平成18年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会
議 事 録


1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 委員長挨拶
4. 議事
(1) 国総研の研究活動のマネジメントのあり方について
(2) 個別研究課題の評価について
5. その他
6. 国総研所長挨拶
7. 閉会

1.開会

(事務局) それでは、委員の皆様、お揃いのようですので、ただいまより平成18年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会を開会させていただきます。私は事務局を務めさせていただきます研究評価推進課長の○○でございます。よろしくお願いいたします。

 では最初に、研究評価委員会の委員の皆様をご紹介させていただきたいと思います。資料を2枚めくっていただきまして、委員会の委員名簿をご覧いただきたいと思います。まず、委員長でいらっしゃいます東北大学教授の○○委員長でございます。 

(委員長) ○○でございます。よろしくお願いいたします。 

(事務局) 筑波大学教授の○○委員は本日はご欠席でございます。

 大和ハウス工業株式会社顧問の○○委員でございます。

(委員) ○○でございます。 

(事務局) 青森大学教授の○○委員でございます。 

(委員) ○○でございます。よろしくお願いいたします。 

(事務局) 名古屋大学教授の○○委員は今日はご欠席でございます。

 西松建設株式会社技術研究所所長の○○委員でございます。 

(委員) ○○です。よろしくお願いします。 

(事務局) 茨城大学教授の○○委員でございます。 

(委員) ○○でございます。よろしくお願いします。 

(事務局) 慶応義塾大学教授の○○委員でございます。 

(委員) ○○でございます。 

(事務局) 淑徳大学教授の○○委員は本日はご欠席でございます。

 毎日新聞科学環境部記者の○○委員でございます。 

(委員) ○○です。よろしくお願いします。 

(事務局) なお、国総研の幹部のご紹介につきましては、その前の紙の座席表をもってご紹介に代えさせていただきますので、ご了承いただきますようお願いいたします。

 次に配付資料の確認です。議事次第の下のほうに配付資料の一覧がございます。資料1が今の委員名簿。資料2が国総研における研究評価の進め方。資料3が平成17年度の研究活動およびその成果。これにつきましては、別紙の1から4までが配付してございます。資料4が国総研の研究方針の改訂の案です。資料5がその研究方針の新旧の対照表。資料6が個別研究課題の評価についてです。なお、参考資料につきましては、ここに記載してあるとおりですので、不足している資料等がございましたら、事務局までお申し出いただきますようお願いいたします。なお、参考資料10の国総研の年報がございますけれども、これについては暫定版ですので、委員会限りとしてあとで回収させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

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2.国総研所長挨拶

(事務局) それでは、国土技術政策総合研究所長の○○よりごあいさつを申し上げます。よろしくお願いします。

(国総研) ○○委員長をはじめ、委員の先生方、大変お忙しい中、またお暑い中、御出席を賜りまして本当にありがとうございます。

 国総研も発足してから5年を過ぎまして、研究をどういうふうに進めていったらいいのか、仕事の仕方そのものもいろいろ考えていかなければいけないと思っているところでございます。本日は、17年度にどういう研究をしたかという御報告と併せまして、国総研としてどういう研究のマネジメントといいますか、仕事のしかたをしていったらいいのかということについて内部で議論をしておりますので、これを皆様に御説明申し上げ、またいろいろご意見を賜ればというふうに思っております。

 国の研究機関としてやらなければいけないことは何か、どういう仕事のしかたをしなければいけないのかということを自らも問わなければならないというふうに思っているところでございます。ぜひ忌憚のないご意見を賜りますようによろしくお願い申し上げまして最初のごあいさつに代えさせていただきます。よろしくお願いします。

 

3.委員長挨拶

(事務局) それでは、委員長にごあいさつをいただきまして、以後の議事をお願いしたく存じます。○○委員長、よろしくお願いいたします。

(委員長) それでは、今年もこの外部評価委員会を開催いたしましたところ、皆様がたにお集まりいただきましてありがとうございました。先ほど所長からお話がありましたように、個別評価は個別の分科会で行われますのでここは一体何をやるところかというのはいつも問題になるのですけれども、今回お話がありましたように、研究推進管理運営体制、こういうものを考えてみたのでこういう方向で行きたいと思っているけれどもどうかというようなご説明をいただきます。皆様がた、比較的経験があまりない先生がたもおられるかも分かりませんけれども、大学ではどちらかというと個別の研究者が個別の研究をしていくような体制なのですけれども、こういう国の組織はこういう一種の組織的な研究を遂行していくというところに特色があるように思いますので、この観点からご意見をたまわればいいのではないか思っている次第です。よろしくお願いいたします。 

4.議事

(1)国総研の研究活動のマネジメントのあり方について

(委員長) それでは、議事進行いたします。お手元の議事次第にしたがいまして行きたいと思います。議題の議事の1です。今申し上げました国総研の研究活動のマネジメントのあり方に入りたいと思います。事務局からのご説明をお願いいたします。

(事務局) それでは、評価研究官の○○でございます。座ったままで失礼ですが、説明をさせていただきます。膨大な資料があるのですが、今日はパワーポイントと、それからパワーポイントでこれから映しますそのものもお手元に配付をしておりますので、スクリーン、もしくはお手元の(パワーポイント)資料をごらんになってお聞きいただければと思います。説明に30分少々かかると思いますけれども、お時間をいただきたいと思います。

(以下、スライド併用)

 本日の委員会で評価いただきたいことですけれども、国総研におけます研究活動のマネジメントの在り方について、ただいま所長のほうから仕事のやり方というような表現もございましたけれども、そういったものについて当研究所で議論をしておりますので、その在り方についてご意見をいただければと思っております。

 説明といたしましては大きく二つのパートで、一つといたしまして、昨年度の活動を中心に当初の研究活動の概要のご報告をいたしたいと思います。それから二つめに、研究活動のマネジメントの在り方について、現在、所で検討しております内容をご紹介いたしたいというふうに思います。

○最初の1番のパートで、国総研の研究活動の概要を昨年度の活動を中心に、この4項目についてご報告をいたします。まず国総研の使命ですが、これは5年前の設立当時に書かれているものです。「住宅・社会資本のエンドユーザーである国民一人一人の満足度を高めるため、技術政策の企画立案に役立つ研究を実施する」ということになっております。

 国総研の組織といたしましては、筑波と横須賀にごらんのような研究部とセンターを構えて研究を進めております。 

 定員は昨年度390人ということで、内研究職が251名ということです。総予算はおよそ180億円という体制で研究を実施しております。 

 研究活動ですけれども、研究課題はここにあります大きく三つのカテゴリーに分けて設定しております、いちばん上のプロジェクト研究と、それから二つめの基盤研究、これは国土交通省がいろいろ抱えております技術政策課題を解決するための研究ということで、特に分野横断的にやるものをプロジェクト研究という位置づけで重点的に行っております。三つめの基礎研究は中長期的な必要性が予想されるような分野の研究をしているということでして、その内訳はどうなっているかということが下の円グラフです。プロジェクト研究と基盤研究を合わせました課題解決型の研究が、課題数で約70%、予算で約80%を占めて研究を進めているということです。 

 それから分野別の研究費ですが、ここでいいます分野といいますのは、このグラフの下にありますけれども、当研究所の研究分野を7本の柱という表現で研究方針の中に示しておりますが、この1番から7番の柱に対応いたしまして、平成15年度と17年度の研究費を比較したものです。15年に比べまして17年度が伸びておりますのは、例えば柱の6「高度情報化社会に対応した国土づくり」でありますとか、柱の3「生活コストが豊かでゆとりのある暮らしの実現」、それから柱の2で「安全で安心な国づくり」と、そういったことで安全・安心、あるいは国民の生活に関係すること、それから高度情報化に対応、そういったところの研究費が2年前よりも増えたという状況です。 

 技術政策課題に対する研究の実施状況について、昨年度、5年間を振り返って我々は自己点検を行いました。技術政策課題を解決するための成果が順調に得られているのかどうか、あるいは行政・社会の最近のニーズを踏まえ、今後どのような研究を実施すべきかというようなことを全分野にわたって自己点検をいたしました。その成果は資料3の別紙、あるいは参考資料の4に書かれておりますが、資料が膨大ですので、今日は説明を省略させていただきます。

 例えば自己点検の例といたしまして、災害に対して安全な国土という分野につきましては、研究の進捗は概ね順調で、予定をしておりました予測モデル、予測システム等の開発の成果は得られておりますけれども、今後は最近の動向を踏まえ、例えばこの分野ですと、災害の強大化、地域コミュニティの変質や高齢化等を踏まえた早期の復旧や復興を可能とする方策とか、自助・公助による防災地域づくり等々についての研究が今後必要だというふうに自己点検で考えているところです。 

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 それから17年度の研究活動で得られました成果がどう施策に反映をしたかということで、反映事例として38がございます。それにつきましても資料3のほうに詳しく表の形式でまとめております。私ども施策への反映といたしましては、法律、政令等にどう反映されたかとか、ガイドライン、指針等を作成して、国民、あるいはいろいろな事業者にどう普及したか、あるいは新規施策にどれだけ結びついたかというようなことで考えております。国総研が中心となっていろいろ行ってきました研究活動がいろいろな分野で反映をしているものというふうに思っております。 

 三十幾つはご紹介できませんので、幾つかここだけ挙げさせていただいておりますけれども、例えば公共工事における総合評価方式という観点に関しましては、活用のガイドラインというものを作成いたしまして、これにつきましては国土交通省の通達を通じて現場に活用されております。それから自立循環型住宅の関係ですけれども、これもガイドラインや基準に反映させ、これは民間への講習会ということで技術普及を図っております。事例3では、物流の関係ですけれども、これは物流総合効率化法という法律制定に際しまして、港湾国際物流拠点地区の指定の考え方に研究の成果が反映をされていると、こういった事例がございます。 

 それから昨年度は記憶されているかたもおられるかと思いますが、ガードレールに付着金属片というのがございました。この課題に関しましては、国総研でも付着原因の追究を行いまして、その成果につきましては国土交通省の今後の対応のしかたに反映をさせたところです。 

 それから技術支援活動というのも各種昨年度も行いました。行政運営や事業の執行管理に必要な技術指導等々も行っておりますし、また、委員会への参画もごらんのような件数を実施しております。 

 災害が一度起こりますと、私ども本省や出先の地方整備局と連絡を取り合いまして、すぐさま必要に応じて発災の現場に出かけるということで、昨年は九州南部の土砂災害でありますとか、右側にありますが、宮城県沖地震でスポーツ施設のつり天井が落ちるというようなことがございましたが、そういったことにもすぐ出かけていって原因を調べ、また必要な支援を行い、今後の研究にも役立てるようにいたしております。 

 海外にも行っておりまして、ハリケーン・カトリーナの災害調査等にも参画をいたしております。 

 それからそのほかの研究活動といたしまして、他機関と連携をしての研究も進めておりまして、共同研究と委託研究は、ごらんの件数を実施しております。特に次世代道路サービス提供システムということで、いわゆるITSの関係の研究につきましては、民間企業23社という非常に大きな仕掛けの中で共同研究を実施している例もございます。 

 それから国際的活動に関しましては、国際会議、その他多国間の技術協力等々、それからJICAの専門家としての派遣といったようなもろもろの活動に国総研の職員が出かけて国際的活動に従事いたしました。 

 それから研究者の育成の関係では、その活動といたしまして、所内の研修メニューを充実させ、オン・ザ・ジョブトレーニング等の実施をいたしましたし、また、所として多様な人材の確保と育成ということで、さまざまな能力、経験を持つ人材を確保するために、この下のほうにございます各種制度を使いまして多様な人材の確保にも努めたところです。 
 それから研究成果をどう発信したかということですが、これに関しましては年間の広報活動計画のもとで実施をいたしておりますが、特にここにございますように、学会誌や専門誌等への論文の投稿数はこのようなことになっておりまして、それぞれの研究者が研究成果を外に向けても発信しております。学会といった専門的な学術的な論文だけではなくて、技術者向けの技術資料といったような形、また、ときとしては一般向けの記事ということで、分かりやすい成果の発信ということにも心がけているところです。 

 研究成果はホームページでも発信をしておりまして、特に一般のかた向けと技術者・研究者向けということに分けて、必要な情報にアクセスしやすいような環境整備に配慮いたしたところです。 

 そのほか、国総研講演会でありますとか、施設の一般公開等々、それから刊行物など、いろいろな手段を通じて研究成果の情報発信に努めたところです。

 以上が昨年度の研究活動の概要です。 

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 続きまして、研究活動のマネジメントの在り方について、現在所で検討していることについてご紹介をいたしたいと思います。話の中身はこの3項目でして、一つは国総研の特徴、国の研究機関として一体どういう特徴を持っているのかということの整理、それから二つめに、研究活動のマネジメントの取り組みをご紹介いたしたいと思います。キーワードといたしましては、「コア」と「大枠」と「Check」という3項目について検討しておりますので、そのご紹介をいたしたいと思います。そして最後にそれらを受けて現在所の研究方針の改訂を進めておりますので、その考えを最後にご紹介いたしたいと思います。 

 国土技術政策総合研究所ですけれども、一体何をする組織なのかということにつきましては、政府のいわゆる組織令というものがございますけれども、そこに、ここにございますように、国土交通省が所管する国土技術政策の企画立案と密接に関係がある総合的な調査研究開発をするところだというふうに位置づけられています。そのほか独立行政法人がございますし、また、この他に国土交通政策研究所といった組織もございます。 

 私ども国総研の特徴を少しまとめてみたのがこのスライドでして、この五つをここで掲げさせていただいております。

 まず1番として、国総研は住宅・社会資本整備にかかわるほぼすべての分野を対象としておりますので、そういったことを生かしますと、横断的、統一的な取り組みが可能ということ。あるいは獲得した知見を相互に活用すれば全体のパフォーマンスを上げることが可能だというような、そういった一種のアドバンテージを持っている組織だというふうに考えております。

 それから二つめの特徴として行政機関としての研究所ということでありますので、行政に対して、ここでいえば特に国土交通省でありますが、その本省に対して今後の方向性を提示することが可能な組織ということがいえると思います。

 それから3番めの特徴として、本省の組織と若干異なりまして、私どもは局、ここは本省の道路局とか河川局とかそういうイメージですが、そういう所掌範囲にとらわれないテーマを対象とすることができるというアドバンテージもあるものと考えております。

 それから4番めに、外部からの突発的な圧力が相対的に本省とか出先機関に比べて少ないということが一つのアドバンテージで、中長期的な展望に立って仕事を進めることが可能というふうに考えております。また、周囲に総合大学を含め、いろいろな研究機関がおられますので、そういったかたがたとの連携というものも可能だというふうに思っております。こういったアドバンテージがあると認識をしたところですが、これは今後十分に活用する必要があるのではないかなというふうに思っているところです。 

 それからもう一つの特徴で、特殊性と書いてございますが、ある意味制約かもしれませんが、他の研究所にない特徴がございます。それは先ほど来、行政の一組織とは申しましたけれども、国土交通省が持っております地方整備局と必ずしも直接のラインとしてリンクしておりませんので、問題の発見とか成果の検証に手間・暇がどうしてもかかるというようなことがございますし、また、国民など代表されます外部と研究者が直接接触する機会が少ないために行政課題に対する意識が低いと、こういうこともございます。こういったところをどうしていくのかというのは課題かというふうにも思います。また、3番めですけれども、我が研究所の一つの特徴として、研究中心タイプのキャリアを積んだ人間が必ずしも大半を占めているわけではないというのがこの下の円グラフに書かれたところでして、およそ3分の1がこの黄色側の、研究中心のキャリアを積んできた人間が研究室長としておりますけれども、約3分の2は行政との行き来をしているというキャリアを積んでいる人間が大変多いというのが一つの特徴で、例えば独立行政法人の研究所と少し性質が異なってくるところです。これが大きな特徴かということです。 

 これらの特徴を踏まえて今後国総研の研究活動のマネジメントをどうやっていったらいいのかということを所内でいろいろ検討いたしております。よりよい、より効果的な、あるいはより効率的なマネジメントを行うことが望まれるわけですが、そのために我々が今考えておりますのは、研究のコアと呼んでおりますが、コア、それから大枠、それから効果把握のためのCheckの重視、こういったことを考えていこうということでして、こういった議論を今からご紹介をいたしますので、また先生がたの忌憚のないご意見をたまわればというふうに思います。 

 最初に、コアの設定ということですけれども、先ほど来社会資本関係で唯一の国の研究機関であるということを我が研究所の特徴として述べさせていただきましたけれども、それにふさわしい研究を当然やらなければいけない。言い換えますと、他ではなしえない国の組織力を駆使して収拾される情報に基づく研究課題を、所、あるいは各部署のコアとして位置づけ、研究活動を継続していくのだと、こういう姿勢を持っていきたいというふうに考えております。これから厳しい行政改革の中で多分私どもの研究所も人員的にも予算的にも増えるということは多分ありえない中で、本当に必要なことをやっていくという姿勢が必要だというふうに考えております。 

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 字が若干小さくて恐縮ですが、各研究部・センターで今後何をコア部分として持っていけばいいのかというのを現在議論をしている最中でして、これで固まったという段階にはまだ至っておりませんが、こういったものをベースに各研究部が絶対これからもやっていかなければいけないことは何なのかという議論を深めていきたいというふうに思っております。字がずらずらと並んでいるだけでなかなかよく分からないとは思いますが、例えば例として上から五つめぐらいに建築研究部というのがございますが、建築行政における安全性確保のための技術基準体系の維持向上といったものをコアにするというふうに書かせていただいております。昨今の建築関係のいろいろな事件がございますけれども、ああいうものを踏まえると、やはり国の機関としてこういうことはしっかりやっていかなければいけないのではないかというふうに考えたりしているところです。ほかの部のところは文字だけで失礼をいたします。 

 それから2番めですけれども、研究活動を進めるに当たって、大枠をちゃんと設定し、それを理解したうえで物事を進めていこう、そういう姿勢を持とうということです。大枠とは一体何なのかというのを今所内で議論しているところでして、定式化したもの、これが大枠ですと、こういう例えば表が大枠ですというものがあればいいのですが、まだそういう定義がございません。ただ、ここに丸が四つございますが、こういったものが大枠として要素として含まれるべきものだろうということを考えております。

 一つは技術政策上の課題を包括的に提示するものであって、それから優先的に取り組むべき課題を抽出できるもの、それから政策目標を実現につなげる工程が明らかになっているもの、そして行政や他機関との連携を図るもの、こういったものを大枠として十分認識したうえで、研究すべきことすべてを国総研の陣容、予算でやれるわけではありませんので、いろいろな関係機関と連携をしながらやるわけです。こういった大枠を設定した中で自ら取り組む研究課題を選定したり、あるいは自らはやらないけれども、国の研究機関としてコーディネーター役を果たすというような役割がこの中から出てくるのではないかというふうに考えております。この大枠の設定が今まで当研究所で必ずしも十分に行われていなかったのではないかというような反省も含めて、こういった大枠の設定に今後取り組んでいきたいというふうに考えております。 

 とはいえ、幾つか大枠の設定に取り組んでみようということで取り組みました事例として二つご紹介をしたいと思います。一つは、安全・安心分野におけるグランドチャレンジ、二つめに交通安全分野におけるマップ作成の試みということを現在までに進めてまいりました。最初の取り組み事例ですけれども、安全・安心分野におけるグランドチャレンジにつきましては、3月の研究評価の懇談会でご紹介をさせていただきましたので、前回ご欠席の先生がたがおられますけれども、同じ説明は、恐縮ですが、省略をさせていただきます。参考資料の5についておりますので、またごらんいただければと思いますが、かいつまんで申し上げますと、災害に対して安全・安心な地域社会の構築を目指した今後の取り組みの方向性を全体を俯瞰するような形で取りまとめてみようとした試みです。安全・安心の要件を地域社会の側からとらえるということ、それからここにありますけれども、なすべきことを包括的に組み立てるといったようなことをずっと考えまして、今後関係者が一体となった取り組みの基礎となる共通認識のコア部分を醸成するための10のチャレンジといったものを設定したところです。

 3月の段階でここまでご報告をいたしましたけれども、その後さらにそれをブレークダウンいたしまして、整備局と連携をして取り組む行動目標といったものを設定いたしました。研究所だけでやるのではなくて、我々現場とのリンクということも特にこの安全・安心の分野では重視をして整備局と取り組むべき課題を設定いたしまして、現在当面ではございますが、6テーマを設定して始動を始めたところです。 

 そのうちの二つだけご紹介をいたしたいと思いますが、一つめの事例はGISを活用した一元的な高潮堤防マネジメントシステムの構築ということでして、目標といたしましては、高潮堤防の状態を防災機関の間で共有するということです。高潮堤防というのは実は、役所側の縦割りの議論をここで持ち出すのもあれなのですが、ここにございますように、河川堤防と海岸堤防に分かれておりまして、所掌でいくと河川局、港湾局といったようなことに分かれております。また、管理は実際は直轄だけではなくて、都道府県にお任せをしているというところが多いということで、堤防のマネジメントがばらばらになっているというのが実は実態です。それを国として全体をどういう状態なのか、例えばこの地区にとっては高潮に対してどういう危険度があるのかをちゃんと把握しておくことが当然必要だろうということで、そういったものに取り組むということでして、その道具としてGISを活用していくというような取り組みに入りたいと考えているところです。 
 それからまた、これは話題が違いますけれども、特に地震や水害を想定していただければいいと思うのですが、一度災害が起こりますと、いかに経済活動を早く元に戻すかというのが非常に大事です。各民間企業は現在事業継続計画、BCPと通称呼ばれておりますけれども、こういった計画を作ることを着々と進めておられます。一方、国土交通省は道路でありますとか、河川でありますとか、重要なインフラを管理しておりますので、一度災害が起こったら一体どういう状況になるのかということを管理者側として経済界にちゃんと情報を提供する。経済界のほうは逆に素早い復旧・復興のためには社会インフラがどうあってほしいかというようなことも当然要望があると思います。そういったものをもっとキャッチボールを経済界と国土交通省がもっと日頃から情報交換を行っておくことが非常に大事だろうということで、こういった体制を確立して、こういう中に私どもの国総研が行う研究の成果も活用されるような状況を作りたいというふうに考えて活動を始めているところです。 

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 それから今度はもう一つ別の大枠の話をしたいと思いますが、交通安全分野におけるマップの作成の試みということで、この分野での大枠を作ってみるとどういうことになるのかというのをやってみたものです。このスライドはごく一般的に交通事故問題に取り組まなければいけない背景なり交通事故の特徴を示したものですけれども、交通事故というのは改めて申すまでもなく、単一の要因だけで説明はできませんで、人的要因が占める割合がこれだけあります。車両に原因がある交通事故はこれぐらいある。道路環境に関係する要因が例えばこれぐらいあるということで、これに関係する多くの機関がその対策をどうするかについて研究等々をする必要があるというのは当然のことです。ということで、私ども他機関がどういうことをやっておられるか、これは主として人的要因から研究を行う機関です。あるいは車両関係での研究、安全に対してどういう研究がなされているのか、こういったことを十分に知ったうえで、今度は国土交通省、その中でも国総研がどういうことを研究として担うべきかといったこと。 

 申し遅れましたけれども、大学とか学会もこちらにございます。そういった総合力を発揮して国全体としての研究レベルを上げる必要があるだろうというふうに思います。 

 こういった整理をしたうえで、さらに国土交通省として何をなすべきかということを今後は整理を次の段階としまして、その整理の中で求められる施策を整理し、さらにそれに対応して国総研に求められる研究は何かといったものを整理したのがこの表です。 

 これをさらにロードマップという形に落としたものです。字が小さくて大変恐縮ですけれども、この表の横軸に時間軸が取ってございます。縦に見られます項目がございまして、表の中に埋めておりますのは、黒字が国総研が主体となってやるべき研究です。その下に青字がございますけれども、この研究をどう生かすのかというのが青い字で書いてありまして、例えばマニュアルにして全国に普及をさせるとか、例えばインターネットを活用して何かに使うといったようなこと、どう活用するかがここに書かれております。最終的にこのいちばん右の欄でこれらを行えば交通事故がどう減ることに寄与するのかとか、交通安全対策を効果的、かつ効率的に立案するためにどう生かされるのかというのをここに書いたということでして、国総研がやるべきこと、それをどう生かすか、その結果どうなりますということを一つの時間軸上に整理しようとしたのがこの表です。

 これがロードマップとしていちばん分かりやすい形態かどうかというのはまだまだ所内で検討しなければいけないとは思っておりますが、例えばこういったものをほかの研究分野でも作るべく今後は努力していきたいというふうに考えているところです。

 以上が大枠の事例です。 

 それからマネジメントの三つめとして、PDCAサイクルの話をさせていただきたいと思います。PDCA自体はどこでも言われている話ですが、我が研究所の活動を振り返ったときに、このチェックというところの分野が少し、例えばプランの段階からもう少しチェックのことまで議論してこなければいけないのにそこらの配慮が足りなかった事例があるのではないかとか、そういった反省も含めて、効果把握のためのチェックの重視をもっとしっかりやっていこうと、これを打ち出したいというふうに考えております。 

 研究活動のマネジメントにおけるチェックですけれども、それはそれぞれの研究活動がまず1番として先ほど来ご説明しましたコアとか大枠を十分認識したものとなっているかどうか、これらから外れた研究もあるかもしれませんけれども、コアとか大枠を十分意識した研究を行っているかどうか。それから2として、プロセスを重視し、PDCAサイクルは的確に機能しているかどうかの状態を所として常に把握していることが重要だというふうに認識をいたしまして、このようなチェックの重視ということを今後打ち出していきたいというふうに考えております。

 そのためのツールとして今後ある意味計測できるものは計測をしていきたいというふうに考えているのですけれども、ここの部分はまだ実際にやっているわけではございません。今後の一つの検討課題にしたいと思っておりますが、例えばこういうことでどうかということでまたご意見をいただければ幸いかというふうに思っております。

 例えばコア、大枠に関係しましては、各研究者がそれを十分に意識をしているのかどうかとか、あるいは各研究者が力を出す範囲を例えば100といたしますと、コア、大枠に関連した研究に100のうちの幾つ、どれぐらいのエフォートなりウエートなりを置いて研究をしているのかというようなことを主として把握をするように努めたいということが一つの考え方です。

 それから研究プロセスにおけるシーンに関連しましては、それぞれの研究活動がちゃんとPDCAサイクルが回っているのか、チェックの設定をちゃんとやっているのかどうか。あるいは我々にとって顧客であります地方整備局、地方公共団体、各種団体とのコミュニケーションがちゃんと構築されていて、独りよがりの研究になっていないかどうか、そういったところのチェックを今後していくように努めていきたいというふうに思っております。 

 私どもは全部の研究課題についてこれが現時点でうまくすべてが機能しているとは申し上げませんが、機能している例を少しだけご紹介をしておきたいというふうに思います。二つあるのですが、一つは先ほどの交通安全分野の研究ですが、このマネジメントサイクルとして研究活動がグルグルと回っているのですが、その「C」の段階をどうしているかと。これは交通安全対策の効果把握ですが、これにつきましては、全国的に全国の事故データが自動的に国総研のほうに得られるような仕組みになっております。交通事故統合データベースというのが、国総研そのものが持っているわけではありませんが、別の組織で持っておりますが、そういったところから全国の事故データが集まるような仕組みになっておりますので、それを活用して対策の効果把握ができるということで、データに基づいたチェックができる仕組みの一例になっているかなというふうに思います。 

 それから道路環境分野のマネジメントにおきましては、これはここにございますように、道路環境の担当者連絡会議を定期的に開いておりまして、そのときに環境アセスメントにおけるいろいろな課題とか問題点、あるいは手法はどうあるべきかというようなことについて意見を把握するような仕組みになっておりまして、この連絡会を受けまして、国総研としてどんな研究をしていったらいいのかを発掘し、その成果を生かしてアセスの技術手法の改正に結びつけております。事例としてはこのようなものがあるということで、こういった連絡調整会議という会議の診断を通じてチェックをしているという事例もございます。

 以上がマネジメントに関する取り組みの例でした。 

 最後ですけれども、当研究所では研究方針というものを持っておりますけれども、これにつきましては「研究活動のマネジメントを行う中で不断の検討を加え、より進化させたものへと更新していく」ということを考えております。今年も改訂を予定しておりまして、その内容といたしまして今日は一言一句はご説明はいたしませんが、私が今説明をいたしましたマネジメントに関する記述を今年の改訂では加えたいと思っております。また、2番めといたしましては、政策支援を重視する意味での記述の修正を若干行います。それからもう1点、技術政策課題を国土交通省の施策の枠組みに整合させて修正するというような変更点を考えておりまして、今日の委員会での先生がたのご意見を踏まえたうえで7月中に所としてこの研究方針の改訂を行いたいと考えているところです。 

 改訂の三つめの今のポイントで申し上げましたけれども、研究課題の体系を若干修正したいというふうに思っております、それはこの左側が現在の国総研の研究方針の中に掲げております体系の柱建てでして、7本の柱になっておりますが、今般国土交通省の本省のほうで国交省としての技術政策重点的な研究開発課題をこの四つということで整理をされましたので、それに合わせるような形で研究の体系を構成したい、再編成したいというふうに考えております。それは今までの四つが基本的にはほぼ対応する形になろうかと思っております。それから5番め、6番め、7番めの柱を一つにまとめてここに入れていると。こういうような改編にしたいということで予定をいたしております。これは研究方針の今年度分の改訂予定です。

 以上、若干時間をオーバーしてしまいまして恐縮ですけれども、私からの説明を終わらせていただきます。 

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(委員長) ありがとうございました。先ほど冒頭にお話がありましたように、今回ご説明いただいたことは、昨年度の活動を中心に、国総研の研究活動がどうなっているかということをお話しいただきました。2番めは、マネジメントの取り組みとして、特に「コアの設定」と、それから「大枠の設定」ということと、それから「Checkの重視」、この三つに焦点を当てた格好での研究推進体制、管理体制を推進していきたいというお話だったと思います。

 昨年度のこの成果につきましても、一種のチェックのポイントになっていると位置づけることができますので、ご説明がありましたマネジメントの取り組みの観点につきまして、主にいろいろな形でご意見を賜りたいと思います。

 チェックという意味が大変広うございますので、恐らくこの研究所の組織体制はいかなるべきかとか、人事考課をどう評価するのだとか、研究の成果はだれに帰属するのだという話も出てくる可能性があると思いますが、恐らく出てくることは歓迎だろうと思いますので、忌憚のないご意見をお願いしたいと思っています。

 では、どこからでもよろしゅうございます。ご意見を賜りたいと思います。

 はい、お願いします。 

(委員) 委員長から顔を見られましたので(笑)。最後の41番、42番あたりがある種の結論ではないかと思うのですが、41番に政策支援の話とか、国土交通省の施策にどう組み込むかという話、これは大変けっこうなのですけれども、それからそのあとの42番の技術会議のテーマの1〜4まで、これを進めれば進めるほど、本省と国総研との役割分担というものがどうかということが伺っていて、気になるわけです。

 特にコアと大枠の大枠のほうは、本省の施策そのものかなという感じがちょっとするわけですね。それが全体の印象で、そのため先ほど本省の総合政策局の技術会議という、ついおとといもあったのですが、それは昨年あたりから国総研では「社会的技術」という言葉を非常に重視していまして、もちろんご存じだと思いますけれども、それで、今年3月の総合科学技術会議でも、国交省の立場のいろいろ要請をした場合にも、社会的技術というものが一つの中心になっています。社会的技術というのは、ご存じだと思いますけれども、要素技術としては完成していても、現場の総合ということでなかなか普及しないとか、あるいは普通の先端技術のように、普通のマーケット・メカニズムで普及しなくて、国家的な支援がなければ普及しないとか、しかし社会にとっては非常に重要な技術だと、そのようなことが一つのトーンになっています。これから3年かかって作る総合政策局の技術会議のテーマでもそれが中心になっていまして、今回の今日のお話の中でその「社会的技術」という言葉が一言も出てこないのは、わざと避けているのか、あるいは別の形で含められたのか、ちょっとその2点について承れば幸いです。 

(事務局) 後半の社会的技術のほうですが、決して避けたわけではなく、説明を省略してしまいました。お手元に資料4というものがインデックスでございますが、お分かりいただけますでしょうか。研究方針の改定のところですが、この資料4の3ページですが、「2.1 時代の潮流の反映」というものがあり、その後段の3行のところに「社会的技術」という言葉を入れさせていただいております。これは先ほど先生がご指摘のとおり、本省のほうあるいは総合科学技術会議での議論を踏まえて、私どももぜひ取り組むべきだと考えています。

 これは所長から答えていただいたほうがいいのかもしれませんが(笑)、大枠は本省も当然そういう任務を負っていると思うのですけれども、ちょっとご説明いたしましたように、本省にない国総研らしいアドバンテージを幾つか持っていますので、本省がいろいろ縛られている枠にとらわれない発想で、あるいは中長期的な大枠の設定も我々の任務ではないかなと考えているのですが、続きまして所長のフォローを(笑)。 

(委員長) 例えば。 

(国総研) 最初の方で国総研のアドバンテージについてお話をさせていただいた部分があったのですが、どうも研究所は研究所で何をやるかと考えるとか、本省は本省で何をやるかとか、整備局は整備局で何をやるかという考え方だと、なかなかうまくないのかなというところがございます。国交省全体として(という考え方も限定されてしまっているから如何かという議論があるかもしれませんが)、とりあえず国交省全体として何をしなければならないのかということを考えた上で、そのうちやらなければいけないことでやれていないこと、また国総研がやることは何かということをハッキリさせていくという、そういうアプローチが要るのかなと思います。

 本来は本省がやるべきことだとか、あるいはそうではないとかいうのは、実際問題としてはいろいろなケースがありうると思います。もちろん本省がやっていただければそれに越したことはないのですが、やらないようであれば私どもがやらせていただくという場合もあるのかなと思っているということで、最初から定義があって区分けをしているということではないと、むしろそういう理解で進めたほうが、国総研としてはいいのではないかと、そう理解しているということです。

 具体事例をということでございますが、実は今お話が出ましたように、先日の技術部会でも若干御議論がありましたが、国交省としては国土全体をしっかり見ていかなければいけないわけだから、いろいろな国土のデータを非常に長期にわたって、あるいはいろいろな角度からしっかりと取って、分析をして、あるいはちゃんと保存しておく、そういうことが必要ではないかというような御指摘がございました。まさしくそのとおりだと思います。

 では、そういうことを本省がやりやすいかというと、できないわけではないのですが、非常に難しい。それから先ほど、また繰り返しになって恐縮ですが、国総研のアドバンテージの中で申し上げましたように、住宅・社会資本にかかわるほとんどすべてのジャンルを対象としているわけです。そうすると、ある地域のあるデータが道路事業にとっても意味があるし、河川事業にとっても意味があるしということは当然あるわけですね。いろいろな事業にとって重要である。あるいは、それぞれの事業の基になるようなベースの情報のようなものもあるわけです。そういうものを私どもはやらせていただく。本省の各局ではなかなかやりづらいし、もしそれぞれの局がやったとしたら、うまく使えないとか、ダブルになるということではないかと思います。

 少し前後しますが、「コア」というキーワードを出させていただきましたけれども、これは必ずしもその概念をぎりぎりと詰め切ったわけではありませんが、コアというものの一つの要素としては、今申しましたようなデータを長期にわたってしっかり取っていって、それをベースにものを考えていくとか、ものを動かしていくという動きをするということがあると考えておりまして、国総研の各部なり国総研全体の仕事の仕方の一つにしていこうという意味合いを含めているということでございます。 

(委員) 今、所長が言われたデータの蓄積・活用というのは非常に重要だと思ってお話を伺っていました。まず、コアと大枠という分け方のところについてはなるほどなと思ってお伺いしました。それで、コアの部分は、一つ非常に重要なのは、先ほどおっしゃったデータの蓄積や活用ということで、例えば、ご説明がありましたが、高潮に対する堤防のデータがどのようになっているかなどというのは、大学などでは研究をしようとしても絶対できないわけですね。国総研の特徴として考えてみると、国の研究機関ということです。では国ではない研究機関とどこが違うのか、それから研究機関ではない国の行政機関とどこが違うのかを考えると、ほかの機関では絶対にできないのは、先ほど高潮のデータのように、国じゅうの国土の情報をきちんと把握し、長く蓄積していて、それに基づいて何か問題がないかをチェックしていくことはできないわけですね。そこは非常に重要なのではないか。

 もう一つは、これまでの国土管理の技術がどのような変遷を経てきて、それで今どういうところに来ているのか、そういうこ過去の経過と到達点をちゃんと把握して押さえておくという機能があるのではないかと思うのですね。前に国際会議行って話をしていたら、「インスティテューショナル・メモリー」というような言葉が出てきまして、機関としての記憶ということであるわけですけれども、ある分野のいろいろな行政の施策や技術の変遷などというのは、大学の人間のほうが同じポストに長くいるわけだから下手をすればずっとよく覚えている。「行政機関の人は最近替わったばかりだからあまりよく分からない」という話なのですが、研究機関の中には、恐らく、どういうところまで技術が発展してきて、今何が課題になっているということを断続的に押さえるような機能もあるのではないかなと思うのですね。ですから、そういう部分がコアというようなところでは非常に重要なのではないかと思います。

 大枠のほうは、もうちょっとショート・タームというか、短・中期的な問題かと思います。これはご質問なのですが、この枠組みは、大体何年ぐらいで見直されるようなことなのでしょうか。その辺は何か予定とかお考えはありますでしょうか。 

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(国総研) 例示で示させていただいた交通事故のケースで言いますと、これはそんなに長くなくて、今年の3月に閣議決定されたのですか、2012年末に交通事故の死者数を5000人以下にするという政府目標を目指したものでございました。ただ、今私ども、恐らく大枠というのは重層的に設定されるのだろうとは思っているのですが、やはり数十年規模のものをまずイメージをした上で、それからその一つ一つの階段を上がっていく際の一つの階段というのは、数年ぐらいとか、そういう重層的な設定が要るのかなというふうには思っているところです。そういう意味では、先ほどお示ししたのはあるパーツの部分だけですので、数年ぐらいのものをご説明したような次第です。 

(委員) よろしいですか。 

(委員長) はい、どうぞ。 

(委員) ここで、効果の把握のチェックという、PDCAという我々が随分かつてやらされたQC的な手法ですが、このチェックは自己チェックと、それからこういった研究には必ずクライアントがいるのではないかと思うのですが、そのクライアント側のチェックというのは、最終的にないのかどうかですね。

 それと、先ほどちょっと表の中で出てきました、42のこの方針展開的な表なのですが、右のほうは本省の方針ですか。四つというのは。七つは国総研の方針で、いわゆる上位方針に対する下位方針で、展開されてブレークダウンしていくというような感じとはこれは違っているのですが、この関係というのはどうなっているのでしょうか。 

(事務局) この42の図に関しては、現在が左側の研究方針で運用しているところですが、右側のほうに変えたいという今回の提案です。これは、柱立てといいますか、我々の研究事項をどう体系化しておくかということの整理のためにやっているのですけれども、それに際して、右側の国土交通省本省が揚げております今後の重点研究開発課題の分類に合わせておくほうが、旧来型ですといろいろそごが出てまいりますので、そこは単に合わせておきたいと。 

(委員) 展開ではなくて変えたということですか。 

(事務局) はい、今度は左から右に変えたいということです。 

(国総研) チェックが、これが非常にチャレンジングな課題だと元々思っているのですが、先ほどお話ししましたように、国総研というものが研究所として独立しているというモノの見方はちょっと置いておこうと。国交省全体の一部であるというふうに見たいわけですね。そうすると、従来の研究所的な評価・チェックですと、例えば基準を作ったら、その基準がどのぐらい普及したかというようなことで見るのでしょうけれども、そうではなくて、その普及した結果、政策目的の遂行に対してどうであったかというところを見なければいけないということになると思うのですね。これは相当チャレンジングな課題です。ただ、それをやらないと、本当のところ、次の研究などをどう修正していったらいいかとか、そこが分からないわけですので。もちろんそのチェック自体を国総研が単独でやるというのは非常に難しいかもしれないのですけれども、私どもの現場の組織なり本省なり、いろいろ連携を取りながら、本当のところ政策がどうだったかというあたり、結果がどうだったかというあたりを追いかけるという形で設定をしたいと思っているところです。

(委員) どの研究にもクライアントというか、依頼があってやる、独自研究以外はそうだと思うのですけれども。 

(国総研) 依頼という意味で言うと、国というか、本省というか、国民というか、整備局というか、そういう依頼なので、通常のチェックとはちょっと違うのだと思うのですね。大枠というのは人によっていろいろな言い方があるかもしれませんが、政策があって、それは重層的な政策課題があって、その中で国総研はここの部分を受け持って、それがこの受け持った部分のチェックではなくて、政策としてどれだけ効果が上がったかということが最終的なチェックになるのではないかと考えています。したがって、非常にふそんな言い方かもしれませんが、我々が付託しているのは国民全体ということで考えないといけないかもしれないと思っているところです。 

(委員) その政策全体のチェック、評価。 

(国総研) ええ。その中で受け持ったもののチェックも当然ありますが、そのパーツのチェックではなく、全体としてチェックしていかないといけないのではないかと考えています。 

(委員) そういう役割もあると。 

(国総研) はい。 

(国総研) また分野によってはちょっと違うとらえ方もありますが、クライアントとしての本省なり現場から、かなり突発的に、非常に短期的な、あるいは本来は本省が担うべきを我々がちょっと受けて担うということもありますが、こういう場合のチェックというのは、それがうまく果たせたか、割と早く結論が出ることであったりします。

 それから、実はもっと本当に果たしたい役割は、クライアントがいずれ必ず必要になるだろうということを、むしろ我々のほうが先んじていろいろ十分な検討をしておいて、いざ必要になってきたときに幾つか提案をできるというのが本当は理想でありまして、果たしてそういった研究を幾つ取り上げて進めることができているだろうか、なかなか内部でヒアリングをしていても、本省発注以外の研究がどれだけあるかというと、やはりなかなか難しいところがありますけれども、そういったところがどのぐらい出てきているかというのも、一つのチェック・ポイントかなと思っています。 

(委員) こういった研究課題は研究員から上がってくるのですか。それとも与えるのですか。 

(国総研) これはさまざまですが、本省経由でパッと下りてくるものもありますし、私自身、先ほど出てきた中ではかなり研究所に長くいたタイプなのですが、割と室長さんクラスというのはかなりその分野を長く担当して、日本じゅう駆け回っている人が多いものですから、そういうところで気がついて自発的にいろいろな仕組みを使って動かし始める、そういうケースもございます。これはもう本当にさまざまだと思います。 

(委員) そういった研究課題は、何かこうボードメンバーで採択会議などをやって決めるのですか。 

(国総研) 私が話すとどうも古い話になってしまって、国総研より前になってしまうので、当たらないかもしれませんが、国総研になってから、年度が替わる少し前の、ある意味では翌年度の実施計画にかかるような会議では、各部、各研究室長クラスが、自分のところの分野、今こういう現状で、自分のところはこういう研究のラインナップで、こういうふうに力を入れてやっていきたいという、自分のところの研究の個々の研究計画、さらにそのプライオリティみたいなものを表明する、あるいはその評価を受けるような場がありますので、それが一つのチェックの場になっているかなとは思います。

 ただ、採択するかどうかというのは、これは実はいろいろありまして、かなり力の強い本省サイドのクライアントもいますので、予算面では予算を握っているところが最終的に採択というところが若干あります。 

(委員長) ほかにどうぞ。

 ちょっと皆さん、しばらく意見がないようですので、私のほうから質問ですが、昨年度の成果のところで、自己点検の結果、研究の進捗は概ね順調であるというような例が出ていましたが、たしかどこかの資料で、全く順調でないという評価をしているような分野か研究課題があったと思うのですけれども、何個かあったと思いますが、それがどこだったか忘れたのですけれども、これについては、今回の評価の対象として考えなくていいのかどうなのか、あるいは特別にコメントをいただいたほうがいいのではないかと思うのですが、これについてちょっとご説明いただけますか。どこかにありましたよね。どこだったか忘れたのです。 

(国総研) はい、ございます。ちょっとすみません、まず資料を。 

(委員長) 何だったかな、たしか・・・。 

(国総研) ございます、はい。ちょっとお待ちください。 

(委員長) やる気がないというのだったかな、何だったかな。 

(事務局) 資料3番の別紙2というものをお探しいただきたいと思うのですが。 

(委員長) 資料3番の別紙2? 

(事務局) 資料3番というものがクリップ留めになっていると思います。これだと思いますが、よろしいでしょうか。別紙2の中ほどに表がございますけれども、この表は、我々は7本の柱で運用をしているのですが、それで活動してきました幾つか、7本の柱というと大ぐくりすぎて評価がなかなか難しいものですから、ここにあります42の検討項目に細分化をしまして、合計42と・・・。 

(委員) ちょっと待って、資料はどれ? 

(事務局) すみません、資料3の別紙2。中ほどに裏側が表になっていて、表(おもて)の標題は「17の技術政策課題に関する研究の実施状況について」、右肩に「別紙2」とございます。中ほどに数字の入った、表のような表でないようなものがございますが、7本の研究の柱があるのですが、1本ごとにというと、ちょっと範囲が広すぎて自己点検が難しかったものですから、それを、ここに括弧で合計42と書いてありますけれども、42の検討項目に細分化をしまして自己点検を行いました。

 それで、ここにありますように、「順調、又は概ね順調」というふうに自己評価をしたうち、そのまま継続していくものをBとして28件、それから一部変更して継続していくものを8件としています。

 それで、委員長がご指摘なのは、その下で2件ほど「実施しない」ということにカウントをしているところがあるかと思うのですが、委員長、多分ここだと思います。 

(委員長) これですね。 

(事務局) 今のペーパーの裏側に表がございますが、例えばこの「実施しない」と自己評価したのは「D」がついているもので、この表で行きますと、下から5段め、「ITを活用したコミュニケーション住宅の開発」、それから、あと五つ六つ上で、「PFIにおけるリスクマネジメント技術の開発」、この二つについては今後研究を実施しないというような自己点検をしています。その理由につきましては担当部長さんのほうから一言コメントがあれば。自己点検をしていただいたかたから、お願いできますでしょうか。 

(国総研) 最初にありました「ITを活用したコミュニケーション住宅の開発」、これはいわゆる発達途上の、ITを使いまして、何でもできます住宅というものを実はやろうとしたのですが、一つはそれをやる研究、人的資源がありません。もう一つ、どう考えてもこれは民間主導でおやりいただいたほうがよろしいということで、国総研の研究課題としてはふさわしくないという二つ理由で、最初はちょっと独法と分かれましたときの課題として設定しましたが、国総研の課題としてはギブアップしましたということです。 

(国総研) 「PFIにおけるリスクマネジメント技術の開発」ですが、これについては、特にどの分野ということではなく、国総研がかかわっているすべての分野の担当部に確認をしたのですけれども、実態として、この5年間この分野の研究は行われていなかった、また、今後もその予定はないということでしたので、全体として、今後の対応としては実施しないという評価にしています。

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 一つは、国総研で研究する前に実際に実施される、個別のPFI事業の

中でいろいろと議論をされて対応が進んでいるのではないかということと、もう一つは、実態として国総研の研究者にこれまでこの分野のノウハウがなかったということかと思います。 

(委員長) 今のPFIのほうのリスクマネジメントですが、実は、国政研(政策研究所)のほうはこのテーマをメーンでやっているのですね。だから、うまく使い分けをしたかなと、こんなふうに分担したのかなと思いましたけれども、そんな状況だと思うのですね。状況については分かりました。この自己点検評価は、今回のこの評価の対象になるわけですね。17年度の・・・。 

(事務局) 評価の対象といいますか、私どもはこういう自己点検をいたしましたということです。 

(委員長) 分かりました。ありがとうございました。 

(国総研) この別紙2でつけておりますこういう整理のしかたというのは、今回特別に昨年の評価委員会を受けまして、もうちょっときちっと整理したほうがいいのではないかというようなお話もありましたので、17の分野について、こういう格好で、全体どんな研究をされているかということも含めて、過去を振り返って整理させていただいたということです。毎年こういうものを出して、前回も出したということではなく、今回特にこういう格好で整理させていただいたということです。初めての試みですので、いろいろ不備な点もあろうかと思いますけれども、またいろいろご指摘いただければと思います。 

(委員長) 今の点について、僕自身はこのお話を聞いている最中に思ったのですが、「概ね順調」とありますよね。完全に順調なら問題はないのですが、「概ね順調」となったら、なぜ「概ね」なのか、何が欠点なのかというのは、どうしても知りたくなるのです。それで、この取り扱いは、何も書かないまま置いておくのはもったいないと思うのです。せっかく「概ね」と評価している以上は、何らかの欠点があるはずなのですね。そこは多分改良の余地があるはずなのです。これの取り扱いは、できたら少し具体的なコメントとして載せると、チェックの重要な資料になってくるのではないかと僕自身は思ったのですが。今具体的にこの「概ね」というのはどういう理由ですかということは聞きませんが、そんな取り扱い方はけっこう役に立つのではないかなと思ったのですが。 

(事務局) はい、ありがとうございます。資料があちこちに飛んで大変恐縮なのですが、参考資料4というものがございます。お分かりいただけますでしょうか。参考資料4です。資料とまた別クリップ留めです。 

(委員長) 分かります。 

(事務局) 参考資料4は今と同じ表がいちばん上についていまして、その次から、委員長ご指摘の各分野ごとに自己点検をしたことに関する、もう少し詳細なコメントを各研究部でつけています。それがずっと十数枚にわたってついていまして、それ以降もバックデータとして、どういう成果が上がり、何が足りなかったか、今後どうしていくかということを、一応自己点検のレベルではありますが、整理をしたものです。膨大な資料で大変恐縮なのですが、もし詳細をということであれば、この資料をまた何かの折りにご説明するかとは思うのですけれども。 

(委員長) この資料もあまりよくないですよね。「概ね順調」であるときの「概ね」がなぜ完全に順調でないのかという理由は明示的に書いていないのです。そういう意味において、せっかく「概ね」という評価をしてくれているのだから、そのコメントを、この欄に分かるように、何が遂行できなかったのかということが分かるように書いてあると分かりやすいのですね。今のところなぜ「概ね」なのか書いてあると、チェック機構としては大変面白い資料ではないかと思ったのですが。かなりこの欠点を追及することになりますから、比較的ネガティブな面もないわけではないですけれども、もともとチェックというのはそういうものも働くわけですから、せっかくだから生かしていただくべきかなと思った次第です。 

(事務局) ありがとうございます。ぜひ今後の参考にさせていただきたいと思います。 

(委員) 今の件に関してですが、やはり研究機関におりますと、この実施状況や今後の対応という点が、経営者層あたりから常にプレッシャーとして、いつも答えを出せと言われているところです。しかし、研究の実施状況で言いますと、順調かどうかというのは、最初の計画段階に、やはりプロジェクトですから工程表的なものがあると思います。その各プロセスが、最初に考えた工程に対して予想どおり進んでいるのか、それ以上進んでいるのか、遅れているのかということの判断ができる一つのベースが必要となります。それは多分あると思います。

 そうしたら、その次の問題として、例えば予定と異なった場合等については、こういうプロジェクトを進めるうえの資源としての人や施設、費用など、さらに研究を進めていくうえで必要な周辺技術の成熟度といったものについて評価することになります。この評価が研究を成功させるか失敗させるかといった分かれ道になると思います。そういう各構成要素について順次評価していくというような手法を今後合理的に研究されて、国総研としての判断基準等が育っていくと、私は非常に良いと思います。

 ですから、最初はやはり、こんな程度と言ったら失礼なのですが、やはり少し定性的な評価になりがちですけれども、できるだけそれを定量的なものに変化させていくといった改革が、国の研究機関に課せられた課題だと思っています。 

(委員) 以前の評価委員会で議論させていただいたこと、ちょっと今の話とは違うのですけれども、成果物の評価、どういうところを重視するのかという話で、それをどのようにお考えになっているかちょっとお伺いしたいのです。以前からその辺が行きつ戻りつしているような気がしていまして、今回の資料では研究活動の成果として施策への反映とか、あるいは技術支援活動、そういうものが書いてあって、さらにまた何ページか後ろに、論文だとかそういう学会や学術面の成果を並べてあります。その成果が上がったのかどうかということをこちらが評価をしましょうというときに、委員の側でも論文を非常に重視する人から、いやいや、施策への反映とかガイドラインあるいは基準などを一生懸命書かれて、きちんとしたものを作られたのは非常に大きな成果だと、そこのところをよく評価しようと、このような考え方から、かなりバラエティがあって、評価するほうでもどういう考え方でいったらいいのかというので、いつも困るところというか議論になるところなのです。先ほど来伺っていますと、国総研の目的とか使命、あるいは活動の方向性というのは徐々に議論されているようなので、最後の活動成果の評価にかかわるところについても何か、どういう議論がされているのか、もし議論があれば聞かせていただければと思うのですが。 

(国総研) 何といいますか、先ほどと繰り返しのような状況で大変申し訳ありません。結局最終的に施策に生かされて、それがどうかということを追いかけようということをメインに置かなければいけないと思っていますので、そういう意味ではまさにチャレンジングな課題だと申し上げたとおりで、なかなかまだその評価をきちんと把握するというところには至っていないというか、そういう評価方法そのものの設定の議論を今やっている最中であるというか、そんな状況です。

 先ほど例示でいたしました道路の環境アセスメントの研究でございますが、この成果は現場で使ってもらうということになります。クライアントが現場の職員で、そしてこの部分が使い勝手が悪いとか、この部分が非常に現実にうまくいっているなどという、これは年3回ぐらいか、4回ぐらいか、会議でもって現場の皆さんからお聞きするという方法でフィードバックがされていますので、そういう形での評価は可能なのですが、こういう事例というのは実際のところまだ非常に少ないというのが現状です。 

(委員) おっしゃるとおりで、国総研全体の評価としては、個々の事業にどのようにコントリビュートしたかというよりも、おっしゃるように、政策全体というか、社会全体にどのような最終的ないい効果があったのかということを量るというのは、非常に挑戦的ですけれども、必要な視点だと、まさにそうだなと思いながら先ほどから聞いていました。研究マネジメントということで言うと、今度は組織だけではなく、個々の研究者のキャリアパスの話もあるので、そっちばかりでやると、一生懸命学会活動などをして、また別のキャリアパスを考え、将来に可能性があるようなかたもおられると思うので、その辺やはり、いつもそこになるわけですけれども、やはりバランスの視点というのも非常に重要なのではないかと思うのですね。

 ですから、そういう大きな研究所としての理念や使命に沿った、非常にまっとうな大きな評価軸と、個々人の研究者が伸びていかれるような可能性、余地、それを励ますような評価と、両方やはり必要なのではないかと思いますけれども。 

(国総研) 個人のほうは、実際今やっているのは表彰です。今朝方、表彰の決裁に判をついてきたところなのです(笑)。どういう考え方で表彰しているのか、ここがいまひとつなのですね。例えば、論文を提出してどこかで表彰をもらった人を表彰するとか、そうではなくて何か社会的な課題に対して対応する研究活動を良くやった人を表彰するとかなのですが、もう少し概念を整理し直さなければいけないのではないかと思いつつ、とりあえずそんなことを今やっているという状況です。

 今、委員がおっしゃったように、どのように個々の研究者をエンカレッジしていったらいいかということが重要な課題だということはずっと思っていまして、それもちょっとやりながらでなければ分からないのかなということなのです。ただ、少なくともつくばの中ですぐ隣に独立行政法人土木研究所とか建築研究所がありますけれども、ああいう個々の分野で、研究者がそれぞれある分野をずっと追究するというタイプとは私どもの研究所は違うので、だからエンカレッジのしかたも多分違ってくるのだろうと思うのです。おっしゃるようにバランスが必要なのですが、そこの解をまだうまく見いだせていなくて、現状はその程度ですからあまりエンカレッジもできていない可能性が(笑)。 

(委員長) 所長、独立法人のほうは、基本的にはみんなハード関係ですよね。この総合研究所のテーマは基本的にはソフトですよね。まさに政策、技術政策ですよね。そこでけっこう分野において違いがあると思うのです。だから、ここでのソフトに関するキャリアをパスとして研究オリエンテッドのパターンもあるし、政策に直結するような研究もありうると。こう二つのパターンがやはりあるような気がするのですね。ソフトに関しては、現在のところ独立法人には持っていないのです。そうすると、ソフトに関する研究を続けることができるのはここしかないと思っているのですが、これは大変難しい問題ですので、問題提起だけさせていただいておいて、お考えいただくということでよろしいですね。 

(委員) 今のどういう基準で評価したらいいか、まだよく分からないという○○所長のご発言ですが、僕はそこのところの評価尺度をちゃんと持たないと、この国総研のレゾン・デートルといいますか、その存在価値とか独自性というものがはっきり打ち出せないのではないかという感じがします。

 それで、これは先ほど例えば特徴として、全国の国土のデータベースを持つようなことは国総研らしいお仕事だとおっしゃったのですが、そのとおりですけれども、例えば国土地理院とか気象庁とか、技術者集団として極めてよく知られている集団が片方にあって、国総研といったときには、僕らは知っていますけれども、何をやっているのか知らないかたも多いのではないかと思います。それで、僕は当初からずっとお話を聞かせていただいていて、聞けば聞くほど総合政策局がやることとどこが違うのかという感じが、何回聞いてもその疑問をぬぐい切れないわけで、そこのところもはっきり総政局の別働隊とするのか、やはり違うのだということを明確に打ち出すのか、先ほどの評価の話も含めてご検討いただければありがたいと思います。 

(委員) 私も同じ感想を持っています。今日何か質問しなければいけないのですが、何を質問していいか分からないような資料なのです。つまり、国総研としてどこをアピールしたいのか、それからどういうアイデンティティを持っていて、これからどう進んでいきたいのか、そのために17年度の活動の何をどう評価したのかというのが、たっぷりデータはあるみたいなのだけれども見えてこないというのは、これはひょっとしたら行方が定まっていないからなのか、あるいは作ったかたがとても丁寧なかたでめりはりをつけられなかったのか、そこがまだ私には釈然としません。

 それで、これは後で話し合うのかもしれないけれども、改定前の研究方針と、改定後の案の研究方針を例に取って言えば、例えば4ページの最初の「使命」というところに使命が4項目並んでいるのですが、これを、順番を入れ替えたのは何なのか、何か理由があると思うのですが、それが私には見えてこないのですね。つまり、「美しく良好な環境の保全と創造」に始まる四つの使命だったのが、いつの間にか「安心して安全に暮らせる国土」が最初になっているというのは、これは何に基づく改定なのかということを考え始めると、何をどう聞いていいのか分からなくなりました。

 もう少し、前の懇談会か何かでも、私は、「つまりあなたたちは国民に対して語りたいのか語りたくないのか分からない」と、ちょっと不満を言ったと思うのですけれども、いまだにちょっとよく分かりません。つまり、アピールしたいのか、アピールしたくないのか、あるいは目立ちたいのか、目立ちたくないのか、それから基礎を重視したいのか、応用を重視したいのか、頑張った人を評価したいのか、みんなを平等に遇したいのかというところも、何となく見えてこないのは私の不勉強もあるのですけれども、もう少し自信を持って、リーダーシップを持って明確に打ち出されてもいいのではないかと思いました。感想めいて申し訳ありません。 

(国総研) ありがとうございます。よろしいですか。 

(委員長) どうぞ。 

(国総研) 今日の段階では、先ほど来ご説明した、特にパワーポイントの2番の「研究活動のマネジメントのあり方について」という部分でご説明した、「コア」とか「大枠」というキーワードがありました。あるいはチェックをどうするかとか。そこの部分がきちんと設定できていないので、具体的に何をどうするのかというお話ができずに、もちろん去年から、17年度を含めて個々の研究活動はずっと続けていますけれども、そういうコアとか大枠とかの設定がきちっとできていませんので、そこが具体的なイメージをお持ちいただけないところなのだと思います。そこがきちんといたしますと、逆に、先ほど来のご議論である総合政策局とどう違うのかとか、職員に対してエンカレッジするにはどうしていくのかとか、そういう話がクリアになってくるのだろうと思っています。 

 ただ、どうしてもかっちりとこうだと決めきれない部分というのは、3月にもたしか○○委員からもご指摘があったかもしれませんけれども、ある大枠を作って研究活動なり行動を進めていっても、突発的な事態というのは必ずあって、その際に例えば本省から「この課題をやってくれ」という話は必ず出てくるはずですので、100%どっちがという話は多分無理なのかなとは思っていますが、片方のよって立つところができれば、いろいろなお話が見えてくるのではないかと思っています。そういう意味では確かに不完全な状態での御説明になります。 

(委員長) はい、どうぞ。 

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(委員) 質問です。こちらで最初説明をくださいました18年度の研究評価委員会のこの中に、「1.研究活動」のその下のところに「分野別研究費」というものがありますね。「7本の柱別の研究費」です。これが平成15年度と17年度の比較が出ていまして、例えばこういうものをどのような形で読み取ったらいいのか。研究費というのは重要ですので、研究費がどうついて、15年度よりも17年度のほうが増えていった場合は、それだけ重要な研究がなされるのだろう、また重点課題として置かれているのだろうと思ってこの棒グラフを拝見していたのですが、7本の柱で柱6が伸びましたというお話がありました。その6は、「高度情報化社会に対応した国土づくり」ですね。例えばそういうこの伸びた部分をどう評価したらいいのかと思って、先ほどからいろいろと頂いた資料を見ました。例えば参考資料4番の別でとじてある、ここに技術政策課題が載っていて、「研究の実施状況と今後の対応」というものがあって、A、B、C段階がついているので、例えばこれが対応しているのでしょうか。その辺がもう少しはっきりしていただけるとありがたいのです。研究費が増えたものはやはりそれだけ重点的にやっていくことなのだろうと思うのです。どのように対応しているのか。この頂いた資料で見ていくべきか。その辺ご説明いただけますか。

 「高度情報化社会に対応した国土づくり」とあるけれども、単に高度情報化がイコールITではないにしても、そういうものはもう研究をやめるというようなこともありまして、例えばこの分野別の研究費と評価の関係というのは、どのように受け止めたらよろしいのか。 

(事務局) 今、委員がごらんになった参考資料4の表がございますが、これが柱からさらに細分化した書き方をしておりますので、分かりにくくて大変申し訳ございません。ITに対応したのは、この表でいきますと、下から三つめの(15)番、「安心・安全で活力ある社会の構築のためのITの活用」、これに相当します。 

(委員) そのように思って先ほどからこれを拝見していたのですが、でも先ほどの説明で、そのうちの一つにDがついてしまっているわけですね。そのように、予算は高くついて、これからも伸びるであろうという見方がこの棒グラフでできると思うのです。そのような形で、では何に力を入れていくのかなと思ってこちらの一覧表を拝見すると、例えばDがついていたりすると、どういう評価になっているのか、またどのような方向で予算を高くつけて研究をされようとしているのかというようなことも、なかなかこの資料だけでは分かりづらいのですね。 

(事務局) はい、分かりました。この(15)番は、例えば、名前は聞かれていると思いますが、ITS(高度道路交通情報システム)のような研究に対してかなりの予算がついたということで伸びています。それに対して、先ほどDがついてしまったのは、住宅分野でのITの活用について取り組もうとしたのだけれども、なかなかうまくいかなかったということで、この中に幾つかの分野が混在していますので、なくなったものとグッと伸びたものが両方混じっているとご理解いただければと思うのですが。 

(国総研) 今の7本の柱と17の関係ですけれども、カラフルな白いパンフレットがあります。参考資料9ですが、それの05ページに「重点的に取り組む研究課題」というものがあります。それで、7本の柱というのは、この黒字で書いているものが、「持続可能な社会を支える美しい国土の形成」「安全で安心な国土づくり」等々7本の柱がありまして、それにサブテーマで17の・・・分かりますか。5ページです。「取り組む研究課題」とありますが、すみません、資料が。それで、この7本の柱にサブテーマがあって、17の研究課題があるということで、ちょっと資料の作り方が見にくくて申し訳ありませんが、研究方針本体にこういう関係にあるということは書いてありまして、それで、その中の15番が「高度情報化社会に対応した国土づくり」ということで、「安全・安心で活力ある社会の構築のためのITの活用」と、このような関係で参考資料4の表と、先ほどの分野別研究費の表が対応するということで、それで整理されています。

 それで、研究費については、先ほど○○評価官が申し上げましたように、ITSとか車社会の高度化に対するような部分に相当予算のウエートが高まっているということで、今伸びているという状況があるということです。

 すみません、質問を途中で切りまして。 

(国総研) 少し、幾つかのご質問に対して、あまりいい回答ができていないかなと思いつつ聞いていたのですが、先ほども○○委員からいろいろ、こうなのか、ああなのかという話をたくさんいただいたのですけれども、まさに我々の研究所が置かれている立場が全くそのとおりのところがあって、なかなか歯切れのいい回答ができていないところがあります。

 例えば今の予算のことで申しますと、我々は独自には本省の局の壁関係なく全体を見て仕事をしたいというところはあるのですが、予算の仕組みはやはり道路に関する、治水に関する、住宅に関する、それぞれの予算がかなり大きなものがあって、所長の裁量でかなり自由度高く配分できる部分は意外に小さくなっています。だから我々が、先ほどの○○委員の話であれば、目立ちたくて、「我々がやったんだ」という独自的な仕事をしたいところというのは、実は予算面では非常に小さくなっていまして、むしろ今度は本省から降ってきて、我々は黒子でいたほうが、あまり目立ちたくないと言うとちょっと語弊がありますけれども、ある程度黒子でいることを認められるようなところにかなり予算がついていたりします。そういうことで、実は説明の前半で、「去年まではこういう整理をしてご説明していました。今年はこういうマネジメントについて聞いていただきたい。ただ、去年までみたいな整理をしても、なかなか我々は自分たちのマネジメントにつながるような意見をいただくような説明がうまくできない」ということで、今回若干思い切った、今までと違うような資料構成にさせていただいたということです。

 これ以外にも今考えていたのは、例えばある人は独自の研究、先を見た研究で、将来国が大きく変わっていくために、今はなかなか顧みられないけれども、エポック・メーキングは論文を書いたと。それが評価されるかもしれませんが、ある人は、突発事項で非常に重要な時期に行政を支える、非常に大事な動きをしたと。それは論文にもならないし、なかなか表には出ないけれども、非常に大事な技術的な下支えをしたということもあります。

 その辺、しゃべればしゃべるほど言い訳になってしまうので、あまり意味がないのですが、その中で、独自な部分をどうやって、先ほど言いましたコアとか、我々のほうから大枠を提示するというのは、むしろそういう中でも我々独自の提案ができないか、その辺の提案をさせていただいたというふうに取っていただければ、少しご理解いただけるかなと思っています。 

(委員長) 今おっしゃった成果の評価のチェックとしては、研究レベルとしてどういう貢献をしたかというチェックと、今度は個人がどの研究にどんな貢献をしたかというマトリックスになりますね。この38ページの「研究活動のマネジメントにおける『Check』」は、これも自己点検の仕組みが要ると思うのです。

 我々大学の場合は、最近、独立法人化し、人事考課等をすごくラジカルにやっており、毎年3月31日に1年間の成果を出せと。研究で何をやったか、管理で何をやったか、教育として何をやったか、雑用として何をやったか、これだけのことを全部書いて出せ。出すことによって、その分野ごとのA・B・C・Dのランクをつける。来年の給料に一定程度どこかで反映させる。このぐらいのことは最近はやっています。

 だから、ここの「Check」という意味は、まさにおっしゃった人事考課の成果として、どの分野でどういう貢献をしたかということと、どの分野でどのような貢献はなかったかが分かるデータベースが要るわけです。僕はそう思ったのです。

 基本的には、まさに先ほどおっしゃった評価の問題で、評価をどんな形でやるか。今ここにおられる部長さんがたは、部の個々人の担当者の管理を評価なさるでしょうし、部長の評価は、今度はこちらにおられる総務官や副所長のかたがたがなさるでしょうし、所長さんはだれも評価しないから問題でしょうけれども、事務次官にやってもらうぐらいの格好で、個別の明示的なキャリアとしての成果を整理する仕組みだと思うのです。それが研究と直結しますし、その人の成果とも直結すると思ったのですが。 

(国総研) よろしいですか。今お話しいただいたパワーポイントの38ページですが。 

(委員長) そうそう、これですね。 

(国総研) これは私どもが、「私どもが」というのは所長なり副所長なりです。今、所全体がどの程度の状況にあるかを見ようという趣旨で、計数化して見ていこうと思っているのです。

 実は、今発言させていただいているのは、例えば○○委員など、民間の中でどうされているか、ものすごく興味があるのです。国家公務員も公務員制度改革の関係で、給与や何かが成果主義的な世界に入っていくということなのですが、字義どおりの成果主義は当然うまくいかないわけです。いろいろ本などを読むと、例えばプロセス評価みたいなものをむしろやらないとだめだとか、あるいは、そういう成果主義の導入だけでは絶対だめなので、もっとみんなをエンカレッジするというか、元気が出るような別の仕掛けを同時にやらないとうまくいったケースはないというような話をいろいろ聞くわけです。

 したがって、個人の研究者をエンカレッジしていくという意味では、そちらの仕掛けはそちらの仕掛けで、また一生懸命考えなければいけないだろうというのが今の問題意識で、どうやっておられるか、むしろ教えていただけると幸いです。今日の話題からずれてしまうかもしれませんが。 

(委員) 確かに、研究所の研究員の評価には大変難しい点があると思います。一応、経営層から言われているのは、やはり民間の研究機関の場合は、開発した技術がどれだけ金を稼いでくるのか。要するに、費用対効果をきっちりと算定するようにして、それによって我々はあなたがたを評価しますと命令されているのですが、実際にその研究所所員の評価に成果主義だけで取り組むと、例えば先ほども話題に出ていましたが、論文を何件発表したらその人はAなのかとか、それより少なかったらBかとか、どうもそういうものだけでは人間はうまく動かないと思うのです。むしろ研究に誇りを持たせるというか、方向づけをきっちりして、その達成度によって、その人の力量の範囲で頑張った程度をうまく評価していく形でないと、個人の評価は難しいと思うのです。それが非常に大きな悩みで、○○所長の苦労がよく分かるような気がします。

 せっかくの機会ですから、個人の評価はそれでいったん打ち切らせていただき、マネジメントへの取り組みということで、「マネジメント」というと、言葉としては何か最も管理しているような感じですが、国総研が取り組みを始めたということで、昨年のこの評価委員会の内容よりも一歩前進していると思うのです。

 一例として、大枠の設定として、33ページに「交通安全分野におけるマップ作成の試み」だとか、ロードマップを作成していただいています。これは非常に分かりやすくて、いいことだと思うのです。ただ、このテーマをよく見ていくと、国交省の中の国総研だけで技術マップやロードマップをまとめると、ちょっとかわいそうかなと。

 というのは、34ページあたりを見るとよく分かるのですが、これをうまく表すと技術マップになります。ただし、「主に人的要因の観点から研究を行う機関」と載っていますが、この辺は厚生労働省あたりがかなりかんでこないとだめだし、車両の観点というと経産省あたりがかんでくる。道路の環境要因は国交省でもいいという気がするのです。

 例えば、国全体の施策の目標として、交通事故で亡くなるかたはまだ70008000人いるということで、これはできるだけ下げていきましょうという明らかな目標があるわけです。そういう中で、やはり各省庁が横断的な取り組みをしていく姿が、これだけではちょっと見にくいのです。

 交通事故の特徴を見てみると、33ページに書いてありますが、道路環境による要因が約3割という分析をされているのです。では、ほかの7割ぐらいのロードマップはどうなっているのか。そういう全体が見えるロードマップの中で、国総研がやる交通安全分野におけるロードマップはこういう位置づけですよということで、要因を一つ一つ消していきますという形が縦割り行政の殻を破ってできてくると、本当にマネジメントになってくると思うのです。

 その辺が、多分、国総研の中でも見えている人と見えていない人がいらっしゃると思うのです。そういう全体像を見せてやるのが研究員のモチベーションを高めることになる。実際に毎年確実に交通事故で亡くなるかたが減っていく。そういう数値目標を立てて、その達成度を励みにしてやっていく。そういうことが大事だと思います。

 今年マネジメントに取り組み始めたということで、マネジメントとは何ぞやという大きな問題があるのですが、そういう意味では大きな前進をしているなという評価をしています。 

(委員長) ありがとうございました。ほかにございませんか。 

(委員) この研究方針には載っていないのですが、研究の倫理面の綱領や指針はお持ちですか。これとは別にあるということですか。 

(国総研) 特にないです。 

(委員) パワーポイントの6枚めを見ると、研究経費に138億円が投じられています。これはいろいろな機材を買ったり調査があったりということで、適切な額としましょうか。それで、研究職の人が251人いて、多分一人頭の研究費は少なくない額になります。そういうときに、別に性悪説に立つわけではないですが、透明性や公正性をちゃんと担保しようと思ったら、どんなふうに倫理を持って研究費を使うかという綱領や指針がないと、何かがあったときに大変なことになるので、お作りになったほうがいいと思います。

 多分、指針がなくて済んでいるということは、善意に解釈すれば今まで何もトラブルがなかったということだと思うのですが、ただ、ああいう指針はあって作るのではなくて、あらかじめ作っておくものという気も最近していますので、その辺を考慮いただければと思います。 

(委員長) 土木学会と建築学会は、両方とも倫理規定を持っています。 

委員) 最近、学術会議でも。

(委員長) 学術会議でもそうです。あらゆる学会では作っているのです。

(国総研) 全体としてまとまった倫理綱領はないのですが、入札契約に当たっては、例えば1000万円以上は所長以下の会議にかける、1000万円以下のものは部長の会議にかけるということで、手続き面の体制が執られているのと、今年度から入札契約の手続き面で、発注する側に立つ事務の人はこうしましょうとか、そういうことの規定は順次整備されています。それと一般的に国家公務員の倫理規定が働いていますので、トータルとしてはないのですが、パーツとしては通常の会社が持っておられたり、あるいは大学で整備なさろうとしているものは、大体のパーツはそろっているという感じで私どもは考えています。

(委員) 研究職の人がどういう気持ちを持ってやってほしいというようなものが入っていていいかなと思いました。 

(国総研) それは行動規定ではなくて。 

(委員) 行動規範でもいいし、全然「倫理」という言葉がないから。

 (国総研) 公務員の倫理規定は相当。

(委員) そうですね。

(国総研) それと、入るときに誓約書か何かを書かされた気がする。「国民に奉仕して」などがあるから。

(委員長) 公務員のものがあるわけですね。

(国総研) ええ。だから、一般の企業などとは国家公務員の場合は別だと思うのです。そういう目では見直してみないといけないと思いますが、今の○○委員の問題提起については全然反対ではありませんので、もう一度見直してみて、今のもので充足しているのか、足りないところがあればこうだという整理はさせていただきたいと思っています。

(委員) 委員長、よろしいですか。
 最初から国総研の使命みたいなことばかり申し上げて申し訳ないのですが、これがはっきりしないとマネジメントの方向もはっきりしないからと思って質問申し上げているのですが、スライドの4ページに国総研の使命が3行で非常にクリアに書いていて、3行めに「技術政策の企画立案に役立つ研究を実施する」と。僕は、国総研のミッションはまさにこれだと思うのです。

 一般の社会の人は、割合、行政の政策や施策は役人が作文したかのような印象を持たれがちですが、実際はその背景にデータや理論など、大変な作業があるわけで、国総研はそこを担うということをもっと強く出されたほうが。実は、僕はこれを言いたくて先ほどから何回も言っているのですが、そうすると本省や総政局とのミッションの差をだいぶクリアにできるのです。

 先ほど、○○委員がどちらを向いて書いているか分からないと。これは何となく僕は、いわゆる普通の研究所と土研・建研、あるいは普通の研究所と国総研がどう違うか辺りが、どちらを向いているか分からないというのは、僕も同じような印象を持っていて、もう少し施策や政策の理論を固めるところが国総研だというような、それをはっきりさせれば、マネジメントの方向や評価の方法ももっと明確になってくるのではないかと。

 先ほど、○○委員が国総研の特徴はソフトだとおっしゃって、いわゆるソフトという意味では、施策を固める理論やデータなど、そういうことではないかと思うのです。 

(委員長) そうそう。 

(○○委員) 繰り返してミッションのことばかり言って申し訳ないのですが、そういう印象を持っています。 

(委員長) そこがポイントです。ありがとうございました。よろしゅうございますか。

 それでは、大体ご意見をいただいてきました。いただいたご意見は、今、○○先生に端的にご指摘いただいたように、今回の最大のポイントは、やはり国総研のミッションの定義をより明確化しようと。明確化するときのポイントは、政策をバックアップする理論やデータを担当するという形で取りまとめると分かりやすいのではないか。そういう観点で今回のご提案を見てみると、○○委員がおっしゃったように、マネジメントという分野に一歩踏み込んでいるという観点で望ましい方向ではないか。こんな評価だと思います。

 そこで、今度はチェックというところになると、研究成果の政策への活用など、こういう格好での研究分野の成果に貢献した人物・研究者の評価と連動しますので、この連動をどうするかというのは、恐らく大きな課題として残っているだろうと。これは先ほども所長が言われたように、まだ悩んでいる状況であるという認識だと思います。

 こんなところがお話を伺ったところかと思います。この方向で今年から進めてみたらいかがでしょうかという評価をいただいたと思っています。そういうことでよろしいですね。

 それから、17年度の研究活動については、概ね順調という形になっていますが、「概ね」をより具体化していただくとありがたいなと、私は個人的に思いました。 

(○○委員) 一つだけ。概ねというのは、各評価の先生、委員長が。国総研の責任というよりも、責任者の委員長の先生がああいうふうに書くのではないですか。 

(委員長) 違うでしょう。これは自己点検評価ですよね。 

(国総研) 今のは自己点検で。 

(○○委員) そうか。失礼しました。 

(国総研) 各々の分科会の部会でそれぞれまたやる話がありますので。 

(委員長) よりコメントとして役立つような評価をいただく格好でやればいいのではないかと思います。それこそ言葉どおり「概ね順調であった」ということはよく分かりました。

 大体そんなところですか。ご意見を賜りましたので、引き続きマネジメント体制をよろしくお願い申し上げます。以上で今日のメーンのテーマは終わりです。 

(2)個別研究課題の評価について

(委員長) 今度は個別評価のほうですが、この点について事務局からご説明いただきます。お願いいたします。 

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(事務局) 恐れ入りますが、お手元の資料の6番、2枚物の資料6をお開きいただきたいと思います。

 冒頭に委員長からもお話がございましたように、当研究評価委員会は、この全体委員会は国総研の活動全般、個別研究課題については三つの分科会でご審議いただくことになっています。その個別研究課題の評価についてです。

 今年度、評価の対象となりますのは、この資料6にあるように、昨年度(平成17年度)で終了した研究課題の事後評価、これがここに記載の10課題です。それから、来年度(平成19年度)から開始予定でこれから予算要求もしていきますが、そういった課題の事前評価がここに記載の8課題です。これについて三つの分科会で評価をいただきたいと考えています。その下に「評価の視点と項目」と書いていますが、従前のとおりの形で事後評価と事前評価をお願いしたいと考えています。

 裏のページに参りまして、分科会開催の関係ですが、ここにあるように第一部会から第三部会まであり、第一部会は7月27日、○○主査のもとで開催の予定です。第二部会は主として建築関係ですが、○○委員に主査をお願いして8月1日、第三部会は○○委員に主査をお願いして8月1日、こちらは午後開催の予定ですので、主査の先生がたをはじめ各委員のかたがたにはよろしくお願いしたいと思います。

 最後のページに書いていますが、分科会での評価結果については、主査の委員のかたがたの責任において取りまとめいただき、さらに委員長の同意を得て、本研究委員会の評価結果としたいと思いますので、委員各位のご了承をお願いしたいと思います。

 この件については以上です。 

(委員長) この点については、今までどおりの方針で主査の先生がたに分科会をまとめていただくということですが、よろしくお願いいたします。

 ご意見はございませんか。

 私は一つ意見を申し上げたいのですが、社会資本の定義が、最近、「住宅・社会資本」という言葉でよく言われますが、いろいろなところでいろいろな定義が広がっているのです。いちばん広い定義は、ご存じだと思いますが、宇沢(弘文)先生などがおっしゃっている「社会的共通資本」という言葉で言われ、これは自然と制度や文化とインフラと、全部入ります。特にインフラでも重要なものは教育と医療で、社会的にニーズの高いものは全部社会資本になる。あるいは、先ほど先生がおっしゃった「社会的技術」という言葉がありますが、医療関係の技術みたいなものも社会的技術だという言葉を、あるいは交通事故対策の技術体系は典型的な社会的技術だという格好になるわけです。

 そうすると、社会資本というときに、交通事故対策技術は社会資本なのかということになってくるのです。一方でスウェーデンやヨーロッパやアメリカではソーシャル・キャピタルという言葉、人間と人間のネットワークを示すものとして定義されるのです。これはまさに防災関係での緊急避難体制の、まさにそういう問題なのです。

 こうなると、今かってに「社会資本」と呼んでいますが、この社会資本とは一体何なのかがよく分からない状況になっているのです。いいチャンスがあれば、ぜひ社会資本とは一体どう考えればいいのか。

 それから、恐らく現在使っている「社会資本」は、日本政府がかってに定義した社会資本なのです。公共事業として予算の対象にしているものを一応「社会資本」と呼んでいるのです。そういうわけで、私もある程度専門とするのですが、訳が分からない状況になっておりますので、どこかでまとめていただくと助かると思ったのです。 

(○○委員) 私も全く賛成で、この間も学術会議との交流があり、社会資本というと公共投資と結びついてまた金を使うのかと、そういうあれを持ちましたが、今はヒューマン・キャピタルとおっしゃいましたか。 

(委員長) ソーシャル・キャピタル。 

(○○委員) ソーシャル・キャピタル。そういう視点を入れて、「あなたたちのものですよ」という、看板になるような名前をもう少しお考えいただくことは非常に重要ではないかと。それを国総研の大きなミッションにしていただければ。

 それから、ちょっと質問ですが、「住宅・社会資本」といった場合、一般建築はどうなるのか。僕は先生と全く同じ疑問を持っていて、社会資本の定義がどこでどうなされているかという、普通の日本語だと社会資本に住宅が入ると思うのです。公共の住宅を分けているのですよね。その辺、もし決まった定義があったら教えていただきたいのです。 

(国総研) 「住宅・社会資本」というのは、今から20年ぐらい前でしょうか。社会資本の中に住宅が入るか入らないかという議論があって、その前は委員長が先ほど言われたように、公共事業費を入れるか入れないかで線引きして、公営住宅も公団・公庫も全部公共事業費が入っているではないかと。そうすると、住宅も社会資本の類型ではないか。だけど、インフラストラクチャーといったときに、住宅は一般的に入らないのではないかという議論を経て、「住宅・社会資本」という使い方を建設省がしたのではないかと思われます。

 我々の能力がどこまであるか分かりませんが、歴史的背景を整理するだけでも、ここでお役に立つ資料ができると思いますので、いったん整理させていただければと思っています。 

(○○委員) 今のは相当古いですよね。 

(国総研) はい。 

(○○委員) そういう30年前の、いわゆる日本の高度成長期のころから全く日本の状況は変わっていますから、それこそ本省と相談して変えていただきたいですよね。 

(国総研) そうですね。いったん勉強してみますし、議論用の材料はきちんと整理できると思いますので、またいろいろとご説明・ご相談させていただければと思います。 

(委員長) 僕にもおっしゃってください。僕も勉強したいのです。 

(国総研) この場でもご議論させていただきますので。 

(委員長) 分かったらあそこに行きますから。研究発表会をしてくれたらいいです。

 ほかにございませんか。よろしいですか。

 それでは、これで私の議事進行は終わらせていただきます。ありがとうございました。事務局にお返しします。 

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5.その他

(事務局) どうもありがとうございました。

 それでは、事務局から何点かご連絡を申し上げます。本日のご議論の結果については、最終的には委員長に一任ということですので、よろしくお願いしたいと思います。また、本日ご議論いただいた内容は、議事録として適宜修正のうえ、まとめて皆様にメール等でご確認のうえで公開することにします。また、評価結果等を含め、報告書としてまとめる予定です。

 それから、先ほどございましたように、分科会を7月27日および8月1日に開催し、個別の研究課題について評価を行う予定にしています。連絡事項は以上です。 


6.国総研所長挨拶

(事務局) では、最後に所長よりあいさつを申し上げます。よろしくお願いします。 

(国総研) 長時間にわたり、大変ありがとうございました。

 いろいろなご指摘を賜りました。今日、私どもは「こういう考えでやろうかな」という状況のご説明でしたので、具体的にどうだという話まで、すべてにわたってご説明することができませんでした。この評価委員会は、年に1回というのが通常のパターンです。1年もたってしまうと如何なものかと思いますので、もしよろしければ途中段階ぐらいで具体的に、先ほどの大枠なりコアなり、あるいは計測する指標の結果などが出てきた段階で、3月に開催した懇談会の形になるかもしれませんが、ぜひ一度お話をさせていただいて、またご意見を賜ればと思っています。

 本当に長時間にわたり、ありがとうございました。 


7.閉会

(事務局) はい。それでは、これで評価委員会を閉会します。資料については、大変重うございますので、今、袋をお配りします。名前を書いていただければ、後日、送付します。本日は誠にありがとうございました。

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