精度をダム管理とかそういうのに使うためは、言ってみればきょう、あすの話ではございませんね。それと気候変動といったときに随分時間差があると思うんです。その辺の経過で資料にはちゃんと書いてありましたけれども、きょうはちょっと議論少なかったようにも思いますので、その辺はぜひ切り分けてお願いしたいと思います。特にやっぱり先の話をきちんと考えて、しかるべき手を打っておくということが、このモデルの絵の中でも土地利用の話とか、ダムの話とか、河道改修の話とか、相当いずれも時間のかかる話ばかりでございますので、その辺についても気候変動等の影響をきちんと考えられる環境ができてきたのかなというふうに思いますので、ぜひ大事な研究だと思いますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。ありがとうございました。

 あと二つあります。頑張っていきましょう。次は「地域被害推定と防災事業への活用に関する研究」でございます。ご説明お願いします。ご苦労さまでございました。

 

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〈事前評価D地域被害推定と防災事業への活用に関する研究〉

(国総研)それでは「地域被害推定と防災事業への活用に関する研究」、ご説明させていただきます。危機管理センター長の○○でございます。どうぞよろしくお願いいたします。関係の研究部はここに書いてございますように、河川研究部と沿岸海洋研究部でございます。研究期間は18年度から20年度まで、約1億6,000万という予算を予定してございます。

 研究の背景でございますけれども、まずこの課題では、対象にしている現象、災害としまして土砂災害、水害、それから地震災害、津波災害といったような災害を対象にしております。その中で例えば斜面災害、地震による地盤災害等につきましては、簡便かつ精度のよい被災度の推定手法がまだ確立されていないという実態でございます。それからご存じのとおり、近年激甚な水害が発生しておりまして、危機管理上、浸水想定区域だけではなくて、水害による人的、物的被害の想定も必要になってきております。それから地震時でございますけれども、盛土ですとか斜面、それから津波に対する安全性の評価手法がまだございません。そのために地震が来たときの被災イメージがなかなか明らかにならないといったような実態がございます。

 それから防災事業計画だけではなくて、災害時対応も被災イメージを事前に把握、共有することで相当改善が可能になってくるのではないかと考えております。特にソフト対策ですとかあるいは緊急対応、そういったことがかなり改善できるだろうということがございます。それから現在残念ながら防災事業実施方針というのが、ベーシックな技術的な判断に基づいてなされるわけではなくて、依然として経験等に基づく部分が多いといったような実態もございます。

こういった実態からこの研究を開始しようというふうになったわけでございますけれども、土砂災害のリスクに対しましては、災害規模と発生確率を評価できるような手法を確立しまして、その上で最適なソフト対策、ハード対策の組み合わせ手法を検討するというようなことを考えております。それから洪水氾濫シミュレーションにおいては、氾濫特性を踏まえて人的、物的被害の想定技術を開発するとともに、上下流、本支川の治水安全度評価システムを開発して、減災のためのハード・ソフト対策について検討するといったようなことを考えてございます。それから地震及び津波に対しましては、河川施設、海岸施設、港湾施設、道路施設等に発生する被災の評価手法を提案しまして、これを防災計画や災害対応の改善に活用する手法を提案することを考えております。それぞれ現象は異なりますけれども、全般的なスタンスといたしまして、これまで非常に広いエリアの被災程度を予測するといったような手法あるいは着眼点から、できるだけミクロな視点を持ってそれぞれの渓流ですとか、あるいはそれぞれの保全対象、それからそれぞれの施設、そういったものに焦点を絞って、被災予測をしようと考えております。それからそういった予測の結果に基づいてソフト対策に役立てていこうといったような、そういうスタンスをとってございます。

 実施方針でございますけれども、こういった災害は非常に複合的に生ずる場合が多いということがございます。それからいろんな災害の場合に情報の共有・伝達、また、警戒・非難といったソフトの場面では、個別の施設管理にとどまらずに、部局間の連携が必要だということで、こういった災害の特性からこのプロジェクト研究では各災害分野の密接な協働のもとに実施するといったような方針を立てております。

 最終の成果の目標でございますけれども、先ほど申し上げましたように施設または地点ごとのミクロな被災リスクの評価手法の開発を行うということでございます。それからその被災リスクに基づく防災事業の合理化の支援方策を提案するということが二つ目でございます。それから被災イメージに基づきましてソフト対策、ハード対策の発災時対策を改善するための方法論を提案するということが三つ目の目標でございます。

 こういった成果を活用する方針といたしまして、まず災害に対する危険度を客観的に評価した上で、防災事業の効率性や透明性を高めることが可能になるということが考えられます。それから起こり得る被害を精度よく推定することによりまして、発災後の対応方策を事前に立案することができるようになるということだと思います。それから災害復旧等の必要箇所抽出の的確性を向上させて、災害復旧工事等をより過不足のないものにすることができるということでございます。これが研究の実施体制でございますけれども、ごらんのとおりでございまして、詳細は省かせていただきますけれども。それからこれがそれぞれの災害、現象ごとの研究課題になってございますけれども、これにつきましても詳細は割愛させていただきます。

 それからこの研究を通じまして、この項目に書いてございますような新しい技術開発が可能になるであろうというものを挙げております。列記しておりますけれども、これはすべてが100%この研究からでき上がるというわけではございませんで、これまである程度のバックグラウンドあるいはある程度のノウハウがあって、それにプラスアルファしてこういったものができ上がるのではないかということでございます。研究マップでございます。これも詳細は割愛させていただきます。

それからそれぞれの現象ごとに若干詳しくご説明申し上げますと、例えば土砂災害、土石流対策におきましては、土砂災害の原因が生じる可能性、社会状況の変化及び植生・土層構造などの自然条件を考慮できるようなリスクマネジメントシステムの構築が必要でございます。そういったリスクマネジメント・パフォーマンス評価を行うための基準の開発を目的とするというあたりにターゲットを絞っております。例えば土石流をとりますと、超過確率の雨量に応じたような土石流の発生規模があるだろうということで、その発生規模見合いでそれぞれの渓流を眺めたときに、一体その渓流から発生する土砂の量がその発生規模に見合ったものかどうか、あるいはその発生規模でも小さいものか、その発生規模よりも非常に大規模なものなのかといったようなあたりで、降雨と土石流の発生の確率を評価できるのではないかといったような方針のもとに、研究を実施していきたいということを考えております。

それから水害分野でございますけれども、これにつきましてはまず治水安全度の評価にあたりまして、治水経済評価手法の拡充が必要でございます。と申しますのは、今ここにブルーで表示してある部分につきましては、しっかりとした評価手法が定まっているわけでございますけれども、例えば人的被害に伴う精神的な被害、こういったものにつきましてはなかなか今のところ評価手法は定まっていないというのが現状でございます。こういったものを少し検討してみようということでございます。それからこの治水バランスです。上下流ですとかあるいは支川・本川ですが、そういったものを考慮しながら適切な治水計画の立案ですとか、土地利用の誘導策を図っていこうというような支援を考えております。  

それから地震災害の分野でございますけれども、これにつきましては道路のネットワーク上で施設ごとに地震の規模に応じて被災の程度を推定するといったようなシステムを現在構築しておりまして、ほぼそれは完成に近づいているわけでございますけれども、そういったものを活用していこうといったようなことを考えております。これは実際地震が起きたときの道路関係の被災のイメージがこの図を見れば一目瞭然になるといったようなシステムでございます。

それから津波の被害につきましては、道路施設、これはピアの模型でございますけれども、こういったものに作用する外力を実験的に求めたりといったことをしようとしております。それからこれは今現在進行中なんですけれども、こういった結果に基づきまして、土木施設の被災を考慮しました地震・津波被害の想定を可能にしていきたいと。さらに水門の操作ですとか道路利用者への情報提供等につきましても、適切な方法で提示していきたいというふうに考えております。地震・津波分野におきましては、こういったフローでまた別の防災投資効果の評価のようなことも考えております。それから共通分野におきましては、特にソフトの面で情報伝達の手法ですとか、あるいはあり方といったことを横断的に考えていきたいというようなことを計画しております。

 雑駁でございますけれども、以上でございます。

(課題説明終了)

(主査) ありがとうございました。それではコメント、ご意見、賜りたいと思います。○○先生どうぞ。

(委員) 安全・安心な社会の構築ということで、当然推進すべき課題だと思います。ちょっとお尋ねしたいのは、例えばミクロな評価をするとおっしゃいましたですね。ですから例えば水害にしても一つ一つの建物まで取り込んだような、詳細な条件でそこに水が氾濫したり、津波が来たりするような、そのリスクを評価するときにそういう三次元的な、詳細な数値シミュレーションを考えておられるのかどうか。

(国総研) 最初に結論から申しますと、ちょっと水害につきましてはそこまで詳細なシミュレーションを考えておりません。ほかの土砂災害、土石流、がけ崩れそれから地震の際の橋梁の被災、それから盛土の被災ですね、そういったものにつきましては、それぞれの施設ごとのミクロな取り扱いを考えていますけれども、水害につきましてはちょっとそこまではまだ無理だろうというふうに考えております。

(委員) ああそうですか。でも大分シミュレーションの技法は進んできていると思いますし、津波がどこまで遡上するかという三次元シミュレーションは、もう実際にやっている人は少なからずいますし、ですからそういう余り書いていなかったので、お話もなかったので、どうなのか。一方では簡易氾濫解析システムの開発するという、全く逆のことが書いてあったりしたので、どういうふうなイメージなのかなと思ったんですけれども。こっちの簡易というのはどういう感じなのですか。一方ではミクロに評価したいというのと、こっちは簡易に評価したいというのと。

(国総研) すみません、この前のご質問は津波に関するご質問……。

(委員) いや、そうでもないですけれども。

(国総研) 河川の氾濫の方ですか。

(委員) 氾濫。氾濫の方はもう簡易にやるということですね。詳細にはやらないというか。

(国総研) はい。これまでに既存の手法がいろいろございますので、そのような手法を用いましてこの手法の中では特にそういったものをその結果を利用しまして、どういうところに構造物を優先的に配置していくか、それからどういう部分に被害が集中的に生ずるかといったようなことを解析しながら、事業の方の行政支援をしていこうというようなことを考えております。

(委員) 治水経済調査の評価も見直すというお話もあったので、そうすると詳細なシミュレーションを取り入れてやった方が精度が上がるんじゃないかなという気もするんです。それとIT技術でいろいろな情報も細かく詳しくなっていっているわけですから、余り簡易にするという、簡易でやるんだったらもう既に手法はあちこちあると思うんです。ですから何かその特徴が特に水害について、何かないのかなという気がしたんです。

(国総研) はい。研究を進めていく上で検討させていただきます。

(主査) いかがでしょうか。はい、どうぞ○○委員。

(委員) 今のご質問に絡むのかもしれないんですけれども、逆に河川なんかは川である程度待てばいいというか、それができるんですね。けれども、土砂災害みたいに地域的に分散する場合、よりミクロに評価しようとすると逆にデータがそれに追いつかない。ミクロなレベルでの、例えばこれ土壌水分と書いてありますよね。そうしたら災害時の土壌水分変化をミクロスケールで予測することが可能かというような疑問がわいてしまう。幾らモデルを精密化しても、それに入れるデータが現地でとれないというトレードオフみたいな形になってしまうので、その辺の問題点はどうなのかなというふうに感じたんですが。

(国総研) 今のお話のとおりのことだと思います。ただそこら辺はある程度地域と申しますか、地形それから土質条件、それから流域の植生条件ですね、そういったものをある程度類型化しまして、地域ごとにパターンを分けて類型化して、それでそういう土地では土壌水分量はどうなるかといったような解析の代表値みたいなのを使う、そういった手法ぐらいしか現状の技術レベルではできないかなという部分もございます。

(委員)多分その辺でどこまで細かく観測網をすれば、ここまで行けるとか。実際にはそれがある試験区域ではできても、広域の現地にはそれちょっと今のところはできないと思うんです。その辺の現状と、将来に向かっての観測網についてもあった方がいいんじゃないのかなと。実際には例えば土石流危険渓流みたいなものは既にもう設定されているんですよね。

(国総研) はい。

(委員) あの評価自体がどうだったのかというそのレビューもあった方が、発展性があると思います。こんなデータ本当にちゃんとあるのかなと思っているんですけれども、例えば7ページにある発生評価確率に対して、各危険渓流で規模がこんなに点が落ちたような形で本当にデータがあるのかなと。規模はむしろ発生箇所数とか、そういう流域的な形でのデータはあり得ると思うんです。今までの危険渓流の基準がありますよね。生産側の基準もたしかあったと思います。流域の例えば裸地面積はどのぐらいあるのかとか、基準を忘れてしまいましたが。つまりそういった形での今までの危険渓流の設定、それも一つのリスクマネジメントだったはずだと。そこでそれを今までの実績と比べてうまくリスクマネジメントできたのか、当然できなかったからこういう新しいことをやると思うので、その辺の今までの精度とのチェックも必要なのかなと感じました。

(国総研) 先生の今のご指摘のような点は、恐らく砂防部の内部資料としては、危険渓流がどれだけ発生して、それ以外の場所でどれだけというものはございます。ですからちょっとその非常にベーシックな部分でございますので、そこら辺はオープンする、しないは別にしまして、少しスタディーしたいと思います。それから今ご指摘の7ページの図は、模式図でございまして、実際にこれだけデータのそろっているところはございません。

(主査) ほかにいかがですか。どうぞ。

(委員) ご説明の中で、政策の費用対効果みたいなものもできれば考えたいということで、ぜひお願いしたいと思うんですけれども、これまで時間何ミリ降った雨に対する洪水を防ぐための堤防とか、なんかいろいろな災害の分野ごとに税金で面倒を見る範囲というのがあったと思うんですけれども、そういうやつも言ってみれば見直すことにもつながっていくだろうし、もっと言えばいろいろな災害をトータルのいろんなリスクを考えたときに、このある特定の場所というのは結構費用のかかるところだと思う。でもそこは住んではだめとか、住むにしても自己責任と、何かそういうことが示せれば人口が減るから、ちょうどどこをのいてもらうか、基準ができていいんじゃないかと思うんですが。

(国総研) ありがとうございます。実はハード、ソフトの最適な組み合わせというような言葉もちょっとどこかに入れておいたかと思うんですけれども、別な言い方をしますと地域の合意形成のための資料としてこの中でやるようなことも使えないだろうかということは、内部で考えております。要するにハード対応でした場合にはこれだけできますと。50年確率の雨の場合ですとハード対応はこれだけですと。100年確率の場合はこれだけ、何十億かかりますといったようなものを示して、それはちょっとという場合には、じゃ70年確率から上の方に対してはお逃げくださいとか、警戒避難でやってもらうとか、そういう部分について活用のしようはあるんじゃないかというふうに、内部では議論しております。

(主査) ちょっと私も思ったんです。私こういう問題については素人なんですけれども、災害規模とか発生確率を評価する、その問題でもなんかいろいろ議論がありまして、なかなか難しそうであると。さらにその上に人の意識とか気持ちとかってかかわってくるわけですね。ハザードマップは知っているけれども逃げないという現象があちこちで報告されているわけです。そういう意味でダブルで不確実性の問題が起こってくると、余り最適というふうに言っちゃうと、どかすというのはポリシーにだどっていかないんじゃないかなという気が若干しますものですから、その辺どう考えるんだろうかということで、これ極めて重要な問題じゃないかなと思っていまして。最適でピンポイントでやると、そういう不確実な環境のもとではミスリードする可能性も結構あるんじゃないのかなという気がしまして、あと中身の話は決してそんなことはないので、この2枚目の研究の概要のところに「最適」という言葉、ここだけしか出てこないので安心なんですけれども、ちょっと気になりました。

以上でございます。

(国総研) 一面では先ほどの○○先生のご指摘とも通じるところがございますので、少しその辺の根本のところは考えさせていただきます。

(主査) お願いいたします。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

(委員) 危機管理技術研究センターは、いろんな分野を横断したようなセンターだと承知しているんですけれども、ですからここのセンターの売りというか、旗頭になるようなプロジェクトとして、こういうものを活用しながらセンターの特徴を先端的なシミュレーション技術で行くんだとか、何かポリシーというか特徴を出していかれたらどうかなと思うんです。ですから余り幅広く何でもかんでもというんじゃなくて、ここのセンターだったらこれは絶対強いとか、そういうものをこれから戦略的にこういうプロジェクト研究を通じて打ち出していかれることを私は望みます。

(国総研) はい、ありがとうございます。

(主査) ほかにどうですか。それではまた欠席あるいは他部会からの委員のご意見がございましたら、お願いしたいと思います。

(国総研) お二方からご意見ちょうだいしまして、まず○○先生から災害のリスク評価の対象をよりミクロな地域へ絞っていくことは重要であり、研究の必要性は高いというような前提で、ただミクロな地域の災害予防や防災技術につきましては局所的な現象を支配している物理現象を解明して、それをもとにした新たな技術の開発や導入が必要だと思いますというようなご指摘がございました。大変ごもっともなご指摘でございまして、先ほどお示ししましたように、この研究の中ではある程度こういう新しい技術開発ができるだろうというふうに考えてございます。こういったことで○○先生のご指摘の方には回答にかえさせていただきたいというふうに考えております。

 それから筑波大学の○○先生から幾つかご指摘いただいています。5点ほどございますけれども、そのうちの3点ほど重要な部分がございまして、本研究が対象としている災害は斜面災害、水害、津波災害と広範であり、必要性の訴求力に欠けているというようなご指摘がございましたんですけれども、やはりセンターの扱っている対象が非常に広範な自然災害になりますので、こういったプロジェクト研究はセンターがやるべきものだろうというふうに私どもは認識しております。

 それから2点目でございますけれども、水害や津波災害に関して施設ごとの被災リスク評価手法を開発するためには、バックグラウンドとなる研究成果が不足しているのではというようなご指摘がございました。ただ現在例えば水害による家屋の被災程度の推定ですとか、あるいは橋梁に対する津波の波力の評価、こういったものは既に研究に取り組んで実施しておりますので、部分的にはバックグラウンドが不足しているという部分も確かにございますけれども、分野全般につきましては大局的にはある程度の研究成果が保たれているというふうに認識しております。

 それから全体として欲張り過ぎていると。もっと研究対象や目標とする研究成果を絞り込み、社会への貢献の道筋を明確にすべきであるというようなご指摘がございましたけれども、やはり繰り返しになりますけれども、少し災害の現象が多岐にわたっておりますので、ちょっとこの辺はご容赦いただきたいというふうに考えております。センターとしましては目標は比較的明確に設定しているつもりではございます。

(主査) いかがですか。それでは議論も尽きたようですので、取りまとめに入りたいと思います。○○先生からありましたけれども、危機管理センターの特徴を生かしたいい研究ですので、その辺を踏まえてぜひ推進すべきであるということでございました。ただ災害の物理的な発生に関してミクロな予測と簡易な予測という二つあって、災害種によって使い分けるということでございましたけれども、そのことについてもうちょっと前広に検討してみてはいかがかと。水害に対してももうちょっとミクロなことがある技術的に可能であれば、チャレンジしてみたらどうだろうかということと、逆に土砂災害のようにモデルはできるかもわからないけれども、本当にそんなデータが手に入って実際に運営できるのって、その辺のやっぱり課題についてもやはりきちんと考えてくださいというふうなご意見がございました。

それと関連しますけれど、人間のファクターをどう考えるかということの被害想定については非常に重要だというふうに私自身思いますし、そのようなご意見もあったかと思いますので、その辺も考慮していただければ幸いでございます。そういうことを踏まえて推進していただければと思います。ありがとうございました。

 それでは、ようやっと最後のやつにたどり着いたという感じなんですけど、災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発ですか、ご説明をお願いしたいと思います。どんどんどんどん少なくなっていきます。遠い人は覚悟を決めて。

 

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〈事前評価E災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発〉

(国総研)それでは、災害時要援護者向け緊急情報発信マルチプラットフォームの開発についてご説明をしたいと思います。最初にお断りしておきますけれども、実はこの新規プロジェクトですけれども、ちょっと所内の手続がほかのプロジェクトよりおくれまして、それで、皆様のお手元には事前に配付されておりません。恐らくきょう、皆さん初めて資料をごらんになることと思います。まず、それだけ最初にお断りしておきます。

 これは、私がセンター長を務めております高度情報化研究センターと、それから危機管理技術研究センターで協力してやっていく予定でございます。基本的に何をやるのかというのはここにざっと書いてございますけれども、災害時に老人あるいは身体障害者等の要援護者、要援護者だけではなくて一般の方でもこれは同じシステムを使えるわけですけれども、ここで重点的に研究・開発するのは要援護者に向けて災害情報を迅速・確実・的確に伝達すること。そのためにいろんな媒体、テレビでありますとか携帯電話、情報家電などを複合的に利用して画像とか文字情報、音声による情報伝達を行う。そういうシステムのための共通仕様を提案するというのが大きな目標になっております。ここでは、災害情報はありきという前提のもとにそれをいかにカスタマイズして伝えるかという部分が重要なポイントになってくるわけでございます。

 そのカスタマイズのイメージをここにちょっと書いてありますけれども、例えば今現在の情報提供のイメージとして、例えば危険です注意してくださいというような、あるいは避難してくださいというような情報をアナウンスしても、要するにすべての人に的確に伝わるわけではない。端的な例で言えば耳の聞こえない方には十分伝わらないという状況になります。それを、できるだけそれぞれの方の特性に合った形で伝えるというのがここでの最終的な目標になってまいります。ただ、そのためにいろんな情報の伝達の方式あるいは表示の方式の共通仕様をつくっていこうというのが非常に大きな目的になってくるわけであります。これが現在の課題として書いてございますけれども、例えば昨年の集中豪雨等で身体にハンディキャップのある方に非常に被害が集中しております。それで、災害時に要援護者の方に情報提供をするということが非常に重要な課題になっておるわけでございまして、この下にちょっと書きましたけれども、防災基本計画風水害対策編でも災害時の高齢者等の要援護者に対して十分に情報を伝達することが非常に重要であるということが書いてあります。

 どういう課題があるのかというのを整理いたしますと、例えば高齢者の方あるいは聴覚障害の方は、音での情報伝達は、これはなかなか難しいです。あるいは、知覚障害の方に対して文字なりで情報伝達するのもやはり同様に難しいです。あるいは外国の方、旅行者でもいいんですけれども、日本語だけの伝達では理解が困難ですという問題が一つございます。それから、対象地域の課題といたしまして、要するに自治体単位等で同一の緊急情報を提供するというやり方では、危険度に応じた情報提供がなかなか難しいです。ですから、もうちょっときめ細かな地域の特性に応じた、あるいは危険度に応じた情報提供が必要になってきます。それから、発信先といたしまして、日常的に利用している情報端末に対して情報提供することが今の状況ではなかなかできない。災害時にしか使わないような情報端末ですと、なかなかうまく災害時に伝わらないということがございますので、日常的に利用している情報の端末を使ってそこに情報を送り込んでやるということが必要であろうと思います。それから、情報発信の方法としまして、災害時でございますので、停電ですとか故障等の通信インフラが使えないというような状況が起こり得る。それからもう一つは、例えば通信路が非常に輻輳してしまう。通信の障害が起きるといったようなときに自動的に代替手段を選択してやる必要があるわけですけれども、今のシステムですとなかなか代替手段に自動的に切りかわるといったようなところはできないという状況にございます。

 それを踏まえましてどういうことを目指すかというと、災害時の情報のバリアフリー化を目指したいと思うわけです。個人とか地域に応じた的確な情報を確実に伝達できる方法で伝えましょうということを考えております。ここで、要援護者が利用可能な情報端末に対して、緊急情報を適切な形でというのは見せ方の問題でして、要するに、目の不自由な方については音声で情報を伝達する。そういった形で個人の特性に応じて変換して提供するという方法が必要になってまいります。そのための仕様をつくるというのが一つ大きな目標になります。

 それからもう一つは、本当に情報が伝達されているのかがよくわからないというのがございますので、情報が伝わっているかどうかを確認する、あるいはその伝送路が輻輳しているかどうかを確認すること。輻輳していれば別の代替手段を使うといったことをやっていきたいわけですけれども、そのための仕様を決めるというのがここでの大きな目的になってまいります。

 実現を目指すサービスといたしましては、今言ったことをまとめますと非常に厳しい通信環境下でも地域ごとに予想される災害危険度に応じた的確な情報を受け取る方の障害に応じた適切な形態で、しかも、日常使用している情報端末を利用して分かりやすく安全が確認されるまで繰り返して伝達するという、そういうサービスを目指すわけです。そのサービスを実現するための仕様を決めるというのがこのプロジェクトの目的になります。

 基本的には、いろんな情報、ここは既に情報についてはありきというふうに言いましたけれども、それを災害状況とか情報端末に応じた形で変換してやるということが必要になってきます。情報を流す手段はいろいろあるわけですけれども、それに対して基本的には統一された仕様の情報を流してやることと。要するに行政機関の持っている情報を統一した形でそれを受け取った方が一々変換しなくてもいいような形で流してやること。それをいろんなルートで流せるようにしておくというのがここでの大きな目的になってまいります。受け取る側としては例えばパソコンですとか携帯電話、テレビと書いてありますが、これは今のテレビじゃなくて地上波デジタルを想定しています。それから情報家電、それから固定電話とかファクス、こういったものに対して一番最適な経路でまた最適な形態で伝達するための情報仕様をつくるというのがここでの大きな目的になってまいります。それから、ちょっとこの資料に間に合わなかったんですけれども、実は、今デジタルテレビと言いましたけれども、ISOの方にTC204というテクニカルコミュニティがあります。ITSの標準化をしているところなんですけれども、そこで実はこのデジタル放送を使った気象情報の標準化をこれからやろうとしているという情報がつい最近入ってまいりました。ですから、この部分については国際仕様にも日本の、まだできてないわけですけれども、これからこのプロジェクトでやる中身を仕様として反映させていくということを考えております。全体計画として一応3年を予定しておりますけれども、基本的にはこの仕様をいろいろ決めた上でケーススタディを最後の年にかなり集中的に行うという予定にしております。仕様の検討はうちのセンターでできるわけですけれども、このケーススタディあるいは情報の中身のコンテンツの部分につきましては危機管理センターの方の協力を得ながら研究を進めていくという予定にしております。

 これは研究マップでございますけれども、基本的にこの仕様の部分、特に災害時の情報の仕様というのは標準化されてない部分がかなりありますので、ここの部分の標準化がかなり重要になってくるかなというふうに思っておるところでございます。

 以上でございます。

(課題説明終了)

 (主査)ありがとうございました。それでは、ご質問・ご意見等をいただきたいと思います。どうぞ。

(委員)要援護者が情報端末を使っているということが前提になっているような気がするんですけれども、そういうケースの方がむしろ少ないと思うんですよね。ですから、どうなんですかね。情報端末を使えないような人たちの方が多いと思うので、その変どうなのかなというのと。それと、端末の仕様を考えられるということなんですけど、試作品を何か開発したりするようなことを考えておられるのかどうか。その場合に、予算が今の予算で果たして足りるのかどうかというようなことがあると思います。それから、要援護者にちゃんと情報が通じているかどうかというのはやはり双方向通信というんですかね、一方的にこの情報提供をいろんな手段で、3系統も4系統もするというのも一つの手かもしれませんけれども、それよりも向こうから返事があればそれで一発で済むわけですから、そういう、何ていうんですかね、双方向通信的なシステムは考えられないのかなと。以上3点であります。

(主査)お願いします。

(国総研)すみません、ちょっと説明を省いてしまったんですけれども、要援護者だけじゃなくて、要援護者に対して直接情報を伝えるということのほかにその人たちを支援するコミュニティみたいなところにも情報を伝えるということは考えております。

 それから、試作品はつくりますが、基本的には、最終的な端末の部分というのはもう既にあるわけです。この上で情報を表示するためのソフトが必要になってくるわけです。それはつくる必要があります。それは試作品ですからかなり粗いというか、何とか表示できるというか、その程度のものでしたらソフトを使ってつくることができるだろうと思われます。ただ、問題になってくるのは、例えば音声で出すとか、あるいは画像で出すとかいろいろ表示形態が違ってきますので、いかにしてできるだけ情報量を少なくして出してやれるのかというのがかなり大きな開発要素になるのかなという気がいたします。

 それからあと、双方向につきましては、ここら辺の固定電話とかファクス、ここは双方向になかなかならないんですけれども、情報家電・テレビあるいは携帯とかパソコン、ここら辺は双方向の通信可能ですので、その機能は使う予定です。

(主査)よろしいですか。どうぞ。

(委員)新潟のケースでやっぱりこういった形でやればよかったというのがそんなに出てきたのかな、と思いました。むしろこういう議論というのは国総研の仕事じゃないのかもしれないんですけど、コミュニティレベルで、どういう形でお互いに助け合うかということの方が要援護者に対する災害を防ぐという意味では重要なような気がしちゃうんです。つまり、年とったおばあさんが、しかも何か身体的に障害がある人がテレビを見て自分で動くなんてことが本当にあり得るのかなと。やっぱり近くの人がどうやってそれに対して連絡を取るかとか、そういった議論の方が重要なんじゃないかなと思うもんですから。新潟の水害の事例で考えたときに、例えばそういったコミュニティレベルの情報伝達というのが非常に重要で、むしろお互いに助け合うというその部分が非常に大事で、それにこれを加えるとさらによくなると思うんですね。何か、その辺の議論が要るんじゃないかという感じがしたんですけれども。

(国総研)恐らくご指摘のとおりだと思います。個人レベルで動くにしてもまず情報が必要だろうということで、ここでは情報の方に重点を置いております。

(主査)どうぞ。

(委員)ですから、自助・共助・公助といいますけど、自助ができない人をどうするかという話ですよね。ですから、共助を補助する公助のシステム、情報システムということになるんですかね。共助をやりやすくするための公の情報システム、公助としてのですね、そういうふうな位置づけになるんだと思うんですね。ですから、そういうフレームワークを持っていただいたらおもしろいフレームワークの研究になるんじゃないかなと思います。

(主査)どうぞ。

(委員)今おっしゃられたとおりだと思うんですけれども、こういったものが共通仕様として出されるということが、午前中のあれにもありましたけど必要だと思います。ですから、ぜひやっていただきたいところなんですが。もう一つ、災害弱者といいますか、その観点はよくわかるんですけれども、ほかに、例えば健康な人であっても農作業に出ているとかそのシチュエーションによってやはり伝えるべき情報端末というのがもう少し別にも、ほかにもあるんじゃないかなというような気がします。特にそういう人も言ってみれば情報収集源を持っていなければ、先ほどの身体障害者の方々と同じ状況に置かれている見方をすれば、屋外での何らかの伝達手段みたいなものが少しこのパソコン・携帯電話・テレビ・情報家電・固定電話・ファクスプラスアルファがあってもいいのかなというような気がします。

(国総研)それについては検討させてください。

(主査)ほかにありますか。

(なし)

(主査)よろしいですか。ありがとうございました。

 コストみたいな話って、いかがお考えなんですかね。多分、非常に近未来の話ですよね。実現化、あるいは実施が近ければ近いほどデフォルメントのためのコストというのは非常に重要になってくると思うんですけれども、その辺はどのように検討されるんでしょうか。

(国総研)基本的にはハードは既にあるものを使う。したがって、その上に乗っけるソフトの話になってくると思うんですけど、ソフトについてはできるだけオープンソフトといいますか、そちらを使って、ここでつくったものについてはいずれ公開しますので、コストは安くなるだろうと思われます。

(主査)わかりました。それでは、藤田先生とか熊谷先生からの何かございますかね。

(国総研)事前に送ってないので、来てないんです。

(主査)そうか、ごめんなさい。じゃあ、それでは、これ重要なテーマだということだと思うんですね。特に土砂災害とか洪水で、今回も新潟のときもそうだったですけれども、やっぱり高齢化率が高い中山間地域の独居老人というのが非常に重要な対象になってくると思うんですね。そういうときに、ただ情報端末、そのハイテクの情報端末だけではなくてコミュニティとの関連をどう考えるんだと。○○先生は共助を支援する公助システムとしてきちんと位置づけるべきであるというようないい整理の仕方をしていただきましたし、情報を知ったとしても動けない可能性があるから、その辺も含めてケアすべきだろうということですし、あと、シチュエーションによって使える情報端末が異なるということもあるので、もうちょっと幅広に検討してみるというのはいかがだろうかという提案もございましたので、ぜひ取り入れて研究を実施していただければなというふうに思いました。

(国総研)どうもありがとうございます。

(主査)それでは、これで一応全部済みまして、しかもあんまり予定の時間からおくれてないということになっておりましたので、夕食と休憩に入りたいと思いますがよろしゅうございますか。

(はい)

(主査)それでは、入りますけれども、19時から再開したいと思います。あとちょっとでございますので、よろしくお願いいたします。

(事務局)お弁当につきましても用意しておりますので、そのまま待っていただければと思います。よろしくお願いします。

(休憩)

(主査)それでは、ちょっと早目ですけれども、皆さん、食事もお済みになったようですので、5の報告に進んでまいりたいと思います。

 まず、その他のプロジェクト研究の報告に入ります。この課題は、この分科会の評価対象ではなくて、国土交通省の本省に設置された委員会で評価を受ける予定になっております。けれども、今後の進め方に等について、あるいは今こういう研究をしていますよというアピールも含めてプレゼンテーションしていだたきまして、ご意見をいただければ幸いでございます。

 課題の説明の前に、事務局から時間配分等についてご説明をお願いいたします。

(事務局)今、○○主査のご説明のとおりでございますが、これからお願いする課題は、平成16年度の終了課題、自然共生型流域圏・都市の再生でございます。これは本省の技術研究開発評価委員会で評価を受けるものでございます。また、続きまして、18年度からの新規課題でございますセカンドステージITSによるスマートなモビリティの形成に関する研究でございます。これは、またスマートウェイ推進会議で外部評価が行われるものでございます。この2課題につきましては、ぜひとも研究に関しまして、その内容の高度化といいますか、参考になるようなご意見をお願いしたいと存じます。

 時間配分でございますが、自然共生型流域圏・都市の再生につきましては、説明が15分、その後、質疑・意見等で10分お願いしたいと存じます。それからセカンドステージITSでございますが、説明が10分、その後、質疑・意見を10分お願いしたいと存じます。

 以上でございます。

(主査)ありがとうございました。

 それでは、自然共生型流域圏・都市の再生というプロジェクトについてのご報告をお願いいたします。

 

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〈報告@自然共生型流域圏・都市の再生〉

(国総研)環境研究部長の○○です。 

この研究は、今、話がありましたように、総合技術技術開発プロジェクトということで、別な評価があります。ここにご報告をさせていただきます。

 自然共生型流域圏・都市の再生という、この辺のバックグラウンドはもう皆さんよくご存じかと思いますけれども、いろいろ開発されてきた都市ないし流域をこれからどういうふうに自然共生型にまた復元していくかということで、課題を抽出、整理して、きちっとしたモデルをつくっていこうと。モデルをつくって、いろんなシナリオを書いていこうと。シナリオを書いて、どういうこれから施策をとっていったらいいか考えていこうと。その前に個別の環境再生技術というものの開発もございます。さらには、先ほど出ました地域の協力をどうやってもらっていくかというようなのもここに入ってまいります。先ほどの地域協働型の健全な水循環というのは、実はここから先のことをやっていこうということで、いわばこれが前段といいますか、そういうような位置づけで、これに引き続いて来年度から地域協働型というのをやっていきたいというふうに考えております。

 ここもやっぱりいろんな施策をやったときにどういうふうに評価されるかというのを検討していくというわけですけれども、そのときに、ある政策をとったときにいろんな効果が出てくる。例えば水質はどうなるか。ヒートアイランド現象に対してはどうなるか。生態系に対してはどうなるか。快適さとかコストはどうなるか。シナリオを1、2、3というふうにセットすると、こういうような答えが出てくる。じゃあ、これをどうしたらいいですかというのを、ある程度住民と協力しながら決めていこうというようなところの前段となるモデルの開発なり技術開発をしていこうというプロジェクトです。

 内訳としましてはモデルの構築、個別の技術の開発、それから、政策シナリオの研究、シナリオ決定のための社会一体型施策の立案、それから、ベースとして情報基盤の整備というのも行います。こういうので流域圏・都市再生プログラムの実践につなげていこうという研究です。

 これは先ほども出ましたけれども、総合科学技術会議の中の重点4分野、環境の中に自然共生型流域圏・都市再生研究イニシアティブというのがございます。これの重要な一部を占める研究ということになっております。

 まず、情報基盤の整備ですけれども、ここはちょっと簡単に飛ばさせていただきますけれども、いろんな今までにあるデータベースをGISへ乗っけて、後に出てくる水物質循環モデルだとか生態系のモデルだとか、そういうのに使えるようなGISのデータベースをつくりました。
 また、流域圏診断ということで、地理条件と生物生息の状況からビオトープマップをつくるようなモデルをつくりました。

 次に、流域圏・都市管理モデルの構築ということで、まず水物質循環モデル。これは霞ヶ浦と東京湾を例にしていますけれども、今までは河川を中心にというのはあったわけですけれども、それに流域を入れまして、流域の例えば農業でどういうような施策をやればどういうように水質に影響があるとか、各家でどういうことをやればどういうふうな影響になるか、そういうのをすべて面的に把握できるようなモデルをつくっております。

 次に、合流式下水道の分散型汚濁負荷解析モデル、これにつきましても、やはり面的な分布型モデルで貯留・浸透なども考慮し、さらには窒素・リン・大腸菌など個別の項目にも対応できるようなモデルをつくりました。

 また、生態系予測モデルということで、これはシジュウカラの生息地予想図ですけれども、どういうような条件で、どういう地理的植生の条件、そういうものでどういうふうにシジュウカラが生息するかというようなモデルをつくっております。

 これはヨシのモデルをつくっております。

 そういうモデルと別に個別の再生技術開発ということで、一つには環境ホルモンの効果的なオゾン処理。環境ホルモンもいろいろあります。ビスフェノールAとか17βエストラジオールとかノニルフェノールとかこういういろんなものが今、問題になっていますけれども、オゾンでどういうふうにすれば的確な処理ができるかということで実験装置をつくりまして、例えばこれはビスフェノールAですけれども、5ppm以上のオゾンを注入するとすべて処理されるというような結果を出しております。

 次に、ヒートアイランド対策に今、重要になっています保水性舗装ということで、保水性舗装というのは従来あったんですけれども、これは上の表層のアスファルト面に保水剤を入れまして、そこに降った水を蒸発させるということでした。今回開発いたしましたのは、上層路盤へも入れてしまおうと。路盤へ水を入れるというのは非常に、今まで道路では嫌っていたんですけれども、その上層路盤へ入れて、そこと表層と水が通るようにしてやったと。その結果、今までは通常ヒートアイランドで舗装面は温度が高くなります。今までの保水性舗装ですと、1週間たつとずっと上がってきたわけですけれども、今回開発した分については、1週間たってもほとんど上がらないと。従来のに比べて1週間で6度低く保たれると。保水性でない密粒舗装に比べれば18度も下がったままというような技術開発を行いました。

 次に、シナリオ策定と実践への支援技術の開発ということですが、これは先ほどの社会一体型で、温暖化で説明いたしましたので、これは説明を省略させていただきます。

 こういういろんな個別技術、モデルを使いまして、いろんなシナリオをつくっていこうと。こういうシナリオだったらこういうふうになりますよというような提案をしていこうということです。

 1番目はエコロジカルネットワークの保全・回復ということで、先ほどシジュウカラの例を出しましたけども、これはそれをもとにしましてシジュウカラとリスと両方でやっているんですけれども、例えば道路にエコブリッジをつくったり、樹林帯を広くつくったり、河川の川幅を広げて林地にしたりというようなことをやっていくとどうなるかというようなモデルを使って検討しました。そうすると、現行のままでは少しずつ減っていくけれども、そういう対策をとっていくとシジュウカラ、リスはこれだけふえていきます。費用はこれだけかかりますというような、こういうモデル、シナリオが幾つか書ける。こういうのを提案していけるようになったということです。

 それから、次は水と緑のネットワークからということで、渋谷川を例にして、どういうような方法で渋谷川の再生ができるかと。今はこんな感じの川なんですけれども、それを隣地と一体となって川幅を広げて緑地もつくると、公園なんかもつくっていくというようなことを提案したものであります。

 次に、霞ヶ浦の流域を対象としたケーススタディということで、これは結構全体を整理したんですけれども、先ほどのビジョン、先ほどというのは、地域協働のときの話になりますけれども、ビジョンを幾つかつくると。シナリオといってもいいんですけれども、シナリオを幾つかつくって、そういうシナリオに対して、行政だけでやったらこうなります。それから、住民活動、ライフスタイルを変えたらこうなります。また、土地利用なんかも変えていくとこうなりますというような、こういうことをしたらどうなりますかというのを検討しようと。そういうシナリオごとの結果、どうなるかというのを先ほど出てきた水物質循環モデルでシミュレーションをしました。これは一つの例、もちろんいろんなシナリオの書き方であるので、割と効果がたくさん出るようなシナリオ設定にしていますんで、実際にこの結果がどうなるかというのは、まだいろいろ検討しなきゃいけませんけれども、例えばインフラ主体型でいくと、下水道整備とか汚泥の処理とか、そういうのでいくと、それぞれの結果がこうで全体ではこのぐらいまできれいになりますよと。というか、ここではCODの削減効果ですけれども、2.5ぐらいまで削減されますと。次に自然浄化回復型、例えば植生浄化ですとかシジミ浄化、湿地浄化なんかをやると1ppmぐらい下がります。それから次に、流域住民参加型で保全型ライフスタイルだとか雨水貯留ですとか下水処理水を再利用してもらうとか、家畜のし尿の農地還元をしてもらうとか、そういうことをやると0.7ぐらいですかね、このぐらい下がりますというような、こういうような答えが出ます。こういうような答えで、それぞれ、ここには書いていませんけれども、当然、事業費なり、それぞれ皆さんがやっていただくような負荷というようなのが出てきます。そういうのを提示して、これからどうしていくかというのを提案なり相談なりできると、そういうモデルができたということになります。

 これはヒートアイランドの予測というのも、こういうストーリーでやってみました。モデル自体は借りてきたモデルですけれども、例えば、ビジョン1では保水性舗装をやったらどうか。それから、ビジョン2では建物についての冷房排熱を50%減らすとか道路の排熱量を1割減らすとか屋上緑化するとか、こういうようなことをやるとどうなるか。それから、もっとそれを極端にして、全「建物用地」「道路」の30%を緑地に変えたらどうなるかというようなことで、ビジョン1では、ここは少し涼しくなるけれども周りは涼しくならない。それから、ビジョン2だと、かなり涼しくなる。ビジョン3だと、もっと広範囲に涼しくなるというような、こういうような結果が出ます。ですから、こういう結果を見てもらって、これからどういうふうにしていくかというのを協議なり説明なりできるというようなモデルになります。

 こういうふうなモデルをつくって説明をして、ここはちょっと本当の概念図なんですけれども、ある施策をしたときに、いろんな観点でどういうような効果があるか。従来はこれを無理やり一本にしようという試みもいろいろ考えたんですけれども、なかなかそれも難しいということで、それぞれやっぱりこれはこうなります、これはこうなりますというようなことでいくことになるのかなというのがとりあえずのイメージ図ですけれども、こういうようなことで説明をしていこうということです。

 これは先ほども言いましたように、総合科学技術会議の中のイニシアティブでやっておりまして、いろいろワークショップですとかシンポジウム等をやっております。主に5省庁で分担協力をしてやっておりまして、現在、これの報告書をまとめつつあるところでありまして、何とか今月中にまとめ上げて、今月の24日にその報告のシンポジウムをやる予定にしております。それに向けて、今、一生懸命報告書をつくっているところでありますが、研究イニシアティブ自体、今年度が最後ということで、それに向けて取りまとめを図っているところであります。

 以上、説明を終わらせていただきます。

(課題説明終了)

(主査)ありがとうございます。

 この研究に対するご意見やご質問等ありましたらお願いします。どうぞ。

(委員)いろんな解析ができるモデルを開発されて、それに基づいて評価しておられるんですけれども、そのモデルの精度といいますか、検証といいますか、そのあたりは、どういう形でやっておられるんでしょうか。

(国総研)それぞれやっていまして、例えば、霞ヶ浦のモデルですと、平成7年から実態に合わせてモデルを動かして検証しているということになります。生態系モデルの検証というのは実は非常に難しくて、正直言ってまだまだというところはあります。できる限りそういうのをやっていきたい……。

(委員)先ほど、コストとリスクがふえるとか、ああいうところはどうなんですか。その妥当性というか、専門の方から見て、生態の方から見て。

(国総研)専門の先生方のご意見を聞きながらもやっていますし、それから、いろいろシンポジウム等にも発表して議論していただいております。ただ、皆さん、なかなかどれが真値かとなりますと、なかなか考えているところがありますので、とりあえずはこんなものかなという評価をいただいております。

(主査)ありがとうございました。

(委員)複数の選択肢、シナリオをつくって、そうすると、最終的に意思決定あるいは選択をするのはどなただと思ってこういうのをつくられているんでしょうか。

(国総研)それは問題によってケース・バイ・ケースのところもありますけれども、これは私の個人的な考えですけれども、やはり当然やるのは行政側になります。研究者がやるわけじゃないです、行政側がやることになっていますけど、行政側としては、やはりある程度自分の答えを持って、ただ、自分の答え一つじゃなくて、いろいろやってみて提案をして、私としてはこれはいいと思いますけど、どうですかというようなことで議論をしていく。それで、議論の中でまたやりとりがあって進んでいくんではないかというようなふうに私個人としては思っております。これは人によっても違いますでしょうし、これから世の中の流れによっても違うかもしれませんけれども、とりあえず私の個人的な意見でございます。

(委員)今のお話なんですけど、例えばヨーロッパの方だと、選択肢をいろいろ提示してやるときに、各項目に重みをつけちゃっているんですよね。つまり、地域の要請がそれぞれ違うじゃないだろうかということで。例えば、あるところだと特に水質をよくしたい。例えばこのレーダーチャートの水質系に重きを置くところと、いや、水質はもういいと。むしろ生態系だとか、そっちに置きたいとか。いや、とても金がないからコストに置きたいとか。その辺の、ヨーロッパの手法を見る限り、オルタナティブがそれぞれの重要度に対して、得点を与えといて重みをつけちゃうんです。つまりこのレーダーチャートに重みをつけてしまうということだと思うんですけど、そういう形で総合評価をしているケースがあるので、そういうのも考えられたらなと。多分、このレーダーチャートはすべて、みんなよければいいということじゃなくて、地域によって多分偏る。そこに地域の意見をどんどん反映させていったらどうかなという感じがしました。

それと、うまくまとまらなかったんですけれども、やっぱり診断の議論、きょうのいろんな評価でも出たんですけれども、スクリーニングといいますか。国土全体の中でどういう状態なのかという、いわば集団健診的な議論と、あとは何か問題が見つかったときに、もっと精密検査で、MRIとか、CTとか、そういうものを突っ込まないとわからないような細部の検査に入ることと、あとは治療といった形で、どんな技術がそれに対して適用できるのかといったような内容が、何かごっちゃになっちゃっている。自然再生事業を実施する際一番困ったのは、なぜここから始めるんですかという問いでした。釧路湿原であれ標津川であれ、なぜここから始めるんですかというのが一番困ったんですね、いろんなシンポジウムに出てて。その辺の例えばプライオリティーというか優先順位を考える上でも、まず僕は、診断が重要だと思います。もちろん水質なんかはすでに実施されていると思うんですけど、生態系評価については、リスはできたとしても、すべてがリスでいくわけじゃないだろうと。そうすると、生態系についてトータルとしての評価が必要になんだろうと思います。例えば川の問題だったら、川の評価ってどうやってやっていけばいいのかという、そのスクリーニングの部分がまだ弱いなという感じがしますよね。

あと、スクリーニングができてどこかおかしいということがわかれば、いろんなモデルが今用意されていて、生態系モデルは弱いにしてもヘップとかいろんなことでやれると思います。どうも僕は一番最初の、ちょうど今のご発表だとコリドーの議論、ネットワークの議論、あの議論に入るレベルでの、どこのやつでしたかね、8番。

(国総研)これはビオトープマップです。

(委員)ですよね。でもそれが一番近いんじゃないですかね。診断的な内容に近いんじゃないかなと思うんですが、違うんですか。

(国総研)診断といえばそうですね。

(委員)そこの部分が国として、国総研として、今の現状を知る。でも、すべてに対して精密検査はできない。そうすると、粗いデータでどのぐらいまで現状が評価できるか。ちょうどさっきも言ったような血液検査レベルぐらいの、そういった手法で、今あるデータでどこまでできるかというスクリーニングのところが、今、日本の中で一番欠けていると思います。ドイツなんかを見ると、すべてそういうものはそろっているような感じがしています。

(国総研)確かにこの鎌倉のビオトープマップができましたのも、鎌倉というのは非常に緻密な植生図ができていましたのでこれができたということがあります。ですから、どこにでもすぐにできるということではなくて、確かにそういう意味ではデータベースというのをきちっとつくらなければいけない。

(主査)ほかにいかがでしょうか。

 このビジョンを設定して、それで結果ですよね。予測じゃない部分ですね。これ、非常におもしろくて大胆で、いい方法だなというふうに思いました。

実は自慢するわけじゃないんですけれども、99年に東京都パーソントリップ調査で都市圏の交通を、当時から交通量予想が当たらなくてだめだかと言われていましたので、いろんな前提条件、政策のシナリオだって設定して、その結果どうなるか、このシークエンスどうなるか、そういうタイプの予測をして、そういうのを市民の皆さんに見せて、コメントをもらって、どういう方向性がいいかという、そういうことをやろうとしていたんですけれども、一つ障害がありまして、行政体がやる予測だから、そんな結論ごとの予測はできないと。確実に実行できるか、あるいは実行可能な範囲でしかシナリオは設定できないというふうに言われまして、これぐらいの幅で考えようといってこれぐらいになっちゃったんですよ。だから、結果的にシナリオ比較ができなかったんでけれども、今回はそんなことはないみたいですね。非常に大胆な。

(国総研)すごく大胆になっていると思います。

(主査)おもしろかったです、そういう意味で。ですから、こういうのがもっと広まればいいなという思いで聞いておりました。ありがとうございました。

ほかにいかがですかね。よろしいですか。

(はい)

(主査)どうもおもしろい研究結果をお話しいただきまして、ありがとうございました。

それでは、引き続いて、次はセカンドステージISTによるスマートなモビリティの形成に関する研究です。これは事前ですね。

 

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〈報告AセカンドステージISTによるスマートなモビリティの形成に関する研究〉

(国総研)「それでは、セカンドステージITS、ご説明いたします。

まず、背景からでございます。カーナビの普及ですとかVICS、それから、ETC、それからASV、バスロケによる位置情報とかホームページによる情報提供等、非常に日本ではITSのサービスが普及してまいりまして、それを背景にいたしましてITSがセカンドステージに入った、そういう認識が今ございます。

これは今言ったカーナビとかVICSの普及の状況を示しております。それで、ITSの効果が大分あらわれ始めた。ITS自体、日本でITSというプロジェクトを始めたのが今から大体10年くらい前になりますけれども、これによって、例えばカーナビですとかVICSによる利便性・安全性の向上が図られた。それから、バスロケによるバスの活性化、あるいはETCの普及による料金所渋滞の減少ですとか、多様な料金施策の実現、それからスマートICの社会実験、あるいは地域におけるITSの取り組みということで、ITSはセカンドステージに入ったという、そういう認識がございます。

これは、ETCの普及によって料金所渋滞がどの程度緩和したのかを示しておりますけれども、実はETCの導入の大きな目的が料金所での渋滞を緩和するということでございました。これは首都高速でのETCの利用率で、一番右側が平成17年の4月でございますけれども、43.8%という数字になっています。もうちょっと最新の数字ですと45%くらいになっているかと思います。対しまして、渋滞の量というのが、これは渋滞の長さと時間を掛け合わせた量になっていますけれども、これが非常に減ってきているということで、料金所の渋滞自体が非常に減ってきています。

それで、セカンドステージITSということを言い出しましたのは、実は去年の、ちょうど1年前になりますけれども、8月に、スマートウェイ推進会議というのがございますけれども、その中でITSは、日本のITSはセカンドステージに入ったと。セカンドステージのITSの目標として、こういったようなことを掲げたわけでございます。

スマートウェイ推進会議というのは、会長が豊田章一郎さんで、あと、関係する省庁、それから学識経験者、業界団体等が入った、かなりレベルの高い会議になっておりますけれども、その中で、ITSはセカンドステージに入ったと。それで今後の目標をどうするかという議論をいたしまして、ここにあるような目標を掲げました。

一つは事故とか環境負荷、渋滞といった「負の遺産」の精算、これは実はセカンドステージの前の、いってみればファーストステージからの目標でございますけれども、そういった目標を相変わらず掲げている。

それと、もうちょっと具体的な目標といたしまして、2007年に以下のサービスを開始しますという宣言をしております。あらゆるゲートのスムーズな通過、細かな内容は後で説明しますけれども、それから場所やニーズに応じた地域ガイド、それからタイムリーな走行支援情報の提供、これを2007年にサービスを開始しますと宣言をいたしております。

そのための手段といたしまして、車載器の推進、このITS車載器と言っておりますものは、今のETC車載器よりも若干機能がブラスされまして、いろんなITSのサービスを、このITS車載器1台を車につければすべて受けられるという、そういう性質のものです。それから、いろんな情報をやりとりすることになりますけれども、そこのところのデータ構造の統一ですとか、データの公開・共有化の推進、それから、デジタル地図の高度化、それから光ファイバー等の整備といった手段がこの提言の中に盛り込まれております。

提言の中で今言ったようなあらゆるゲートのスムーズな通過ですとか場所・ニーズに応じた地域ガイド、それからタイムリーな走行情報の提供、これらが2007年までに実現します、開始しますという、そういう宣言をしておるものと、それから、路車協調による警告・車輌制御、これはどちらかというと、安全に対するものでございます。それから、プローブによる交通情報収集の高度化、これは交通情報の収集の部分になりますけれども、こういったサービスをとにかくこれから実現していくんだということに対しまして、研究内容をセットしてあります。

研究内容は、これはかなり多岐にわたっておりますけれども、大きく分けると、車載器・路側器の開発、これはさっき言ったITS車載器の開発。これについては既に官民共同研究という形で動かしております。それから、あらゆるゲートのスムーズな通過の中にスマートICといったものも含まれます。

それから、もう一つは、場所・ニーズに応じた地域ガイドには、一つはGISの高度化、例えば、かなり詳細な地図あるいは場所の情報が必要になりますというのが一つございます。それから、もう一つは、その場所の情報を特定していくためには移動体、車とか歩行者でもいいんですけれども、そこのところでの測位をかなり高精度にやる必要があります。ですから、この二つの課題をまた設定してございます。

それから、路車協調による警告・車輌制御、これは安全の部分でございますけれども、これについては、今既に動いておりますけれども、AHSの高度化といった、そういう研究内容をセットしてあります。

それから、プローブによる交通情報収集の高度化、これについてはプローブの高度化といった研究で対応しようと考えております。

ですから、研究の内容といたしまて大きく分けると、この右側に示しました6個の研究内容になります。ただ、ここの中身自体がかなり多岐にわたっておりますので、実際には細かく分かれております。

研究内容と開発目標でございますけれども、車載器と路側器の開発では、次世代のITSシステムの規格・仕様に関する研究ということで、既に動いています。16年度から19年度まで、民間23社との共同研究で、次世代ITSの路側器、車載器、通信の規格・仕様を定めるということで、17年の7月に中間報告を取りまとめております。中間報告といっているのは、基本的には規格・仕様の中間報告でございまして、共同研究の成果としてこれをまとめたものでございます。

一つの車載器で多彩なアプリを実現するのが目標でございまして、要するに、いろんなサービスごとに車載器を個別のものをくっつけるんじゃなくて、とにかく1台だけ持っていれば、あらゆるサービスを受けられるというのが目標になっております。これも先ほど言いましたように、現在のETC車載器に機能を若干プラスしたものというふうに位置づけられるかと思います。

これで目指すのが、あらゆるゲートのスムーズな通過ということで、例えば公共駐車場の料金の決済をキャッシュレスでITS車載器を使って行う。それから、道の駅とか、サービスエリア、パーキングエリアで道路情報等の提供をITS車載器で行う。この中には、インターネットへの接続も含まれます。それから、タイムリーな走行情報の提供ということでは、現在のVICSのサービスをもうちょっと高度化しましょうということで、一つは、現在のVICSよりも広い範囲の道路交通情報を流すというのが一つございます。それから、音声によっても案内ができるようにする、そういったことを、考えておるところでございます。

スマートICにつきましては、ローコストの料金ブースの開発をやっておりまして、既に社会実験は今年度、去年もやっております。それをもとにしてスマートICの規格・仕様を策定することにしております。

それから、GISの高度化ということでは、これは先ほどの地図情報の高度化の部分でございますけれども、これについては昨年のこの場で四次元GISデータを活用した都市空間における動線解析技術についてご報告差し上げておりますけれども、この研究をやっております。これは都市空間における人の動線解析技術の開発、もう一つはGISの中に時間軸を持ち込んでプラットホームとしていろんな調査等に使えるようにしようというのがこの中身でございます。

それから、GISの高度化の中に道路基盤データの迅速な更新・配信というのがございます。これは現在、道路の基本的な地図というのは、デジタル道路地図という形でデジタル化されておるわけですけれども、これの更新が年に1回ぐらいしか行われていない。それでは余りにも更新頻度が低いということで、維持管理の段階で必要となる道路の基盤的な情報を、これ、今やっているCALSの中に盛り込んで、施工から維持管理へ情報が円滑に伝わるような仕組みを構築します。CADの交換標準フォーマット、これを使って普及を図っているところでございますけれども、さらに地図メーカー等とも協力しながら、地図データ配信のためのデータ仕様、それから通信方法を規格化した上で、できるだけ迅速に更新情報が伝えられるようにしたいと考えております。

それから、もう一つはGISとペアになるわけですけれども、高精度測位というのが必要になってまいります。これにつきましても始めるときに、準天頂衛星プロジェクトを始めるときにこの場でご報告をしておりますけれども、位置特定のための複合補完技術、これはGPSだけじゃなくて準天頂衛星、それから擬似衛星、自律航法システム等を開発して、測位精度20センチメートルぐらいを目指します。それから、都市内で特にマルチパスの誤差低減ということで精度1メートル程度を目指します。それから、RTK−GPSの高速初期化技術の開発ということで、1秒以内に決定率90%、精度20センチというような目標を掲げまして、今、研究を行っておるところでございます。

AHSの高度化につきましては、ちょうど3月から5月に首都高の参宮橋でカーブ進入危険防止システムの実験をやっておるわけですけれども、これの低コスト化を図って、事故が多発しているカーブに展開する。それと、もう一つはサグ部の渋滞の低減のための検討を行うということにしております。

プローブの高度化につきましては、これは先ほどVICSの高度化のところで、広い範囲の道路について情報を提供すると言いましたけれども、実は今現在は、道路のトラフィクカウンターのデータをかなり使っていますけれども、トラフィックカウンターが設置されていない道路というのが結構ございまして、そこの部分の情報をまずとりたいということで、それをプローブカーによってとりたいということを考えております。そのためには、プローブデータをリアルタイムで処理して、それを提供していくという、必要がございますので、そのための検討を行うことにしております。

これが研究の全体を示しておりますけど、プロジェクトの期間は18から21の4年間を予定しております。プロジェクトについては、既に動いているものがございまして、それを束ねて、先ほどのスマートウェイ推進会議提言に合わせて束ねた形でプロジェクトとして組んでございます。

以上でございます。

(課題説明終了)

(主査)ありがとうございました。

 それでは、ご質問とかご意見をちょうだいしたいと思います。いかがでしょうか。楽しそうな話だと思いますが。どうぞ。

(委員)ITSも第二段階ということで、当然これやっていかないと、今のままのITSではちょっと不十分だなというのは感じているところなのでぜひやっていただきたいところなんですが、ただ、17年度の目標ということで見ますと、いま一つ……、17年度でしたっけ、当初4項目ぐらいでしたか、あったかと思うんですけど、ちょっといま一つおもしろみがないなという感じがしないでもないんですけれども。失礼、2007年ですね、ごめんなさい。17年はことしですから、2007年。まだ2年あるわけなんですけれども、そういう気がします。もう少し普及の速度といいますか、研究の速度を早める必要があるんじゃないかなというのが思っているところでございます。

それから、特にAHSについては、先ほども事故の話がいろいろ出ておりますけれども、交通事故の低減という意味においては、首都高でVICSの実験といいますか、VICSによる提供のあれをやっていますけれども、もう少しこのあたりがいろいろ制度的なものも含めて早いこと整備される必要があるんじゃないかなという気はします。

以上です。

(主査)ほかにいかがでしょうか。

 何か、よろしいですか。

(国総研)2007年の目標なんですけれど、これは、もうちょっと早めるべきというお話があったんですが、車載器は今開発しているところなんですけれども、車載器だけじゃ機能しなくて、もう一つ路側器の整備というのも必要になってまいります。路側器については、これはどっちかというと官側がやる仕事になってくるんですけれども、ちょうど7月に中間報告を出しましたというお話をしましたけれども、これをもとに18年度から予算要求をして、1年かけて2007年に間に合うように整備していくということで、スケジュール的にはかなりタイトな状況になっております。

(主査)ほかにどうでしょうかね。どうぞ。

(委員)門外漢で、つい最近、ETCを自分の車につけた人間なんですけれども、コストの面ですよね。私がつけた理由というのが、コスト的な問題と、あとはサービスなんです。その辺のサービスというのは、例えばマイレージサービスを始めたとか、いろいろありますよね。だから、その辺で多分、普及って相当変わったような感じがしています。このプロジェクトとしては、私は非常にわかりやすかったんですけれども、サービスを開始するに当たって利用率を上げていくといったような、そんな形では、コストとかサービス面がすごく重要なのかなという感じが、私自身の経験からそう思いました。

(国総研)おっしゃるとおりでございまして、ETCも最初かなり高かったんです。ちょっと普及がどうかなという状況になって、その後、なりふり構わずといっていいぐらい優遇策を入れまして、それで、先ほど言いましたように、今、首都圏の周辺ですと利用率が45%ぐらいになっています。約半分になりまして、料金所渋滞はかなり解消しているという状況ですので、やはりコストというのは普及には大きく効くというのが教訓です。

(主査)いかがですかね。

これ、ちょっとでかい話になっちゃうんですけど、せっかくセカンドステージって言われているし、本格的にやり出して10年たったわけですから、システムアーキテクチャーというのをもうちょっと真剣に考えた方がいいんじゃないかなと思うんですね。事故・環境負荷・渋滞といった負の遺産は、事故は別ですけれども、渋滞も別ですけれども、環境に関しては、何か反射的な効果ですか書かれていないんですよね。環境をよくするというのは、別に言うと、ユーザーサービス定義の一番下位の欄に二つしか出てこないんですよね。だから、そういうこともあるので、もうちょっとその辺、他省庁を巻き込んで大きなことになってしまうんで大変だと思いますけども、もうちょっと随分状況も変わってきていると思いますし、社会的なインパクトも変わってきていると思いますので、考えていただければありがたいなというふうに思いますのが1点と、あともう一つ、公共交通との連携ということも、今後非常に重要な課題になってくると思うんですよね。ですから、さらにITSの効果を普及させるために、あるいは事故とか渋滞とか環境負荷ということをさらに効率的に解決するためにも、その辺、もし何か考えておられることがありましたら教えていただければありがたいなと思います。

(国総研)システムアーキテクチャーはまだ余り議論になっていないのが正直なところでございます。ただ、少し前にも議論で出てきましたけれども、京都議定書の関係で、実はIHSの寄与分というのは結構あるんです。あくまで割り振られているだけで、実際どう実現しているのかというところはまだちょっとあれですけれども、その意味ではかなり環境は、重要かなと思っております。

 それから、公共交通につきましては徐々に進みつつあります。今年度から高速バスロケを始める予定にしておりますので、高速道路というのは都市高速に近い部分でございますが、そこのところに新しい5.8ギガのDSRCをつけて、高速のバスにつきましては、プローブ情報あるいはバスの運行管理ができるような体制にしていきたいと思っております。まだちょっとそれだけでは不十分かもしれませんけど、徐々に進みつつあります。

(主査)よろしくお願いします。

ほかに、よろしいですか。それでは、どうもありがとうございました。よろしくお願いをいたします。

 それでは、いよいよ終わりまで来ましたけれども、第1分科会及び第2分科会での評価対象課題の報告をお願いしたいと思います。

(事務局)資料の17でございます。他の分科会における評価対象課題の報告ということで、第2部会、第3部会における状況でございますが、事後評価につきましては、第2部会、第3部会、それぞれ1課題ずつということで2課題でございます。また、事前評価につきましては、第2部会が2課題、第3部会が3課題ということで計5課題ということで資料17に配付をさせていただいております。この資料につきましては、事前に送付した時点から若干の時点修正がございまして、7月22日の第2部会、また7月25日の第3部会で配付いたしました資料でございます。

 以上でございます。

(主査)ありがとうございます。

 きょう、ここでやったのは、事後が三つと事前が6プラス1ですかね。LRTももし事前ということに入れるのであれば、中間が1ですから、アンバランス結構あるんです、その結果、委員の皆様には頑張っていただいたわけでありますけれども、それで私自身さぼってしまって、他の分科会に事前に何か意見を求められておったんですけど、私自身さぼって書いていないんですけれども、きょうも他の分科会からは我々にところにも出席を割り当てられた○○先生のものしかないということもありまして、この辺もやっぱりもうちょっと相互の交流というのが必要かなというふうに思いました。

 出されているかどうかわかりませんけど、もし出されているのであれば、ご意見なり評価は、それぞれの分科会できょうみたいに紹介されて、取りまとめられることになっておりますので、よろしくお願いをいたします。

 最後になりましたけれども、きょう、私、いささか先ほど感想めたいものも既に言ってしまいましたけれども、全体を通じたご意見とか感想等ありましたら、お願いしたいと思います。疲れたとか、もう嫌だとかでも結構でございますが、いかがでしょうか。どうぞご遠慮なく。どうぞ。

(委員)一つ一つのプロジェクトの経費が、大学なんか経費なんかと比べるとかなり大きいわけですけれども、その辺の相場みたいなものがわからないようなところもありまして、きょうも事後評価で、最初の二つは10億級で、三つ目が1億級なんですけれども、その辺の効率性とか、その辺の評価をちょっとしにくいところがあるんですよね。ですから、研究費の費用対効果というんですか、そういったところの。きょうの評価ですと、計画とか実行体制よかったかどうかというのと、あと、達成度がどうかというのが主だったんですけれども、三つぐらい評価項目があった方がつけやすのかなというふうに思いました。ですから、結局、評価の結果がみんな上から二つ目のところにおさまってしまうというようなところが、こんなところが日本的評価というのがありますけれども、そのあたりの、我々の評価の軸がもう一つ……、どういうんでしょう、みんな同じ評価になってしまうというところはちょっと結果としてはつまらないようなところがあるんじゃないかなと思います。

(主査)ありがとうございます。

 ○○さんは別ですけれども、大学にいる人間がほとんどでございまして、その辺の金銭感覚というのは、我々の方と随分違うようにも思えますけれども、そういう意味で結構厳し目の評価になってしまったのかなというふうに思いますけれども、我々のところは、ある意味では優秀な、ほぼただで使える研究者のたまごがたくさんおりますので、楽させていただいている面があるかと思いますけれども。

 ほかにいかがですかね。どうぞ。

(委員)私も費用のことについては、ちょっと情報が足りないなという感じがいたしました。特に事前評価のコストについてもう少し情報があった方が判断しやすいなということですね。

 それからあと、一般論として、出力が足りないんじゃないかと。あるいは出力を出している分野が極めて限られているんじゃないかなという気がいたしました。幾つかの分野については、極めて精力的にやられているなという気はしましたが、もう少し、政策論ですので、アウトリーチを意識したことをおやりになるといいなというふうに思います。

(主査)出力というのは、ペーパー数だけではなくて。

(委員)そういうことですね。

(主査)そういうことですか。

(委員)はい。例えばシンポジウムをやるのでもいいですし、もう少し一般の方のサポートを得られるような努力というのが必要じゃないかなと思います。

(主査)わかりました。

 ほかにいかがでございましょうか。よろしいですか。

 それでは、全体を通じた意見もそういうことでございますので、今後の研究全体の遂行についても参考にしていただければなと思いました。

 以上で本日の議事はすべて終了いたしました。

 長丁場でございましたけれども、本当にお疲れさまでございました。議事の進行にご協力いただきまして、本当ありがとうございました。

 この後の進行は事務局にお返しいたします。

(事務局)どうもありがとうございました。

 事務局より今後の予定といいますか、流れについて簡単にご説明いたします。

本日のまず議事録につきましては、先ほどご説明しましたように速記録を作成いたしまして、委員の皆様に確認をしていただいた上で確定いたしたいというふうに思っております。評価書につきましては、主査にご一任いただきましたので、見ていただいた後に最終的には本委員会の委員長の同意を得て決定するという手続になります。報告書といたしましては、評価書を取りまとめて作成いたしまして公開いたします。

それから、もう一つ、行政評価法に基づく政策評価個票というものがございまして、これは一枚紙で、それぞれ課題についていたのですけれども、これは行政評価法に基づきまして国土交通本省に提出いたしまして公表されるというものでございます。この個票のところに外部評価の結果という欄がございまして、そこにきょうの結果、簡潔に数行なんですけれども、記載いたしまして、主査にご確認をいただいて取りまとめて提出するという予定でございます。

それでは、最後に○○所長よりごあいさつを申し上げます。

(国総研)どうも本日は大変長時間にわたりまして、10時間、大変長丁場でございまして、それにもかかわらず、大変熱心にご審議いただきましてありがとうございました。

本日のご審議いただきました案件で事後評価が3件でございますが、いずれもおおむね目標を達成したというご評価をいただきました。また、中間報告の1件につきましては、おおむね順調に進んでいると。ただ、少しいろいろと注意すべき点があるので、そこを修正して継続せよと、こういうお話でございました。また、事前評価の7件につきましては、いずれも国総研としまして取り組むべき、実施すべき大事な課題であると、こういうご評価をいただいたところでございます。

また、審議の過程で私どもの研究にとりまして大変有益なご示唆、ご助言、たくさんいただきました。まことにありがとうございしまた。今後の研究の充実、またその成果の活用という面で私どもとしましても努力をしていきたいと思っております。本日は、どうもまことにありがとうございました。

あと、もう1点、これは本日の評価委員会とはちょっと別枠の件でございますけれども、ちょっとご報告というか、ご紹介させていただきます。明日8月2日付で国土交通省一連の人事異動が予定されております。それに関係いたしまして、実は私自身、明日付で国交省を退職ということになっております。大変どうもお世話になりました。ありがとうございました。

それとあわせましてご紹介しますが、○○企画部長も明日付で退職でございます。

それから、○○評価研究官は、退職ではございませんで、北海道開発局の方に人事異動ということでございます。

いずれも大変お世話になりまして、ありがとうございました。

もちろん後任がそれぞれ参ってくるわけでございますので、また、評価委員会の先生方にお世話になると思います。どうかよろしくお願いいたします。

(主査)どうもご苦労さまでした。ありがとうございました。

(事務局)以上をもちまして、17年度第3回評価委員会分科会を閉会いたします

 本日は、長時間にわたりご議論いただきまして、どうもありがとうございました。

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