平成18年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会分科会
(第一部会担当)

議 事 録


1. 開会
2. 国総研所長挨拶
3. 分科会主査挨拶
4. 議事
(1) 評価の方法等について(確認)
(2) 平成17年度終了プロジェクト研究の事後評価
事後評価
@走行支援道路システム研究開発の総合的な推進
A健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究
B都市地域の社会基盤・施設の防災性能評価・災害軽減技術の開発
C水域における化学物質リスクの総合管理に関する研究
D地球規模水循環変動に対応する水管理技術に関する研究
E社会資本整備における合意形成手法の高度化に関する研究
F土壌・地下水汚染が水域に及ぼす影響に関する研究
(3) 平成19年度開始予定研究課題の事前評価
@避難意思決定要因に基づく海岸災害からの避難促進に関する研究
A大規模災害時の交通ネットワーク機能の維持と産業界の事業継続計画との連携に関する研究(プロ研)
B国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究(プロ研)
(4) その他(報告)
5. 今後の予定について
6. 国総研所長挨拶
7. 閉会

〈開会

(事務局) まだお二方見えておりませんけれども、時間もたってしまいましたので、初めのところ資料の紹介等からさせていただきたいというふうに思います。

それでは、ただいまより18年度の第1回の国総研研究評価委員会分科会を開会させていただきます。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらず、ご出席いただきましてどうもありがとうございます。私、事務局を務めさせていただきます、研究評価・推進課長の○○でございます。議事に入るまでの間、進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

本日の分科会は第一部会の担当の会議でございまして、議事といたしましては、17年度の終了したプロジェクト研究の事後評価」、それから「19年度に開始予定の研究課題の事前評価」をお願いするものでございます。

それでは、配付資料の確認を初めにさせていただきたいと思います。本日の議事次第と座席表がまずございます。議事次第の裏に資料の一覧が書いてございますので、それを見ながら確認していただければと思います。資料1が、「委員の一覧」でございます。資料の2が、「国総研の研究方針」、これは最近、改訂したものでございます。資料の3が、「評価の方法等について」。資料4と資料5が、「プロジェクト研究等の課題の一覧」でございます。それから資料の6から資料15まで輪ゴムでとめてございますけれども、各課題の説明資料でございます。ちょっと輪ゴムをとっていただいて、各課題の評価の際に順にごらんいただければと思います。

それからその次に、欠席委員や他部会の委員からの事前意見ということで、ちょっとまとめてとじてございますけれども、それぞれの課題の評価の際にご参照いただければと存じます。それから、プレゼンテーションの資料で国総研における「研究活動のマネジメントのあり方」の資料、それからあとは参考資料で、委員会の設置規則、パンフレットとアニュアルレポートを配付してございます。

それから、その資料の右の方に評価シートということで、各課題の評価、4段階評価やコメントを記入するシートを配付しておりますので、ご活用いただければというふうに思います。

もし不足しているものがございましたら、事務局の方までお申し出いただければと思います。

それでは、議事次第に従いまして、○○国土技術政策研究所所長よりごあいさつを申し上げます。お願いいたします。            

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〈国総研所長挨拶〉

(国総研) おはようございます。お忙しい中をご出席賜りまして、まことにありがとうございます。まず御礼申し上げます。

 先ほどご紹介ありましたように、きょうは既に終了した課題の事後評価というのと、来年度から始めたいというふうに思っております課題の事前評価ということでございます。いずれにつきましても、厳しくご指摘を賜ればというふうに思いますのと、それから、もう少しこういうふうにやった方が、特に事前評価はこれからということでございますので、やり方とか視点とかを含めて、よりプラスの方向に向くようなご指摘も賜ればというふうに存じます。いずれにいたしましても、我々なりに自己評価はしてきておりますけれども、ぜひ忌憚のないご指摘を賜ればというふうにお願い申し上げまして、簡単でございますが、最初のごあいさつにさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

(事務局) 続きまして委員のご紹介をさせていただきたいと思います。資料1の委員の一覧をまたご覧いただければと思います。まず本日の分科会の第一部会の所属の委員の皆様をまずご紹介いたします。

 まず、主査でいらっしゃいます、○○田委員でございます。

 それから○○委員は本日は所用でご欠席でございます。

 ○○委員も、少し遅れているようでございます。

 ○○委員でございます。

 ○○委員でございます。

 ○○委員もちょっと遅れているようでございます。

 ○○委員でございます。

 ○○委員は本日ご欠席でございます。

 それから、他の部会に所属の委員の方にも委員長の指名により、本日ご出席をいただいております。第二部会の○○委員でございます。

 第三部会の○○委員でございます。

 国総研の幹部等につきましては、座席表をもって紹介にかえさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、主査にごあいさつと以後の議事の方をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

〈分科会主査挨拶〉

(主査) おはようございます。主査をしております○○でございます。きょうも長丁場でございますけれども、よろしくお願いいたします。

 冒頭、○○所長から厳しく指摘ということがございましたけれども、あえて異論を申すわけではありませんけれども、厳しい中にも愛情があるといったらちょっと変ですけれども、PDCAを回していく非常に重要なツールが評価だと思いますので、やっぱりよりよくする、この評価のための資料をつくる、あるいは内部で議論を重ねられる、あるいは委員の皆様も大量の資料を読んできていただいておると、そういういろいろな人の努力と工夫のもとに成り立っておりますので、ぜひいい方向で何かお役に立てればというふうな思いでおります。厳しい中にも愛情のある評価ということでお願いできればと思いますので、長丁場ですけれども、よろしくお願いいたします。簡単ではございますが、あいさつということにさせていただきたいと思います。 

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〈評価の方法について(確認)〉

 それでは、早速議事によろしいですね。議事次第がびっしりありますけれども、まず(1)の評価の方法等についての確認でございますので、事務局から説明をお願いいたします。

(事務局) それでは、事務局の方から説明させていただきます。資料の2の研究方針、7月ということで変わったばかりでございます。5年の間、一部修正を加えたのみでしたが、今回はPDCAのマネジメントなど、ある程度変わったという形でございます。めくっていただきますと目次ということで、研究活動のマネジメント、これが新しく入っているものでございまして、これについては議事の一番最後に報告させていただきます。それから、研究課題の分けでございますけれども、これまでは7本柱という形でやっていたわけでございますけれども、国土交通省全体としての課題の柱と整合させるということで、今回、4本の柱と総合的な手法、こういう形で整理させていただいております。今回のこの研究評価でございますけれども、18ページをめくっていただきますと、後ろから2枚目のところでございますけれども、研究評価につきまして、自律的なマネジメントサイクルを構築し、やっていくという形でございまして、外部評価、内部評価、これをやるという形になっております。この外部評価でございますけれども、主として重点的に推進するプロジェクト研究等、等といいますのは、これは予算要求上、事前評価、事後評価、これを要求されているような固まりの研究、こういうものについてやるという形でございまして、専門家によります事前、中間、事後の3段階の評価を実施するという、こういうことでやっておるところでございます。

 資料3、1枚紙、表裏でございますけれども、具体的な評価の方法について記しております。評価の対象でございますけれども、研究方針にございますように、プロジェクト研究、それから予算要求上、必要とされる大型の課題という形でございます。事後評価につきましては、昨年度終了したもの、それから中間につきましては、こういう形でございますけれども、本年度はたまたま該当がございません。あと、事前評価につきましては来年度から開始予定の研究課題でございます。プロジェクト研究といいますのは、定義のところ、これは研究方針から写したものを記しております。評価の視点と項目でございますけれども、事後評価につきましては、目標の達成度、また成果の活用方針、研究の実施方法、体制の妥当性、それで全体の研究の妥当性という

 中間評価は本年度該当なしでございます。

 あと、事前評価につきましては、背景を踏まえた必要性、それから実施方法、体制が妥当かどうか、成果の見込みがあるか、成果の活用方針がしっかりしているか、こういうところにつきまして評価していただければと思います。

 裏を見ていただきますと評価の進め方でございますけれども、当部会が責任分科会となっている課題につきまして評価をしていただくことになります。この中で口頭で意見をいただいたことにつきましては、シートにはご記入は結構でございます。一応シートの方、事後の評価につきましては4段階のものがございますが、それについては必ず記入をお願いしたいと思います。口頭で言われたものにつきましては議事の方からすべて整理いたしますので、ちょっと言い漏らしたようなことございましたら、コメント欄に書いていただければと思います。

 本日の審議内容、それから事前意見、また評価シートの集計結果に基づきまして、主査が総括を行うという、そういう形になっております。委員が関与している場合の対応というのが書いておりますけれども、本日の部会では該当はございません。それから、4の評価結果の取りまとめでございますけれども、主査の責任において取りまとめ、その後研究評価、親委員会の委員長の同意を経て、評価結果として確定させるという形でございます。評価結果の公表のやり方でございますけれども、議事録とともに公表することといたしておりますけれども、発言者名につきましては主査、委員、事務局、こういう形でまとめて整理するという形になっております。あと、参考に本委員会、それから第二、第三分科会、これの予定が記しております。資料の4に「評価対象の一覧」という形で書いております。年度ごとで書いております。この黄色く塗っているもの、これが当部会で今回お願いするものでございます。黄色のもの、事後という形で18年のところに後、後、後と書いております。真ん中の中間評価の方は5年継続の3年目というのがたまたまございませんので、ございません。裏の方にいきますと、事前評価、ちょっとこの38番のところがもう既に始まっているやつでございますけれども、1つの大きな項目を追加いたしましたので、それに関しまして事前評価をお願いするという形でございます。あと、プロジェクト研究以外の大型ものでございますけれども、たまたま当部会としては、該当はないという形でございます。

 一応、過去の事前評価、中間評価等が当分科会でやられておりますのは非常に参考になると思いますので、お配りのペーパーの中で赤色のペーパーで事前評価の1枚紙があろうかと思います。また黄色ペーパーで中間評価の1枚紙、わかりやすいように資料を構成しております。

 それからあと資料5の方につきましては、先ほど研究方針で4本の柱と総合的な手法の確立という形でやっておるわけでございますけれども、それに分けましたプロジェクト、研究課題の一覧を載せております。この少し茶色く塗っておりますのが本日お願いするものでございます。

 以上でございますので、よろしくお願いしたいと思います。

(主査) 何かご質問等ございますか。確認でございましたけれども、よろしいでしょうか。ありがとうございます。 

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事後評価@走行支援道路システム研究開発の総合的な推進

 それでは、早速ですが、事後評価の方に進んでまいりたいと思います。まず最初が「走行支援道路システム研究開発の総合的な推進」でございます。○○室長の方からご報告をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

(国総研) それでは、国総研ITS研究室の○○からご説明いたしたいと思います。

 そうしましたら、資料の6でございますけれども、時間も10分と限られておりますので、資料の6とPTPによってご説明をいたしたいと思います。本課題は資料の6の裏面の欄にもございますように、平成13年から17年にかけて研究費総額98億2,000万円で取り組んでまいりました課題でございます。この走行支援道路システムについてでございますが、釈迦に説法ではございますけれども、その考え方につきましてまずPTPにおいてご説明をしたいと思います。

 まず、このAHSという概念でございます。これが走行支援道路システムの英語の略語と、アドバンスト・クルーザーシスト・ハイウェイシステムと、ちょっと複雑な単語になってございますけれども、というふうにお考えいただければと思います。交通事故という問題でございますけれども、左側の円グラフはこれが交通事故というものは、ほぼ4分の3がドライバーの事故直前のエラーによって起こるということを示しております。発見のおくれとか、判断の誤りということでございます。交通事故対策にはいろいろな局面がございますけれども、事前に道路の線形をよくしておくということから、事故が起こってしまった後にいかにショックを少なくするかというようなところまで、いろんなフェーズがあるということでございます。AHSは特にこの事故直前、数秒といったオーダーの対策に着目して、そこに75%の事故が集まっているならば、これは有好だろうという考え方でございます。

 それからこの図でございますけれども、交通事故対策には衝突安全、自動車を安全なものにする、それから予防安全、道路の線形をよくしておくというようなことに加えまして、道路と自動車の協調、通信をすることによって大幅に進化させることができるだろうという研究がございます。この事故直前対策と路車の協調ということがAHSの基本的なフィールドということになるかと思います。

 具体的には、例えばこういったシステム、前方が見えづらいカーブの先で車が衝突などでとまっているということをカーブに入ってくる車に対して道路の側から情報提供をしてあげるということによって、スムーズに減速していただいて、衝突、追突の危険を減らすというようなことが考えられるということでございます。例えばこういったようなシステムを研究してきたのがこの本研究でございます。

 本研究の期間中、いろいろなところで既に実道実験をしてございます。例えば東名阪では前方障害物、ちょっとこれはシステムが3つあるという意味ではなくて、分野を示してございますけれども、前方障害物の今のご説明したようなシステムをカーブのところに設置したと。あわせて管理応用といったような分野では、センサーを応用して路面の状況などを感性して見えるようにしたというようなことでございます。あわせて、6カ所ほどで2002年度から3年度ぐらいにかけて実験を展開したということでございます。

 それからもう1つは、参宮橋の社会実験ということでございますけれども、これは先ほどのカーブの先に停止車両を知らせるシステムでございますけれども、より緻密なシステムを組み上げました。1つの要点は、今、市販されているカーナビに対して情報提供ができるということでございます。これによりまして、一般大衆に対して道路利用者に対してサービスを開始したと。先ほどのこの段階ではモニターに対して特別な車載器という段階でございましたが、この参宮橋の実験では一般のカーナビにサービスを提供し始めたと。その結果、走行車両の約1割の方々にこういうサービスが提供できたわけでございますけれども、こういったように60%減というようなことで、事故発生の逓減が見られたということでございます。あわせて、危険挙動といいますか、急制動とか、スピードオーバーでカーブに入ってくる車なども10%、31%というような効果が見られたということでございます。これはそういったシステムを可能にする基礎技術の開発というものでございます。こういうことも取り組んでまいりました。まずはセンサーでございますけれども、赤外線とか、あるいは可視画像式のカメラですね、これは普通のITVというカメラでございますけれども、それにアルゴリズムを組み合わせることによりまして、停止車両を検知する、あるいは事故車両を検知する、あるいは先ほど申し上げました路面状況なども検知するというような技術も開発してまいりました。

これが今後の応用でございますけれども、こういうカーブの先というようなものだけではなくて、交差点への応用、あるいはこれはカーブの直前ではなくて、もう少し先から峠道なんかの路面状況をドライバーにあらかじめ与えておいてやれるのではないかと。これはサグ部なんかで、サグ部というのは高速道路の上り坂の始まりでございますけれども、そういうところで速度が極端に落ちる車があるというのを防止してあって、追突の防止、あるいは渋滞の解消というようなものを目指せるのではないかということでございます。

あわせまして、周辺状況の参加でございますけれども、IT新改革戦略というのが、この1月にIT改革戦略本部で決定されました。その中に世界一安全な道路交通社会という項目がございまして、道路交通事故死者数5,000人以下を達成するのだということがございます。この目標自体は平成13年の小泉首相の演説で言われたことでございますけれども、平成22年までに5,000人以下と、今現在6,800人余りですから、かなり大きな目標だということになりますが、その中でインフラ協調による安全運転支援システムという概念が出されました。これは当AHSを含めまして他省庁も取り組んで、ASV、国交省で取り組んでASVというのは自動車単体による対策、あるいはDSSSというのは警察庁さんで取り組んでおられるシステムというようなものを実道実験で試していくんだと、あるいは事故多発地点を中心に全国展開をしていくんだというような方針が示されましたということでございます。したがいまして、当AHSが非常に注目されだしたということが言えるのではないかと思います。

これはあわせまして関連動向でございますけれども、米国でもVII、vehicle infrastructure integration、まさに路車協調というコンセプトを去年から打ち出しまして、2008年から2、3年で基本的な構成を達成するんだということを言っております。

CICASというのは、交差点の安全システムでございまして、どうやら米国は交差点の衝突防止から重点的に始めていくようだということでございます。これは欧州でございますけれども、政府スポットというようなコンセプト、これは安全だけではなくて、渋滞とかドライバーサービスを目指した総合的なコンセプトでございますけれども、ちょっとプロジェクトが二頭立てになっておりますが、CVIS、あるいはPReVENTというようなプロジェクトをやはりかなり大きな予算をつけて取り組んでいるというような動向がございます。したがいまして、今後の取り組みということでまとめのプリントをつけましたけれども、そのIT新改革戦略に向けた実証実験に今後とも取り組んでいきたいということでございます。それからIT車載器というものでございますけれども、これは今あるカーナビを進化させた車載器、これを普及させることによって、車両からの情報も得たいということでございます。

ちょっと説明が後になりましたけれども、車がとまってしまったというような情報を車からあげてくれたらいいだろうなと、そういう技術もあるだろう。これはプリントにもありましたけれども、本プロジェクトでも開発してまいりました。あるいは車両からの情報を用いた簡易センシングといったような問題、あるいは走行履歴のデータなども取得していこうということでございます。これはカーナビに書いてある地図などでも情報なんかも活用していこうということでございます。

それから、サグ・合流部、合流部のサグの話は先ほど申し上げましたけれども、合流部というのは、先ほどのあった交差点の一つの応用といたしまして、高速道路なんかの合流部でもやっていきたいというふうに考えてございます。

すみません、ちょっと時間超過しましたけれども、資料6に戻っていただきまして、目標の達成度でございますけれども、システム要件を技術資料に取りまとめ、社会実験を実施し、サービスの有効性を確認できたことから、目標は十分達成できたということでございます。なお、この技術資料というのは平成17年度に走行支援道路システムのシステム要件ということで国土技術政策総合研究所資料にしております。

私からのご説明は以上でございます。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございます。この研究課題に関しましては、事前に○○委員に詳細に検討をお願いしておりますので、意見表明とか、論点の提示がありましたらお願いしたいと思います。

(委員) まず全般的にちょっと見させていただきまして、このAHSは非常に今後事故対策、あるいは渋滞対策として期待されているところでありますので、そういう意味で、いわゆる国総研としての役割というのは、やはり標準化ですとか、あるいは他でできないような実験をするというようなことかなと思うのですが、そういう点においては今○○室長からご説明があったように、全般的な標準化という点においてはよくでき上がったのかなというふうに認識しております。

 それから、あと手法としてAHS組合等を立ち上げながら、官、民、それからシミュレータでの実験等で大学とも協調しながらやられたということを考えますと、実用性において期待できるというふうに評価します。

 それから、ただ少し今後の対策というところで出てこなかったのですが、中間報告では出ているようなのですけれども、単独でのいわゆる衝突防止ですとか、見えないところでの事前警告といったような形では十分な成果が出ていると思うのですが、交差点での事故防止のための仕組みといいますか、そういうものにもう少し力を入れていただく必要があるのかなという気はします。事故のかなりの部分は交差点で起きているわけですから、先ほど交差点での車両の挙動をこれからということ、当然そこがわからないとできないという話はあると思うのですけれども、二輪車の挙動も含めて、交差点でどういうことをすれば事故が減るのかというところをもう少しやる必要があるのかなと思います。

といいますのも、そのやり方として、例えばせっかくAHS組合等と研究されているわけですから、逆にもう少し国交省としてできることといえば、さらに道路構造も含めてやれるのではないかと、つまり道路をつくっている側の立場というものをもう少し活用すれば、さらにいわゆる路車、あるいは車車を含めた通信、もしくは情報交換プラス道路構造といった形での対応、それから事故分析センター等を活用していただいて、いわゆるもう少し効率的な交差点での事故分析のデータを活用するといったようなことをすれば、もう少し交差点での事故対策に使えるようになるのではないか、あるいは速度アップできるのではないかというふうに思います。 以上です。

(主査) ありがとうございました。お答えは後で一括でよろしいでしょうか。それと、本日ご欠席の○○先生から、事前意見をいただいております。お手元に配付されていると思いますけれども、簡単に、紹介します。大きな成果が出ていて結構ですと、ただ、大きな研究費が使用されているので、仕方ないかもわからないけれど、その辺ちょっと説明してよというふうなことでございましたので、それも後で総括的な議論の後で、何かお答えできることがありましたら、お答えしていただきたいと思います。

 この研究に関して、これから討論を始めてまいりたいと思いますが、いかがでございましょうか。何か質問、コメント等ございましたら、お願いしたいと思います。

(委員) 第二部会の方から第一部会に参加している○○でございます。もともと第二部会に私、入っているということでこのテーマに関して門外漢で、普通の人より少し車を乗る量が多いので、そういう観点から幾つかご質問等々ございます。

 先ほど、○○委員からのコメントが紹介されましたけれども、約100億の費用を使ってそれとの成果の見合いといいますか、そこのところでちょっと一つ。これについてはご回答いただく必要もないかと思いますが、その辺の重さをやっぱり感じていただきたいというのが一つございます。

 ちょっとソフトの方の話になってしまうのですが、こういうシステムが普及をしていった段階で2つ課題があるかと思うのですけど、こういうシステムが普及をして、みんなある意味でこのシステムに頼るようになったときに、当然前方での見えないところでのいろいろな情報を事前に渡すということなのですが、その情報の伝達ができなかった状態、簡単に言うと、要するに例えば事故が起きてから情報を伝達するまでに、例えば3分かかる、その間の3分の対応をどうするのか、ほかのみんなの車が、情報に頼って走っているということを想定したときに、それに対してどう対応するのかということがあります。もう一つ、こういう情報を私自身もカーナビを使っていろいろな情報を受けながら走行しているのですけれども、どの車がこの情報を入手をしていて、ということは我々わからないのですね。時々、要するに前の車が急ブレーキをかける、何もわからずに急ブレーキをかける、この情報を受けたことによってかけるということはあり得るわけですね。よくバスなんかにも何年も前からですけれども、この車、排ブレーキをかけるとストップランプがつきますというラベルが張ってあって、我々ある程度わかるのですけど、そういうすべての車がこのシステムを持っていればいいわけですけれど、必ずしもそうではない。そういう状況のときに、どういう対応をするのかなというのが、これは研究の本質ではないかもしれないのですけれども、もしお考えがあればお聞かせいただければというふうに思います。

(国総研) 大きな研究費ということでございますけれども、研究項目を見ていただきますと、例えば様式Bの2ページ目でしょうか、情報収集処理システムに関する調査、あるいは一つおきまして、最先端の通信方式を利用した道路システムに関する調査という項目がございますけれども、これはこういうシステムを成立させるための基礎技術に関する研究でございます。したがいまして、現場にある機器を持っていってシステムを組み立てているという状況ではございませんで、こういうものに使える通信技術ですとか、あるいはヒューマンマシーンインターフェイスに関する研究を並行してやっているということでございます。したがいまして、その部分にかなり大きな力がかけられているというふうにご理解、主としてそういうふうにご理解いただければと思います。

 もう1点は、やはりこういう実道で実験をやりますので、非常にお金がかかるということでございます。工事を一つやるにも交通規制をしなければいけませんし、という事情もご理解いただければと思います。

 それから、システムが頼られるようになったときということでございますけれども、それはご指摘のとおり非常に大きな問題でございます。その点につきましては、特に実道に下ろすときにはシミュレータで事前チェックをするわけでございますけれども、例えばこの参宮橋のようなシステムにつきましては、情報を受けた車が事前に減速をし始めるわけでございます。その後ろに来る車はカーナビがなくて情報を受けてないという状況があって、それは心配したのですけれども、なぜかわからずにあおってしまうというような車も確かにあったのですが、全体としてみれば、挙動がマイルドになっていると。つまり受けている車が10%しかなかったわけですけれども、その挙動がマイルドになった車が10%以上あったという結果を得ておりまして、約10%ということなのですけれども、これが受けてない車が何かわからずに急ブレーキを踏んでしまうというような現象が多いと、この数字は逆転してしまうのですけれども、そういうことで、実験としてはうまくいったと。ただ一般論として申せば、例えばサービスに入っているのだとか、あるいはサービス機関を受けましたというようなことをちゃんと言ってあげなければいけない状況も出てくるだろうと思います。交差点については、多分そういう箇所もあるのだろうなということでございまして、そういうことを逆にうるさがられないでアナウンスをするというような研究も必要だというふうに認識しております。

(国総研) すみません、ITセンター○○でございますけれども、金額につきましては、確かにほかの、ほかのというのは国総研のほかのプロジェクトと比べても多額についておりますけれども、ITSにつきましては諸外国との比較だと、オーダー的にはほぼ同じくらいの金額にはなっております。ITSにつきましては日本以外のアメリカ、それからヨーロッパ、それぞれ競争的な立場で今研究を進めておりまして、その意味でも最後は基準化とか、そちらの方に結びつくところがございますので、ちょっと諸外国との競争も頭に入れながらやっておるという状況でございます。

 それからあと、参宮橋のところでいろいろ普及した段階でとか、頼るようになるというような話とか、急ブレーキの話がございましたけれども、事前に入れる前にドライビングシミュレータで実験をしまして、この情報、与えても急ブレーキとか、あるいはパニックになるようなことはないというところは一応確認した上で入れております。

(委員) 私、第三部会からきて、私も専門ではないのですが、今の○○委員のご質問と同じように、ドライバーという観点からちょっと気になるのは、今のシミュレータで検証されたということなんですが、要するに最近は車のインテリジェント化が進んで、車載機器がふえていますよね。ほかにもETCの装置だとか、それから携帯電話のようなハンズフリーでないといけないとか、いろいろ運転以外のことで機器に目を向けたり意識を向けたりする時間が車の中で若干、昔に比べるとふえているという気がするのですね。

 私は、5年前の古いナビゲーションしか持ってないものですから、VICSの情報もきませんし、それ以外のことには余り気を取られないで運転しているつもりなんですけれども、目の前に何か注意すべき状況があるということが既にドライバーが予測しているところで、もう1回情報が出てくるというようなことになった場合、言ってみれば同じことを2回意識するという注意が奪われるというのですか、奪われるというよりはむしろ強化されるのかもしれませんが、そういうことが実際には減少しているということであれば減少されたのだと思うのですけれども、やはりこういう情報提供がされることがドライバーにどう影響を与えるかという検証が一方でいるのではないかなという気がちょっといたしました。

(国総研) 今のご指摘はごもっともでございまして、ちょっと説明不足だったのですけれども、ITS車載器という概念を申しましたけれども、これは今あるいろいろな車載の機器の要素、ETCとか、カーナビとか、あるいはカーナビに携帯電話がついたようなものを統合して一つの躯体にしようと。そこの一つの画面と一つの操作系からいろいろなサービスを提供していくというような開発も、この研究そのものではないのですけれども、もう1つ大きな流れとして行っております。その中でヒューマンマシーンインターフェイスということについても整理していくというのは大きな課題でございまして、ご指摘のように、今あるカーナビからのいろいろな音声とか画面と新しいサービスをどう同居させていくかというようなことについての研究もやった上で普及させたいというふうに考えております。

(国総研) ○○先生おっしゃった情報の与え方とか、それはどう授与されるのかという話と、もう一つ注意散漫になるのではないかという話、実はまだ十分研究が進んでおりません。各国、特にヨーロッパ、アメリカでもそうなのですけれども、ようやくそこまで注意が向くようになって、今やられているところでございます。確かにITSを使うと情報が非常に多くの情報が提供できるのですけれども、それ全部与えたらとてもじゃないけれども、判断というか、認識できない状況にもなりつつありますし、また今のカーナビでも既に余計な情報が出すぎているというような話もありますので、そこら辺、ヒューマンマシーンインターフェイスの部分はこれからかなり力を入れてやっていかないといけないかなというふうに思っておるところでございます。

(主査) ほかにいかがですか。

(委員) 今おっしゃられたように、そういうことかなとは思うのですが、もう一つ、注意が散漫になるということに対して、繰り返し危険情報を提供できる仕組みというのも必要なのではないかなと思うのですね。例えば一度だけどこか、参宮橋の例でいえば、カーブにさしかかる手前でこの先事故でとまっている車がありますよという情報がぱっと出たとしても、例えば話をしていたり、どこか注意散漫で聞き逃したときにもそのまま突っ込んでしまうというようなことがないように、参宮橋の場合にはすぐ直前に情報板も併設してやっておられましたけれども、ここの報告書で情報板等に比べ安価にできるという表現がされておりますけれども、機能としては情報板もそうですし、それから1620ヘルツの路側放送だとか、そういった幾つかの機能を複合して情報提供してあげるということも必要なのかなというふうには思います。

(主査) いかがでしょうか。

(委員) ご指摘のとおりでございまして、その辺は情報の回送性という観点から検討しております。例えば首都高でいえば合流が非常に急なんだということ、ユーザーにわかってもらうというのが第一歩で、入ってきたお客さんには、この先合流がたくさんありますと、その次は500メートル先に合流地点がありますと、その次は合流車がきますというような回送性を持って臨まなければいけないのかなということがあらわれがひとつの地図情報の活用みたいなところもあるのですが、その中で繰り返すところは繰り返すというような検討をしていくべきかと思っております。

(国総研) 一応、参宮橋みたいなシステムでも、一番最初には危ないよという注意情報を与えるだけなのですけれども、その段階で今度車側の判断になってくるわけですけれども、減速されているかどうかというのが車側でわかるのですよね。それで、減速されていればそのまま何もしないと。減速してなければさらにもう1回警報を与えるというようなところのシステムまでは構想としてはつくっておるのですけれども、参宮橋ではそこまでやっておりません。ただ、一応念頭には置いておるのですけれども、ちょっとそこら辺もいろいろこれからやっていかなければいけないというふうに考えております。

(委員)国際標準化活動につなげていかなければいけないという○○さんのお話がありましたが、それについて私も一言お話したいともいます。日本が強い分野を国際標準にして、日本の産業の競争力を強化していこうということもあるかと思うのですけれども、やっぱり他国の人と協調して開発していかなきゃいけないということもあります。車は世界に輸出されるでしょうし、途上国の人も逆に巻き込んで、余り日本独自の仕組み、例えば日本は路側からの情報を結構取りやすいかもしれないけれども、余り特殊な仕組みをつくってしまうと、意外に国際的な標準化の動向と離れてしまうようなこともあるような気もするのですね。

 ですから、この研究開発から、今度わが国の国際標準化活動につなげていく、あるいはまたそこで民間にどういうふうに参加し、行動してもらうかということで、だんだん純粋の技術開発から実用化に向けた戦略というか、方針が必要になってきます。国総研の立場として、そういうものにどう取り組むかが問われているという気がしました。 

(主査) ありがとうございます。

(国総研) 国際標準化活動、○○先生にもお願いしている部分ございますけれども、ITSの分野でもうでき上がった製品の標準化とはちょっと違うんですよね。どっちかというとこれからつくる、言ってみればこれからつくろうとしている最終製品の標準化みたいな部分がございまして、それでITSの世界ですと、日本、それからアメリカ、ヨーロッパの争い、争いと言ってはあれなんですけれども、それぞれいろいろな案をつくってやっているところですけれども、協調しながらも競争しているという状況にございますので、特に日本独自の案、余りに日本的な案というのはやっぱり通らないような場面が多くなってきておりますので、できるだけ諸外国とも意見を交換しつつやっていきたいというふうに思います。

(委員) 研究として大変よくできているなと思って拝見いたしました。幾つかの実際に応用されたところは、カーブ地点などの事故が起こりそうなところですが,重大事故というのは思いもよらぬところで、予想もつかないようなことによって起こるということもたくさんあると思います。そういったところに対して,今後どのようにされるのかについて、少しコメントしていただけたらと思います。

(主査) それに関してなんですけれども、こういう路側側の整備はやっぱり費用便益分析的に考えると、やっぱり事故多発地点とか、潜在的危険性の非常に高い点ということを中心に考えないといけないですよね。そうするとユーザーの側からすると、先ほど来、登載車と非登載車ということがありますけれども、同じ登載車であってもサービスされているところとサービスされてないところというところがありますよね。その辺の使い分けというか、情報の周知の仕方とか、あるいはどういう配置戦略をとっていくかということについて、何かコメントがありましたらぜひお願いしたいのですが。

(国総研) まずメディアというのはここで想定しているのは、路側にアンテナがあるDSRCという、局所通信なんですけれども、まずそれ以外にも事故が起こったときには、携帯電話が自動的につながるとか、そういう概念もございます。それは将来的には総合的に考えていかなければいけないだろうと思います。当面の主たるメディアとしてはDSRCを考えてございまして、一つのかぎはプローブというものでございまして、車が走行した履歴を車の中にためておいて、DSRCのところにくるとそれをセンターにあげるというようなことでございます。その中で異常な軌跡があったとか、あるいはそもそも車が情報をあげてこないということがあれば、異常が検知できるということになろうかと思います。

 それから、それにしても事故が起こりやすいところにDSRCは密に配置するというのが原則でございまして、あるいは峠道なんか、みんなが危ないと思っているようなところに配置するというような戦略が必要でございまして、その研究についてはまだ研究途上にあるのかなというふうに考えてございます。

(主査) 議論尽きないかと思いますけれども、課題がたくさんありますので、この辺で終えたいと思います。お手元の自己評価シートございますけれども、ご記入いただければと思います。記入していただいている間、ちょっと思い出話をしたいのですけれども、この研究が始まった当初、ちょっと一緒に勉強させていただいたことがあって、そのときに、自動車メーカーの方がおっしゃったのは、自律して走ってこそ自動車なんだと、路車間協調なんてとんでもないというふうなことを各メーカーの方がおっしゃっていましたけれども、最近では路車間協調は当たり前だと。自律だけではどうしても解決できない問題があったということが認識されているみたいで、日本の自動車メーカーも多分ヨーロッパもそうだと思いますけれども、そういうふうなところに切り替えられました。そういうことで徐々に評価が社会的にも浸透してきつつあるなというのがありまして、自動車のマーケットを考えると、100億なんてそんなでかい金額でもないのかなというふうな思いで聞いておりました。以上です。

 集計するのに時間がかかるのでしょうか。その間、何かありましたらどうぞ。

(国総研) 先ほどの○○委員のご指摘で、交差点での対策が重要じゃないかというご指摘ありましたけれども、それはそのとおりでございます。ボリュームからいいますと、一般道の交差点が圧倒的でございますから。ただ交差点というのは非常に複雑系のシステムでございまして、来ている車を探知するにもどの辺で探知して、さしかかる車にどのくらいで知らせてやるかというのが非常に難しい問題。しかも来ている車だけが来るのではなくて、人も来るし、バイクも来るしというようなことで、課題としては非常に難しい、研究は進めております。ただ、応用としては高速道路、首都高のようなリセン道ですね。より単純な経の中でまず実用化をして、その知見をもって交差点のような複雑系に臨んでいきたいと、そういう方向かと思います。

(主査) 今、GPSの位置特定計測システムの発展系で、何かインシテンドかあったら、何かその短期間だけビデオ再生できるようなそういうフライトレコーダーの進化版みたいなやつがもう自動車にもあって、特にトラック屋さんなんか結構積んでいる車が多いですね。ああいうのを何かうまく収集できるような、そういう社会的なシステムなんかもあるといいですよね。その交差点のどういう交差点が危ないかとか、どういう状況が危ないとか。リアルタイムで。

 大勢に影響がないのでいい評価だったと思います。おおむね目標達成、ただし評価の結果の方が結構辛かったのは、そういうドライバーのビヘイビアの問題とか、社会的なアプセプターの問題とか、標準化についてさらに頑張ってほしいという、そういう期待を込めての評価だと思います。、そういう方向で、コメントもお書きいただいていると思いますので、私の方で取りまとめさせていただきたいということにしたいと思います。実施方法、体制等については適切であったと。評価、目標達成度については、おおむね目標達成できたということを中心に結論としてそういう評価にさせていただきたいと思います。コメントは皆さん方のコメントを集約させていただいて、私の方で取りまとめさせていただければと思います。よろしくお願いをいたします。

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事後評価A健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究

 では、時間をちょっとオーバーしておりますが、それでは、2番目の課題でありますけれども、「健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究」ということで、○○センター長からご説明をお願いします。

(国総研) 危機管理技術センターの○○でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 パワーポイントを用いまして「健全な水循環系・流砂系の構築に関する研究」の事後のご報告を申し上げたいと思います。これはプロジェクトの概要でございますけれども、お手元の資料にもございますので省かせていただきます。

 目標でございますが、水循環系に関しましては、水循環系の健全性をあらわす総合的な評価指標を作成すると。それからもう1つ、治水、利水環境のバランスがとれた評価手法の確立ということを目標にしておりました。一方、流砂系の方では、土砂移動をモニタリングするシステムの提案、流砂系を一貫とした地形の変化を予測する技術の提案、生態系への影響を予測技術の提案、流砂系の健全性の評価指標と指標の提案、流砂系一貫とした土砂管理手法の提案といったあたりを目標としておりました。この目標の達成度でございますけれども、水循環系については目標は達成できているというふうに認識しております。一方の流砂系につきましては、観測機器システム、それからモニタリングの関係でございます、それから流砂系一貫とした地形変化の予測技術、生態系への影響予測技術、流砂系一貫とした土砂管理手法、こういったものはある程度提案できたのではないかというふうに考えております。ただ、健全性の評価手法と指標というあたりがどうも取り組んではみたのですけれども、なかなかうまくいかなかったというあたりが実態でございます。

 具体的な成果でございますが、水循環系に関しましては、水循環系の健全性を示すような総合的な評価指標の素案を作成したということ、それから水収支モデルなどによるケーススタディの実施をしたというような成果が得られております。また、流砂系の方に関しましては、急流区間から感潮区間までの掃流砂、浮遊砂観測機器の改良・開発といったことができております。それから土砂移動モニタリングに基づく土砂移動実態の把握ということができるようになっております。土砂移動モニタリング手法の選定方法の提案をしております。それから流砂系一貫とした地形変化推定モデルの提案といったことを行っております。

 具体的な中身でございますけれども、このパワーポイント、水循環系の健全性の総合的な評価指標をあらわしております。ただ、実際にはこれは素案の状態でございまして、左の方に表が出ておりますけれども、災害に対する安全度といったような観点、あるいは水利用といったような観点、そういった観点から健全度を考えた場合にどうかといったものを、この表の真ん中の列にはPSRという文字が書いてございますけれども、それぞれにプレッシャーとそれから現状をあらわすステートですね、それから対策、対応をあらわすレスポンスというような、こういう要素を考えまして、それらを組み合わせて指標を作成しようといったような試みをした例でございます。例えば右の方の図でございますけれども、災害に対する安全度でございますと、こういった左の表のような指標を組み合わせますと、こういう安全度の分類、あるいは指標で色分けができるといったようなことを示しております。

 それから、これも水循環の方の成果の一つでございますけれども、水収支モデルなどによるケーススタディを実施しております。これは非常に簡単な水収支モデルでございますけれども、右側の図の方がアメリカの手法でございますが、これは相当複雑なものですから、エクセルで単純化して、地元で住民の方々に対しまして合意形成を支援するようなツールとして用いられております。

 それから土砂の循環の方でございますけれども、こちらの方につきましては掃流砂・浮遊砂の観測機器の開発・改良を行っております。いろいろな状況に応じまして、ここにお示ししていますようなサンプル方法、それから採取器ですね、そういったものを開発・改良しております。

 それから実際、阿倍川の流域をモデルとしまして、土砂移動のモニタリングをしていたわけでございますけれども、この右側の表にお示ししましたとおり、13年から平成18年にわたりまして、実際の土砂移動の実態につきまして観測を行っております。こういった手法を総合化しまして、土砂移動のモニタリング手法の選定方法の提案を行っております。例えば左側の方に粒径ですとか、それから流速ごとに適する採取器、それから適さないような採取器ありますので、そういったものを区分しまして、右側のようなフローを作成しております。

 そういった観測結果をこれは静岡県の大谷川から安倍川の先ほどの例でございますけれども、こういう土砂移動のボリュームと、それから地形変化ですね、そういった数値に実際の計算結果と実測を対比しまして、比較的良好にあらわせるのではないかというようなことが明らかになっております。

 研究の実施体制でございますけれども、ここにお示ししてありますとおり、水循環系におきましては、関係各省庁の連絡会議において施策化を図っております。それから代替案のツールなどは地方整備局と連携して研究を進めております。流砂系におきましては、国土技術研究会の指定課題として設定いたしまして、地方整備局と連携して観測を行っております。いずれも国総研を中心として横断的に実施しておりまして、こういった実施方法体制は妥当であったというふうに考えております。

 それから実施方法でございますけれども、水循環系につきましては、健全性をあらわすわかりやすい総合的な手法につきまして14年から17年にかけて検討を行っております。それから健全な水循環系の構築に向けまして、問題解決のためのツールとして水収支モデルの構築と、こちらの方が14年から17年でございます。

 それから手法の方は13年から15年にわたりまして検討を行っております。

 流砂系におきましては、それぞれの課題、中課題、小課題につきまして、13年から17年の間、こういうバーチャードでお示ししたような期間にわたって実施しているということでございます。予算につきましては、ここにお示ししておりますとおりでございます。

 研究開発の妥当性でございますけれども、水循環系につきましては、先ほど申し上げましたとおり、総合的な評価指標の素案を作成しております。それからもう1つ、水収支モデルを簡易な形で作成することができております。以上のようなことから目標おおむね達成できて妥当であったというふうに考えております。

 流砂系につきましても、ここに書きましたとおり、計器の観測機器の開発、それから選定フロー等を作成しております。それから、モデルとした流砂系での土砂移動動態を把握しておりまして、こういったこととこの地形変化推定モデルを開発しまして、それらの整合性が比較的よいという結果が得られております。また阿倍川の流砂系におきましても、海岸浸食に影響を及ぼした土砂移動を推定しております。ただ、健全性の評価手法が完成できていないということがございますが、おおむね目標が達成できて妥当であったのではないかというふうに考えております。 研究マップは省かせていただきます。 以上、私からの説明を終わらせていただきます。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございました。この件に関しては、○○先生でよろしいのですね。事前に検討をお願いしておりますので、ご報告をお願いします。

(委員) ○○でございます。ちょっと説明のためにパワーポイントをつくってきました。1枚だけですけれども。評価の視点をどういうふうに考えたらいいかという大ざっぱなものですけれども。

 研究テーマが健全な水循環系・流砂系の構築ということですので、経緯ですねシステム、水循環系、流砂系の健全性を評価するということにつきまして、ここではOECDの手法ということで、プレッシャー・ステイト・レスポンス、PSRというものを利用して、健全性の評価の指標を確立しようと試みられたわけです。そのほかにもドライビング・フォースとインパクトとか、そういったものを加えてDPSIRというような手法もあるようですけれども、そのシステムの性能評価とか、健全性評価の観点としましては、リライアビリティとか、レジリエンシー、これは一旦システムが不健全になってもまた健全な状態に戻る、いかに早く戻るかというような規準です。それから、バルネラビリティ、脆弱性ですね。それからアメニティ、快適性と、こういった観点もあるかと思うのですけれども、こういったものがPSRと重複する部分もあるでしょうし、PSRとかDPSIRの中に十分含みきれてないものがあると思いますので、健全性評価の指標として素案ができたという話でしたが、今のところやっぱり素案にとどまっているのかなという気はしております。

 ただ、こういったシステムの健全性を認識するためのデータというものにつきましては、水循環系の場合は雨量データですとか、流量データですとか、結構あるわけで、比較的やりやすいわけですけれども、足りない分については観測しないといけないと。特に土砂の場合はデータも少ないですし、場の状況もどんどん変わってきますからなかなか難しいという面がありまして、そういう意味で、ここの研究テーマではかなり土砂の方に投資もしておられますし、研究テーマをかなり重点的にやられたということだろうと思っております。そういった観点で、この研究で得られた土砂関係のデータですとか、あるいは技術等のこういった蓄積が今後大いに役に立っていくのではないかと思っております。

 それから、合意形成というふうなお話がありました。事例ではケーススタディということで、水系内の合意形成ということですけれども、健全性の指標は各流域で出てくる、あるいは各部分流域で出てくるといった場合に、十分健全なところは何もしなくていいし、不健全であれば健全にしてやらないといけないということですから、どこが危ういのかという、そういう現状認識を合意形成のために共有する、この流域はだめ、この流域はいいとか、そういった優先順位づけのための客観的指標として健全性評価の指標を打ち出そうとしたということだろうと思いますけれども、まだそこまでいききれてないというところがあります。

 それからAHP、階層的意思決定法を合意形成のツールとして使おうと。それと水収支モデルも構築して合意形成に役立てようとしておられるわけです。こういった健全性評価と合意形成のツールが最終的には政策誘導とか、あるいは意思決定支援とか、そういったところに持っていかないといけないということですけれども、そうすることによって健全な水循環系・流砂系が構築されることになろうと思いますが、ここで言う(A)、(B)と書きましたが、AとBをどう結びつけたかですとか、それを真にどう生かされたか、あるいは生かされるかといったような視点がもう少しご説明があってもよかったのかなと思っております。

 ここの研究では必ずしも政策誘導とか、意思決定支援までも視野に入れてないかもしれませんけれども、最終的なねらいはそういったところだと思っております。ですから、こういったことをお考えいただいてご評価していただけたらいいのではないかと思っております。以上です。

(主査) ありがとうございます。他部会とか欠席委員からの意見は、これも○○先生からしかいただいておりませんが、読んでいただければおわかりかと思いますけれども、総合的な取りまとめ部分が弱い感があるとか、若干辛口ですよね。結果として、目標である合意形成にどのように役立つものとして機能したのか評価がわからないと。これは○○先生のご指摘とも関連しいたりするのですが、その辺について、今、○○先生からのコメントとあわせて何かレスポンスがありましたら、お願いしたいと思います。

(国総研) ここで○○先生のご指摘、あるいは○○先生のご指摘は、ご指摘のとおりだというふうに認識しております。ただ、実際に水循環系と流砂系の総合的な取りまとめ部分が弱いというようなご指摘は確かにごもっともなのですけれども、やはり流砂系というのは通常は出水時に着目してどれだけの土砂が流出するかというような考え方が一般的でございまして、それに対しまして、水循環系というのは平常時も含めて通年的な水の流れを追っかけるというようなやり方が一般的でございますので、その辺でなかなか総合的に両者を結びつけるという、これは当初の目標ではあったのでございますけれども、その辺がちょっと希薄になったということは否めないというふうに考えております。

(主査) それでは、各委員からご意見、ご質問ありましたら、どうぞ。

(委員) 直感的な印象なのかもしれませんけれども、ご説明いただいた指標とか、それから機器とか、いろんな研究テーマがありますよね。どうも何かいろいろなレベルがあって、例えば日本全国の地図が出てくると思えば、ある特定の流域で非常に細かい研究をやっていて、この研究としてのインテグレーションというのはどうなるのかというのがちょっとよくわからないですね。個別のテーマとしてはそれなりのことをやってらっしゃるのはよくわかったのですけれども、この健全な水循環・流砂系を構築するとなると、やっぱり基本的には流域単位の話になるような気がするのですが、何か特定の流域で全テーマをやってみるという形でやらないと関係が見えないのではないかという気がするのですけれども、その点いかがでしょうか。

(国総研) 砂防研究室の○○と申します。特に先ほど○○先生の方からもご指摘がございましたけれども、流砂の方はほとんどデータがないような状況でして、当初、健全性を評価しようということで進めておったのですけれども、流砂に関してはほとんどデータがございませんでした。そこで、特に流砂系ということで山の源頭部から河口部、海岸を含めた全域での土砂移動を把握しようということで、まず比較的データがとりやすい、流域面積がそれほど大きくない安倍川というところに着目してました。それで、またちょっと難しかったのは、流砂を測る器械というのがこれも十分整備されておりませんでしたので、測りながら改良しデータをとっていたというのが実際現状でして、それが当初予定していたよりもかなり時間がかかってしまいまして、結局4、5年、5年間全部を使ってしまって観測しました。その結果、特に流砂系については安倍川とかそういったモデル流砂系に集中した結果しか得られてないという状況になっております。

 一方、水循環系の方は流砂と比べるとそれなりにデータがありましたので、様式Bの方の7ページの図の1の4にございますけれども、全国的な評価が少しできたというふうな話でございます。

 あと、合意形成の方の水収支モデルについてはケーススタディということで安倍川と同じような感じですけれども、九州の筑後川水系のその中の流域で2つほどやらさせていただいたというようなことになっております。

(主査) よろしいですか。どうぞ。

(委員) 今の話にもちょっと関連するのですけれども、正直言って一つ一つのテーマがちょっと大き過ぎたかなという気がします。例えば水循環一つとっても非常に難しい問題があるし、土砂については今おっしゃったようにデータそのものがもともとない状態だった。生態系の評価なんていうのは本当に大丈夫なんだろうかというふうに正直言って思いました。ということで、一つ一つのテーマ設定が大きかったものですから、やっぱりそれをこなすというのは難しいのかなという感じがしました。

 今のお話で、例えばデータがあるから日本全域をやるという議論なのか、それも実はちょっと疑問で、もともとこの健全性を評価する目的というのはスクリーニングであり、日本全土をやった場合には、健康診断でいうと集団健診的な議論であって、いわゆる日本国土の中でどこが問題が起こっているかということをあらあら把握するような議論。それから各流域でやる場合は、精密検査的な内容になって、なぜそういう問題が起こっているのかの原因解明までいけるような議論だと思います。そういったスケールにおける目的の仕分けというか、将来こういった健全性評価をしたときに政策論としてどうやってもっていくのかというのが、もう少し明らかになるといいなという感じがしました。

 例えば生態系の評価についても、河川法が変わった段階で環境が内部目的化されて、治水の目標はあるのに環境の目標がないといったような状態です。それだけでも別な委員会で議論しているのですけれども、非常に大きな問題だし、環境をどうやって評価するか、もしくは生態系をどうやって評価するのかというのはきわめて難しい問題だと思います。やっぱりその辺についてももう少し当初のデータとして何があって、それがスクリーニングレベルなのか、もう少し精密に原因論まで議論するレベルなのかということを研究テーマとして設定した方がよかったのではないのかなという感じがしました。

 土砂については画期的だと思います。粒径別の議論をきちんとやられていて、今までボリュームで土砂収支の議論を砂防の分野は中心にやってきたと思うのですけれども、それが粒径的な管理で河床をどう維持するかという形で変わっていく姿が見えたというのは、ある意味で今後の将来に向かって画期的だったのではないかなという感じがしました。以上です

(主査) ありがとうございます。お願いします。

(国総研) ありがとうございました。最初に先生から当初の課題が少し大き過ぎたのではないかというご指摘がございましたけれども、今考えますと、やはりそういうことだったと思います。ご指摘のとおりだと申し上げるしかないのですが、特に土砂に関しましては、また後ほどご説明いたしますけれども、来年度から少し新しいプロジェクト研究をもう1つ立ち上げまして、このプロジェクト研究で不十分だった部分をもう少し検討していきたいというふうに考えております。その中では一つの流域をまたモデルにしまして、いろいろと検討を続けていきたいというふうに思っておる次第でございます。

(主査) 評価で60点を目指すのか、80点、90点じゃないとだめなのかという大きな議論だと思うのですよね。それは目標の設定の仕方にもよるのだと思うのですけれども、80点、90点をねらい過ぎると、目標が低くなって、例えば富士通の失敗なんていうのはそういうところにあるわけですよね。組織全体として活力がなくなってしまった、チャレンジしなくなった。そういう意味で、60点とれていればいいのかなとも思うのですが、座長がこんなことを言ってはいかんのですが、多少そういう考え方でもいいんじゃないのかなというふうに思いますので、それほど余り謙遜されることないのではないのかなと思います。

(委員) 健全な水循環系・流砂系の構築に関するツールの開発についてはかなり進展されており,評価できるのではないかと思いますが、中間評価で指摘された「健全」とは何かというところが十分議論されないまま研究が最後まできてしまったというところが、少し残念だと思います。健全な水循環系とか流砂系という概念がないままに研究を始め、研究の中でその概念を作ろうとされましたが,そのことが研究をやりにくくしたのではないかと思います。 水循環系の方は健全性をある程度評価できるようにしたということですが、それによって環境とか生態系に関する健全性がどれぐらい評価できるのかというと、まだ第一歩というような感じがします.

健全な水循環系・流砂系とはどういうものかということ前提としなければならない研究であるので,健全性について検討するようなチームがあってもよかったのではないかと思います。

(主査) ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

(国総研) ありがとうございます。内部でも実は健全性についていろいろと議論をしておりましたのですが、どうも実際のところ最近になって、悲観的な意見が随分出てまいりまして、特に流砂系の中で健全性といったものをあらわすような指標をつくり上げるのは、ちょっと並大抵のことではないだろうという少しそういう雰囲気になりつつあるところでございます。

(委員) とくに,環境に関する健全性があいまいであると思いますが、そのことについては,いろいろな研究者の方と協力して、今後基礎的な研究も進めていくようにしていただきたいと思います。

(主査) いかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、ご意見もないようですので、評価シートのご記入をお願いしたいと思います。

 若干、辛目の評価でございましたけれども、研究の実施方法と体制等の妥当性についてはおおむね適切であったと。目標の達成度についても2のおおむね目標を達成できたというふうにするのか、あるいは3のあまり達成できなかったにするのかということだと思うのですけれども、どうですか、何かご意見がありましたらいただきたいのですけれど。

 コメントいただいた中でありましたけれども、やっぱり勇気を持って高い目標を設定されたと、若干の思い込みはあったのかもしれませんけれども、高い目標を設定されたということは、やっぱりきちんと受けとめるべきだと思いますし、私、専門外でよくわかりませんけれども、○○先生とか○○先生の、あるいは○○先生のご意見でも、開発した研究成果というのは非常に意義が高いものであると、画期的なものであるということです。ですから、目標達成度というのを高い目標に対しては3かもわからないけれども、実体論的に見ると2かなというふうにも思いまして、私はどちらかというと2の方でまとめさせていただきたいと。コメントについても、今たくさん書いていただいておりますので、多分そういうトーンでとりまとめさせていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。

(はい)

(主査) では、そういうふうにさせていただきたいと思います。ちょっと辛目ですけれども、そういう勇気といいますか、高い目標を掲げられた、チャレンジするということには敬意を表したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、引き続いて、「都市地域の社会基盤・施設の防災性の評価・災害軽減技術の開発」で、同じく○○センター長からご説明をお願いしたいと思います。

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事後評価B都市地域の社会基盤・施設の防災性能評価・災害軽減技術の開発

(国総研) それでは引き続きましてご説明させいただきます。「都市地域の社会基盤・施設の防災性の評価・災害軽減技術の開発」でございます。

 まず研究の背景と目的でございますけれども、まず多発する災害に対する安全性の確保は重要な課題であるということ、それから特に都市域の安全性の確保がその中でも重要であるというような背景がございます。また、さまざまな自然災害がございますけれども、それらに対して適切で効果的な対策を進めていくという必要性がございます。東海地震、及び東南海・南海地震が迫っているというような状況もございます。こういう背景から、この研究では目的にございますように、まずハザード・脆弱性・被害性状の評価手法、被害軽減対策等の要素技術の向上を図るとともに、災害別にハザード評価から被害軽減までの一連の流れをつくり上げることを目的としております。もう1つの目的といたしまして、複数の災害における被災想定に基づいた防災性能の評価によって合理的、計画的な社会基盤・施設の整備、防災対策の推進に資することを目的としております。

 大きく大別しますと、この課題の中の研究テーマは2つに分けられます。1つは各種自然災害による被害軽減のための要素技術の研究開発ということ、それから大きな2つとしまして、都市の防災性能の総合的な評価に関する研究ということでございます。特に2番目に関しましては、各種災害に対する都市の防災性能をリスク管理の観点から評価いたしまして、バランスのとれた都市防災計画の策定を支援しようということが目標でございました。これはイメージでございますけれども、都市域をイメージしまして、こういった種々の災害を対象に扱うということでございます。研究マップは省かせていただきます。

 ここから個別の成果について申し述べるのですが、非常に広い多岐にわたっておりますので、ごくかいつまんで複数の課題をご説明いたします。これは都市域の氾濫解析モデルというようなモデルでございまして、地表の氾濫とそれから下水管からの流出入を一緒に扱うというようなことで、都市型の水害の予測をするといったようなツールでございます。これによりまして、下水道を考慮した都市域の氾濫解析モデルが開発いたしまして、ガイドラインを作成しております。

 それから氾濫流による危険度評価手法の開発ということで、左側に書いてございます破堤氾濫シミュレータといったものを開発いたしまして、シミュレータの汎用化を目指しております。

 それから高潮関係でございますけれども、高潮による家屋、家庭用品の被害率の把握をしようということで、データがほとんどない分野でございまして、そのあるデータも平成11年の台風18号の高潮のみだというような実態でございましたので、改めて16年の高潮について実施したということでございます。下の方がその結果ということになっております。

 それから津波に関しましてもいろいろ検討しておりまして、津波の外力の評価手法を提案しようということで、実験等を行いまして、既存の基準値との比較などをやっております。そういった結果が右下の図でございます。

 それから、ここから少し2つほど詳しくご説明させていただきますけれども、地震時の斜面の崩壊危険度を相対的に評価しようというような研究にも取り組んでまいりました。それについては、簡便になおかつある程度の精度を有してということを考えまして、結局、ここにお示ししましたようなフローに従いまして、右下の四角の中でございますけれども、Fイコール云々かんぬんというような判別式がございますけれども、こういう判別式を提案しております。これは実際の地形の勾配と、それからその地形の平均曲率、これは平均曲率というのは上に凸か凹型かという、くぼんでいるような斜面かといったものをあらわす手法でございますけれども、こういったもの。それからその地点の最大加速度というものがわかれば、大体危険度がわかるといったものでございます。

 左側に基礎式、それから右側に中越式というふうに書いてございますけれども、基礎式というのは兵庫県南部地震のときの災害事例を六甲山にあてはめてつくった式でございます。中越式というのは、それをモディファイしまして、先日の中越地震のときの斜面崩壊にあてはめたものでございます。結果的に、ちょっとこれは図が見にくいのですが、色の赤に近いような色の斜面が実際に崩れているというような結果が得られております。なおかつ右上の方にちょこっと書いてございますけれども、基礎式と中越式で大きな差がないということで、具体的には中段にお示ししました基礎式と中越式でございますけれども、こういった係数などにもほとんど差がございませんので、ある程度係数を変えていくことによって汎用的にこういった式が使えるだろうというような結果が得られております。

 それからもう1つの成果でございますけれども、ここで詳述したい成果でございますけれども、防災マップを用いた地震防災計画の立案支援技術に関する研究という課題がございます。研究開発の目標といたしまして、防災マップの作成手法を提案するということと、広域的に危険度を評価する手法を開発するということがございます。この中では防災マップの現状把握版といったものと、それから防災マップの被害想定版といったものを作成しております。

 これは現状把握版でございますけれども、橋梁の耐震補強の進捗状況が把握できるようなマップでございます。それから定期的な更新によって計画の進捗状況を管理できるといった性格のマップになってございます。このマップの上に橋梁の補強の状況が乗せられるといったようなことでございます。

 それから、被災度の評価版のマップでございますけれども、これにつきましては広域的な被災、危険度の把握、それから年度計画の策定に活用できるというようなマップでございます。それから、防災訓練災害時の対応の事前準備などに活用できるといったようなマップでございます。ある大きさの地震が生じた場合に、その道路の有する脆弱性と申しますか、対象にしているのは橋梁と、それから盛土でございますけれども、橋梁と盛土の被災度を予測することのできるといったマップでございます。こういうような2種類のマップを作成しておりまして、例えば地震が起きた場合の復旧の戦略、それから対応策の立案にこういったマップを用いることができるわけでございます。マップを見れば、どこでどういった構造物の被災があるかと、それによって交通障害がどの辺で起きるかといったことが把握できるわけでございます。それと同時に、路線の重要度、構造物の重要度を勘案しまして、優先度の高い区間を指定するといったようなことで、効率的な復旧ができるということにつながります。あるいは下にも書いてございますように、防災訓練のような場合にこういったマップを活用して組み入れていくといったことも考えられます。

 ちょっとこの辺は飛ばさせていただきますけれども、これまで申し上げましたのは、1番目の個別の災害に対する要素技術についての成果の一部でございます。それからこれから2番目の都市防災性能の総合的評価という部分に移るわけでございますけれども、扱います対象の災害としまして、左側の方にいろいろ災害を羅列しております。まず地方自治体等が防災事業計画を立案しようとする場合には、その地域はどの種の災害に対して脆弱であるのか、どのような箇所が弱点になっているかといったことを把握することが必要になってまいります。それから、防災事業の進捗に伴いまして、防災性がどの程度向上したのかをその時点その時点で評価するといったことが必要になってまいります。そういったことから、この2番目の総合的評価におきましては、地震、水害、土砂災害といった種々の自然災害を対象として、異なる災害に対する防災性を共通の尺度で評価する手法について検討を行っております。その成果の1つが、地域の防災性評価マニュアル案という冊子でございます。

防災性指標の考え方はこういう発生確率、被害率から損失の期待値を設けて、そういったことから評価するという考え方が一般的でございます。これが1つの事例でございますけれども、50年に1度の被災を考えた場合に、ある地域をモデルとしまして水害のときの建物の被害額と、それから右下の方は50年に1回生ずる地震のときの被害の想定額を示しております。こういったように、同じ指標を用いてある地域の脆弱性が評価されるというようなことが可能になってまいりました。

目標の達成度でございます。まず個別の災害に対しましては、それぞれに十分な検討が行われて、目標をおおむね達成できたというふうに認識しております。また、これまでの情報研究成果の蓄積や専門性が生かされて多くの成果が得られるとともに、効率的で生産的な検討を行うことができたというふうに考えております。

2番目のテーマでございますけれども、総合的評価に関する部分でございますけれども、先程申しましたように、地域の防災性評価マニュアル案を作成できたというのが一つの課題であろうというふうに考えております。ただし、都市域という部分に着目した防災性の評価といった部分につきましては、なかなか思ったとおりの達成度が得られなかったというのが実態でございます。

体制でございますけれども、右下にお示ししましたように、いろいろな部局、大学含んで研究を実施しております。ただ、その中で個別の現象につきましてはいろいろと検討を深めることができましたけれども、3番目に書いてございますとおり、災害の種別や対象の施設を越えた、あるいは統合すべきテーマにおいては十分な議論を進めることができなかったというのが実態でございます。その原因としまして、災害の種別、または対象施設に対して、被害、損失の評価、それからリスク評価に対する共通の認識、共通の尺度ですね、そういったものがまだ十分できていないといったことが原因だったというふうに考えております。

同じようなことの繰り返しになりますが、個別技術に関しましては、非常に妥当性が高かったのではなかろうかというふうに考えております。ただ、総合的な評価という部分に関しましては非常に広範な対象の現象を扱っていましたために、なかなか対象が絞り込めずに年度が進むとともにプロジェクト研究としての位置づけがあいまいになってきたといったところが実態ではなかろうかというふうに反省しております。

ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

〈課題説明終了〉

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(主査) 非常に率直な自己評価をいただきましてありがとうございます。この課題に関しては○○委員にお願いしておりますので、お願いします。

(委員) 地震、洪水、海岸災害、土砂災害などすべての災害を包括した研究であり,非常に内容の濃い研究で、大変困難な研究であったと思います。

 この研究は,それぞれの災害に関する要素技術についての研究と、それらを総合化して都市地域での防災性能をどう評価し,災害軽減をどうするかとに関する研究の二本柱で実施されています。前者については多分各研究室でそれぞれやられて、防災に対する個々の技術開発が進展したと評価できますが、先ほどセンター長もおっしゃっていましたが、後者については個別の災害に対する防災性能についてはだいたい検討できていると思いますが、複合的な災害に対してどのように評価するのかということについては,まだ十分できていないと思います。この研究は、当初その辺が一番のねらいだったのではないかと思いますが、そこまで研究する余裕がなかったと受けとめられました。と言っても、個別の技術開発については,防災技術として応用ができる点もあります.最近、自然災害の状況を見ると、早急に成果を求められている研究だと思います。個別の技術開発結果については今後ぜひ適用していただいて防災に役立てていただき,複合災害については、今後さらに研究を進めていただきたいと思います。

(主査) ありがとうございます。○○先生からも同じようなコメントだと思います。個別についてはよくできているのだけれども、総合的な軽減率のバランスがさらによくなっているとはちょっと言いがたいねとか、オムニバス的なんだけど、多数の成果が出ていますねとか、やっぱり総合性をどう達成するかというのは大事ですねということだと思いますので、その辺について、センター長から何かレスポンスがありましたらお願いします。

(国総研) これも当初少し言いわけめくのですが、平成13年の国総研設立当初、かなりの意気込みで恐らくこういう広範な災害を扱って、それらを同じまな板の上で、同じ指標を用いて評価して、優先順位ですとか、ある地域の防災性能全般を評価しようといったようなことで始まったかと思うのですが、どうもその時間をおくに従って、そういった意気込みが徐々に薄れますのと、それから新しい課題がまた、地震が起きたりしますと、例えば長周期の震動の問題ですとか、そういったものが入ってきたりしまして、なおさらプロジェクト研究の中が複雑怪奇になってくるというような事情がございまして、そんなことがございまして、それからプロジェクトリーダーの若干の怠慢もございましたりして、なかなかうまくいかなかったというのが実情でございます。

(主査) いかがでしょうか。

(委員) 細かいところまでちょっと私も目を通しきれてないのですけれども、都市地域の社会基盤となると、やはり鉄道の話が出るのではないかと思うのですが、恐らく研究上、体制の問題とか、いろいろあると思うのですが、やはり阪神とか中越においても鉄道のダメージというのは相当広域的な影響を与えますので、こういうところではやはり評価対象になるのではないかなと思います。

ただ、ちょっと話が違いますけれども、昨年、全面施行された景観法においても、かなり日本では鉄道の影響が大きいのですけれども、景観上、対象に入ってないという、ちょっと不思議な状況になっていて、恐らくさっきの防災マップだと道路と交差するところの橋梁が入っているようにも見えたのですけれども、その辺の扱いについてはどうお考えだったか、ちょっと教えていただきたいと思います。

(国総研) 地震災害研究課の○○でございますけれども、今ご質問の点、正直申し上げてなかなか国総研の中の所掌の問題ですとか、専門家の存在の問題等もありまして、鉄道の問題まで扱えるかというとなかなかそれは正直言って難しいところがございます。ただ、例えば防災戦略とか、今お話ありました道路との関係という観点からいきますと、鉄道との交差のところ、先に補強するとか、そういったことは例えばこの研究の中でも一部扱っていました補強の戦略として提案をいたしまして、現に今耐震補強事業として活用されているところでございます。

(主査) よろしいですか、ほかにございましたらお願いします。

(委員) 私の専門に比較的近いものですから、言いたいことはいろいろとあるのですけれども、ちょっと細かい話、先ほどスライドの中で施設の被災度の話がちょっと出てまいりまして、今の○○先生のご指摘とも関係があるのですけれども、タイトルとしてやっぱり都市地域というタイトルが初めについていて、都市地域での災害というのはどういう性格であるかと、やっぱりあらかじめきちんとチーム全体が認識をしておく必要があると思うのですね。都市地域の中で、例えば施設が破壊をしたときにどういうふうに考えるかというと、基本的に個々の施設がどれだけ壊れるかというのは、これはもちろん重要なことなのですが、その壊れたとか、使用がある程度不能になった、それから制限をされたときにどれだけ影響が出てくるか、地域全体に。むしろそういう視点でやらないと、この上の一番初めにある都市地域のという枕詞、これ非常に大きいことだと思うのですけれども、その辺のところがどうもうまくいかなかったのかなというふうに思います。

 配付いただいた中間評価の段階で、私自身この中間評価に参画していたかどうかちょっと記憶にないのですけど、比較的高い評価が出ていて、その段階ではある意味では前半の要素技術の部分の進展がかなり高かった、あとの2年間ぐらいで2番目の課題のところでセンター長もおっしゃっているように腰砕けになってしまったのかなと。やっぱり非常に数多くの方々が参画して非常に総合的で有意義なプロジェクトだと思うのですけれども、やっぱり参画される方々の意識を研究していくときの意識をある意味では統一をしてやらないと、最後までうまくまとまらないのかなという印象でございます。

(主査) ありがとうございます。いかがですか、何かございますか。

(国総研) おっしゃるとおり都市地域で複合して起きる災害をこの中で詳細に検討するところまでは至りませんでした。今、ここにお示ししましたのは、とは申しましても、地域の防災性を評価するマニュアルを作成しておりまして、地域の防災性評価マニュアル案というものでございまして、これは都市にはちょっと不向きな評価マニュアルだと思うのですが、ある程度地方都市レベルの個別の災害に関しては割合同列に比較して論じることができるだろうというふうに考えております。こういったものをもう少し発展させまして、密集した市街地で同じような現象が起きた場合にどうなるかという結果あたりが恐らくこれからの課題ではないかというふうに認識しております。

(国総研) ちょっとつけ加えさせていただきます。こういう防災性能を評価するときに、例えば建築分野では、個々の建物の耐震性というのは余り重要ではなくて、ある地域に建っている建設年代の異なる建物がどれぐらいあって、全体としてどの程度被害が発生するか、また火災の問題では、密集市街地において火事が発生した場合、どの程度の損失が生じるかの観点から考えていかないと都市防災というものにつながってきません。

 さらに橋梁とか道路の被害が発生すると、通行止めや交通渋滞等まで、その影響を検討する必要があります。施設等の直接被害および間接被害の評価方法がまだ確定しておりません。個々の施設の被災評価がある程度達成できた上で、施設間の横断的な評価に進むことが必要と思っています。本研究では、総合的評価には至らなかったことは反省しています。

(委員) やっぱり役所の中で仕事のやり方は縦割りになってますでしょうし、国総研の研究者も自分の所属する学会の中で成果を上げていかなくてはいけない。ですから、総合的に何かやるということはかなり努力しなければ難しいと思うのですね。ポイントはその政策ニーズというか、何でそういうふうな総合性をやることが意味があるのかという、そのニーズをはっきりさせることだと思います。今後こういうふうな総合的な研究が続いていくとしたら、やっぱり大事ですよね。

総合的にアプローチするメリットの例としては、研究や政策実施を一緒にやると安上がりになると言うことがあるかもしれません。あるいは、達成したい目標にトレードオフの関係があって、あるときにはバッティングするとか、だから総合的に施策を打った方がいいという、逆に国総研の方から国とか、地方団体に対して政策を提案するなど、そういう総合アプローチのニーズを発掘し、提案し、そういう形で論文が書かれて、評価されるような仕組みがないと、黙っていても総合性といっても、それどうするの、どこに論文発表するのみたいな話になって、なかなかうまくいかないのではないか。今後も総合性ということでやるとしたら、やっぱりその辺もう少し仕組みというか、役所とうまく連携とりながら、政策ニーズを発掘するようなことをやっていただけたらと思います。

(国総研) それぞれの施設で予算を確保し、施設の耐震性を上げることや改修を行っています。これを横並びにすると、ある施設は非常に耐震性が高くなっているが、あるものは低い場合などは、比較すると差が見られる場合もあるのが現状だと思います。適切な評価法に基づいて、それぞれの施設を、公平な立場で評価する状況を作っていく必要があります。

(主査) いかがでしょうか。ございませんでしたら、また評価シートの記入、皆さん慣れて、ディスカッションの途中から記入していただいていますけど、お願いします。集計の方をお願いします。

 評価の結果ですけれども、研究の実施方法、体制等の妥当性についてはおおむね適切であったと。目標達成度についてもおおむね目標を達成できたという評価でございました。議論の内容とちょっと違っているんじゃないかなとも思うのですが、こういうことでございますので、これを軸にして取りまとめたいと思います。

 ただ、1つ思いましたのは、○○先生からも○○先生からも、あるいはご発言いただいた方からもございましたけれども、やっぱり総合化をどう考えるかということが非常に大事な問題だと思うのですね。総合科学技術会議でも防災の問題というのは非常に大きなテーマとして挙げられております。そういう中で、国総研というのはある意味では指揮命令系統があるわけですね。しかもプロジェクト研究というそのためにデザインされたスキームも使っておられるのだけれども、なかなか総合化が非常に難しいということで、何で難しかったんだろうかということの、できなかったんだろうかといういろいろ反省あろうかと思いますので、その辺についてのドキュメンテーションをきちんとしていただくということがこういう社会的に、かつ本質的に総合的な問題についての今後の研究を進める上で、非常に有用な資料になるのではないかなというふうに先ほどの議論聞いておりまして思いましたものですから、そういうこともアフターケアといいますか、今後のさらなる発展を目指してぜひ取り組んでいただければと思います。そういう方向で書いていただいたコメント、まだ読んでおりませんけれども、それを取りまとめさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(国総研) どうもありがとうございました。

(主査) それでは、時間が若干押しておりますけれども、これで午前の部を終わらせていただいて、昼食休憩ということにさせていただきたいと思います。再開は12時40分からしたいと思いますので、よろしくお願いします。

(事務局) 昼飯の都合もございますので、午後も休息時間をとっておりますので、一応40分昼飯時間とりまして、一応50分からということでお願いできればと思います。

(休憩)

(主査) 若干早いですけれども、皆さんおそろいになりましたし、準備も整いましたので、4番目の課題であります「水域における化学物質リスクの総合管理に関する研究」を○○下水道部長からご説明いただいて、評価してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

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事後評価C水域における化学物質リスクの総合管理に関する研究

(国総研) 下水道研究部長の○○でございます。

「水域における化学物質リスクの総合管理に関する研究」についてご説明させていただきます。

期間は平成15年から17年までの3カ年間でございまして、総額7,400万円の予算を使いました。

研究のまず背景でございますが、化学物質をめぐる最近の状況といたしまして、水環境基準に関する動きとして、水生生物にかかわる水質環境基準が新たに制定されまして、これが平成15年につくられたわけでございますが、具体的には亜鉛につきましてその数値が定まっております。また、1990年代後半から環境ホルモンという問題が着目されるようになりまして、これに対して、環境庁では環境ホルモンについて戦略的に調査をやるということでSPPED98という計画がつくられました。これで約60物質ほどの物質について調査が進められたわけですけれども、現在は、これはEXTEND2005というふうになっておりますが、現在のところ得られている結論といたしましては、環境ホルモンとしてメダカに対する影響ということで見ていますけれども、推定される物質がノニルフェノール、4--オクチルフェノール、ビスフェノールAと、この程度の物質しか明確には環境ホルモンとして今のところ断定できないんじゃないかということで、それ以外の物質につきましては継続して審議し、モニタリングするということになっております。

それから、最近の大きな話題としましては、昨年の暮れに中国で松花江という河川の流域にございます都市で工場が爆発いたしまして、ベンゼンやニトロベンゼンがこの川に流れ込みまして、下流にあるアムール川のハバロフスクで取水停止に追い込まれるというような事故がございました。これは中国だけではなく、日本におきましても、有害物質が河川中に流れ込むというような水質事故も最近かなりふえてきております。それ以外に、下水道へ有害物質が流入するという事例もかなり発生いたしております。

このような状況の中、PRTR法という法律が平成13年度に成立いたしております。これはどういう法律かと申しますと、化学物質につきまして、その移動量とか、大気中、あるいは河川などの水域へ排出される数量について環境省や関係省庁に届け出て、集計し公表するというというものでございます。現在、懸念される物質として354物質がこのPRTR法の対象物質となっておりまして、この法律ができましたことによって、化学物質に対するその排出量の概要の把握が可能となってきたという状況がございます。

そこで、この研究におきましては、PRTRの情報をもとにいたしまして、河川流域における化学物質の動態を把握するという手法を考えようというものです。それから、その状態をベースにして、流域における化学物質のリスクを、知らせて、リスクコミュニケーションを通してリスクマネジメントしていくというスキームを考えていこうということが目的でございます。

具体的には、まず1番目といたしまして、化学物質リスクの実態の把握に関する研究。それから、それぞれの化学物質がどういうリスクがあるのかという知見を整理しました。3番目が、化学物質に関連したリスクを住民などと情報をシェアし合うリスクコミュニケーションに関する研究。以上三つの内容を実施いたしております。それを踏まえまして、最終的に流域における化学物質のリスクマネジメントを進めるスキームを提示するという内容で研究が行われました。

まず、研究成果の概要でございますが、化学物質リスクの実態把握に関する研究でございますけれども、まずPRTR法だけでも354物質という非常にたくさんの物質がございますので、この物質を全部対象として実態を把握していくということも難しいわけですので、それを絞り込むということで、水管理上評価対象とすべき化学物質の絞り込みをまず行っております。具体的には、環境基準などで基準値を超過して検出されたもの、あるいは検出率の高い物質をその対象物質とするとか、あるいは新たに定まりました水生生物に関する項目の物質を対象としました。あるいはPRTR法で公共水域の排出量が多い物質、上から10物質を対象としました。あるいは、下水道から公共水域へ排出量が多い物質5物質を対象としています。それから、環境ホルモンと言われている物質を対象としました。こういうことで絞り込みを行いました結果、ここに小さい字で書いてございますけれども、30物質にとりあえず絞り込んだということでございます。

 それから、この30物質を対象といたしまして、では河川などへ具体的にどういう状態で出ているのかということをモデル流域を設定いたしまして、この図にございますのは群馬県の谷田川でございますが、谷田川の河川において、それぞれ何ポイントかで実態把握を行いまして、その実態に対する予測値をPRTRデータなどを用いて予測しています。実際にはPRTRデータだけではない、それ以外のものもかなりあるだろうということで、PRTRで届出対象外となっている、すそ切りされた事業所だとか、家庭だとか、農地などから出てくるものも加えて予測しました。グラフがその一つの例でございますけれども、これは亜鉛について実測したものでございます。こうするとことによって、データだけを使って予測値を用いて、例えば排出削減を行うべき主体がどこに、何が主として原因になっているのかだとか、あるいは排出削減について何か手を打ったときのその効果がどうかというようなことが評価できるということでございます。これは一応、ある程度の精度でよく評価できたということで自己評価しております。

 それから、化学物質リスクコミュニケーションに関する研究といたしまして、今のようなデータを踏まえた上で、住民とリスクコミュニケーションを行いながら、そのマネジメントをしていこうということでございますので、モデル流域を設定いたしまして、河川管理者を含む県市の行政担当者による、まず意見交換会を行っております。これがその状況でございます。それから住民ということで、今回の研究では大学生を仮想住民としてリスクコミュニケーションの模擬実験を行ったということで、河川管理者が化学物質のリスクコミュニケーションを行う際の基礎的知見を整理したというものでございます。

 このようなリスクコミュニケーションを行うに当たりまして道具が要りますので、その道具を準備するということで、一つは化学物質リスク動態マップということで、GIS上に流域図の上に化学物質が具体的にどれぐらい排出されているのか、化学物質の存在量がどういうふうになっているのか、どういう水利用があるのかというようなことを動態マップに整理いたしております。

 これをコミュニケーションの道具ということでWeb上にできるように、情報量を間引いた形でWeb上でも見られるような形で、つくっています。更にはコミュニケーションということでございますので、これを見た人とやりとりができるような掲示板をつくると、こういうようなことを行っております。

 以上、全体を整理いたしまして、リスクマネジメントを進めるスキームを提示しました。PRTR情報の整理から始まりまして、関係者とのリスクコミュニケーションまでに、何をどういうふうにやったらいいのかというものを整理したということでございます。

 自己点検の結果でございますが、まず研究成果と成果の活用方針につきまして、それぞれ@、化学物質リスクの実態把握に関する研究につきましては、おおむね達成できた。Aの化学物質リスク管理に必要な知見の提示ということにつきましては、これは化学物質が生態系や人体、次世代にどういう影響をするのかということを、既存の知見を整理するということでございますが、物質が現代でわかっている範囲で、情報が少ないものですから、将来期待するということで、ここでは三角印にさせてもらっています。それから、B、Cにつきましては、それぞれ自己評価としまして成果の達成度は、おおむね達成できたというように整理いたしております。

 研究実施方法、体制の妥当性ですけれども、年度計画、研究費配分については1と3にそれぞれ予算配分して実施いたしております。

それから、研究体制につきましては、国総研の中でチームを組みまして、総合科学技術会議の化学物質リスク総合管理技術の研究を通じて全体の連携を図るという形で進めました。以上です。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございました。

 この課題に関しては、○○委員に事前にお願いしておりますので、ご報告お願いいたします。

(委員) 化学物質の専門家ではないので、物質のエレメントについては、私自身はチェックできません。ということで、全体の流れを見たということでご理解ください。

 総合科学技術会議の重点課題ということで、そもそもテーマ自体は緊急を要するし、重要な課題だというふうに思います。その中で、PRTRという届け出で得られた情報をもとにGISの中にそれをストックしながらリスクマネジメントをやっていくという全体の流れは、非常に実用的な感じがしました。

さらにおもしろかったのは、やっぱり住民とのコミュニケーションをどうとっていくかということで、その枠組みをまず一度試験的に実施したということも評価できると思います。

その中で感じたのですけれども、一つは、住民とのリスクマネジメントということになると、私自身もそうですけれども、一般の住民の方々は化学物質一つにしても、ほとんど知識がない状態だと思います。いたずらに不安をあおってしまうようなことがないのかなという気がしました。特にその模擬実験の中で、例えばどういう状態になったら、住民が何らかの対応をとるのかとか、もしくは、できれば回避の方法を事前に知らせておくと、BSEのときではないですけれども、いわゆる流れが見えていれば不安というのはある程度取り除かれると思います。どうなるかわからないという状態のもとでは、非常に不安を駆り立ててしまうということで、この辺のいわゆる横文字がたくさん並ぶような、ほとんどわからない化学物質に対して住民の安心というものと、住民が果たすモニターとしての役割みたいなものをどうやって整理していけばいいのかなという点が私自身はわかりませんでした。

あとシミュレーションの結果、これも亜鉛の例が示されていたのですけれども、実態の調査の方では堆積物をとられたというふうに書いてあったと思います。たまっているものと実際に流出するフラックスを、どういう形でチェックされたのかなというのがわかりませんでした。

それから、○○先生もおっしゃっているんですけれども、やはり環境省とか、ほかの省庁との連携性、特に危機管理になると省庁の縦割りが常に弊害になってしまうと思いますし、ある意味、一元的な管理を求めないとだめだという感じもします。そういう中で、この研究自体が他省庁との連携の中で、どういう形で将来性を持って構築されていくのかというのがいまひとつ、見えなかったかなという感じがします。

以上です。

(主査) ありがとうございます。

○○先生からもコメントをいただいておりまして、多額でない研究費枠を考慮すると、十分な成果が出されているんじゃないか、とかですね。ただ、ご報告にもありましたけれども、総合科学技術会議の中でどういうことを担当したのかとか、他省庁との関係とかということについて、もうちょっと教えてほしいというような雰囲気のことがありますので、今の○○先生のコメントも含めてお答えいただけますでしょうか。

(国総研) まず、総合科学技術会議の中の化学物質リスク総合管理技術研究イニシャティブの中の位置づけですけれども、ここのいろいろ項目が書いてございますが、非常に広い研究になっておりますけれども、社会制度構築とリスクコミュニケーション、リスク管理、リスク評価、対策技術、それから暴露評価・環境動態解析、有害性評価というような広い範囲にわたって化学物質に対するいろんな評価をやるということになっておりますが、今回の研究対象はリスク管理と、それから環境動態の部分についてまたがってやっているということで、それぞれ幾つか項目がございますけれども、この部分を担当したということであります。

それ以外のものにつきましては、似た部分として両方にまたがっております24番の化学物質環境リスクに関する調査研究や、化学物質のリスク評価及びリスク評価手法の開発というような部分がそれぞれ行われていまして、特にこの研究は、河川側から見た場合に、河川管理者としてどういうふうな最終的に考え方をしたらいいのか、アクションをとったらいいのかということを中心にまとめたということになっております。

(主査) よろしいですか。

(委員) 実際にこれはそうなると、中国の例じゃないですけれども、そういう事態が起こった場合の対応の仕方というのは、この研究の中では基本的にはもうちょっと後に、アクションに関しては後になるわけですか。これ含まれていないということですか。

(主査) まず、PRTRデータをベースにということで考えていますので、ダイレクトに水質事故というわけではないんですけれども、リスクコミュニケーションの話の中で水質事故のときの、例えばPRTRデータの使い方というような話も出たというように聞いています。

(委員) この今回の研究自体は、非常に内容も明確で成果も出ているように思うんですが、化学物質リスクの総合管理という観点からするとですね、PRTR法で定義されているのか確かに非常に重要な物質なんですけれども、しかもそれに基づいて現状を把握した上でという話ですよね。ところが、河川の線までは結びついていないかもしれませんけれども、全国でいろいろ区画整理をやったときに、土地区画整理、つまり土地の開発を始めたら、過去の土地利用で規制以前の物質が出てきて、それが結果的には地下水汚染なんかが起きている場合もあるようなんです。、結局、要するに現状の把握できているもの以外が問題を起こす可能性も、実は地域には潜在しているわけですね。ですから、総合管理という観点からすると、今回はいいんですが、今後そういう面も、つまりリスクコミュニケーションという意味では、過去の情報というものをきちんと把握しないと、環境の質の向上なり維持というのは、どこか抜けてしまう可能性があるんではないかなというのが、これは感想です。すみません。

(主査) 何かありますか。

(国総研) 土壌中の、過去に例えば投棄された化学物質で汚染されているというものについては、法律があって、対応するようになっています。ただ、おっしゃられるように、トリクロロエチレンの問題なんかも、実際に使われたものが土壌に捨てられて、地下水として出てきたとかというような問題がありますので、そういう情報をどうやって把握していくのかというのが、実際問題として課題ではないかなと思います。とりあえず、ここは今あるPRTRデータをどういうふうに活用したらいいのかというところを中心に検討したという内容になっています。もちろん、そういう部分も今後必要だと思います。

(委員) これも今後への期待の一つですけれども、農地が、特に大都市近郊の農地が耕作放棄されているところが建設残土の処理場になってきているんですよね。特に埼玉はひどいんですけれども。そういうところに規制の目をかいくぐって、相当危険なものが入っているというような実態も起きていますので、恐らく工場とか家庭以外の非常に厄介な部分が総合管理上、落ちないような仕組みをつくらなきゃいけないというところがありますので、その点いろいろ今後に期待しているというコメントでございます。

(委員) ちょっと内容について教えていただきたいんですけれども、総合管理ということなので、結局、化学物質がどういうふうに分布して流動してどこへ行くか、あるいは消滅するかとか、そういう化学物質の流域内、あるいは水路中の流動ですとか、あるいはその中での化学反応とか沈殿とか、それから消失とか、いろいろとあると思うんですけれども、そういった、この図で言うと、水環境中の化学物質挙動モデルというんですか、これはどの程度まで精度が上がっているのかどうか。この研究の中でもやられたのかどうか、そのあたりはいかがでしょうか。

(国総研) 当該研究部門を担当しておりました○○でございますが、まずモデルをやっていたかという点につきましては、この研究では基本的に今、産業総合技術研究所ですとか、国立環境研究所の方で、そういった化学物質の個別の物質の挙動モデルというのを今、同時並行で開発しているところでございまして、その中の産総研の方のモデルを、基本的な構造を引用しまして、それをこの流域に当てはめて、試行的にその挙動を追うというようなことを行っておりますが。ただ、実際にモデルのところはなかなか、今パラメーター等もいろいろ集めている段階でございまして、なかなか現段階で完全にできたというものはまだないというところでございます。

(国総研) さっき○○先生の方から、堆積物をはかっているようなんだけれども、どういう関係になっているんですかというようなご質問がございました。それについて。

(山縣)堆積物の方なんでございますが、こちらは川の実際に底泥の方もはかっております。例えば亜鉛を例にとりますと、やはり亜鉛の水中の溶存体に溶けているものが多いところでは底泥の方へかなり濃く堆積しているという状況は、観測結果としては得られております。ただ、モデルにつきましては、亜鉛もそうですけれども、重金属に関しては、非常に挙動が複雑でございまして、現地のPhの状況、あるいは重金属自体がいろんな化学体で存在しておりますので、一律にこの式で表現できるというものが、世界的に見てもまだできていないということでございまして、なかなかその辺の予測モデルというところまではいっていないのが現状でございます。今回の物質収支としてかなり静的な状態、PRTRも年間の負荷量でございますので、全体の状態として発生した量と実際に川に流れている量が大体バランスしているというところまでは確認できたというところにとどまっております。

(委員) 今のことと少し関連すると思いますが、水質事故に対する対応策を検討することが研究目的だとすれば,事故が起こったり、自然災害で何か被災を受けて有害物質が流出したときに、それが拡散する過程の予測が必要になってくると思います.そういう意味で、水質事故への対応策として、この研究はどの程度まで効果があるのでしょうか。

(国総研) 今の水質事故の点でございますが、一つはPRTRの結果をうまくやっぱり水質事故等にも役立てられないかという観点も当初研究にございまして、リスクコミュニケーションの、自治体の方との意見交換会等も含めてその辺も検討したんですが、一つ言えることは、実際にある程度、こういう物質を取り扱って排出している工場の位置がわかるということで、事前に危ない、危ないと言うとちょっと語弊がありますけれども、そういった工場の位置が事前にわかるということで、それをもとに事前にその工場と連絡体制を取り合ったりとかすることで、もしも万が一漏れた場合にどうすべきかという対応が円滑に進むのではないかというような意見が、自治体の方から出たというところでございます。そういった点で活用できるかなというふうに思っております。

(委員) 研究としては、またさらにそういうところも進めていくということですか。

(国総研) その辺、実際にやるためにはソフト的な取り組みと、あと実際に化学物質が出た場合にどれぐらいの濃度になるかという、そういったモデルも動的にしていかなければならないかなと思っております。

(委員) リスクコミュニケーションの模擬実験、試行実験に興味を持ちましたが、この実験をする意味をちょっともう一度確認させてください。アンケート調査とか、自治体行政担当者に対するインタビュー調査では得られないデータを実験、仮想的な状況をつくって比較するわけですね。どういうケースを仮想的につくって比較するのでしょうか。それからその実験のアウトプットをどういう観点で評価したのか。「うまく伝わったのか」「コミットメントを引き出せたのか」「安心させたのか」。何かよくわかりませんけれども、どういうケースを、どういう評価指標で評価したのか、その実験の意味をちょっと教えてください。

(委員) やや誤解を与えたかもしれませんけれども、このリスクコミュニケーションの目的そのものは、模擬実験の目的は、具体に住民にこういうふうなリスクがある、こういう化学物質が存在しているというようなことを提示した場合に、具体的にどういうようなレスポンスがあるんだろうかとかということ。あるいは、どういう問題点がそういうときに出てくるかということを抽出するということを目的に、このリスクコミュニケーションが実施されたということでございます。

したがいまして、具体の何かこういう問題が、非常にシビアな問題が出てきて、それにどう対応しましょうという形で討論を行ったとかそういうことではなく、もう少し漠然とした感じで、皆さん自身が化学物質に関する情報を持っていないという状況がまずありますので、なかそこをまず改善しようというので、こういう形でのリスクコミュニケーションという手法そのものをまず考えていってみようという、まず入り口のところのものです。

(委員) そうすると、ケースが何か設定されて、情報提供の仕方、そのコミュニケーションの仕方を変えたとか、そういうことじゃないんですね。1回しかやっていないわけですね。

(国総研) コミュニケーションの学生の方相手の実験というのは、学生の方に対しては1回、別の機会でまた1回やっておりますが、内容としましては、具体的なケースというか、先ほどお示ししたような、群馬県谷田川の結果を示しまして、こういう情報があるのとないのとで、どういった心証が変わるかといいますか、何もない状態で、そもそも化学物質に対してどういう不安があるかということを、まず意見を聴取して、こういったPRTRのデータとか、あるいはリスクの情報が今後整備された場合には、どういった点が関心を呼ぶかとか、その辺の今回のツールのありなしでの具体的なケースまではいっておりませんけれども、こういうデータベースができた場合には、どういうふうに意識が変わりますかという点を主に伺って整理したという点でございます。

(委員) いきなり住民にアンケートをすると、本当かと思ってびっくりするといけないから、学生を使って仮想的にやったという感じですかね。

(主査) ほかにいかがですか。
 私も素人なんで、わけがわからないという点では一般の人と同じだと思うんですけれども、事故の場合はまだ原因がある種明確ですし、そういった突発的なものに関しては何かそういう努力がされると思うですけれども、いつの間にやら蓄積しているという環境ホルモンみたいなものがありますよね。そういうことに関して、例えばリスクコミュニケーションというのはどういうことをされているのかとか、あるいは、この目指すところは、究極的にはどういうところを目指されているのかというようなところが、もうちょっと説明していただけると、わかりがいいのになと思ったのですけれども。

(国総研) リスクコミュニケーションという手法そのものはソフトな対策でして、まず化学物質に関する情報をきちんとした形で、わかりやすい形で提示しましょうと。普通の住民の方は、一体何がどうなっているのかがまずわからないという状態で、非常に漠然とした不安をお持ちになんですね。ですから、それに対して一定の整理された情報をまず出しましょうと。そうすると、じゃあ、それを減らすために具体的にどういうことをやってもらったらいいのか。例えば、幾つかの工場が原因ということであれば、その工場側にも住民の不安を伝えるような、そういう場に出てきてもらえば、自分らが出している化学物質が一定の危険性を環境の中で増加させているし、住民に対して不安を与えているということで、それを減らすような努力をしてもらうことが期待できます。
 PRTR法もそうなんですけれども、規制するとか、そういうところまでいかないで、もう少し情報を出すことによって自分が環境に与えている影響を認識し、自主的な努力でそれを減らすというところへ結びつけようとしていまして、リスクコミュニケーションもここで実施したものはその延長線上で、まず情報を与え関係者が寄り合って、その中で、じゃあ何をやったらいいのか、だれがやったらいいのか、だれがどう努力したらいいのかということを考えていこうという考え方で行われているものです。

(主査) わかりました。ほかによろしいですか。

(なし)

(主査)それでは、予定しておりました時間も過ぎましたので、そろそろ評価シートの記入をお願いしたいと思います。
 はい、ありがとうございます。高い評価で、妥当性については、適切であったというのが過半を占めております。達成度についても、おおむね目標を達成できたということでございまして、よかったんじゃないのかなというふうに思います。

ただ、もうちょっと私自身、あんまり中身がよくわかっていないので、こんなことを申し上げるのは失礼かもしれませんけれども、目的ということとか、十分研究成果は持たれていると思うんですけれども、タイトルとのギャップが若干あるかなとも思いますので、その辺のギャップをこれからさらに縮めるような新たな展開を期待したいということなども踏まえて、含めて評価書を作成したいと思いますので、委員の先生はそういう方向でよろしゅうございますでしょうか。

(異議なし)

(主査)どうもありがとうございました。

では、次は5番目であります。「地球規模の水循環変動に対応する水管理技術に関する研究」でございまして、河川研究部の○○部長よりご報告をお願いしたいと思います。

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事後評価D地球規模水循環変動に対応する水管理技術に関する研究

(国総研) それでは、「地球規模の水環境変動に対応する水管理技術に関する研究について」ご報告申し上げます。

 研究期間は15年から17年度の3カ年でございまして、研究費の総額は約2億5,000万でございます。

 本研究の背景でございますが、最近集中豪雨、それが多発している。さらには年変動で見ますと、降雨の多い年と非常に少ない年の変動幅が拡大してきているというようなことから、水害とか渇水が頻発するという、こういう現状に対応いたしまして、最近、精度が上がってきています気象庁の予測降雨量を活用して四つの技術を開発しようと。一つは洪水予報に関する技術でございます。二つ目は土砂災害の発生、それをもとに警戒・避難に資するような技術でございます。三つ目はダムの貯水池を有効活用するための技術でございます。四つ目は同じくダムの貯水池を利用するわけですが、ダム貯水池の水質の効率的な管理に関する技術でございます。これらによって水害等の防止・軽減を図る。さらには、国際的な水問題への関心が高まっておりますので、そういったところに貢献していきたいと。

これは、このイニシャティブの中では、対策、シナリオ、技術開発の総合評価というようなところに位置づけられておりますし、体制といたしましても、こういうようなことで進めております。

 気象庁の降雨予測でございますが、6時間先の予測と、それから18時間、51時間というのがこの研究当時のものでございました。

これを活用しての研究でございますが、まず、1番目の洪水でございますが、ここでは我々が洪水予測をして、それをもとに市町村長が避難の指示とかを出すわけでございますけれども、なかなか空振りをしたことを恐れて、指示を出さなかったといいますか、遅れたというような事例も見受けられるわけでございますが、その一因として我々の水位予測情報がどれぐらいの信頼性を持っているかということを、今の段階では示し得ていないということが問題だと思われるわけでございますので、そういった意味で我々の予測の幅をこういった形で確率論的に評価しようと。

モデル流域をメッシュを切りまして、ここで流出計算をするわけですが、この流出計算手法自体は特に目新しいわけではないんですが、この気象庁の短時間降雨予測の持つその信頼の幅を評価しようと。横軸に1時間先の予測雨量分布の標準偏差と書いておりますが、メッシュごとの標準偏差を横軸にして、実際にどれぐらい雨が降ったかということで比較したと。これによって、上下の90%の信頼区間を算出することができたと。これに基づいて水位を計算しますと上下の幅が示されるわけでございますので、この幅に入るということを示すことができると。

ただ、今、気象庁の予測が余り精度がまだよくないものですから、これ1時間を示してございますが、2時間、3時間と先の時間にいきますと、特に下側、量が少なくなる方の誤差が広がっておりまして、このまま出しますと、市町村長さんから見ると、我々の出した予測の下の方に移る可能性の方が高いじゃないかと、こういうことを言われかねないところがございまして、もう少し開発といいますか、工夫の余地がございます。

ということで、全体から言いますとこういうシステムで出すわけでございますが、気象庁の予測情報の精度が上がれば、かなり信頼の高い予測が出すことができるというふうになると思います。

次に、土砂災害についてでございますけれども、現状は右上にございますように、丸が災害が起きた、バツが災害が起きなかったという現実に起きている事象を長期降雨指標と短期降雨指標で分類をいたしまして、予測の、我々は青い線をスネーク曲線と呼んでおりますが、スネーク曲線が基準値を超えるかどうかというようなことで、警報を出しているわけですが、非常に広い範囲を一つの雨量観測地点でカバーをしているというようなことがございますので、もう少しピンポイントで予測を出したいということで、こういったシステムを考えたわけでございますが、これは非常に小さいモデル流域で、1mメッシュで流域を区切って、土砂が動くかどうかということを算出したものでございますが。これは5mメッシュで算出したものでございまして、これは実際に災害が起きた広島市の例でございますけれども、右下の方にピンクの地点がございますけれども、安全率として動く可能性がといいますか、1よりも安全率が小さいというエリアが計算されておりますけれども、実際に崩壊が発生した位置にほぼ近いというようなことで、まだまだ精度としては十分でないところがございますが、こういった手法をさらに使うことによって、土砂災害の発生を予測できるんではないかと。課題のところに書いてございますが、今のところ、安全率が1を下回るというところまでは予測できるんですが、発生する時間を予測するところまで、まだ精度が至っておりません。これが今後の課題でございます。

三つ目はダム湖の有効活用でございますが、基本的には二つ活用の方法がございまして、一つは降雨を予測して事前に放流をして、ダムの水位を下げておくという事前放流をしておこうと。それには、どれだけ降雨量が来るかということを予測して、下の方に模式図がございますけれども、それに対応した分だけ下げておきましょうと。下げているというのは、実は渇水のためにとっている容量の分を下げるものですから、もし外れちゃうと、戻らないと、その分、利水容量が減るというリスクを負うものですから、この予測の中で、途中で放流をやめるとかというようなことも、この予測降雨を活用していこうと。

そこで問題になるのはやはり精度でございまして、洪水とか土砂災害は短時間降雨の精度が問題になるんですが、こういう事前放流の場合には、トータルとしての積算雨量の精度が問題になるんですが、実はここに予測でも精度の劣化が少ないと書いていますが、なかなかちょっと今、長期的な降雨の予測精度が高くないものですから、実際にはこの下の方の6時間とかございますけれども、実測と予測が大きく違うというようなこともありまして、事前放流に使うにはまだ早いというようなところでございます。

もう一つは、洪水の末期の調節の仕方に反映させようということで、やはりメッシュモデルで流出モデルをつくったわけですが、具体的にどういうことかといいますと、今、上の図で言いますと実線のところまで来ておりまして、普通であれば点線のように推移をして、貯水池の洪水調節容量の8割から9割ぐらいになりますと、ダムのオーバーフロー等が予測されるということで、今のルールでは放流量をふやすという操作、山のように立ったような操作をすることになっておるんですが、将来の予測が可能であれば、そういうことをせずにこのまま調節を続けて、全量ため込むというようなことが可能になるわけでございまして、そのような運用がこの予測モデルができることによって可能になるということでございます。

それからもう一つ、4つ目は水質の議論でございます。洪水によって土まじりの濁水がダム湖に流れ込んでくるわけですが、この濁水が自然の有機物が溶けたようなものでございまして、高負荷の有機物が入っているものですから、洪水が去った後、富栄養化というようなことが問題があるわけですので、もしも将来予測ができるんであれば、高負荷のところを通り過ぎさせて放流してしまって、ダム湖にとどまらないようにできないだろうかという発想でございます。

今の図で示していますのは、ちょうどピークのところ、ピークのところはできるだけ調節をしないで、そこの土塊といいますか、濁水塊を出してしまって、おしまいの方でためていくというようなことができないかということをやったわけですが、結果的には結局先ほど申し上げたように、利水容量をためるために放流を停止しなければいけないわけですが、濁水塊を通過させるほどうまくいかなかったということと、濁水塊を通過させるような放流をしてしまうと水が十分たまらないと、こういったような問題点がありまして、もう少し検討が要ると。ただ、この中で放流設備の改善をすればというような事前検討も出されておりますので、今後の検討が期待されるわけです。

それから、こういう国際会議でお話をしました。

今後の取り組みですが、3点書いていますが、一番最後に書きました降雨量の予測情報の精度向上が何といっても第一でございまして、ここがもう少し高くなれば使い物になるんですが、気象庁さんも大分改良してきておりまして、一応、改良した結果によると、福井豪雨なども予測が大分できるようになったと言っておりましたので、こういったところを期待しながら、今後の研究に反映させたいと思っています。

それで、研究の評価でございますが、今申した4点の技術開発については、おおむね達成できた。それから、国際貢献といいますか、国際的な発表については幾つかで発表させていただきまして、十分達成できたんではないかと思っております。

以上でございます。

(主査) ありがとうございました。

この課題に関しては、○○委員にお願いしております。

(委員) それでは、スライド1枚用意しておりますので、お見せしたいと思います。このスライドは研究の評価というよりは、この研究の意義みたいなものを過去の水管理の歴史をちょっとご説明して、評価の参考にしていただこうと思って書いたものです。60年代、70年代は施設整備時代ということで、どんどん治水、あるいは利水の施設整備をやってきたわけですけれども、それと水管理技術の標準化、マニュアル化というようなことでやってきました。それと同時に、大学の方では理論研究の活発化ということで、OR手法ですとか、システムズアナリシスの方法ですとか、最適化ですとか、そういった理論研究はどんどんやられてきたわけですけれども、情報技術、あるいはコンピュータとか、そういったものは発展途上で、理論的にはいろいろあっても、なかなか計算ができなかったというようなことがあります。モデルなんかにしましても、貯留関数とかタンクモデルというのは60年ごろにはできていたわけですけれども、それが一応確立されて、それがずっと使われてきたと。80年代後ぐらいになりますと、整備からマネジメントの時代へとなって、それから訴訟問題もいろいろある。さらに、観測情報、あるいは空間情報の整備、成熟、高度化というふうなことがあります。

一方では、マニュアルできて技術滅ぶというようなことで、河川砂防技術基準(案)みたいなものができると、そればっかりでなかなか技術が進歩しないというようなところもあったかと思います。一方で環境志向ですとか、小さな政府志向とかということで、ハード技術からソフト技術へというようなこともあって、水管理も、例えばダムですと、固定操作ですとか、空振りが怖いと、先ほどお話ありましたけれども、責任回避というようなことで、むしろ技術的にはどんどん停滞していたというようなところがあるかと思います。

しかし、近年、気象予報が大分高度化してきまして、先ほどもお話がありまして、精度も大分上がってきたと思っております。それから、分布型のモデリングですとか、大型の高速シミュレーションができて、予測精度が向上できるようになったということで、精度の高い予測に基づいて、今はまだちょっと精度は落ちるかもしれませんが、近いうちに精度が向上するでしょうから、近未来の水管理は効率的な運用管理ができるんじゃないかということで、3、40年前に考えておったことが、ようやく実務現場でもできるようになってきたんのではないかと思います。個々の課題の中では、トータルの課題は地球規模水循環変動に対すると書いてありますが、これは地球規模水循環変動イニシャティブに対応するといいますか、イニシャティブがそういう名前だったものですから、それに対応する形で書いているわけです。中身としては次世代の水管理技術と書いておられますように、ようやくできるようになってきたのではないかということで、大変実用的な観点から意義深い研究だと思っております。

精度上はまだ、精度といいますか、正確さですね、確からしさについては、もちろん予測の問題ですから、まだ問題はあるんですけれども、総合水管理ですとか、統合流域管理と最近言われておりますが、まだ依然として省庁縦割りなどなかなか難しい問題があるわけですけれども、気象庁、運輸省系と建設省系とが一緒になったという、国土交通省になったというようなこともありまして、なるべくそういうセクショナリズムを排除した形で水管理がやっていけるんではないかと思います。

それと、国際的な視点、地球規模ということでもありますので、ご発表では余り触れられませんでしたけれども、国際的な視点が大事だということで、広域の災害安全保障といいますか、日本に台風が近づいてくるとか、それから津波、高潮にしましても、結構広域な気象現象等がります。それと、バーチャルウォーターというような概念もありますように、日本は土地資源、水資源を海外に依存しておりますから、日本の技術は海外でも役に立つし、海外での動向が日本の水管理ですとか、あるいは経済的なことにも影響するというようなことで、そんなふうなことをねらっておられる研究だと思っておりまして、この3年間でかなりいい成果を上げておられるのではないかと評価しております。
 以上です。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございました。

○○先生からも、3年間の中でしっかりと達成をされていると。○○先生からも、次世代の水管理技術ということでは長年の夢がようやっとできつつあるんじゃないかという高い評価をいただきましたし、海外での成果発表もきちんとされているというふうなことでございます。結構高い評価をいただきましたけれども、何かそれに対してレスポンスがありましたら、お願いしたいと思いますが。

(国総研) 大変名誉ではございますが、実際のところは、もう少し改善すべき点が多々実はございまして、ここの発表の中には本当にうまくいったというところしか示していないわけでございまして、やはり気象庁の予測技術の精度の問題もございますが、我々の方も実際に使うために、じゃあもっとどうしたらいいのかと、そんなところを一工夫さらにしなきゃいけないだろうなと。これはすべてでございますけれども。ただ、特にダムなどは、雨が終わってからああすればよかったじゃないかとか、こんなことできたじゃないかってよく批判されるんですけれども、こういう予測があるということで、それに一歩でも近づけることで災害の軽減にもできると思っておりますので、もう一歩でございますので、さらにこの研究を続けてまいりたいと思っております。

(主査) ありがとうございました。いかがでしょうか。

(委員) 幾つかの研究課題があった中で、私の専門の土砂のことを少しコメントさせていただきます。土砂災害の予測を高精度にするというところは大変有意義な目標を立てられていると思います。そのために、どんどんメッシュを小さくしていって、非常に細かな崩壊の予測をしようというところも結構かと思いますが、多分、細かくすればするほど局所的な情報が必要になってきて、精度は向上しないのではないかと思います。降雨のデータは5キロメッシュと粗く、地形データ、地盤データについても、それほど細かい情報がないわけですので、研究の目的として、こういう方法の限界を明らかにし、さらに細かい土砂災害の情報を得るために研究しなければならない事項を抽出することを挙げてはどうでしょうか。詳細な土砂災害の予測のためにには、別途検討が必要だと思います。

(主査) いかがでしょうか。

(国総研) まず、おっしゃるとおりだと思っておりまして、どこまでできるかというのを確かめてみたという段階にとどまっていると思います。結果的には、いろいろパラメーターをいっぱい入れているんですが、どうもやっぱり勾配が一番効いているよという当たり前のことになってしまったようなところもあるものですから。それと、やはり土石流危険渓流などは全国に数万箇所、十万というような数があるわけで、全部こんな細かいメッシュで切れないわけですので、大事なところをもっと簡単にできるような形でこの技術を発展させていく必要があるかと思っておりまして。さらに今後の課題だということで、ここに課題が書いておりますが、モデルの有効性と同時に、また発生する時刻を予測できないと警報に使えないものですから、そこら辺も今後の課題だということで頑張っていきたいと思っております。

(主査) ほかにいかがでしょうか。

それと、多分関連すると思うんですよね。どこまでできるかということの確認のために研究をしているという発言を伺って安心したんですけれども、国際的な貢献ということを考えた場合には、やっぱりモンスーン地域で、アジアだろうと。私の専門は交通の分野なんですけれども、交通の分野は日本でいい技術がいっぱいあるんですけれども、情報収集系のコストが非常に高くて、いい技術なんだけれども、そのままアジアに持っていけないということがあるんですね。多分、この分野でもまったく状況は同じだと思うんですけれども、そういうことに関しては、これからどういうふうに考えていられるのか、あるいはこのシンポジウムをやられたときに、その辺についてどういう議論があったんでしょうか。

(国総研) 議論の詳細については、ちょっとまだ把握しきれておりませんが、世界水フォーラムでも、統合水管理の議論が今盛んに行われるようになっていまして、どちらかというとヨーロッパとか先進国では一生懸命議論されている課題になっているんですけれども、実は一番本当は問題なのは、アジアのモンスーン地域の農村といいますか、東南アジア、そういうところでこの技術を本当は使いたい。それを我々が代表として、アジアモンスーン地域の代表として統合水管理の議論に参加していくわけですが、そういった意味でも、もっとアジア地域と情報交換をきちっとしていきたいですし、少しずつそういうことで始めてはおりますということなんですが。

地震でもそうなんですが、言うはやすし行うはがたしで、とてもじゃないですが、降雨予測なんていうのは期待できないわけでございまして、これから具体的にこの中のエッセンスのどこが使えるかは、やはり情報交換をしながら一緒につくり出していくしかないのかなと。その議論を、そういった統合水管理の先進国間の議論の中に入れていくとかというようなことで、国総研として海外の研究機関との交流等を積極的に進めているところでございますし、さらに今後とも進めていこうと思っております。

(主査) ありがとうございます。いかがでしょうか。

(委員)  例えば洪水でもいいんですけれども、幅を持たせるという議論ですよね。その土砂災害の委員会とかに出ると、自治体の町長さんなんかは、もうそういう難しいことは言わんでくれと言われます。つまりあるラインまで来たらすぐ出せるという、そういう形のわかりやすいものをつくってくれというのが本音でした。例えば、この8ページにあるようなもので、幅を持たせて洪水予測をするということは、その責任者がその幅の中で決断しなくちゃいけなくなってきますよね。

さっきのダムの放流についても、マニュアルどおりやっていれば、逆に言うと、マニュアルどおりやりましたということで責任から逃れられるんですよね。ある程度予測が正しいとすると、フラットにそのまま流してしまうのか、大量に流さずに、抑えたまま流すのかといったような。そこでもまた、今度は逆にそこで発生するリスクが当然伴うということで、何ていうんですかね、うまく言えないんですけれども、養老孟司さんがあるときに、余り基準をつくるということは、無責任時代をつくっているというような表現をなさっていて、それはつまり、そのとおりやればいいんだという理屈になってしまって、よくないと。逆にこういう形で、人の命とかいろんなものが関連するときに、ある幅を持たせるということは、その責任者には物すごいプレッシャーになるなという。現実的にこういうのってどちらの方向に向かうのかなというのをお伺いしたい。

(国総研) 洪水の議論から言いますと、実は我々が出した予報に対して、洪水予測水位に対して、市町村長さんが躊躇して避難指示とか避難警報が遅れたという、避難勧告が遅れたという方が圧倒的に数が多いんですよ。だから、僕らから見ると、信じてやってくださいと。それも早目早目にやっていますからと。ただ、その持つ意味を、説明を十分にし切れていないかもしれない、我々の側が市町村長さんに対してですね。それで、この研究においては、我々の持つ予測水位というのは、この幅の中にあるんですと。今、ちょっとその幅が広いからあれなんですが、信頼性はこういうふうに大分高まってきていますと。ですから、我々の出した水位を信じて、避難指示とか避難勧告を出してくださいというふうに、こういうものは使っていきたい。説明のために使っていきたいと。ですから、市町村長さんに幅を示したのでは、これは混乱のもとですから、幅は示しません。説明のために信頼性を高めるという意味で使いたいと。

それから、ダムはおっしゃるとおり、今かなりコンピュータが入って、ダム操作は複雑にはなっているんですが、現場ではもうそんな複雑な操作はできないと。10人いたら、一人一人がやることは決まっていて、もう決められたとおりのルールをやっていくと。そうしないと、事故の問題もありますけれども、実際の操作は、ルール以外のゲート操作はできないということになっておるので。ですから、そういった意味では、この研究成果を実証的に幾つか積み重ねて、ルールを変えていくということで対応するしかないと。要するに決め打ちでいこうというふうに思っております。また、そうしないと、現場の判断に幅を持たせたら、これは混乱のもとだと思っておりますので。

(委員) 関連して、質問じゃないんですけれども、こういう、予測情報をもとに水管理をやっていくときのポリシーですとか、目的関数とか、基準とか、そういったものをどういうふうに確立していくか、現場の、情報を受け取る側の、あるいは実際に操作の影響を受ける側の立場に立って、それと管理する側の立場ももちろんありますけれども、それをどういうふうにつくっていくかというのは、次のステップだろうと思っております。

(主査) ありがとうございました。

ほかにございますか。もし、ないようでしたら、評価シートへの記入及び回収をお願いしたいと思います。

非常に高い評価でございまして、妥当性については、全員が一致して適切であったということだと思います。目的、目標を適切にうまく説明されて、それについて成果もきちんと明確に説明されているし、実際そのとおりだと思いますので、そういうことだと思います。

そういうことで、余りコメントすべきものはないと思いますけれども、やはり実用の問題とか、いろんなご注意をいただきましたので、その辺も含めてコメントを作成したいと思います。

ありがとうございました。

それでは、次は6番でございますけれども、「社会資本整備における合意形成手法の高度化に関する研究」でございます。

総合技術政策研究センターの○○研究官よりご説明をお願いしたいと思います。

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事後評価E社会資本整備における合意形成手法の高度化に関する研究

(国総研) それでは、「社会資本整備における合意形成手法の高度化に関する研究」に関して説明させていただきます。

 これはここに書いてございますように、8研究部3センターで、平成16年度、17年度2カ年、総研究費はほかのプロジェクトに比べて大分少ないんですけれども、1,600万でございました。

 プロジェクトの背景でございますけれども、各事業分野、各事業段階において、住民参加にかかわる知識、経験、技術が個々人、チームに依存しておりまして、担当者は既存知見やアクセスが限られ、実践における苦労が大きいと。それと、現場担当者がガイドラインやハンドブックの示す合意形成技術等だけではなくて、より実践に資する有益な技術等も欲しがっているということが背景でございます。

 目的といたしましては、行政担当者が状況に応じて適切な住民参加プロセスの検討ができるよう、各事業分野、各事業段階における合意形成プロセス、コミュニケーション手法に関する既往知見、事例の体系的な整理、実践に資する技術等の抽出整理及びデータベースシステムの構築を行っております。ちょうど、真ん中に書いてございますけれども、体系化された知識の共有システム、これをつくることを目的にいたしまして、今後、合意形成の実践とか、新たな創意工夫とか出てきますので、各個々人が持っていた暗黙知から形式知への変換をしまして、このシステムを活用して、合意形成の円滑化、満足度の向上を図ることを目的としております。

 プロジェクト研究の活動内容でございますけれども、平成15年は準備期間といたしまして、事例の収集とか、あとアメリカ、フランスなどの社会背景と合意形成制度の比較調査を行っております。アメリカとかフランスのものでそのまま使えるものは、使いたいんですが、やっぱり我が国独自の合意形成手法があるということで、あくまでもこれは参考にしております。

 16年度は、まずどんなことを皆さんやっているかというのがよくわかりませんでしたので、先ほどの8研究部3センターの室長、主任研究官等の方に集まっていただきまして意見交換会、それと実際にNPOで活動をされている方々の講演会を開いて、支援方法の検討と事例の収集を行いました。

 2年目の7月まで、さらに意見交換会を行いまして、システムの構築方法の検討を行いました。その後システムを構築いたしました。冬に事例調査、これは13の道路と四つの河川、一つの空港と一つの港湾ですけれども、実際に事務所に行きまして、事務所の担当者にヒアリングを行いました。

 そこで得られた知見ですけれども、これは当たり前といえば当たり前なんですけれども、受益者と受任者の関係と事業の影響範囲が同じグループの事業は、例えば港湾整備事業と高速自動車国道と違うんですけれども、受益者と受任者の乖離とかは似ておりますので、利害関係者の特定方法とか、コミュニケーション手法の適用方法など、合計形成手法を参考にできるということがわかったということでございます。この切り口をもとにシステムをつくってまいりました。

 このシステムの特徴でございますけれども、まず第1は、初めて現場に出た課長さんとか係長さんが合意形成に関してはどういうことをしたらいいかということで、実践に最低限必要な知識、技術を習得するテキストとして活用できること。次に、ある程度合意形成にかかわった方が、いろんな悩みとかございますけれども、それに関する資料等も提供できること。三つ目ですけれども、直面した課題や工夫について検索機能を加えておりまして、担当者自身が経験等を入力できる機能がありまして、担当者間の情報交換の場となりますけれども、これは将来目標でございます。このシステムは、あくまでもトラブル解決ではなくて、トラブルの予防を目的としております。

利用法ですが、このシステムは六つのコンテンツに分かれておりまして、一番最初の重要事項、これは先ほど申しました初心者向けに関することでございまして、あとよくある質問とか、よくある「べからず集」みたいなものですけれども、それと知見検索、事例検索、知見とか事例の登録とかができます。用語集、このあたりはある程度経験を持った者用のシステムになっております。

あと時間があれば、ちょっとお見せいたしますけれども、一番最初にこういうページがあらわれます。左の方に、はじめにとか、心構え・予備知識、重要事項、よくある質問、事例検索、知見検索等ができるようになっております。

それで、心構え・予備知識でございますけれども、これは合意形成業務にかかわる者としての心構え等を紹介しています。聴く技術としてはどんなことがあるかとか、参加の場における参加者の役割とか、ファシリテーターについて等を紹介しております。

それと、ここをこれからはもっと充実していかないといけないと思っておりますけれども、よくある質問、利用方法でございますけれども、今のところ40のQ&Aで紹介しております。先ほど申しました心構え・予備知識に関する質問とか、コミュニケーションの進め方に関する質問等々でございます。

先ほど申しました19の事例ですけれども、これを事例カルテという形で載せております。先進事例、どういうことを苦労されたかとか、そういうのがわかるようなことになっております。これが事例カルテの中身でございますけれども、第三者委員会を設けて、計画検討プロセスで何をやったかを、PIへのツールとしては何を使ったかとか、そういうのがわかるようになっております。

ここが研究のみそでございますけれども、担当者の直面した課題、それに対する工夫などを書いております。これをこれからますます充実させていきたいと思っております。

例えば知見検索ではパンフレットの配布方法とか設置場所の設定も、ただ単に置いてはよくないよということで、例えば横浜環状北西線では、人の集まるところでオープンハウスを実施したり、ショッピングセンターとかパーキングエリア、駅の改札口に置いたとか、そういう事例が載っております。

これからの課題なんですけれども、知見・事例登録―利用イメージでございます。これはこれから現場事務所に使っていただいて、どんどん知見とか事例を登録していただきたいと思っております。登録ページから建設マネジメント技術研究室のホームページに入ることができるようになっております。

このシステムを、上半期までにできればイントラネット上で公開して、いろいろ情報を集めたいと思っております。

それでせっかくですので、システムをちょっと見ていただきたいと思います。

(国総研) こちらの方が知識共有システムの画面イメージとなっております。先ほど○○の方からコンテンツの説明がありましたが、それに加えまして若干の補足ですが、こちらの方にありますような各事務所等で説明会、ワークショップ等が実施されて場合には新着情報として、このような形で情報収集しまして、メーリングリスト等で発信するような形をとっております。

中身につきましては、例えば、心構え・予備知識等ですと、このような形で中身が書き込んであります。ちょっと飛ばしまして、よくある質問等では、このような、例えば住民の要求をどこまで受け入れればよいかといった質問に対しましては、一般的ではありますが、このような形で、まず住民の真意を把握しましょう、制約条件を明確にしましょう、情報は包み隠さず公開しましょうといった一般論でもあるんですが、最低限習得しておかなければいけないことというのを明記してあります。

こちらの方は事例一覧となっていまして、先ほどの担当者の工夫等が載せてあるページとなっております。事務所へのリンクは、リンクももちろんなんですが、カルテのところに来ますと、このような形で見ることができます。

(国総研) 我々の評価でございますけれども、状況対応型の合意形成プロセスの提案、コミュニケーション技術の向上、合意形成に関する知識共有システムの構築、これはおおむね達成できたかなと。もう少し時間があれば十分達成できたというところまでいけたと思ったんですが、ちょっとまだ途中段階でございますので、まあまあできたかなというのが判断でございます。

(主査) ありがとうございました。この課題は○○先生にお願いしております。

(委員) それではコメントいたします。まず研究の実施方法、体制ですけれども、多くの研究部、センターの参加を得て、あとポイントとしては事務所の協力を得てケースを積み上げたというところに特徴があるかと思います。

研究の中身、目標の達成度ですけれども、合意形成そのものを研究対象にしているという点は非常にユニークかなと思います。今日のいろいろな研究の中でも、水の健全性に関してとか、いろいろなテーマごとに合意形成の検討はありましたけれども、これは合意形成の視点でいろんな事業を横断的に見ようということで、研究の新規性も高い。こういうデータベースが役に立つかもしれないというようなことをちょっと感じさせる研究になっているのかなと思います。○○さんも強調していたように、研究費の割に、それなりの成果が得られたかなという気もしております。

知識の共有システムは二つの部分からなっておりまして、初心者向けというのと、それから、上級者ないしは現場の担当者向けという部分でしょうか。初級者向けの方は、基本的なノウハウを勉強する部分ということで構築も簡単だっただろうし、それは一応最低限の知識として勉強してもらう役に立つ仕組みかなと思います。しかし、上級者向けの方は、やはり上級者の人に満足してもらう仕組みをつくる必要なわけで、これは結構大変なことです。今段階で20ケースの事例カルテを見て、これで本当に実践的に役に立つというのは、まだちょっと難しいかなという気はしないでもありません。やっぱり事例がもっと積み上がらないと、なかなか現場の方には役に立たないかもしれないかなというふうに思います。

この点は、今後の研究の展開といいますか、このシステムを育てるということと関係します。育てていきたいというようなお話も今あったかと思いますけれども、どういうふうにこれが自己増殖的に事例がふえていくのか、考えることが必要です。。事務所の人が喜んで進んでこの仕組みにアクセスして、そこに自分が書き込みをして、それから、その書き込みから学んでいくという、そういううまい循環みたいなものが、こういうシステムで起きるのか起きないのか、それは本当にクエスチョンですね。そういうふうに持っていってほしいなと思いますね。

一つのキーワードは、技術者の、ちょっと言うのは恥ずかしいですけれども、倫理と思います。技術者だったらば、お互いに仲間としてこういうふうなことを考えてもおもしろいんじゃないだろうかみたいな、それぞれの立場とか、役職関係なしに、みんなが書き込めるような形にならないと、事例の評価に活かすとか、サジェスチョンを得るというのは難しいかなと思うんですね。国としての方針とか、事務所としての方針が決まっている中で、すなわち事務所はこういうのをつくろうとしているとかいう公式見解が決まっているときに、それは私はどうかと思うというのは書けないですよね。でも、そういう自由に書けたらおもしろいかもしれない、化けるかもしれない。そのようなことがこういうイントラネットの中で果たして実現できるのか。ひょっとしたら外に、外というか、むしろ学会とか、そういうところになじむ話なのかもしれないし、だからこれをどういうふうに守り育てていくのかの方針を、これからまた考えていただきたいなというふうに思うところです。以上です。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございます。○○先生も、短期間で多数の部局が関与しているんだけれども、知識共有システムの試作版ができていることは高く評価します、というコメントです。しかし、このシステムが本当にどれだけ有効であったのかということについては、どうなのかなということですので、その辺について、もし何かございましたら、お願いをしたいと。今の○○先生のコメントも踏まえてですけれども、よろしくお願いします。

(国総研) 先生方のおっしゃるとおりでございまして、まだこれできたばっかりで、ヒヨコというか、卵から羽化した段階でございますので、これをどうやって育てていくかというのが、これから我々の課題だと思っています。

このシステムができたというのは、まだ事務所には、そんなに知られておりませんので、我々の方から出向いていって、こういうシステムがありますけれども、いかがでしょうかというPRを、これからどんどん展開していきたいなと思っております。

それと、良い事例、例えば○○先生がやられた北海道のシーニックバイウエイのような、ああいう非常によかった事例、ベストプラクティスを集めて、ここではこういうことでうまくやりましたよということを紹介してあげると、うちでもこんなことをやっているとよと書き込んでいただけるかなと思っておりますので、これから地方へ行って、事例を集めて、これを何とか育てたいなと思っております。

(委員) 教えていただきたいんですけれども、利害が対立する者同士の合意形成の仕方がいろいろとあると思うんですね。ここは分野別に事例を分類しておられますけれども、例えば不利益を受けそうな人に補償して合意形成が成り立つ場合とか、補償しないで何とかうまく成り立つ場合とかはあるでしょうし、事業者と事業者とか、事業者と住民とか、住民と住民とか、そういったケースもあるでしょうし。

それから地域によって、同じ事業でも地域によって、東北地方だったらこうだけれども、近畿地方だったらこうだとか、それから時代性もあると思うんですね。昔は、特に金を払わなくてもよかったけれども、今はもう金がないと絶対だめだとか、そういういろいろな類型化ができると思うんですけれども、そういったことについて何かこの研究で、そういった成果といいますか、利害が対立する者同士の合意形成について、何かこういうことがわかったとか、あるいはこういう方向性が見えたとか、何かありましたら教えていただきたいと思います。

(国総研) まだ19事例しかございませんので、寶先生がおっしゃったような事例があればいいんですが、そこまで細かいところまではいっていませんが。これを集め出したのが、ことしの1月ぐらいからですので、これからもう少し細かく検討させていただければと思います。まだ、これは事務所で、まあまあうまいこといった事例が、ほとんどでございます。割にうまいこといったよというのを載せているのが、実情です。事務所でこういう失敗したよというのを出していただければ良いのですが、それはなかなか出していただけないのが現状です。それはまだちょっと我々との信頼関係が足りないというのもあると思うのですけれども。

(委員) まだこれから事例をいろいろ調べられると、さまざまな議論が出ると思うんですが、事業の種類とか、それから抱えている条件によって、この資料の中でも、同じ方法でずっとやられるわけでないという認識があるのは、そのとおりだと思うんですけれども、やはり一番のキーポイントは、住民の方というのは大半が変わらないわけですよね。ところが、合意を必要とする社会資本整備をする方は、例えば数年で変わるとか、それだけに引き継ぎのために知識なり議論の経緯をちゃんと伝えなきゃいけないということで、こういうことをお考えになったと思うんですが。やはりプロジェクトなり、あるいはプロジェクトの起案の段階もそうですけれども、どういう情報の形態にすれば、住民の方の納得する知識、要するに持っている知識との整合性が図れるかというところが非常に重要で、特に洪水とか厄介な問題がありますと、過去の履歴というのは、かなり地元の方の方が詳しいですね。被害者の方も多いわけですから。そういう過去の履歴情報を合意形成でどう扱っていくかというところも、一つ認識すべきポイントなんではないかなという気はいたしました。

(国総研) ありがとうございました。先生がおっしゃったとおりで、住民はかわらないんですけれども、担当者は通常2、3年でかわると。それではいけないんだということで、このシステムつくり出したんですけれども、今の先生のご指摘等をこれからそのシステムに反映させていただきたいと思っております。

(主査) ほかにいかがですか。

 私も全く同じ感想を持っていまして、うまくいっている事例というふうにおっしゃったんですけれども、うまくいっている事例の中でも、やっぱりいろいろなドラマがあるわけで、山あり谷ありなわけですね。そういう中で、やっぱりもうちょっと細かい情報収集が要るのかなというふうに思いますし、そういう意味では、人のデータベースというんですかね、外環をずっとやっているんですけれども、アセスの準備書は全然問題なく通過しそうで、全体としては都決の変更決定もスムーズになりそうで、非常に成功したと思うんですけれども、やっぱりいろんな、一触即発の危機もあったわけですよね。そういうこととか、所長さんがもう今4人目かな、僕つき合いだしてから。そういうことで、やっぱり本当の皮膚感覚、肉声ってなかなか伝わらないと思いますので、イントラネットということで、その辺大丈夫だと思いますので、人のデータベースとか、もうちょっと中での、山とか谷のそういうこともやっていくと、さらによくなっていくのかなというふうなことで感想を持ちました。

よろしいですか。何か疲れてきたみたいで、どんどん時間が短くなっているんですけれども、どうぞ。

(委員) 私が関係している事例ですが、排砂を計画して川に砂を流すという行為を行うとき,大賛成で地元も協力しているところと、絶対だめというところがあります.同じようなことをするにしても、反応が地域によって違うという状況を見ると、多分、強く反対されたところは,合意形成のプロセスがよくなかったからだと思います。この研究で、誤解や議論以前の拒絶なしに合意形成をつくるための手法が明らかになればいいのでは,と思います.

(主査) そういう意味では、多分プロジェクトありきで、ようやっとスタートするんではなくて、ふだんからの課題認識の共有とか、先ほどからありました化学物質リスクの総合管理とか水管理とか、いろんなところでそういう技術をしようと、そういうことを試行しようということですので、何かプロジェクトベースじゃないような、そういうところを着実にやっているところ、地道にやっているところなんかも、多分必要なんじゃないかなと思いますので、ぜひ、これからの発展形にそういうこともお考えいただければと思いました。

それでは、議論も盛んにされたようですので、評価シートの記入をお願いしたいと思いますが。

ありがとうございます。妥当性については、適切であったというのが大勢でございますし、達成度については、おおむね達成ということでございました。中でもありましたけれども、やっぱりこれからに期待したいと。実際に使ってみて、本当に自己増殖ができるような、あるいはいろんなサジェスチョンをいただきましたけれども、そういうことを踏まえて、さらに発展をすることを期待をするような、そういうコメントをつけて評価書を作成したいと思います。

そういうことでよろしゅうございますね。どうもありがとうございました。

事後評価の最後でございますが、あと、ちょっとで休憩に入りますので、すみませんけれども、頑張っていきましょう。

「土壌・地下水汚染が水域に及ぼす影響に関する研究」ということで、環境研究部の○○部長よりご報告をお願いします。

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事後評価F土壌・地下水汚染が水域に及ぼす影響に関する研究

(国総研) 「土壌地下水汚染が水域に及ぼす影響に関する研究」ということで、先ほど下水道部長の方から水域における化学物質リスクの総合管理という報告がありましたけれども、これはそれを受けましたといいますか、実際に、河川管理者がどういうふうにしたらいいのかと。それも地下水汚染で出てくるものについて考えていこうというものです。

先ほど、埋め立ての話ですとか不法投棄の話が出ていましたけれども、土壌汚染発覚時の原因を調べますと、突発事故ですとかミスで起こるものが5割、それから埋め立て、不法投棄で起こるものが1割、不明その他が4割で、圧倒的に突発事故やミスによる事故が多いので、そういう事故が発生したときに地下水を通じて公共用水域に出てくるものに対してどうしようかということを技術的に考えていこうというのが趣旨でございます。

この研究、当初は1億円程度で3年でやる予定だったんですが、事情がありまして、3,800万円の2年ということになりました。詳細につきましては後ほど説明させていただきますが、恐縮ですが、評価につきましては変更後の計画について評価をお願いしたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

まず、事故の様子ですけれども、化学物質についてはどんどんふえてきています。そのうち土壌汚染が起こったときに、影響が起こるのは地下水・伏流水が圧倒的に多くて、公共用水には1.6%出てきています。水を通じて出てくる影響が大きい。中身につきましては、重金属とか揮発性有機化合物というようなものがあります。

先ほどの下水道部長の話にもありましたけれども、PRTRというのができまして、これは多摩川の流域ですけれども、多摩川にもこれだけたくさんの化学物質を持っている事業所があるということになります。こういう事故の発生状況とこれまでの情報を組み合わせて、技術的な知見を踏まえて河川管理者としてどういうふうに管理していけばいいかというようなことを検討していこうということでございます。

先ほどの話にもございましたけれども、これは総合科学技術会議の重点分野の化学物質リスク総合管理技術研究イニシャティブに入っておりまして各省と連携をしたり、各機関と連携、情報交換を進めております。この研究につきましては、リスク評価、リスク管理ということで分担をしております。

先ほど変更がありましたという話をしましたけれども、当初3年で1億円程度で実施する予定でしたんですが、17年度要求のときに、総合科学技術会議から意見が出まして、予算規模を考えると研究内容を絞り込んだらいいんではないか。また、指標的な物質ですとか、汚染が速やかに影響を受ける扇状地河川というようなところに焦点を絞ったらどうかというようなことがございました。そういうことで、予算も非常に減りましたので、2年間でこの左側の赤のところ、特に物質の挙動ですとか、メカニズムの解明というようなところは今回は見送って、具体的な汚染物質がどう流れるのかというマップを作成して、直接河川管理に役立てるようなものを目指そうということにしております。

先ほどもございましたけれども、対象を絞ろうということで、いろいろデータが豊富ですので、多摩川の流域で扇状地形をしているところの羽村堰下流のところを対象としております。

モデルにつきましては、3次元で地下水流動、地表水流動を統一的に扱えるモデル、また物質移動についても、多相流れ、密度流、移流・分散を表現できるということで、GETFLOWSというのを使うことにいたしました。詳細につきましては、省略をさせていただきます。

次に、物質も絞り込むということですので、どういうふうに絞り込んだかという考え方をまとめました。まず、水域を出たときに影響のある物質ということで、人の健康の保護に関する環境基準、地下水の水質汚濁の基準、それから土壌汚染対策法における基準というようなことから物質を選定をいたしました。中でも、先ほども申し上げましたように、突発的な汚染というのを想定していますので、農薬とかというのは除きまして、VOC、揮発性有機化合物ですとか、重金属というものから選ぶことにいたしました。揮発性有機化合物につきましては、水より軽いものと重いもので、地下水中で挙動が大幅に異なりますので二つに分け、重金属と合わせた三つのジャンルの中で、それぞれ過去の事故で最も事例が多いものということで、重金属からはヒ素、水より軽い有機化合物についてはベンゼン、重いものについてはトリクロロエチレンを選んでおります。

これを先ほどのモデルに基づきまして計算をしております。これは後ほど説明いたしますが、これは各点からどういうふうにその物質が地下水中で流れていくかというのを流線に沿ってずっと計算をしておりまして、それで何日たったら川に到達するかというのを計算しております。それに基づきまして、逆に川に出てくるまでには何日かかるか、何百日かかるかというのをコンターで引く、そういう作業を行っております。

これがヒ素の図でありまして、次がトリクロロエチレンとベンゼンになります。やはり有機物の方が流れにくいということ。さらに、ベンゼンの方が水に溶けにくいという性質がありますので、ベンゼンの方が流れは非常に遅いということがわかります。

これはこういう情報を地図上に重ね合わせができるように、これが地形図、次が地質図、今の汚染マップ、さらにこれにPRTRの地点を落とせるような、こういうシステムにして落としております。

こういうようなモデルをつくりまして、では、これをどういうふうに実管理に生かしていくかということを考えました。まず、汚染物質の漏洩が発生した場合、漏洩してから河川に到達するまでの時間t?、あと漏出してから許容できる時間がもしあればaとしていますが、こういう出てくるまでの時間というのが一つあります。もう一本下に、事後対策、出てからわかって調査して、対処するまでの時間というのが当然あります。これが短いと、出てから、何か起こってからでも間に合うわけですけれども、これが長くかかると、漏洩が起こってからでは間に合わないということになります。

これを先ほどのマップと組み合わせますと、例えば、漏洩から発見して除去・浄化するまで75日というケースを考えます。75日よりもはるか遠い場合は、起こってから何かすれば間に合う。一方、65日よりはるかに短い場合については、起こってからでは遅いので、例えば立地規制を行うとか、漏洩をしないように管理の対策の強化等が必要になります。調査に要する時間と対処に要する時間、65プラス漏洩から発見までの時間のきわどいところにつきましては、例えば10日という発見までの時間は頻繁に見回りをするとかということをすれば、これが短くなる。そういうぎりぎりのところは、そういう対応もできるんではないかというようなことに使っていけるというふうに考えています。

逆に河川でそういう物質が発見された場合、この下のバツのところで漏洩が発見された場合に、これはいつ、どこの辺で出てきたかというのを逆算して検討はできる。地下水の流動方向をさかのぼっていって、いつごろ出てきたとなったら、この方向から出てくるというようなことがわかるようになります。もし、気がついていれば、そこでもう対策はとられているわけですけれども、気がつかれていない場合には、こういうところが可能性があるんではないかというふうに逆にさかのぼっていけるということになります。

以上、まとめますと、地下水中の化学物質の挙動を計算するモデルを作成しました。それから事前の予防的段階、事故発生段階のそれぞれの管理方法の考え方を提案して、マップを作成し、その活用方法を提案いたしました。

こういうマップを使って、これから河川管理者としての対策に役立てていきたい。

一方、私どもとしても、河川管理者や水質汚濁対策連絡協議会、それから自治体環境部局への紹介をしていきたいというふうに考えております。以上でございます。

〈課題説明終了〉

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(主査) どうもありがとうございました。これについては、○○先生にお願いしております。

(委員) 先ほどの4番目かにあった、化学物質の流出の問題とちょうどつながるような形で、○○先生も質問されていた、どういう形で拡散していくかというモデルの議論がなされています。

同様に重要な課題だと思いますし、PRTR情報を利用しながら、特に今回については、一応そのモデルを、GETFLOWSというんですか、そのモデルを利用してある程度シミュレートできるということまで突っ込んでいます。あとは時間の概念を非常に強く入れて、漏洩から発見までにかかる時間と調査、もしくは対処に関する時間ということで、それをそれぞれの手法によって、どのぐらい縮められるか、それによってさらに安全側に対処できるといったような、そういった考え方が入れられている点で評価できると思います。

気になった点としては、モデル自体のバリデーションといいますか、モデル自体はある程度整合性のある形で結果を導いているとは思うんですけれども、それが実際の現象とどのぐらい合うのかといったような問題については、今のところ触れられていなかったと思いました。

それからもう一つ、地下水の問題と河川に流出する問題を、総合的と最初におっしゃっています。土壌地下水の問題と河川の問題。つまりこのシミュレーションで絵が出ていたものは、主に氾濫原を中心として、河川管理区域内なのかな、ちょっとそれよりも大きいのかなという範囲でした。その範囲もよくわからなかったんですけれども、実際にPRTRで落としていった点は、むしろ、さらにそれから離れてあって、そこからの漏洩という形で考えると、地下水汚染の観点からどういうふうにその区域を考えておられるのでしょうか。

さらに地下水の汚染だけでも、問題の場所というのはきっとあるだろうなという感じはするので、河川に流出するまでという形で区切っていると、総合的な議論はできないのではないかと思いました。土壌汚染とか地下水汚染が発生した段階というのを、この議論の中にどうやって組み込んでいくのかというのが少しわかりませんでした。

最終的には、事前評価のときに、土地利用規制へのフィードバックという意見が出ていたらしいのですが。それについても重要な課題だと思うので、将来的には、いわゆる河川に入ってしまうと、非常に大きな問題を起こすという場所のでは、土地利用規制みたいな社会制度にどう反映していくかという議論が必要なのかなと思いました。

以上です。

(主査) ありがとうございます。

○○先生からは、成果の公表がない点が問題であるというご意見とか、やっぱり4番との関係についてどうなのかということがありました。ただし、それは連携したことによって、効率よく成果が出た点もあるねということですねということでございました。

何かレスポンスがありましたら、お願いしたいと思います。

(国総研) ありがとうございました。

○○先生のお話の中に、モデルのバリデーションというのがありましたけれども、実はほとんどやっていません。というのは、正直言って、お金が非常に少なくなってしまいましたので、本当は現地調査とかやって、それを評価をしながらやる予定だったんですけれども、そこまでちょっと手が回らなくなってしまいました。今後、何らかの形でそれを考えていきたいというふうに思っております。

それから河川の範囲ですけれども、河川の範囲は大体真っ赤なところぐらいが河川になります。ですから、相当河川外のところも入っております。そういう中で堤内地側といいますか、町側のところにいろいろ提案できると思っております。

それから、地下水のみの問題ということですが、もちろん非常に重要なんですが、とりあえず河川管理者という立場でやっておりますので、地下水の対策は非常に難しいということもあります。今後、考えなければならない課題ですけれども、土地利用規制につきましては、今後、自治体の環境部局とか、そういうところへこういうのをPRしていって、一緒に考えていきたいと思っております。

それから○○先生の、4番のプロジェクトと連携したことで、効率よく成果が出たものと推察されるということをいただいていまして、4番というのはソフト中心に対して、こっちはハードで考えていったということになります。

あと、○○先生の環境省との連携みたいなことがございましたけれども、環境省ももちろんいろいろされていまして、地下水汚染の科学的自然減衰ですとか、微生物浄化によるバイオレメデーションとか、そういうようなことをやられていまして、主に対策が今は中心かなというふうに思っておりますけれども、当然、知見というのは交換していきたいというふうに考えております。

(主査) ありがとうございます。いかがでしょうか。

(委員) さっき4番の課題でも質問したんですけれども、化学物質の流動の過程で化学反応とか沈殿とか、そういったものはどの程度取り入れられているんでしょうか。

(国総研) 河川環境室長の○○でございます。

モデル上で吸着とそれから減衰というパラメーターは入れておりますが、個々の現象について1対1で対応させた検討、再現までは至っておりません。ただ、そういうものを反映できるパラメーターが入っているということでございます。

(主査) よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

 お話を伺っていて、漏出、遺漏地点の発見ができる、汚染源の特定が容易となるということで、茨城に住んでおりますと、神栖のヒ素というのがあるんですけれども、あれ随分長くかかって、なかなかわからなかったんですけれども、このモデルをやると、バリデーションは済んでないということなんですけれども、そういう可能性がやっぱり飛躍的に上がるというふうに考えてよろしいんですか。

(国総研) あれは最初は水域で発見されたんですか。

(主査) 井戸水で。

(国総研) 井戸水、地下水ということですか。ちょっと地下水ですと、あるというのはわかりますけれども、どこからどういうふうに流れてきているという情報ではないんですので、ちょっとこのモデルでは。

(主査) 難しい。やっぱり水域系に極めて近いような、地下水の流動がある意味で活発なところという、そういうことですか。

(国総研) はい。

(主査) ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。(委員) 研究の中身としては、大変興味深いし、結構だと思っていますが、先ほどから指摘されている精度の問題が重要だと思います。有害物質の拡散について、高精度で予測することが大切だと思います。これからモデルの検証をやられるとは思いますが、その計画についてお聞かせください。

(国総研) 実際、今のところまだ研究計画が立っていないのですが、例えばいろんな物質を、無害な物質もありますから、それをトレーサーとして検証していくとか、やり方はあると思います。

(委員) 地下水の流動調査はいかがですか。

(国総研) 地下水自体は、いろいろあちこちでやられていまして、地下水のモデルの検証というのは相当なされています。こういう物質になると、もうほとんどないというのが実態です。

(主査) いかがでしょうか。

 ごく簡単な疑問なんですけれども、3枚目のOHPで、PRTRなんですけれども、間にない市町村が多数あるんですけれども、本当にないんですか。

(国総研) PRTRというのは、実は21人以上の従業員がいるところに限定されています。ですから、この山の中はなくて、一番上にあるのは何かなと思って見たら、実はあそこは塩山とか勝沼とか、あの辺、多摩川流域じゃないところ、市町村で区切っていますので、あそこは合併して甲州市になったものですから、あんな図になります。山の中は登録されていないということです。

(主査) どうぞ。

(委員) もちろん河川環境研究室なので、河川を重視してやっていくというのはよくわかるんですけれども、例えば井戸水を使っているところとか、海外なんか地下水汚染に対してものすごくセンシティブというか、気をつけているような気がします。その部分については、この総合的な管理の中の他省庁との連携の中で、いわゆるPRTR、ここで汚染源が発生した場合、まず地下水が汚染されるわけですよね。それが住民の飲み水として使われているケースだってないとは言えませんね。もしくはほかの利用として使われているとか。その辺のリスク管理って、どういう形で考えておられますか。

(国総研) 確かに外国なんかでは飲料水はほとんど井戸水ですから、ドイツでは50日以内に流れてくるところには、そういうものは置いてはいけないとか、アメリカなんかは250日以内に流れてくる範囲までちゃんと管理しなければいけないとかというのをきちっと決めているんですけれども、日本は地下水に今はほとんど飲料水を頼っていませんので、そこまで厳しく、今のところなっていません。そういうことも含めて、環境省ですね、直接管理するのは、そういうところとまた情報交換しながら進めていきたいと思います。

(委員) そういう問題が起こったときは、基本的に環境省が対応するんですか。

(国総研) 環境省と自治体の環境部局ですね。

(主査) よろしいですか。

(なし)

(主査) じゃあ、議論も尽きたようでございますので、評価シートの記入をお願いしたいと思います。

 せっかくいい研究成果を出されているんですから、レポートだけじゃなくて、ほかのところにいっぱい出されたらいいと思いますが、いかがでしょうか。

(国総研) 大変申し訳ないんですが、3年を2年に縮めて非常にばたばたとやってきたものですから、発表する機会がなかったんですが、これからどんどん発表していきたいと思います。

(主査) ありがとうございます。

妥当性については、おおむね適切であったという評価だと思います。達成度については、おおむね目標を達成できたということで、十分及第点という評価だと思います。

やはり、これもこれからこういうふうにしてほしいとか、ああいうふうにしてほしいとかという要望が多かったように思います。それは立派な成果を上げられているので、さらにその上にということのあらわれだと思いますので、いろいろ書いていただいていると思いますが、そういうことを踏まえて評価シートを作成したいと思います。

どうもありがとうございました。

これで七つありました事後評価すべて終了いたしました。どうもありがとうございました。

まとめについては、それぞれの課題の最後にまとめさせていただいたとおりでございます。そのように評価シートを私が責任持って作成をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ただ、冒頭のあいさつで、厳しいけれども愛情のあるということで、本当にこうしたらいいんじゃないの、さらにこういう方向での発展を望むという、非常に前向きなサジェスチョンを多数いただけたんじゃないのかなと思いますので、どうもありがとうございましたということで、事後評価の部分は締めくくりたいと思います。

あと、これから休憩ですが、これは25分とれるんですかね。15分でいいのかな、これも。どっちがいいですか。早い方がいい。じゃあ、休憩15分ということにしていただいて、開始は15時5分開始ということにしたいと思います。

では、そういうことでよろしくお願いいたします。

(休憩)

(主査) それでは、きょうの議題の3番目ですけれども、平成19年の開始予定プロジェクト研究及び予算要求上、評価が必要な研究課題というのがあるんだそうです。それの事前評価を行いたいと思います。

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事前評価@避難意思決定要因に基づく海岸災害からの避難促進に関する研究

 まず最初の課題ですけれども、「避難意思決定要因に基づく海岸災害からの避難促進に関する研究」ということで、海岸研究室の○○室長からご説明をお願いしたいと思います。

(国総研) ○○でございます。

 昨年、三陸で震度5の地震が起きました。人々はこういった情報を得るべく、テレビ、ラジオをつけるところでございますけれども、津波の恐れがありますので注意してくださいと。12分後に津波の恐れはありません、みんなほっとしたわけでありますけれども、実は、この12分間に津波が来ていたら大きな災害となっていたところであります。正解は、海で地震があったらすぐ逃げろであります。人はどうやったら適切に避難するのだろうというのが問題意識であります。

 研究開発の必要性は言うまでもなく、これから大きな高潮でございますとか、津波、こういったようなものが発生予想されております。台風が接近したときに、津波警報が各地出るとか、津波警報が発令されたときに、避難する方々と避難しない方々がおられます。こういったようなことは、海岸災害に対する国民の安全・安心のために、正常性のバイアス、こういったような壁を乗り越える方策が必要かつ重要でございます。住民が避難するか、しないか。こういった要因は、歴史、文化、社会、意識、こういったようなことを明らかにしまして、これを踏まえた避難行動につながる施策の実施と災害意識の向上・持続が必要なところでございます。

 ちょっと、これ一昨年の刈谷田川の災害で二つの市町村の区別をしたものでございますけれども、見附市、三条市、これ両方とも避難勧告が出ていたところでございますけれども、新潟県の見附市というところでは、役場から区長さんへ電話連絡をされて、近所の人から伝わって、半数以上の方々がこういった伝達を聞いていて、新潟県には避難勧告や近所の人が進めて適切に避難ができた。おかげさまで亡くなった方は1人もいない。

 一方、近所の三条市といったところでは、避難勧告が来ていたにもかかわらず、もうほとんど伝わらない。聞いた人の方が30%、聞かない人が70%といった数字でございます。そういったようなことがあって、逃げた方というのはもう目の前に水がやってきて、やっと逃げようかとこういったようなことを思われて、結果、残念ながら9人の方々が亡くなった、そういったようなことがございます。

 この方々、各機関の研究によりますと、見附市と三条市で、川がはんらんするかもしれないとか。川がはんらんする危険は高いと思っていた人、自宅の被害の不安を感じた人、近所の人から非難を勧められた、防災訓練の参加率、こういったような方々でちょっと意識を比べてみますと、もう圧倒的に見附市の方が全部高いと、こういった状況でございます。これは何でかというと、自主防災組織、1995年に例の阪神震災をきっかけに防災訓練が始まったり、学校の避難訓練、地区福祉会による声かけ運動・避難誘導、大凧合戦といったようなことがずっと続けられていたところでございまして、一方、三条市というのはそういったようなことが余り行われていない。何でそんなことが起こるんだろう、避難を行う上で、何でそんなことが起こるんだろう。見附市では、天明年間、ご存じのとおり水害頻発地帯でございましたので、刈谷田川の堤防、これをつくったときに、その堤防を閉め固めるときに若者を集めて凧合戦といったものが始まったものでございます。そういったようなものが伝承されて、住民の精神に根づいていったんだろうと、それが情報を伝える職員の方々、区長の方々、情報を受ける住民の危険意識、それとか防災訓練の参加率、こういったような形で、その結果に住民の避難向上につながったのではないかと、こういったような仮説を我々つくったところでございます。これがちょっと三条市では一方、そういったようなことがなかなか伝わらなかったのかと。じゃあ、何でこういったような行動につながるんだろう。

 例えば、そういったようなものは、見附市では日ごろから川を見ている、こういった習慣のある方々が多かったんだろう。洪水時の川を見たことがあると、どどっと流れるような川を見たことがあるんだろう。自主防災組織による防災訓練に参加していたんだろう。また、見附市では自主防災運動とか住民間のつながりが強く、世話好きなおじちゃんとかおばちゃんとかがいたんだろう。また、福祉活動なんかが盛んなんだろうと、こういったようなことが容易に想像できるわけでございます。こういったような仮説を検証していくことによって、人はどうやったら逃げるのかといったようなことを検証していきたいというのが研究の内容でございます。

 その手段といたしましては、住民が避難するか。しないかの要因といったようなものを解析しているがために、基本的には住んでいる方々に対してアンケート調査、またヒアリングといったようなものを行う。そのキーワードは、先ほど申しました避難行動・災害経験・意識・属性、地域の歴史・文化・伝承、こういったようなものが一つのキーワードになるんだろうと。そういったようなデータを集めてまいりまして、それを系統化・数量的に分析してやることを主としている。例えば、方法はいろいろございますけれども、数量化理論第U類とか、そういったようなものですとか、そういった集めてきたデータをもとに、本当に避難促進施策の効果を分析してあるんだろうと。

 さらに、ワークショップなんかを行って、ワークショップの前と後では人の意識が変わるか、変わらないか、そういったような話でございますとか、災害の歴史というのは風化しやすいものでございます。例えば施行前後と施行1年後、こういったような比較もだんだんしてやると。そういうことによって非難促進施策の進め方とか、災害意識の持続プロセスの提案を行っていくと。そういったようなものを地方自治体、例えば、高松、倉敷といった災害の起こったところ、和歌山県というようなところとかと一緒に連携して行っていこう。また、我々、土木学会の人間ですけれども、土木だけでなく、災害心理とか社会とかといったようなこととともに、関係する先生方と研究を行っていきたいというものでございます。

 最後になりますけれども、そういったような研究開発は、もう高潮・津波に対して、住民が避難する・しない、こういった要因が明らかにすることができますし、そういったようなものについて、薄れる住民の災害意識を持続する。こういったような災害施策への展開を含めまして、海岸災害からの人的被害の大幅な軽減を目的とするところでございます。

 私どもの方からは以上でございます。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございました。今の研究計画の説明に対して、コメント、ご意見ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

(委員)避難意思が高い人と低い人がいるなかで、避難意識の低い人に対して避難を促進するための方法を考えるということですね。具体的に、どのような方法を考えていますか。

(国総研) 恐らく、アンケートですとかヒアリングとかによって、避難意識の高い方と低い方、両方出てくるかと思います。基本的に低い方に対して、例えばワークショップなどに参加していただく、ないし、逆に行政から低い方にもわかるような説明の仕方をさせていただく、そういったようなことによって避難意識を高めていくと考えております。

(委員)わかりました。自分が避難するときのことを考えると,いろいろな要因があり、その中で避難に結びつく支配的な要因があると思います。そのような意識構造が、ワークショップなどを通して改善されればいいのですが、例えば、被災経験が支配的要因だとすれば、ワークショップをやっても経験を持てるわけではないので、その辺のことをどう解決するのかということも重要だと思います。要因に重みづけをすることも大切かと思います。

(国総研) 例えば、一つの仮説といたしまして、先ほど申しました洪水の現場を見たことがないがために逃げないんだろう、例えばそういったようなことが答えと出れば、私ども、海岸管理者は海岸ごとにITVといってモニターカメラを置いています。例えばそういったようなものをインターネットなりで配信して、今、こんな状態になっているぞ、だから逃げましょうよ、そういったやり方もできるんだろうと、そういったことにも展開することができるかと思っているところであります。

(委員) 要因の重みについてもご検討よろしくお願いします。

(主査) ○○先生からいただいているのは、質問という前提なんですけれども、東南アジアを意識しているでしょうかとか、ワークショップが重要ではないでしょうかとか、そもそもこういう研究を実施することの今どきの意味は何だろうかというようなことで、それについては今ご説明があったのでかなりもう答えていると思うんですけど、さらにありますでしょうか。

(国総研) 一言だけなんですが、東南アジアは余り意識しておりません。まず、日本が先だということは、これは実は避難だけのことを言っていますが、実は避難をきちっとご近所でできるということは復興もきちっとできる、復興力にもつながってくる話だと思うんです。キーワードはご近所の底力といいますか、ソーシャル・キャピタルといいますか、そういったものを醸成していくと。

だから、一番問題は、都会の人たちは非常にそういうつながりが弱いんで、そういう成果は都会で何か起こす。例えば、地域おこしじゃないんですが祭りをつくったり、地域でのいろんな共同での作業といいますか、ものをつくったりというようなことで、地域のつながりをつくっていく中で避難もするし、その後の復興もやると、こういうところまで視野に入れた研究成果になればいいなということを思っております。

(委員) ご存じだと思うんですけれども、木曽三川の下流に輪中地帯というのがあって、そこを対象に、いわゆる水防活動がまちごとにどう違うかという比較研究をされた先生がおられて、それによりますと、比較的いまだに浸水の被害があるところが、水防意識・水防活動が非常に盛んで参加率も高い。ところが、治水施設が充実してくると、だんだん安全だという意識が定着して、参加率が低下しているという状況があるらしいんです。そういう意味では、その防災施設が充実することによる安心感の高まりというのが、逆にまだまだ大丈夫だろうみたいな意識になる可能性はあるのか、ないのか。こういう点で単に危機意識をどう感じるかというだけではなくて、その防災施設の整備・充実ということが、逆効果とは言いませんけれども、安心感を高めていること自体が、さっきちょっとおっしゃった別の言い方になっていると思うんですが、まだまだ大丈夫だろうという意識になりはしないか。そうなってくると行政と住民の方が、こういう避難の問題に対して、どういう同じ危機意識のレベルに達するかという、その連携の持ち方も絡むような気がしますので、そういう点でも研究があればなと思って一言申し上げました。

(委員) 意識が解明できたとして、政策にどうつなげていくのかというところをやっぱり考えなきゃいけないと思うんです。国・地方自治体が義務としてやらなきゃいけない部分というか、そういうところがどういうところにあるのでしょうか。ご近所の底力がないからといって、国がお金を出して祭りやらせるわけにはいかないですよね。そこら辺で、どういうふうな役割分担論につなげていくのか、そういうこともやっぱりこの研究の中で検討してもらえないかなと思います。

(主査) ありがとうございます。ほかにいかがですか。

(委員) たしか去年の課題で、老齢化の問題を新潟か何かの事例でやられていて、ハイテクを使った情報提供みたいな感じで、携帯だったかな。そのときの議論も○○さんがおっしゃったように、基本的に、おばあちゃんがそんなものは見ないんじゃないかという意見が出されて、コミュニティレベルできちっと協力をし合うようなスキームが必要なんじゃないかという話が出ていたと思うんです。

 ということで、老齢化の議論がどうしても必要なのかなという感じがします、この議論についても。避難をどういう形でやっていくかということは、意思もそうなんですけど、意思はあったとしても、なかなかすぐ避難できない方々が多分今後ふえてくると思うので、その点も含めて議論しておく方がいいのかなと思います。

(主査) ありがとうございます。

(委員) 今のご意見に関連するんですけれども、この新潟でも3パターンの、2年前ですね、亡くなった方の15人のうちの12人が高齢者だったわけですけれども、一つは、氾濫の水圧そのもので家が壊されて亡くなった例と、それから、高齢者じゃないんだけれども、避難所へ向かう途中にわざわざ避難したがために、家は壊れなかったから2階ぐらいに上がっていたらよかったのに、わざわざ避難して、そのせいで死んだ方。それと、じわじわっと水が浸水してきたんだけれども、近くにヘルパーなり家族の方がいなくて、寝たきりの老人が1階でおぼれて死んだという事例がありました。したがいまして、単に逃げればいいだけではないということと、それから、逃げる場合でもやっぱり今○○先生がおっしゃったように、高齢者の場合、介助が必要であると。その介助をする人がいないというふうなことがありますので、単に本人だけの意識の問題じゃなくて、その周りの人たちの意識というのも必要ですし、最近、我々の研究所の方で言っているのは、防災と福祉の連動というんですか、福祉にかかわっている人がこういったときにも役に立つはずであるというようなことで、防災と福祉が連動するようなスキームを考えたらどうかというようなことも提案したりしておりますので、参考にしていただければ幸いです。

(主査) ほかにいかがでしょうか。

 私からも情報提供があるんですけれども、ご存じだと思いますけれども、群馬大学の○先生が全く同じ問題意識で、三陸の大津波で甚大な被害をこうむった気仙沼市で非常に大規模な聞き取り調査をされていて、何で逃げなかったかということを詳細に分析されていますよね。あるいは、尾鷲でワークショップをもう数回やられていますので、さっきの連携先に入っていませんけど、もしできるんだったら、一緒にされた方がいいんじゃないかなと思いますので、ご考慮いただければと思います。

(国総研) ○○先生とはご相談をして、一緒にやりましょうというふうになっています。済みません、ここにちょっと名前が抜けているようで、申しわけございません。

(主査) いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

 それでは、だめだというご意見はなかったので、ぜひ、推進していただければと思いますが、もう問題意識には入っていると思いますけど、コミュニティのソーシャル・キャピタルをどう高めるかというところがやっぱりキーだという仮説をお持ちですけれども、より明示的に自治体との連携をどうするかとか、高齢化等の問題をどうするかという大事なポイントもご指摘いただきましたので、ぜひ、研究計画に反映していただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 そういうことで、よろしゅうございますか。

(異議なし)

(主査) では、そのような評価とさせていただきますので、後でまた文書でお渡しできると思います。ありがとうございました。

 それでは、これもすごい早くどんどん進んでいますけど、質の高い議論ができているからいいと思いますけれども、次は2番目でございます。「大規模災害時の交通ネットワーク機能の維持と産業界の事業継続計画との連携に関する研究」ということで、道路研究部の○○道路研究官よりご説明をお願いいたします。

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事前評価A大規模災害時の交通ネットワーク機能の維持と産業界の事業継続計画との連携に関する研究(プロ研)

(国総研) 道路研究官の○○です。よろしくお願いします。

 それでは、「大規模災害時の交通ネットワーク機能の維持と産業界の事業継続計画との連携に関する研究」の、新規プロジェクト研究でございますが、ご説明をさせていただきます。

  関係研究部といたしましては、今のところ道路研究部と、それから、危機管理技術研究センターの2部・センターでございます。

 研究期間は19年度から21年度までの3カ年で、総研究費の予定額といたしましては、約4,500万円でございます。

 次に、本研究の概要をこの1枚物で簡単に最初にご説明をしたいと思います。左上に研究の背景、それから右上に目的、それから、真ん中あたりに期待される研究と成果、最後に、どういうように貢献したいかということが書いてございます。

 まず、研究の背景でございますが、一つは、現在の自然災害、豪雨等もこの前もございまして、また浸水被害等もございましたが、自然災害の頻発でありますとか、それから、大規模地震の発生の切迫性もございます。防災への取り組みは喫緊の課題でございますけれども、阪神・淡路大震災でありますとか中越地震を見ますと、片や企業の操業停止などがあって広域的に影響している。それが地域の雇用へも影響しているというようなこともございまして、そういうことから考えると、特に企業等、産業界における事業継続に関する取り組みというのは非常に重要だろうというような認識が一つ。

 それから、そういう状況のもとに産業界でこれから事業継続計画が、BCPと言われておりますが、作成をされるということになるんですけれども、そのあたりをうまく我々、社会資本整備をしている側としても支援をしたいと。

 それから、片や私どもとしても実際にいろんな災害があるときに、優先的とか、あるいは重点的復旧箇所の明確化等、防災戦略にうまく役立てていきたいというようなことがございます。ひいては、社会全体の災害対応力が向上するということで、もし大規模災害があったとしても、社会的あるいは経済的影響を軽減できるのではないかというように考えているわけでございます。

 期待されるといいますか、期待しておる研究成果でございますけれども、具体的に研究を進める中で、例えば、災害時の道路ネットワークの信頼性評価手法を提案するでありますとか、それから、インフラ、ライフライン等いろいろございますので、それらの影響の波及構造、あるいは、相互依存性のモデルなんかを構築すると。あるいは、BCP策定によって実際にどれぐらいの被害の軽減効果があるのかという分析手法も出してみたいと。それから、BCPを実践するためのマニュアルみたいなものを作成するというようなことを成果で考えております。

 ということでありまして、具体的には、今まで被害軽減策としてハード的にいろいろ実施されておりましたけれども、今回はソフト的に公的機関のBCP、あるいはCOOPといわれる業務継続計画でございますが、そういうものを作成するでありますとか、民間のBCP作成支援を通じて社会全体の災害対応力の向上、ひいては安全・安心な国土・地域社会の構築への貢献をしていきたいというような趣旨でございます。

 これは先ほどの背景の焼き直しでございますが、このように政府全体としても、例えば、内閣府が昨年度出しましたように、民間と市場の力を生かして防災力を高めようということで、事業継続ガイドラインというのを策定して公表いたしますし、我が国土交通省におきましても、ハードだけではなくて、これからソフト対策が必要ということで、安全・安心のためのソフト対策推進大綱というのをこの6月に公表したところでございます。その中にもやはりBCPの作成、あるいは、策定支援というのが大きく盛り込まれているという状況でございます。

 皆さんご承知でしょうが、これは一応BCPとは何かということで、後でごらんいただきたいと思いますけれども、趣旨としては、経営資源とか、リソースを集中するということと、それときちっとした復興へのタイムラインを定めてやろうというようなことが大きなポイントじゃないかというように思っております。

 ちなみに、前刷りでお配りしている資料には、日本政策投資銀行が実施したアンケートの結果で、BCP策定率8%程度というのをお書きしておりますが、別途、これは三菱総研等が実施したアンケート調査でございますけれども、この調査によると4分の1ぐらいの策定率ということですが、母集団が違っておるところもありますので、BCPの策定率は概況からして10%から25%程度ではないかと思われますが、まだまだこれからということでありますし、また、非常に関心の高まっているところであるということでございます。

 次に、先ほど言いましたように、ハード志向ではなくてソフト対策として、これからどういうことをしていかないといけないんだろうということで、枠組みということで整理したものがこれでございます。平常時にどういうことをしていくかというようなことでまとめておりまして、従前の取り組みというのは、広報・連携等、上に書いてございますが、これからやらないといけないだろうということが下に書いてございまして、先ほど来申し上げていますように、BCPの策定とかその策定支援ということであります。具体的にそういうことをやるときに、上の方に各主体が書いてございますが、そのような関係主体をにらみながら、具体的にBCPを策定するときに、どういうことが起こり得るだろうかということを、関係するような項目を抽出した図がこれでございます。

 次に平常時で具体的にそのような項目を抽出し、そこから引き出されてくるであろうという研究的な項目をここに挙げておりまして、例えば災害時のインフラの被災シミュレート等、あるいは、道路ネットワークの信頼性マップでありますとか、非常に簡単な話ですと、企業にとってBCP策定に際して本当に必要な情報って何だろうとか、その辺もしっかり調べて具体的なところに反映していかないといけないだろうというようなことでございます。

 次に、これは実際に災害が起こったときには、どういうソフト対策があり得るであろうかということでまとめたものでございます。上の段は従前の取り組みということで、いろいろな点検をしたり、情報伝達をしたりするような項目がございますが、今後の取り組みは下の段に簡単に書いてありますが、実際にBCPの連携をするとか、災害時の情報提供を改善しないといけないだろうということで、具体的には、各機関が単独でBCPを実践するというよりも、例えば、BCPのきちっとした連携が必要だろうとか、それから情報提供に関しても、しっかりした情報交換ができるような仕組みを構築しないといけないだろうということが抽出されるわけでございます。具体的にそのような項目があるとすると、研究項目としてはここに掲げているようなことが必要だろうと。例えば、先ほど言いましたように、ライフラインとの相互依存性がどういうことになっているのだろうかというようなことがあり得るだろうと。あるいは、情報交換、実施体制を確立するためのマニュアルなんかをきちっとつくっていかないといけないだろうということでございます。

 それで、今回、この研究を構成する研究テーマということで、ここに挙げている課題1から4まで、四つの研究でこのプロジェクト研究を、今のところですが、構成していこうということを考えているわけでございます。

 我々にも余りなじみのない分野でございますので、今のところこういうことでございますが、今後いろんなご指摘、あるいは調査の進展を受けて、充実すべきところは充実をして、研究項目等をよく考えていきたいと思っております。

 この図は皆さんの前刷りのところにございますが、現在の研究の状況と構成について、こういう関係にあるということで、青地の多い分野であろうというように我々は認識をしておるということでございます。凡例を書いてございませんが、余りというか、ほとんど研究は進んでいないだろうというような状態でございます。

 次に、研究体制でございますけれども、経済団体、企業と、あるいは公益企業とうまく連携をしながら、国総研としては地方整備局、あるいは本省ときちっと協働しながら、この研究を進めていきたいというように考えております。場合によっては必要に応じて、この関係の研究会なんかも、そういう組織をうまく立ち上げて実施するというようなことも考えております。

 これは事前に皆様のところにお配りしている資料の中に入っていることを、ちょっと書き直しただけでございます。ただ、この中でいろいろといっぱい書いておりますが、成果の活用では大きく分けて二つの区分があるとご理解いただけると思います。一つはもう先ほど来ご説明していますように、民間のその事業継続計画の策定支援するための情報等をしっかり提供するようなということでありまして、もう一つは、私どもが実際に防災事業、あるいは、復旧戦略の立案に活用できるというような情報をうまくまとめるというようなことでございます。

 それから、これ以降のスライドは皆様のお手元の前刷りにもついていて、皆さんお読みになっているかとは思いますけれども、BCP策定のための情報等を収集したりするための仕組みということで、ここら辺からスタートして、場合によってはまた何回も回るという感じですね。やっぱり1回だけではまずいものですから、こういうものはスパイラルアップをしていかないといけないということで、常に情報をきちっと更新をしていくということも重要だろうというふうに考えております。

 これは、いっぱい書いてありますが、下から2段目のあたりが重要でありまして、災害時の被災想定、優先的復旧ルートの検討も、もう少し公益事業との連携を含めて考えた方がいいんではないかと。その中で連携体制、仕組みを構築していかなければいけないだろうと。

これは漫画ですからちょっと見ておいていただくだけにして、インフラ被害の相互依存性というところで、道路の復旧とともにほかのライフラインもうまく復旧していると。逆に言うと、道路の復旧がキーを握っているんではないかというような図であるということです。

 それから、これが道路ネットワークの信頼性ということで、構造物の単体の評価からネットワーク評価をきちっとしていかないといけないだろうと、そういう情報を提供したり、あるいは自分たちのネットワーク整備計画の中の何かにきちっと位置づけていかないといけないだろうということであります。

 それからインフラ被害波及構造のモデル化ということで、研究内容としては一番下のところに書いてあるとおりでございます。

 最後に、これも漫画ですからイメージとして見ていただきたいんですが、一番下にありますように、地整って書いてありますが、やはり地域でいろいろと活動するためにはやっぱり地方の出先機関が主体になるんでしょうけれども、この辺に我々としてはうまく支援をしていくということでございますが、しっかり体制を確立していかないといけないだろうという認識でございます。 説明は以上でございます。

〈課題説明終了〉

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(主査) それでは、ご意見・コメントをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

(委員) ちょっと具体的なねらいがもう一つイメージわかないんですけれども、一般論を確立しようとしているのか。大規模地震災害といった、どれぐらいの規模の地震を想定しているのか。今の例では中越地震を出しておられるけれども、こんな程度のものなのか。あるいはもっと首都圏直下型の何千人、何万人死ぬような、東海道の東海地震で新幹線が寸断されるとか、そういったところのそんな規模のものを考えているのか。その辺ちょっとよくわからないですね。大分違うと思うんですよ、その規模によって。ですから、もう何千人、何万人も死ぬようなことですと、救急車ですとか病院ですとか、そういったことも大変重要になってくるし、ここでおっしゃっている産業界という産業の意味も、どういう産業になるのか。今、中越では自動車メーカーの話が出ていましたけれども、その前はライフライン会社の話出ていますけれども。ですから、ちょっとねらいがどれぐらいの規模の災害をねらって、それで、一般論的に言おうとするのか。私は、むしろそれよりも具体的な事例の方が、東海道が寸断される場合はこういう事例がいろんなパターンがあると、首都圏直下型だったらこうだとか、何かそういう具体的に想定して、場所と規模を想定してやった方が、いろいろためになる知見が出てくるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

(国総研) 今のところ、その首都圏直下型地震とか、具体的に想定はしておらないんですが、これからの研究の中で、先生おっしゃるとおり、ケーススタディーみたいなことはきちっとやっていかないといけないだろうとは思っております。

 確かに、場所と規模を想定しないといけないことは確かなことでございますので、その研究計画の中で、今後、ご指摘を踏まえて検討していきたいと思います。

(委員) 主に、道路ネットワークでどうやって事業継続、社会システムの継続を考えるかということだと思うんですが、今お話があったように、その道路自体が機能しなくなるような状況になった場合は、それを補完する交通ネットワークというのも当然視野に入れておかなきゃいけないと思うんですね。実際の阪神・淡路なんかの場合には、全国展開しているコンビニなんかは、真っ先にヘリコプターをチャーターしましたよね。ところが、チャーターしたはいいけれども、下りたところから持っていくというのがまた厄介な話で、これは船を使ったところもありますけれども、結局、接岸岸壁が壊れたとか、いろんな問題があって、なかなか陸揚げがしにくかったという話も聞いています。結局、空・海、あるいは水上と言ってもいいんですが、こういうものと道路ネットワークの接続がまだまだ日本はよくないですよね。

 例えば、阿武隈川というところでは、河川の方の水量も多いということで、リバーステーションというのを整備しているんですが、これは実に陸上の道路側からは接続が悪い。だから、どこにあるかもわからないというような状態になっているので、河川の水上交通、災害時に使えますといっても、陸上側に物が運べないようなところにあるんですよね。こういうような、いざというときに異種交通ネットワークをどう連携させて、復旧を早めるかという仕組みを考えることも重要なんじゃないでしょうか。

 日本では衰退しちゃいましたけれども、人口の少ない川だとか北欧へ行きますと、湖とか川で水上飛行機が飛んでいますよね。つまり滑走路が要らないわけですよ。平穏な水面があればどこでも離着できる。ただ、日本の場合、問題なのは、送電線が多くて内陸の離着陸が非常に難しいとか、河川水位が下がっているときは使えないとかって、あるいは港湾にしても養殖場のいかだがあってなかなか離着陸させてもらえないとかってあるんですけれども、やっぱり緊急時の補完システムということも、やっぱり重要な部分なんじゃないかなと思いました。

(主査) いかがでしょうか。

(国総研) 題名で交通ネットワークと称しているからには、そのようなの水運とか、あるいは港湾の関係もございますので、適宜といいますか、適切に研究を遂行する中でうまく反映をするような形で検討していきたいというように思います。

(委員) 人命を救うために、どういうふうに資源を振り向けたらいいかということで、地震が例えば起きて1日のとき、1週間のとき、いろんな状況の中で、最近は、この人はちょっと助けても確率が低いからやめようとかというふうな、そういうふうな厳しい判断もあり得るわけですね。今度の場合、どちらかというと、この企業は助けるけれども、この企業は助けないみたいな話になるんですね。

結局、だれの意思決定を支援するシステムになるのでしょうか。知事さんなのか、それとも総理大臣なのか、国土交通省の大臣なのか。その方が、まず電気をやれと、ガスは後回しでいいとか、何かこう判断するときに、評価基準として使いたいわけですよね。それが、最も地域経済にとって好ましいと。これはある意味、政治そのものみたいなところがあって、厳しい意思決定をするわけですよね。かなり難しく優先順位を決める。どの人間を助けるかの場合でも難しいけど、生存確率で、そっちは意外にわかりやすいかもしれません。地域経済の場合にそういう優先順位がつけられるのでしょうか。まず、その設計思想をどういうふうに固めるか、それに相当時間がかかるんじゃないでしょうか。

(国総研) 少し考えが甘いかもしれませんが、○○先生おっしゃるように、あっちかということでなくて、確かにBCPですから、先ほどリソースに集中とか言いましたけれども、どちらかというとうまく連携をして、あれかこれかじゃなくて、あれもこれもうまくやりたいというようなことでございます。先ほど言いましたように、このインフラなんかの波及構造や何かとか調べて、先ほどのこの図にもありますけれども、やっぱりこういうライフラインを収容する空間自体の道路の信頼性や復興というのが非常に重要なキーを握るんじゃないかと、勝手な仮説ですが、そういうことを踏まえて、あれもこれも道路をうまくすればできるんじゃないかと思っていて、それをしっかり今回この研究の中で確かめるということもございますので、それをやってみようと。

 確かに、この研究ではなくて我々が実際にCOOPをつくったりするときに、あれかこれかということは確かにあり得るかもしれません。ただ、ここの研究では、あれかこれかということではなくて、あれもこれもなるべくできるようにうまく考えましょうというようなことでございます。

(主査) ほかにいかがでしょうか。

(委員) 道路の管理水準といいますか、道路の信頼性評価指標のイメージというところなんですけれども、構造物の補修・補強の必要性ですとか、厳密にやろうとすると非常に道路施設が多いものを、厳密にこういった指標を数値にはじき出そうとすると、非常に費用と時間がかかるんですね。ですから、この直轄国道だけならいいんでしょうけれども、当然、こういうネットワークですから、いわゆる補助国道も含め、あるいは県道含めということになりますと、これがしっかりしないとネットワークが完成しませんということになりますと、この成果がいつまでたっても使えないというものになりかねない可能性があるので、そこのところはもう少し簡便な手法をちょっと考える必要があるのかなと、評価のための手法ですね、そういうのが1点です。

もう一つ、先ほど○○先生がおっしゃった話と一緒なのかもしれませんが、都市部ではここの絵にありますように、ネットワークが非常に発達していて、道路網がいっぱいありますからいいんですけれども、地方部に行きますと、当然1本しかない、あるいはその代替路がはるか離れているというのがいっぱいあるわけですから、そういうときに、いや、そこがつぶれたらおしまいですという結論にしてしまうのか、他の手段を使った上でのBCPを確保していくというような方法を考えるのかというところも、少し最初に検討しておく必要があるのかなというふうに思います。

(主査) いかがでしょうか。何かありますか。

(国総研)はい。1点目は、非常に重要なご指摘だと思います。これから研究でございますので、そのあたり念頭に置きながらやっていきたいと思います。

 それから、2点目のネットワークが若干薄いというところでは、あきらめるのかということでございますが、かなりネットワークも整備をされてきているので、十分とは言えませんけれども、幹線ネットワークも整備されてきておりますので、鳥瞰的にもう少し高いところから見れば、ネットワークとしてはあるのではないかと思います。

 ただ、検討する中で、確かにネットワークが密なところと、疎なところもございますので、この研究の中でどういうように評価していくのかというのも検討してみたいと思います。

(主査) ほかにいかがですか。

(委員) 少し変な発言かもしれないんですが、この研究で行われることがが大事になるのは、非常に大規模な災害が起こったときであると思います。そういうとき、多分、企業の事業を継続するということ以外に、もっとほかにもやるべき重要なことがいっぱいあると思いますが、そのときに企業だけが事業を続けることができるというような状態は、何か非常に特殊なような感じがしますが、いかがでしょうか。

(国総研) 多分、そんな発言もあるんじゃないかと思っておりましたが、企業と住民を余り対立的な目でとらえるものではないのではないかと。確かに、一つの企業に限ってみて、その企業のためにどうかこうかとなれば確かにそういうことがあるかと思いますが、そういう目で見るんじゃなくて、都会はよくわかりませんけれども、例えば中越地震のときでも、やはり地域の雇用力なんかを考えますと、やっぱり地域の企業がしっかり存続するというのが民生の安定にうまくつながるだろうということもございます。やはり対立的ではなくて相互に補完するということで、従前からの対策、ハードの対策とか情報の伝達のやり方とか、いろんなことについては当然継続してやることになりますので、そこをおろそかにしてこっちをやりますということじゃなくて、新たにこういうこともやるというようなとらえ方をしていただける方がありがたいと思います。

(委員) 研究の重要性はよくわかっていますので、指摘した点もご考慮して研究を進めていただければと思います。

(委員) 11年前に阪神・淡路大震災がありまして、あのときには本当に大規模な災害だったわけでして、しばらく操業をやめた企業もありますし、休みっぱなしですと、今度は従業員が食べていけませんし、企業自体もつぶれてしまいますから、いち早い復興というのは当然大事なんです。あと、ライフラインなんかは、もっと緊急に復興・復旧しないと、地域全体が今度は苦しむわけですから、それと、我々自身もその直後、広島とか九州へ行く場合には、飛行機で行くか、あるいは山陰線周りで行くか、そういうようなことで、我々自身の事業はそういう形でやったわけです、そのようなことで申し上げたいのは、過去、そういう典型的ないい事例があるので、それをお使いになる気があるのかどうか。きっといい事例としていいデータが出てくるんじゃないかと思うのですが、どうしても関東中心でこうしておられると、関西の方で起こった事象についてはすぐ忘れられがちなんですが、実際にあるわけですね、阪神・淡路の事例を調べられると。

(国総研) ここは抜いていけないという、もう必須でございますので、阪神・淡路大震災から最近の中越地震、そういうこともあって、今回のBCPみたいな話も出てきていますので、そのあたりは再度しっかりレビューをして、どれだけ情報が我々の知りたいように加工されているかというのはあるんですが、しっかり情報を見て、それをうまく使っていければというふうに思っております。

(主査) ありがとうございました。

大事な研究であるので推進してほしいということだったと思いますけれども、いろんなサジェスチョンをいただいたと思うんですね。結構、道路が中心なんですけれども、それだけじゃいかがなものかとか、規模の想定とか、あと、厳しいけれども選別ということもあるんじゃないかとかですね。

それと私、今までの議論を聞いていまして若干思ったのは、これは大事な研究なんだけれども、非常に目指すところが広くて、それだけに余りうまい説明が今日はなされなかったのかなと思うんですよね。結果的に、午前中の事後評価でもありましたけれども、意気込みはよかったんだけれども、終わってみると大き過ぎてなかなか難しかったですということの危険性も結構あるんじゃないのかなという気が若干いたしました。

 こういう研究をすることの意義とか意味っていうのは幾つかあると思うんですよね。BCPをつくるそういうコミュニケーションの中で、よりよい道路ネットワークの姿が追及できるとか、そういうことが道路だけじゃなくて、住んでいる人の問題とか、ほかの産業との関係とか、ライフラインとか、あるいはビジネスコミュニティとか、コミュニティ一般と言った方がいいかもわかんないですけれども、そういう意味での脆弱性が、そういう作業を通じて克服されていって、結果的に強い地域になるとか。あるいは、これはなかなか検証は難しいんですけれども、こういうことをやっていると、阪神・淡路大震災で随分神戸から産業と人が流出しましたけれども、ああいうことが防げるとか。いろんなレベルと範囲があろうかと思いますので、その辺と方法論との関係を整理されて、やっぱり3年間ということと、限られた予算ですから、その辺を考えていただければありがたいなという気がいたしましたので、よろしくお願いいたします。

 それでは、あと一つでございまして、「国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究」ということで、○○センター長から。

 午前中のリターンマッチというか、フォローアップというか期待しておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

(国総研) ありがとうございます。危機管理センターの○○でございます。よろしくお願いいたします。

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事前評価B国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究(プロ研)

 「国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究」ということで、この課題にも総合的というような用語が用いられておりますけれども、19年度から22年度まで4年間でやらせていただきたいという課題でございます。

 研究費は、総額で3億5,000万程度を今のところ計画してございます。

 これが研究成果の目標と、その使途、活用方針などを整理した表でございます。ちょっと字が小さくて大変恐縮ではございますけれども、成果の目標が大きな項目として五つほどございます。

 土砂移動に係わる問題とその原因の整理、問題を引き起こしている地形の変化を緩和するための対策の検討、対策の効果評価のための土砂移動モニタリング計画の策定手法の検討、総合的な土砂管理策定手法の検討、最後に、土砂移動データベース・解析システムの検討というような項目を目標としてございます。

 実は、日本全国で土砂移動に係わる問題点が顕在化しておりまして、これは後ほどスライドもございますけれども、口頭で申し上げますと、例えば、ダムの貯水池における全国平均の堆砂率は7%でございます。ところが、総貯水量が100万立米以上の貯水池で堆砂率が50%を超えるダムというのは44基ございます。あるいは、全国の砂礫海岸の延長9,500キロのうち、浸食海岸の延長が1,320キロに達するというような状況もございます。その海岸の浸食面積は明治から昭和53年まで年間72万平方メートル程度というような状況であったのが、それ以降から平成4年までの観測結果によりますと、1年間で160万平米浸食されているということが明らかになっております。

 こういった事柄、あるいは……。済みません、ひとまずここで、ちょっとスライドはあれですけれども、そういう多々問題点がございます。そういったものを整理したいというのが目標の一つでございます。

 それから、問題を引き起こしている地形の変化を緩和するための対策の検討という目標がございます。これに関してはいろいろと検討項目がございまして、河口の地形変化を予測する手法の提示、それから地形変化推定モデルの精度の向上、特に海岸部のような部分では、これまで一次元的な地形変化の推定というのは比較的容易にできたんですけれども、実際には二次元的に地形が変化してまいりますので、そういった部分におけるモデルの精度向上といったことが必要でございます。3番目に、透過型砂防堰堤による地形変化・流砂の制御効果を推定するモデルの提示ということでございまして、これも現在ある程度できることになってございますけれども、そのモデルの精度をさらにアップさせるというような目標がございます。それから、養浜に関する部分におきましても、いろいろとモデルを提示したり、残土率を推定するといったような手法が求められております。

 次の大きな目標でございますけれども、対策の効果評価のための土砂移動モニタリング計画の策定手法の検討という目標がございます。午前中のプロジェクト研究、事業評価の部分でご説明申し上げましたけれども、ある程度、土砂の移動をモニタリングするための機器については、かなりの部分整備されてきております。事後の報告でも申し上げましたけれども、それらをしかし実際にモニタリングをやろうとしたときに、実際にどこで観測をして、それから、どの程度の頻度をもって観測しなければいけないかといったような、そういう基準、ガイドラインのたぐいが現在のところございません。ですので、そういったガイドラインを整備したいというのが一つの目標でございます。

 それから、次の目標と申しますか、最終的には、これが非常に大きな目標になるわけでございますけれども、総合的な土砂管理策定手法の検討ということで、特に流域の、言葉を変えると流砂系でございますけれども、流砂系の社会的・文化的な特徴が改善されるような対策を検討するというような事柄。それから対策を講じた後には、その効果を検証して、さらにその効果をモニタリングしながら、よりよい流域の状況をつくり上げていくといったような、そういう一種のPDCAのようなサイクルを導入しまして、地域の流域の総合的な土砂管理手法を築き上げて、あるいは提案していきたいというのが目標でございます。

 それから、最後の一つでございますが、土砂移動データベース・解析システムの検討ということで、河川の流量などにつきましては、かなり充実したデータが蓄積されてはいるんですが、流砂量というのは午前中も議論ございましたように、非常に計測が難しい項目を多々含んでおりますので、なかなかデータもとりにくいということは、これまで余り集められていなかったということにもなっておりますので、この研究の中では計測をしながら、その計測をされたデータを蓄積していくと。さらに、それをモニタリングに生かせるような形で解析に用いられるような、そういう形態に持っていきたいということでございます。これは先ほどもご説明申し上げましたけれども、特に2番目の項目でございます流砂系の有する社会的かつ文化的な側面を考慮した対応策というのが、それぞれの流域で求められているだろうというような現実がございます。

 研究の実施体制でございますけれども、河川研究室。海岸研究室、それから砂防研究室、この三つの研究室が国総研では担当いたします。特に、流砂ですとか漂砂といった土砂移動のメカニズムに関する基礎的な技術、基礎的、要素的技術につきましては、独立行政法人の土木研究所と連携を図ってまいります。

 それから、現実のモデル流域といたしまして、非常に典型的な問題点を多々抱えております天竜川の流域を取り上げまして、現地の地方整備局、あるいは現地の事務所と連携を図りながら実施していきたいというふうに考えております。

 実施方法でございますけれども、これは今申し上げましたとおり、天竜川を対象としてモデルとして、最終的には全国展開が可能な総合的な土砂管理策定手法を取りまとめたいというふうに考えております。

研究マップは、比較的研究がなされていない部分について検討を実施していきたいということでございます。これは繰り返しになりますので申しませんけれども、こういったことが最終的な成果になろうかと思います。

 ちょっと引き続きまして、○○先生のご指摘が、先ほど事後評価の課題とどう違うのかというようなご質問がございますので、引き続きまして、先ほど3時のお休みに配らせていただきました1枚紙がございます。この部分で一番大きな枠、青い枠で囲ってある部分が、今ご説明申し上げました国土保全のための総合的な土砂管理手法に関する研究という、この研究の領域でございます。その中の緑色の1点斜線でくくってある部分、この範囲につきましては天竜川をモデルに検討したいという部分でございます。

 さらに、ちょっとおのおのの項目のうち、黄色いバックで赤枠で囲ってある部分、これらについてが前回のプロジェクト研究、健全な水循環系・流砂系の構築で得られました成果でございます。簡単に申しますと、前回のプロジェクト研究で得られた成果を一部用いまして、あるいは一部精度のアップを図りながら、最終的に総合的な土砂管理手法の提示に至りたいというようなことでございます。

 ちょっと最後の説明がわかりにくかったかもわかりませんけれども、以上でございます。

〈課題説明終了〉

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(主査) ありがとうございました。今の研究計画のご説明に対して、ご意見とかコメントございましたらお願いしたいと思います。

(委員) おおむね研究内容は結構かと思いますが、一つ、総合的土砂管理手法の検討に関して、私自身としては少し不満な点がありますので、それについてご指摘したいと思います。

土砂管理のフローチャートが示されまたしたが,そこに「総合的」ということをもう少し強調してほしいと思います。総合的というのは、安全・利用・環境から三つの総合的なという意味だと思いますが、実際の土砂移動の問題の顕在化というのは、安全,利用または環境のどれかに関することが多いと思います。その問題に対する対策を講じて、効果がどうかという検証をした後に、やはり一度総合的に全体を評価するということが必要じゃないかと思います.もし,総合的に見て、問題があれば対策を練り直すという考えが必要ではないでしょうか.今回事後評価された研究で,検討できなかった環境面の健全性も含めて研究してみてはいかがかと思います。

(主査) いかがですか。

(国総研) 午前中の議論にまたこれも通じるんですけれども、こういう○○先生のご指摘のような総合的な評価をしたいというふうに思いますと、どうしても指標が必要になってまいりまして、なかなかその指標に到達するのが、ぐるぐる周りを回っているだけで、その真髄に到達できないというのが現況でございまして、非常に歯がゆい思いもあるんですが、できるだけそういうことも含めまして努力をしたいというふうに考えております。

(委員) 決して消極的にならなくても、これは重要な研究でもあるし、環境面での健全性の指標が求められなくても、例えば土砂を流すというような施策が環境面でどういう影響を与えるのかという研究を進めなければ、健全性をどう評価するのかという問題はなかなか解決されないと思います。

(国総研) わかりました。ありがとうございます。

(委員)決して、健全性をはっきりさせなさいということではございません。

(委員) 流砂系の持つ社会的・文化的な側面ということがあるわけですけれども、社会的な側面の一つは、例えば河道・河床を安定するというのは一つの川の健全な姿であって、社会的な側面の一つだと思うんですけれども、お聞きしたいのは文化的な側面とは何かということが一つですね。

 それから、この研究組織ですけれども、センターと河川研究部が中心となってやるということですけれども、この沿岸域の問題は、これは河川研究部がカバーしているんですか。海岸のことをやっている他部局等があると思うんですけれども、そこらとはご一緒にやられないのかどうか。

(国総研) 文化的というのはどういうことかということなんですけれども、余り大それたことは実は考えていなくて、例えば河川の区間を祭りとか、あるいはその他の文化的な行事で使われていると思いますんで、そういったものに対してどういう影響が出るかというようなイメージで書いておりまして、まだ具体的にどのようなものかというのは考えておりませんでした。

 社会的というのは、河床を安定させるという意味では防災という意味もございますが、それだけじゃなくて、例えば何か、排砂ゲートとか、バイパスとか、砂防でいうと流す砂防みたいなものをしたときに、地域の経済とか産業とか、あるいは住んでいる方とか、そういった社会のシステムにとってどうなんだというようなプロジェクト評価みたいな話になってくるかと思いますが、そういったものにどういう影響を及ぼすか。簡単に言いますと、皆さんハッピーになるようなことをしたいなというふうなことを思っていまして、そういうような評価と方法論を開発したいというふうに考えております。

 他部局の方でございますけれども、一応、今回のプロジェクト研究に関しましては、済みません、2枚目のパワーポイントのシートにございましたが、建設海岸の方の海岸部局と共同してやっていきたいというふうに考えています。

(主査) よろしいですか。ほかにいかがですか。

(委員) 私も大事なテーマだと思います。大分前の河川審議会総合土砂管理小委員会でも、どうやって土砂を供給していくかという議論が随分やられたと思います。

 それで、もう少し、問題がいま一つ僕にはわからない。例えば海岸の問題を中心にやられるのか。これ防災上の問題では河床上昇と書いてあるんですけれども、全国的には明らかに河床低下の方が起こっているんじゃないかなと、平均して1メートルや2メートルくらい、沖積の河川においては下がっていることの方が、今顕著にあらわれているんじゃないかな。それと同時に、結局、そういう高水敷化して、澪筋部分の低水路が低下することによって、外来種侵入とかいろんな問題を引き起こしていると思うので、その辺りもう少し問題を明らかにしていただきたい。例えば天竜川がそういった問題を解決するのにいいのかといった、要はプロジェクトが問題解決型のプロジェクトにするのか、モニタリング手法の開発的な議論にするのかがちょっとダブってしまっていて、午前中の議論じゃないんですけれども、テーマが大きくなってしまうので、できればある程度問題を絞った形で議論していかれるのがいいのかなという感じがしました。

 海に対する土砂供給でいくと、例えば砂防でとめるような礫成分というのじゃなくて、砂やシルト成分とか、先ほどの類型の議論も含めて考えると、おのずとテーマは絞られてくると思います。もう少し問題を顕在化させて、そこでの問題解決型という形でのプロジェクトの持っていき方があるのかなという感じがしました。

(主査) いかがですか。

(国総研) 直接的なお答えにはならないかもわかりませんけれども、天竜川を一つの流砂系のモデル流域というふうにとらえまして、そこでいろいろなモニタリングやら、実際にどうしたらいいかというような提案をしていくというふうにしているんですけれども、天竜川というのは上流では非常に土砂の生産が激しくて、それから中流部では佐久間ダムで非常に堆砂が激しいといったような問題がございまして、下流部の方では海岸浸食という問題がございます。

 それで、実は、その佐久間ダムの土砂をどうやって排除するかというようなことが、非常にクリティカルな問題になりつつございまして、それを住民、あるいはその周辺のステークホルダー、そういった人たちの合意を得ながらそういった問題を解決する。漁業関係者も含めて、そういった問題を解決していくという、そういうノウハウを蓄積するには一番いいモデルの流砂系ではないかといったようなことで、どちらかと申しますと、このモデル流砂系というのは、先生がおっしゃった問題解決型のターゲットとして一つ設定しているというように考えております。

(主査) よろしいでしょうか。

(委員) 私は専門ではないのでよくわからないと思うんですけれども、今、天竜川だとちょっとクリティカルな問題が多くて、問題も深刻な面があるから当然検討される対象になると思うんですが、国土保全のためのトータルな土砂管理ということからすると、日本は土砂が全く流出しないということはあり得ないところだと思うんですね、地質、年代的に言っても。そうすると、それをいかにある意味で地平状態にするか、あるいは安定化するかというふうに私は勝手に思ったんですけれども。ただ一方では、集中豪雨とか地震とか、それからダムも貯水をして水位を上げていくと斜面崩壊が起きたりというような不安定な要因がありますよね。こういう不安定要因による土砂生産というものを、どういうふうに考慮されるおつもりなのかということをちょっと伺いたいと思います。

(国総研) 今のご質問のような、通常のレベルで、実は100年に1回の出水のときに土砂がどのぐらい出るとか、1平方キロ当たりどのぐらいの土砂が山地から生産されているかというような、そういう大まかな値は、1平方キロ数万立米とか、そういったデータはございまして、実際、砂防計画などを立てる場合には、そういった値を大ざっぱに使っております。それが押しなべて日本国土全般を見回した場合の大体のスタンダードになっているんですけれども、もうちょっと小さい流域をとりますと、エリアと申しますか、流域単位でもいいんですけれども、そういう部分をとりますと、もう少し詳細に、この山腹は非常に不安定だとか、この斜面は随分安定しているとか、それから河床には相当土砂が堆積しているとか、河床が低下気味だとか、そういう情報を総合しながら、もうちょっと細かな流砂の生産土砂の状況がわかっております。

 ですから、そういったものを考慮に入れながら、今のところ砂防計画を立てたり、あるいは土砂を流すように砂防ダムにスリットを入れたり、あるいは無害な土砂が流れるようなタイプの砂防ダムを構築するといったようなことは、今の趨勢になっております。

(委員) それは既に対応されているというお答えですか。今回は余りそういうことは計画の項目としては含まないということですか。

(国総研) そうですね。余り細かいところまでは、ある河川で土砂量をモニタリングするという意味ではモニタリングは行いますけれども、その面的に広いエリアで、ある斜面からの生産土砂をモニタリングするといったようなところまでは、ちょっとこの中には含まれておりません。

(主査) よろしいですか。ほかに。

(委員) 1枚紙の図の中に、天竜川の流砂系を対象に実施というこのみどりの枠の中に、河口部の地形管理手法とか、河口部における地形変化予測技術、それから養浜による地形変化、漂砂制御効果推定技術ってありますけれども、天竜川の河口、あるいはその近辺の海岸もかなり問題があって、それでここに書いてあるんでしょうか。ちょっと確認させていただきたいんですが。

(国総研) 済みません。河口部につきましては、天竜川では河岸浸食とか、河口砂州の縮小というのが問題として挙げられておりまして、そういった意味でも従前から検討は進めておるんですけれども、さらに精度をよく上げていきたいというふうに考えています。

 養浜につきましては、天竜川のみならず、例えば午前中の事後評価でも出ておりました安部川とかでも行っておりまして、その効果評価技術については前回のプロジェクトでは少しできなかった点がありましたので、ここで加えることで全国展開に向けて技術をつくっておきたいというふうに考えているところです。

(主査) よろしいでしょうか。

この研究課題も重要であって、推進、実施すべきだということだと思いますけれども、これもやっぱり結構注文が出ていたようにも思います。

 やっぱり天竜川ということが主な研究対象にこれからなっていくわけですけれども、特に社会的とか文化的といった場合に、相当程度、特性があろうかと思いますし、河川自体の流砂系の特性も、僕よくわからないですけれどもあると思うんですね。その辺をどうきちんと普遍されて、ここに、この1枚紙のところに各種ガイドラインの配布とかって書いてあるんですけれども、その辺にどういうふうに効いてくるんだろうかとか、あるいは私は先ほどの○○先生のご意見とは若干違っていまして、総合的な土砂管理手法という、総合的ということを言わざるを得ないんでしょうけれども、余り総合的、総合的ということで広げていくと、実際には総合にならないんじゃないかなという、そういう反省のもとにこういう手がたいものを出されたと思うんですけれども、それでもまだ結構かなり大変だと思うんですよね。ですから、その辺よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 そういうことで、今書いていただいておりますコメントシートをもとに取りまとめをさせていただきたいと思いますが、実施すべきであるという、そういう結論でよろしいですよね。

(異議なし)

(主査) ありがとうございました。

 以上で、この課題については終了させていただきます。

 事前評価三つございまして、いずれも実施すべきだというふうな結論にさせていただきたいと思います。

 事前評価についても、その都度、こういう方向で取りまとめたいということの概要を口頭で説明をいたしました。きちんと記録されておりますので、その方向で評価書の作成をいたしますので、それについてはご一任いただければと思います。言ったことと違うことは書きませんので、そういう意味ではご安心ください。

 それと、あと、この評価がここで終わりますので、お礼を申し上げたいんですけれども、長時間ですけれども、専門外のことについてはよくわかっていないかもわかりませんけれども、相当程度やっぱり質の高い議論をしていただいたなという気がしておりまして、そういう意味では、委員の先生方には厚く御礼を申し上げたいと思いますし、国総研には研究を進める上で、ぜひ参考にして、よりよい研究計画なり、あるいは今後の研究プロジェクトの展開に活用をしていただければと思います。

 そういうことで、この評価の部は終わらせていただきます。

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〈その他(報告)〉

 最後になりましたけれども、一番最後の議題でございます。その他の報告ですけれども、これは冒頭でありましたように、本年度の研究評価委員会、実はこれ私、出席できなかったんですけれども、議事の中心でございました国総研における研究活動のマネジメントのあり方です。それについては午前中も一部議論になりましたけれども、事務局より説明をいただいて、委員の皆さんからご意見をいただきたいと思いますので、○○さん、よろしくお願いいたします。

(事務局) それでは、7月4日に開かれました本委員会で、一番大きな議題でございました国総研におけます研究のマネジメントのあり方でございます。

 研究活動のマネジメントでございますけれども、これにつきまして、どうすればいいかということを所内でいろいろ議論しているところでございます。やはり国総研といいますのは、住宅・社会資本分野で唯一の国の研究機関、独法でない国の研究機関ということで、そういう特色を持っている機関でございます。そういう機関が本当に何を継続してやっていくべきか。また、どうやれば一番効果的、また効率的に研究を進めていくことができるか。こういうマネジメントについて、どういう考え方をやっていったらいいのかということで、一応考えていく三つの柱ということで、コアの設定、大枠の設定、「Check」の重視、この3点を考えるべきではないかということで、現在議論しているわけでございます。

 最初に、コアの設定でございます。これにつきましては、やっぱり国総研、ほかではなし得ない国の付属機関としての国総研、こういうところでやるべきもの。また、本当に継続しないといけないもの、こういうものをコアと位置づけまして、考えるべきではないかとやっているわけでございます。国総研しかできない、また国総研しか継続できないという、こういうのはどのようなものであるかということでございます。一応、まだ現在検討している最中でございまして、これが各部・センターのコアの(案)という形でございますけれども、これについてはまだまだ検討しているところでございます。まだ、固まった段階ではございませんが、それぞれの部またセンターで、これからも継続して絶対やっていかないといけない、そういうのはどこにあるのか。どういうところが国総研の各部として逃げられない研究、やるべき研究、継続すべき研究か。ここの原点をしっかり持とうということで現在議論しているところでございます。

 2番目のものでございますけれども、研究を進めるに当たっての大枠の設定でございます。本日も委員の方から、研究全体のニーズとか、それからそれのアウトプット、またアウトカム、政策目標に対してどうつながっているのか。このあたりがよくわかりにくいとか、またテーマが非常に広過ぎるとか、いろいろご意見いただいたわけでございます。ということで、研究活動を進めるに当たりまして、その中でどういうことをしっかり考えないといけないかということで、大枠について、この4点を上げているわけでございます。本当に課題が包括的にちゃんとしっかり全部網羅されているかどうか。その中でもまず優先的にどれをやらないといけないのか。こういうのが絞り切れているかどうか。それから、こういうニーズがある中で政策目標に対して最後のアウトカムがどうなっているのか。どういう形で工程がしっかり把握されているか。また、ほかの行政機関、他の機関との連携がどうなっているか。こういうのがしっかり考えられて、各研究チームのそれぞれの構成員が、こういうことをすべてしっかり統一して把握した上で進めていかないといけないという形でございます。まだ、この大枠の考え方についても議論しているわけでございますけれども、一応、このあたりにつきましてが、大体、大枠として持たないといけないような内容ではないかということで考えておるわけでございます。こういう大枠がありますと、本当に国総研自ら取り組まないといけない課題か。またはコーディネーターとしての役割を果たすようなものか。こういうのがしっかりわかってくるだろうという事でございまして、現在もこの大枠の概念、またはどういう形で考えていくか、これについて議論しているところでございます。

 大枠を考える中で、交通安全分野におけますマップ作成の試み、これは大枠の概念に結構近いところではないかと、これがそのまま大枠として使えるかどうかというのは、まだ現在、議論しているところではございますけれども、これでいきますと、背景がしっかりととらえられている。また、こういう中でどういう形でなっているかという課題がとらえられている。それから、また他の機関との連携がしっかりされている。それから、どういう進め方をやっていくか、成果をどうやっていくかという、こういう工程のところが考えられているというものでございます。という大枠の一つの例でございますが、これ自身でしっかりと大枠になっているかどうかというのは、まだ議論のあるところではございますが、大枠の概念に比較的近い一通りのことを網羅したものではないかと考えているわけでございます。

 3番目が、PDCAの「Check」の重視でございます。プランから行動、それでCheckという形でございますけれども、このCheckということを考えた上でのプランにちゃんとなっているかどうか。こういうPDCAを全部そろえた形で初めから計画の設定になっているかという事でございまして、このCheckというのが一つのやはり柱であろうという形でございます。

研究活動のマネジメントにおけますCheck、それぞれの研究活動、本当に国総研としての、また各部、各種のコアということをしっかり考えて、自分の役割をしっかりと意識しているか。また、その一つの研究活動につきまして本当の大枠、先ほど申し述べましたように、本当に全体の問題が包括的にわかっているか。優先的にはどれからやらないといけないか。どうやって政策につないでいくか。工程がはっきりわかっているか。連携の仕方がしっかり十分理解、意識したものになっているか。こういうものをCheckしないといけない。また、プロセスというのがしっかりわかっているか。PDCAサイクルが的確に考えられているか。こういうことをプランの段階から考えたマネジメント、最後にCheckをしているかという事でございます。そのためのツールということで、どういう形で考えていくか。このあたりをいろいろやっているわけでございます。

 ということで、本日、ご指摘いただきましたように、本当にチームの概念が一体となって、その入り口から政策目標の出口、またそれに対するCheck、それが考えられているかということをしっかりやろうというものでございます。

 一応、お配りしたものに交通安全分野のCheckの例があろうかと思いますけれども、これにつきましては左のところに、どういう形でプランをやるか。どうやって実行していくか。それをCheckして、それをまたアクションとしてどう戻していくか。それに対してどういう意見をいただくか。また、データベースの集め方をどうやっていくか。それからまた、対策の検討のときに、そのまた評価手法についてもそれをやっていく、これをPDCAで回していく、これの全体のCheckのあり方、こういう形では考えているわけでございます。

 こういうまだ議論の過程ではございますけれども、きょう最初に資料の2でお配りをいたしました研究方針でございますけれども、これ先日、改訂されたばっかりのものでございます。このマネジメントのこの三つの柱につきまして、まだ検討中ではございますが、この検討の中でも、一応、ある程度この内容までは大体必要だろうと固まったところにつきまして、この研究方針の中に書かせていただいたわけでございます。この研究方針の今回の主な改訂点でございますけれども、このマネジメントに関する記述を追加いたしまして、その考え方というのを入れたわけでございます。

 また、施策の枠組み、政策課題、これは次に説明いたしますけれども、今少しの整合を図ったわけでございまして、また、研究方針自体につきましても、こういう研究活動のマネジメントを行う中で、この研究方針、これを常に更新していく。研究方針自体もこれはもうPDCAのマネジメントサイクルの一環であるということで、更新するものだというのが研究方針の中に書いておりますし、また、最後の5章のところにも、これはもうどんどん更新していくものという形で宣言しているわけでございます。

 今回、課題につきましても、今まで7本柱17課題というのを、今般、4本柱、それから、あと総合的な手法の確立という形で改編しておりますけれども、これにつきましては、国土交通省全体の研究の方針というところに合わせた形の状態になっております。これに合わせまして一通りの課題等を考えた状態になっております。

 以上でございます。

(主査) どうもありがとうございました。

ただいまの説明に対して、ご意見等ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(委員) 大筋、そのコアの設定、大枠の設定、それからCheckの重視というのはいいと思うんですけれども、研究活動のマネジメントなんですが、国総研の役割として、科学と行政をつなぐといいますか、技術政策を現代化、高度化していくという役割はあると思うんですね。そういったことを考えながらコアを設定して大枠を設定していくということだろうと思いますけれども、ですから科学と行政をつなぐといいますか、それと研究者もこの研究活動をやっている間に育っていくんじゃないかと思うんですけれども、単に行政マンが研究しているというんじゃなくて、いい研究をする人もどんどん出てきて、それをまた科学の分野でも活躍していくということもあり得ると思うんですね。ですから、この研究活動のマネジメントにおいて、人材育成みたいなものをどういうふうにとらえるかと、そういうような視点がご説明なかったと思うんです。

 それから、あとその人材が研究者として育つ場合もあるでしょうし、科学的にレベルの高いようなものを一般住民の方まで、ハイエンドからローエンド、ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、そういう翻訳をできるような人材といいますか、なぜ、こういう技術政策をやるのかということについて、ちゃんと説明のできる、科学的基礎をもって説明できるとか、あるいは政策的な観点の基礎をもって説明できるような人材を育てていくとか、そういう役割も研究所にあると思いますので、そういった観点もちょっと盛り込んでいただいたらいいんじゃないかなと思いました。

(主査) いかがですか。

(事務局) ありがとうございました。

 資料の2に研究方針があろうかと思いますけれども、今、マネジメントのところだけ説明させていただきましたが、一応、研究者の育成ということで、17ページのところにこの関係の内容を書いてあるかと思います。国総研でございますので、先ほど申しましたように、やはり研究者として高度な専門知識ということもございますけれども、この17ページにございますように、やはり国としての機関でございますので、時代の潮流、全体のニーズがわかること。それから、あと専門知識はもちろんでございますけれども、やはり行政や現場の方を熟知していること。それとあとは、普通の研究者と同じようにいろんな分野を知って国際化にも対応できること。国総研としてはやはり行政、それから、ニーズ、そこら辺と一生懸命くっついていこうという形のものを一応記述させていただいております。

(主査) よろしいでしょうか。ほかにいかがですか。

(委員) 一番最後のスライドですけれども、3本のスライドの最後の行、ちょっと揚げ足取りみたいで恐縮なんですけれども、技術政策という言葉を使われていますよね。この技術政策っていうのは、科学技術政策みたいなのをちょっと連想します。やっぱり政策っていうのは、都市政策だったり、交通政策だったり、物流政策だったり、そういうのが政策で、それに役立つ技術開発をするっていうか、そういうことではないでしょうか。もう、これは既に議論されているところなんですかね。

(主査) 国土技術政策総合研究所ですね。

(委員) そうなんですか。

(主査) 名前変えなきゃいけませんね。

(事務局) 国総研の使命、これも研究方針の2ページのところに、一応もう少し長く説明を書いております。

(主査) よろしいですか。ほかにいかがですか。

(委員) そのロードマップとして短い期間内での今の現状で起こっている問題を解決するというのが、多分、国総研全体の中で非常に大きなウエイトを占めてくると思うんです。ただ、どうしても気になるのは、その50年後、100年後の国土のあるべき姿というか、その辺もやっぱり片方でロードマップとして持っていないとだめだと思います。さっきの土砂であろうが、災害の問題であろうが、環境の問題であろうが。高度経済成長期が例えばビックバンであるとするならば、収縮にかかるときの考え方もやっぱり必要ですよね。そのときのあるべき姿みたいなものが、やっぱり僕は国総研の中でも必要なんじゃないのかなという感じがするんです。50年後はもう近いですよね。100年後、あの数字でいくならば半分以下に人口が減ったときどうなっていくのかな、この国土全体が。そういうふうに非常に不安に思うときがあるので、その辺はいかがなのかなと思いました。

(事務局) 例としまして、交通安全のロードマップを出しというのは出たんですけれども、やっぱりこれはちょっと非常に短い時間しか書いておりませんで、ということで近い例ということで説明しましたのは、そういうところでございまして、やはり大枠で書いてありますように、課題を包括的に提示する。その中で優先を考えまして、それで工程も考えるんですけれども、やっぱり包括的な中で、時間のわかっているようなロードマップ以上のやはり長い流れの中でまたそこをPDCAサイクルで回しまして、どうやって発展させていくかということを現在議論している最中でございます。ロードマップも多分大枠の中の一つの要素であろうかと思いますけれども、やはり包括的なことを示したときに、どこまで示さないといけないのか。また、そのとき本当に50年後となりましたら、今の研究方針、研究自体が要らなくなるんじゃないかというところもございますが、逆に、それはまたコアの方の部分で、最後までやはりだれかが監視しないといけないようなものが何かあるだろうと。それを国総研としてやっぱりコアとして、問題がなくても常に問題が発生するのを、いかに常に防いでおくか。その基準が腐らないようにちゃんとしておくか。そういうことを考え続けないといけないのではないかということを、コアと大枠の中で議論を今やっている最中という過程でございます。

(主査) 私からもちょっと感想を言わせていただきたいんですけれども、今やっぱり社会資本整備、公共事業に対して非常に批判が厳しいですね。そういう環境下であるからこそ、評価をツールにしたPDCAというのが必要なんだと思うんですけれども、過度にそれにとらわれると、私自身大学でそうなんですけれども、何か右往左往しているような雰囲気も非常に色濃くございまして、多分、国総研も同じような雰囲気があろうかと思うんですね。そういう中で、コアという新しいものを持ってこられて、長期的にこれがやっぱり非常に大事だよということを打ち出されたというのは、ある意味では非常に勇気があるけれども、いいことじゃないのかなというふうに思いますので、ぜひ、貫徹していただければありがたいなというふうに思います。

 それともう一つ、午前中もありましたけれども、その四つの柱と一つの総合化ということなんですけれども、総合化というのは美しいんですけれども本当に難しいですよね。午前中の事後評価でも、志は高く頑張ったんだけれどもなかなか厳しかったですという、そういうことを具体的にどうマネジメントしていくんだというのが、余りこの中になかったと思うんですね。ですから、これまでのプロジェクト研究のうまくいった点、うまくいかなかった点を含めまして、その辺もぜひ新しい方向性というのをご提示いただければいいんじゃないかなというふうに思いました。

(事務局) 一応、四つの柱、ここにございますように、安全・安心な社会の実現、誰もが生き生き暮らせる、などこういう形で四つあるわけでございますが、実際、国総研の中ではいろんな研究が流れておりまして、例えば技術基準の高度化といったら、すべてに係っているという形でございますので、やはり目的としてはこの四つであるんですけれども、それぞれ研究の課題という13本の課題で整理いたしましても、やっぱり完全に横断的に担っているのがありますので、この四つに対する総合的な手法という、こちらのはそういう形のまとめ方をしております。

(主査) ほかによろしいですか。

(なし)

(主査) そうしましたら、この件についても、これぐらいでディスカッションを終えたいと思います。

 以上で、本日の議事はすべて終了いたしました。

 全体を通じて意見等がございましたら、お願いをしたいんですが。

 大変だから、こんなのやめてとかですね、よろしいですか。

(委員) 事前評価のシートはどうするんですか。

(主査) 回収を後でしていただきます。事前評価用のシートを回収していただいて、先ほど申し上げたような方向で参考にして取り入れて評価書を作成したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 委員の皆さんには、長時間の議事でございました。まことに、熱心かつ建設的なサジェスティブなコメントをたくさんいただきまして、ありがとうございました。

 この後の進行は、事務局にお返ししたいと思います。

(事務局) どうもありがとうございました。 

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〈今後の予定について〉

 事務局より、今後の予定といいますか、手順についてご説明いたします。

 評価書につきましては、本日の審議の内容と評価のシート、今のコメントシート、それから事前の意見を踏まえまして、事務局で整理をいたしまして、主査にまとめていただくということで、よろしくお願いしたいと思います。

 また、議事録につきましては、昨年同様、速記録について最低限の修正をいたしました後に、委員の皆様に確認をしていただきまして、発言者名を伏せた形でホームページで公開するということにさせていただきたいと思います。

 それから、それら議事録、評価書、それから資料につきましては、最終的には報告書として取りまとめまして、また、皆様にお配りして公開するということにさせていただきたいというふうに思います。

 今後の予定につきましては、以上でございます。

 それでは、最後に、○○所長よりごあいさつを申し上げます。 

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〈国総研所長挨拶〉

(国総研) 大変長時間にわたりまして、熱心なご討議ありがとうございました。

 極めて温かいご指摘をたくさん賜りまして、若干、内心忸怩たる部分もございましたが、大変ありがとうございました。既に終わった研究につきましては、ご指摘いただいた点を踏まえて、さらに改善すべきというか、いろいろやらなきゃいけないところはやってまいりたいと思いますし、特にこれから始める部分につきましては、これもいろいろご指摘を踏まえて詰めさせていただきたいと思います。特に、一番最後の土砂の関係は、もう少しメリハリをつけた方がいいかなというふうに私自身も思っているところでございまして、それこそ、先ほどの大枠ですとか、コアですとか、それからCheckの意味合いは、そういうCheckではなくて、施策そのものが社会に対してどれだけ貢献したかというのをチェックしようという、かなりチャレンジングな試みなんですが、そういう意味の意識も少し置きながらメリハリをつけさせていただければというふうに思っております。

 重ねて、長時間にわたるご審議、あるいはご意見賜りましたことに御礼を申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

〈閉会〉

(事務局) 以上をもちまして、18年度の第1回国総研研究評価委員会分科会を閉会いたします。

 配布資料は、机の上の封筒の上に置いていただければご郵送いたしますので、よろしくお願いいたします。

 本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。
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