平成23年度 第1回 国土技術政策総合研究所研究評価委員会
議 事 録



1. 開会/国総研所長挨拶

2. 委員長選任

3. 委員長挨拶

4. 国総研研究評価委員会について

5. 議事

6. その他

7. 国総研所長挨拶/閉会


平成23年6月13日


1.開会/国総研所長挨拶

【事務局】  それでは、時間となりましたので、ただいまより平成23年度第1回国土技術政策総合研究所研究評価委員会を開会いたします。それでは、国土技術政策総合研究所長よりごあいさつを申し上げます。

【所長】  本日は御多忙中、私ども国総研の研究評価委員会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
 国総研は、この4月で10年が経過いたしました。同じく10年前に発足しました他の独立行政法人の研究所の研究評価委員会とは大分趣が違いますが、国の機関として、研究評価の大綱的指針の精神に基づいて、こういった形で外部の先生方から御指導をいただくということを10年間続けております。
 今年で国総研は10年が経過したということで、1つの区切りの時期として、多くの委員にお替わりいただきましたので、今日が初めてという委員もおいででございますが、後ほどこの評価委員会の性質等を御説明しますので、よろしく御意見等をいただければと思います。

 通常は、前年度の活動の御報告させていただき、今年度これからの研究の方向性等を御紹介して御意見をいただいておりますが、昨年を振り返りますと、ある意味、一言で言えば仕分けの年でありまして、特に土木研究所等の独立行政法人の研究所の見直しがかなりありました。そして、それと裏腹の国総研も、独法と比較して重複はないかということを常に問われまして、私どももかなり、自分たちの立場、あり方を議論させていただいて、自分たちの立つ位置がよく見えてきたかなと思っています。今日はその件をまずお話しすることになるかと思います。

 それから、今年度、来年度のお話をするにあたり、3月に東日本大震災がございました。こういった場合には我々は、やはり技術者の集団ということで、その日のうちから現地に飛んで、さまざまな活動をしております。この辺の報告を間に挟ませていただいた上で、地震を踏まえた今年度の研究、あるいは来年度の研究の予算要求に挙がっているような項目等を御説明して、御意見賜りたいと思いますので、長時間になりますが、是非よろしく御審議をお願い申し上げます。

 簡単ですが、あいさつにさせていただきます。


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2.委員長選任

【事務局】  それでは、今年度より委員の変更がありましたので、新たに委員長の選任を行いたいと思います。委員会設置規則第3条第2項によりまして、委員長は委員の互選により決定することとしております。どなたか委員長の推薦があればお願いをいたしたいと思います。

【委 員】  事務局からの御提案がございますでしょうか。もしございましたら、お願いしたいと思いますが。

【事務局】  事務局としましては、これまでも本委員会の委員をされておりまして、更に昨年度まで分科会の主査をされておりました○○委員を委員長として推薦いたしたいと思います。

                               (異議なし)

【事務局】   御異議もございませんようですので、○○委員に委員長をお願いいたしたいと思います。それでは委員長、よろしくお願いいたします。


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3.委員長挨拶

【委員長】  先ほど所長のごあいさつにもありましたが、国総研は10年が経過したということで、私も国総研ができた当初からこの評価委員会の委員を仰せつかっておりますので、もう10年間もやってしまっているということで、いまだに居残りを続けております。そういうことで、年格好からいっても委員長をせよということだと思いますので、一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 事業仕分けでいろいろなことがございました。研究の効率化ということからすると、ある種のいい効果、緊張感が改まったのではないかなと思います。ところが、所長もおっしゃいましたが、3月11日の震災で過度のピンポイントなファインチューニングというのは、いろんな意味でちょっと良くないのではないかということが分かってしまいました。あるいは超巨大リスクに対して、我々がどのように対処していくかということが重要だということも身にしみてわかったわけでございます。こういうのは、恐らく、社会資本整備、国土政策の視点を相当大きく改めるとともに、研究の進め方自体も過度なファインチューニングはやはり脆弱なものであるということも分かったわけでございますので、そういうことも踏まえて、きちんと批評すべきところは批評し、支援できること、このようにしたらいいのではないかという研究の質を高める上で助言できるようなことは一生懸命助言していきたいと思っております。委員の皆様方におかれましても、回数は少ないかもしれませんが、良い議論をして、良い評価というものの姿を追求していただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局】   ありがとうございました。
 それでは、以降の進行を委員長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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4.国総研研究評価委員会について

【委員長】  それでは、まず国総研研究評価委員会についての御説明をお願いしたいと思います。

【事務局】  資料2を用いまして、評価委員会の仕組みと本日の評価の進め方を御説明したいと思います。よろしくお願いいたします。

〔パワーポイント映写 以下、画面ごとに ・ の表示〕

・ まず表紙をめくっていだきまして、国総研の評価委員会でございます。研究内容や研究活動に関しまして、外部の委員の方々に評価や御意見をいただき、それを研究活動に反映していくということを目的として、政府の各種の基本方針などに準拠する形で設置している組織でございます。

・ 2ページ目でございますが、評価委員会の構成を示しております。本日お集まりの本委員会と、それから分野ごとの3つの分科会で構成しております。この本委員会の方では、毎年前年度の研究活動全般に対しましてさまざまなアドバイス、御評価をいただき、所全体の研究活動に反映させていただいております。これは研究所独自の取り組みでございます。また、政府の方針に基づく機関評価につきましても平成20年度に実施したところでございます。一方、分科会の方では、個別の研究課題について、事前、中間、事後の評価を行っていただいております。

・ 3ページ目に年間のスケジュールを示しております。本委員会は毎年6月から7月に開催しておりますが、近年はこの他、年度末にも自由な意見交換の場として懇談会を開催させていただいております。
 一方、分科会の方は、まず7月に国総研が直接財務省に予算要求いたしますいわゆる行政部費による事項立て研究につきまして、概算要求前の事前評価をいただいております。そして12月には、前年度終了課題の事後評価をいただいております。ただ昨年度からは、従来7月に行っておりましたプロジェクト研究、これは重点研究として国総研が自ら指定するものでございますが、このプロジェクト研究についても12月に事前評価を行うように変更いたしました。これは後ほど議題の中でも御説明しますが、国総研の研究の大部分を占めます国土交通本省から配分される事業予算による研究につきまして、7月時点で評価いただくまでの具体化がなかなか難しいということで、研究内容を詰める時間を確保して、12月に事前評価をいただいたというものでございます。

・ 昨年の例を次の4ページ目に示しておりますが、分科会を事前評価を2段階にしたことによりまして、12月に3件の事業予算による研究を評価いただくことになりまして、本年度も同様な進め方をしていきたいと考えております。

・ 以上が評価委員会の概要でございますが、次の5ページ目で本日の進め方を御説明したいと思います。本日評価、御意見いただく議題は3つとなっております。この3つは関連しますので、事務局から一括して御説明させていただきまして、その後、御議論いただき、お手元に配付しましたコメントシートに御意見を書き込んでいただきたいと思います。それらを委員長に取りまとめていただきまして、本日の委員会としての評価をいただきたいと思っております。
 なお、後日になりますが、評価結果は議事録も含めてホームページ等で公表いたします。従いまして、後日、各委員には議事録の確認をいただくことになります。また、報告書の評価結果の部分は委員長に一任させていただいておりますので、よろしくお願いいたします。評価委員会の説明、本日の進め方については以上でございます。

【委員長】  何か御質問ございますか。宜しいですよね。


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5.議事

 ・平成22年度の国総研における研究活動について
 ・東日本大震災発生直後からの国総研の活動について
 ・平成23年度及び平成24年度に取り組む研究

【委員長】  それでは、早速、本日の議事に移りたいと思います。3つ書いてありますが、ただ今御説明がありましたように、相互に関連しておりますので、3つ同時に説明をしていただいて、それから御質問とか御意見を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

【事務局】  それでは、まず1つ目の議題に関しまして、お手元の資料3で御説明したいと思います。御説明する内容は、大きく国総研の役割、平成22年度の活動、研究活動の事例となっております。

・ では表紙をめくっていただきまして、1ページ目でございますが、昨年度事業仕分けなどにより、国総研の役割が問われた状況を振り返ったものでございます。具体的には、事業仕分けが一昨年の11月に国の予算編成を対象に、続いて独法・政府系公益法人の事業を対象に昨年の春など、3回にわたって行われております。また、平成23年度予算の編成に向けましては、各府省版の事業仕分けとも言うべき行政事業レビューが実施されまして、国総研の独自予算、行政部費もその対象になったところでございます。
 昨年12月には、事業仕分けを受けまして、独法の事務・事業の見直しについて基本方針が閣議決定され、その中では国総研も含めて、国交省関係6独法の業務の重複排除などを抜本的に見直すとされたところでございます。
 こうした一連の議論は、国総研の存在理由、国総研と独法との違いを改めて問い直す機会になったと考えております。

・ めくっていただきまして2ページ目でございますが、国総研の位置づけ、独法との違いに関しては、実は国総研の創設時に遡りますと、明らかになってまいります。すなわち平成13年の省庁再編に際しまして、国が直接行う必要のない国の研究機関は原則独法化という方針のもとで、国交省の土研、建研、港湾技研も独法化されることとなったわけですが、そのときにどうしても国と切り離せない研究活動があって、それを研究機関としてまとめ、国総研が設置されたという経緯がございます。

・ 次の3ページ目には、比較のために、まず独法に対する国交省の関与を見たものでございます。独法は国交省から示された研究方針に対して中期的な研究計画を策定し、計画的に研究を進めます。予算要求も、研究課題ごとではなくて、運営費交付金として一括して申請交付されます。また国交省や総務省の設置する外部評価委員会において、研究所の運営について機関評価を受ける仕組みになっております。つまり、個々の研究課題に関する関与は、中期計画や運営交付金という緩やかなものでありまして、研究所としての自由度を持ってじっくり計画的に技術の高度化につながる研究を行うことができるという点が、独法の特徴であろうかと考えます。

・ それに対しまして、次の4ページ目に示しますように、国総研は本省と一体となった研究活動を行っております。本省は、国民に向けた政策を立案し遂行するに当たりまして、国会、マスメディア、地方自治体などに対して説明し、合意形成を図り、実行してまいります。国総研は、そのような本省が必要といたします政策の根拠となる技術資料や課題解決方法の提案、基準の原案の策定、災害時には現場の状況報告や必要となる新たな施策の提案などを行っております。その際には、独法や他省庁の研究機関、大学や民間の研究機関などとも必要な連携を図っているところでございます。このようにしまして、国総研は13研究部・センター、43研究室で、本省の各課の業務を常時一体となって支援しているところでございます。

・ 次の5ページ目でございますが、以上のような研究活動の特徴は、予算の種類を見ても明らかです。総額は平成17年度をピークとして年々削減されておりますが、ここで注目いただきたいのはこの内訳でございまして、赤色の行政部費と申しまして、国総研が自ら課題を設定し予算を要求して実施する、いわば国総研の独自研究の予算は1割程度で、ほとんどが水色の、事業に直結する本省の事業部局から配賦される調査費となっております。

・ 6ページ目でございますが、参考までに定員の推移を示しております。全体として減少傾向にございますが、研究員の人員は維持に努めている状態でございます。ただし、24年度あたりからは研究職についても厳しい環境が予想されております。

・ 続きまして、平成22年度の活動について報告いたします。7ページ目は、国総研が取り組みます6つの大きな研究分野に沿って、平成22年度の主要な研究の成果を示したものでございます。本日は時間の制約もありますので、このうち赤で示しております6つの研究について後ほど事例紹介をしていきたいと思っております。

・ 8ページ目でございますが、研究成果が施策へ反映された件数でございます。平成22年度は65件でございました。
 右の円グラフは、この65件を反映先別に分けたものでございます。法令に基づく技術基準が12件、ガイドライン・マニュアル等が33件、本省の委員会の資料や報告書が12件といった状況でございました。

・ 続く9ページ目が、災害調査および技術指導の件数でございます。平成22年度は、東日本大震災の影響もありまして、災害時の技術指導が95件と多くなっております。これにつきましては次の議題で詳しく説明いたしますが、その他にも奄美大島、広島の庄原、霧島、南大隅などの災害に出動しているところでございます。また海外のスマトラ島西方沖の地震・津波の被害についても調査を実施しております。
 災害以外の技術指導につきましては、右の棒グラフのように524件となっております。

・ 続きまして、10ページ目が研究成果の発信状況でございます。右上のグラフが学会誌等に投稿した件数でございまして、22年度は査読付きが134件、査読無しが407件で、合計541件となっております。緑色の棒グラフが研究課題数で、研究課題数以上の論文を発表しております。研究員1人当たりにしますと2件以上の発表になっております。
 左下の英文の発表件数は74件、うち査読付きが51件でございます。
 右下は論文の引用状況でございまして、赤文字の引用率で見ますと、国総研は44.3%ということで、他の研究機関と比較しても高い状況にあるのではと考えております。

・ 11ページ目が講演会でございますが、国総研では毎年12月に幹部職員が技術開発の今後の動向などについて講演いたします国総研講演会を開催しております。参加者も年々増加しておりまして、昨年度は754名の参加によりまして、盛況のもとに開催したところでございます。
 当日のアンケートでは、上の円グラフの紫と橙の約75%の方が「有意義であった」としております。下の円グラフの64%の方が「来年も参加したい。」とお答えいただいておりまして、前年のアンケートと比べまして満足度の向上を確認したところでございます。

・ 次、12ページ目がインターネットによる情報発信でございます。右上がトップページへのアクセス件数で、平成22年度は47万1,000件と、前年度から5万4,000件増加しております。左下が新着情報の件数で、平成22年度は144件と着実に増加しているところでございます。右下がメールサービスの登録者数で、22年度末現在時点で3,326名登録いただいております。昨年度は月1回の配信を月2回に増やして、よりタイムリー情報発信に努めているところでございます。今後とも積極的な情報更新など、インターネットの情報発信を充実していきたいと考えております。

・ 13ページ目が、アジアに向けた国際活動でございます。従来アジア諸国とは平成4年から昨年度まで研究所長会議という形で技術支援を行ってきたところでございますが、アジア諸国の中でも中国、韓国など成長、自立した国と、依然として支援ニーズが高い国々と二極化して参りました。さらに土木建築分野の高度な技術のアジアへの普及が新成長戦略に位置づけられ、国総研にも期待が寄せられているところでございます。
 こうした状況を受けまして、これからは我が国の技術や研究成果の普及に研究フェーズから取り組むことにしまして、従来の国際会議を中心にした方式から、より実効性の高い2国間関係の強化へ活動の重点をシフトしまして、当面はインド、インドネシア、ベトナムを中心に、関係機関や民間の参画も得ながら取り組んでいきたいと考えております。

・ 次の14ページ目に国別の活動状況を示しております。詳しくは説明いたしませんが、それぞれ覚書を締結し、プロジェクトを特定し、現在研究ロードマップを作成している段階でございます。最終的には、相手国の課題解決に貢献すると同時に、我が国の成長戦略にも結びつくような活動を展開して参りたいと考えております。

・ 次の15ページ目以降が研究活動の事例でございまして、6つの研究を順次紹介して参りたいと思います。
 まず15ページ目の研究でございますが、地震発生後にはこの右上の図にございますように、各種の情報が順次入手できますが、夜間や甚大な被害の場合には、施設の緊急点検が終わるまでに長時間を要します。そこで、情報が少ない段階におきましても、災害担当者や施設管理者が速やかな初動対応がとれるよう、震度のデータをもとに概略の被害状況を迅速に推測し提供する方法を検討したものでございます。
 これは簡単に申しますと、過去の類似する被害地震から概略被害を予測する方法でございまして、具体的には左下のように観測値が得られた場合、地震動指標ですとか地形状況、マグニチュードなどが類似する地震を過去の被害データベースから右下のように抽出いたしまして、その被害状況を地震発生後30分以内に災害担当者に提供する仕組みを開発したものでございます。今後は、別の課題にもなりますが、道路、河川などの施設ごとにより詳細な被害情報を推測できる手法の開発に取り組んでいるところでございます。

・ 次16ページ目でございます。数世代に渡りまして利用できる長寿命な住宅を実現するために長期優良住宅法が制定されておりますが、現在、制度を適切に運用するための技術基準が必要とされております。本研究はそのための技術的知見や根拠データの提示を行おうとするものでございます。
 成果の概要でございますが、1つ目としましては、新築時に確保すべき目標性能水準の提示を行っております。2つ目には、新築住宅の計画手法、管理手法として、ここに幾つか図のところに示しておりますが、共同住宅の住戸区画の可変性の評価手法、評価基準の案など、各種のガイドライン、指針を提示したところでございます。また3つ目としましては、既存住宅に対しましても目標性能水準や改修手法を提示しております。
 成果につきましては、新築時の目標性能水準につきまして、既に国の認定基準に反映されておりまして、住戸区画の可変性評価や既存住宅の目標性能水準についても今後の見直しに反映される予定になっております。

・ 続きまして17ページ目でございます。近年アジアの貿易量が増大する中で、国際フェリー輸送に対しましても国内輸送並みのサービスが求められる状況にございます。本研究は、そうした状況に対応した港湾の計画、整備、運営を行うために、港湾施設の国内基準、ゲートウェイ港湾の貨物量予測、地域経済への影響分析などを行おうとするものでございます。
 この研究は昨年度から始まりました4年間の研究でございまして、まだ1年でございますが、左の図にございますように、南が上になったような図で、青で示しておりますフェリー航路、赤で示しておりますRORO船航路を対象に、主要航路サービスや就航船舶の状況を整理・分析しております。さらに港湾施設の基準策定に向けては、日本、韓国の主要港湾について技術資料を収集、整理したところでございます。
 また、右の図のように将来予測モデルの作成に向けまして、複合一貫輸送のサービス比較などを行っております。例として図に示しておりますのが、上海―博多航路、上海―大阪航路の輸送コストの比較で、博多港の方が安価な地域を赤、大阪港の方が安価な地域を青で示しております。今後さらに研究を進めまして、最終的には港湾施設の技術基準ですとか港湾計画に反映させていく予定でございます。

・ 続きまして18ページ目の研究でございます。社会資本整備によります環境負荷につきましても、評価の基準となります原単位をもとに、低環境負荷技術を適正に評価、利用いたしまして、地球環境問題へ貢献することが重要となっております。しかしながら現状では、右上の表がございますように、資材によって海外の排出や廃棄時の排出が含まれないといったような原単位の定義が統一されていないということが大きな障害となっております。そこで、条件を同一とした原単位を作成しようというのが本研究でございます。
 成果の概要でございますが、建設時に利用されますすべての資機材について、産出条件を統一した原単位を整備することができました。また、社会資本整備は左の図のように、決定事項の異なります複数の意思決定段階がございますので、その各段階で必要とされる集約した原単位もあわせて設定したところでございます。
 右側が比較計算の例です。設計段階の例として防波堤の断面比較を挙げておりますが、工種毎に施工時の排出量なども含めて集約した原単位を作成することによって、様々なケースを容易に比較することができます。また施工段階では材料や機械などの詳細な条件の違いによる比較も可能でございます。
 成果はグリーン購入制度や入札契約制度などの活用を提案していく予定でございます。

・ 次に19ページ目でございます。国総研では分野横断組織であります気候変動適応研究本部を設置いたしまして適応策に取り組んでおりますが、今回は特に治水に関しての22年度に得られた知見を紹介したいと思います。
 左上の図は、気候変動に対応することによって整備労力がいかに増えるかということを、河道掘削量に置きかえて流域ごとに評価したもので、治水施策に与える影響度を簡易に把握することができました。
 左下の図は、最新の気象予測モデルを用いまして、100分の1確率の年最大降雨を算出したもので、モデルにより予測値が相当異なることを検証いたしました。
 中央の図は、降水量の変化が洪水流量、整備労力、氾濫リスクの変化へと増幅して伝播していくという特性を明らかにしたものでございます。
 以上のことから、今後の適応策の検討には相当大きな予測の幅を持って考えることが重要であるといえます。今後は、「今後の研究」のところに書いてございますが、従来の治水対策に加えまして、a)管理を高度化するなど整備効果を上げる方法、b)施策領域を流域全体へ拡大した方法、c)災害の起こり方をコントロールするような方法、こういったものにも研究を進めまして、これらを実際の河川に応じて効果的に組み合わせる手法を開発していきたいと考えております。

・ 最後の事例でございますが、20ページでございます。事務所建築、商業建築のCO2排出量は、家庭部門を上回る増加傾向が見られておりまして、その対応に迫られております。現行の省エネ基準では建物の使用条件を加味した評価ができないという課題がございまして、本研究は評価指標の高精度化を図ろうとするものでございます。
 成果の概要でございますが、1つ目には設備のエネルギー効率の評価指標ということで、最も影響の大きな中央管理式空調システム、それから建築内部のOA機器などを対象としまして、運転状況に応じたエネルギー消費特性や消費電力を把握しまして、簡易なパラメーターからエネルギー消費量を予測する手法を開発しております。
 2つ目は、建築物のエネルギー消費量の評価指標で、設備ごとの予測手法を明らかにし、それを統合した建物全体のエネルギー消費量手法を提示したものでございます。
 本研究の成果は、業務用建築の省エネ基準の見直しに反映していく予定でございます。
 以上、昨年度の研究活動でございます。

【事務局】  続きまして、東日本大震災に対応した国総研の活動について、資料4で御説明したいと思います。

・ まず表紙をめくっていただきまして、2ページ目に今回の地震の特性を示しております。プレート境界で起こりました海溝型の地震でございまして、断層の長さ450km、幅が200kmと極めて大きな断層でございました。またマグニチュードが9.0と、国内観測史上最大、主たる破壊の継続時間も3分程度と長かったこと、また大津波を伴ったこと、規模の大きな余震が多発したことなどが大きな特徴でございます。なお、この地域で従来想定されていた宮城県沖地震を大きく超える規模の地震でございました。

・ 次の3ページ目に、今回の地震による施設の被害の特徴を整理しております。
 まず、想定を超えます高さと強さの津波が、沿岸部の多くの施設に甚大な被害を与えたことが最大の特徴でございます。更に長時間続いた強震によりまして、液状化や地盤沈下が起こりまして、河川堤防、住宅地、下水道などに大きな被害が発生しております。
 その一方で、揺れ自体による構造物などの被害に関しましては、平成7年の兵庫県南部地震に比較すると少ない状況でございました。
 また土砂災害につきましても、従来の内陸直下型地震で発生したような河道閉塞を伴うような土砂災害は少ない状況でございました。

・ 次の4ページ目は、発災直後から今日まで国総研が実施した調査や技術指導につきまして、全体像を簡単にまとめたものでございます。後ほど施設ごとに少し詳しく説明しますので、ここでは全体的な傾向を御説明いたします。
 まずこの表は、横方向に災害対応の3つの段階、緊急・応急、復旧・復興、今後の震災に向けてといたしまして、縦方向の各施設毎に、この3つの段階でどのような活動をしたのかという形で整理しております。
 まず最初の緊急・応急段階ですが、ここでは主に国土交通省のTEC−FORCEの位置づけで専門家を派遣して現地の技術支援を行っております。少し特徴を述べますと、上から道路、港湾、空港の3つがいわゆる交通インフラでございまして、救急救命活動や緊急輸送手段として真っ先に機能回復が望まれるものでございます。これらは、早期の供用開始を目指しまして、安全性の判断、緊急復旧の指導などに最優先に取り組んだところでございます。
 次の河川、海岸、砂防は、災害防止施設でございまして、所要の災害防止機能を早急に回復するための被災状況調査を実施したところでございます。
 下水道施設につきましては、本省と一体となりまして、自治体に対して緊急対応のための技術指導を行ったところでございます。
 建築物に関しましては、今後の技術基準見直しに必要な情報を収集するために現地調査に入っております。
 復旧・復興の段階に関しましては、今回想定を超える外力だったことから、基準の策定や見直しも必要になってまいります。そこで、今後の震災への対応にもつながる形で多くの分野で委員会が設置されまして、検討が進められております。国総研もそれらに参加して研究活動を行っているところでございます。

・ 次の5ページ目が現地への派遣状況でございます。多分野に渡っておりますが、6月10日現在で延べ110名を派遣したところでございます。

・ 次の6ページ目でございますが、以上のような活動を通じて得られた各種の情報につきましては、広く関係者に公表して今後の防災対策や研究に活かしていただくということも重要な使命と考えておりまして、国総研ホームページに東日本大震災の特設ページを直ちに設けて情報発信を始めたところでございます。更に4月26日の東日本大震災調査報告会を皮切りに3回の調査報告会を開催し、いずれも募集直後に定員に達するほどの反響がございました。また国総研資料という形で報告書も近々に刊行する予定でございます。

・ 次の7ページ目からは、分野別に活動事例を簡単に紹介して参ります。
 まず道路分野でございますが、左に被災状況を示しておりますが、地震動に関しては古い基準の橋の支承部周辺の損傷が多数見られております。また液状化に関しましては、橋台の移動だとか背面盛土の沈下、津波に関しては上部構造の流出などが見られております。
 地震発生直後の活動が右上でございますが、道路施設は人命救助や緊急輸送のために早期の供用のための安全性評価が重要でございまして、橋梁の被災調査を国総研が直接行う他、道路管理者に対して技術指導を行ったところでございます。その後は右下のように本復旧に向けまして、東北地整に対して流出した橋梁の下部工の健全性評価について支援している他、茨城県に対しましても県が設置します橋梁等応急対策検討会に参加し、復旧工法の指導などを行っているところでございます。

・ 次の8ページ目が港湾分野でございます。港湾施設は、左の写真のように地震動や液状化によって岸壁やエプロンが被災しておりますし、津波によって各所で防波堤が甚大な被害を受けたところでございます。これらに対して、各種の被災状況調査を実施しておりまして、具体的には浸水深の計測ですとか、防波堤など津波による被災状況、岸壁など地震動による被災状況、合わせて技術支援として施設の安全性評価について情報提供などを行っております。
 また、現時点では災害復旧や基準の改定に向けまして、東北地整が設置した技術検討委員会へ参加する他、岸壁など耐震設計の技術指導、技術基準の見直しに向けました検討などを実施しているところでございます。

・ 次の9ページ目が空港分野の事例でございます。空港分野につきましては、仙台空港が大きな被害を受けたところでございます。左の写真のように、地震動や液状化によって滑走路のクラック、エプロンの沈下などが発生しております。また、津波によりまして冠水や土砂などの漂流物の堆積がございました。空港施設は緊急輸送のために機能回復が急がれますので、直ちに現地に入り、緊急輸送機の供用判定を主目的にした被災状況調査を行いまして、3月16日からの米軍による緊急輸送の開始に結びついたところでございます。
 次に民航機の運行災害に向けて必要となる路面調査などを行いまして、応急復旧工法を提案して、4月13日からの民航機運行再開に結びついたところでございます。
 現在は本格復旧に向けて、右下の写真にありますエプロン部の損傷に対して、地盤改良による液状化対策、舗装の復旧断面の検討などを行っているところでございます。

・ 続きまして、10ページが河川分野の事例でございます。左の写真のように、地震動、液状化によりまして、堤防の沈下や崩れなどの損傷が多数発生しております。また、津波によって法面の浸食や洗掘などが発生しております。
 これらを受け、右上の被災直後の対応としましては、2回に渡って専門家を派遣して、堤防の被災状況とその要因の調査を行い、結果を最速のものでは2日後に河川管理者に報告したところでございます。また津波につきましては、河川管理者が津波遡上痕跡調査を的確に行えるよう、調査の留意事項を整理し提供したところでございます。
 また右下のように、出水期に向けて復旧が急がれたことから、本省に設置された堰・水門等技術検討委員会、同じく本省に設置されました河川堤防耐震対策緊急検討委員会、その下部組織の各地整の技術検討会に参加しているところでございます。

・ 続きまして、11ページ目が海岸保全施設でございます。海岸施設につきましては、津波による被害が甚大で、左の写真のような堤防の全壊や、波返し工の倒壊などの被害が発生しております。
 発災直後の右上の対応でございますが、津波の痕跡調査は今後の対策や基準を見直す際に重要なため、発災直後から痕跡調査を直営で行う他、直轄事務所に技術指導を行ったところでございます。さらに、県管理の海岸施設につきましても実際状況を調査し、台風期に向けた対策について技術指導を行ったところでございます。
 現在は、右下に示しますように、本省河川局の要請を受けまして、津波外力や堤防の効果などについてシミュレーションを行っており、海岸4省庁の津波対策検討委員会に復旧検討の前提条件として提供する予定でございます。

・ 12ページ目でございます。砂防分野の活動でございますが、土砂災害につきましては地震動によりまして広範囲で斜面崩壊や地滑りが発生しておりますが、平成20年の岩手宮城地震のような大規模な崩落は発生しておりません。
 国総研の活動としましては、右上のように、人命に係わる緊急的な対応として現地調査・技術指導を行っておりまして、写真は水戸市で避難指示が出された箇所の事例でございます。
 また右下のように、土砂災害の全容を把握するために、発生直後にはヘリコプターによって強震地域の被災状況を調査した他、危険度の高い砂防施設については直接陸上踏査を行ったところでございます。また、頻発する余震で危険度が高まる中で、降雨による土砂災害が懸念されますので、砂防学会の委員会での検討にも参画しているところでございます。

・ 次は下水道分野の活動でございますが、13ページ目でございます。下水道につきましては、下水処理施設と管渠に分けております。
 まず処理場につきましては、相当数が沿岸部にあり、津波によって広域的に大きな被害が発生しております。こうした状況下では、右上のように処理機能を失った施設の対応が急務で、国総研では下水の溢水に対する消毒の目安などを自治体に示したところでございます。さらに引き続き、残存施設を利用した簡易処理の方法、バキューム車による搬出など、さまざまな指導を行ったところでございます。
 復旧に向けては、国交省と下水道協会が設置した技術検討委員会、これに国総研も事務局として参加し、緊急提言ですとか段階的応急復旧のあり方について検討しているところでございます。

・ 次の14ページ目が下水道管渠でございますが、左の写真のように東京湾岸の埋立地などでは主に液状化によって、東北地方では地盤沈下によりまして管渠やマンホールの隆起、土砂による閉塞などの被害が広域に発生しております。
 右上のように、発災直後には被災自治体に対して復旧工法のアドバイスを行った他、耐震設計された施設の有効性などについても検証を行ったところでございます。
 今後の復旧に向けては、先ほどの委員会においてマンホールの浮き上がり防止対策や液状化被害への対応策を検討しているところでございます。

・ 最後は建築分野でございます。地震動に関しましては兵庫県南部地震より被害は少なかったのですが、左の写真のようにRC造りで、中間層の崩壊、柱のせん断破壊、木造建築物の崩壊などが見られております。また液状化に関しては、住宅の沈下、傾斜、宅地の段差などが発生し、津波に関しては転倒、移動、流失などが発生しております。
 国総研の発災直後の活動としては、まず延べ33名が大きな震度が観測された地域に入り、被害要因と建物の構造から被害の特徴を分析するなど、建物全般に関する被災調査を実施しております。また個別にも、茨城空港の天井落下や公営住宅の倒壊危険性について、現地に専門家を派遣して調査したところでございます。
 現在は、国総研に設置している建築構造基準委員会において、今回の震災を踏まえた各種の検討を行っているところでございます。
 以上、ちょっと駆け足でございますが、今回の被災を受けました国交省の活動でございます。

・ 続きまして、資料5で3つ目の議題を御説明したいと思います。こういった地震被害等を受けまして、23年度以降どのように研究に取り組むかということでございます。

・ 表紙をめくっていただきまして、2ページ目に研究の概要ということで示しております。まず国総研では、一番上に◇で示しているとおり、これまでの想定を超えた今回の災害ですので、従来の考え方にとらわれない対策、あるいは現在進行している高齢化や人口減少といった大きな社会構造の変化、こういったものも踏まえる必要があるという認識から、具体的な研究に先立ちまして、所内に地震・津波対策勉強会を設置し、4月初旬から4回ほど開催いたしまして、情報や認識の共有を図ったところでございます。
 下の2つの◆では、今回の震災を受けて取り組む研究を大まかに年度毎に分けて見たものでございます。平成23年度は、主に復旧・復興に役立てるための研究となろうかと思います。具体的には、被災状況の詳細な把握や原因究明、復旧方法の検討などがありまして、これらは復旧仕様などに反映されることとなってまいります。
 平成24年度以降、これは23年度から始まる部分もあろうかと思いますが、将来想定されます激震災害に備えた各種施設の基準見直しの研究、防災対策を支援する研究などを行いまして、これらは基準の改定や防災計画などに反映されていくことになると考えております。

・ 3ページ目には、今回の震災を受けまして、今年度既に取り組みを始めている研究の事例を紹介したものでございます。
 1番目が、復旧計画の前提となります津波シミュレーションを行って、海岸4省庁の津波対策検討委員会に提示するための検討でございます。
 2番目が、従来の液状化判定手法を検証しまして、判定法の高度化を図る研究でございまして、国交省の液状化対策技術検討会議に反映される予定でございます。
 3番目が、下水道施設の段階的復旧方法や津波対策に対する検討で、これも技術研究検討委員会に反映される予定でございます。
 4番目が、被災状況を踏まえて、従来の津波避難ビルの基準を見直すための研究でございます。
 5番目が、港湾や背後地の津波について検討して、国交省の交通政策審議会の検討に反映される予定の研究でございます。
 今後、これら以外にも、補正予算で取り組む課題も出てくるかと考えております。また24年度にかけて、各種基準の見直し研究がされると思いますが、これも本省の事業調査費などでいろいろな課題が挙がってくるのではないかと考えております。

・ 4ページ目でございます。以上のように震災対応の研究をいろいろ急遽始めておりますが、もちろん震災以外にも中長期的に取り組まなければならない課題が多数ございます。ここでお示ししたのは、23年度以降にも継続的に取り組んでいく主な研究で、国総研のプロジェクト研究を示したものでございます。
 「安全・安心な社会の実現」「成熟社会への対応」「成長力・国際競争力の強化」「環境と調和した社会の実現」「地球規模の気候変動への対応」「国づくりを支える総合的な手法の確立」といった6つの重要な研究分野それぞれに着実に研究を進めていきたいと考えております。

・ 最後に5ページ目です。これはこれから予算要求して行くもので、まだ予定でございます。平成24年度の新規課題として研究所独自に概算要求していこうとするものを示しております。上から4つが今回の大震災を受けた大規模な自然災害に関する研究でございます。そしてその他にも、下の3課題、建築基準に関するもの、環境に関するもの、高度情報技術に関するものにも取り組んでいきたいと考えております。これはあくまでも行政部費による研究でございまして、この他にも本省の事業費で行う研究も今後具体化を図ってまいりたいと考えております。
 以上、大変駆け足になりましたが、3つの議題について資料の説明を終わらせていただきます。

【委員長】  ありがとうございます。たくさんの内容を要領よく説明をしていただきました。これから質問とかコメントをいただいて参りたいと思いますが、委員の皆様には、適当に時間を見繕って、コメントシートへの記入もお願いしたいと思います。
 それでは、資料3、4、5と御説明いただきましたが、余り限定せずに、どこからでも結構でございますが、いかがでしょうか。どなたからでも結構です。

【委 員】  口火を切るという意味で幾つか気がついたことを申し上げたいと思います。まず資料3の10ページの研究成果の発信というところで、いろいろなところに研究成果を発表していらっしゃるということなのですが、考えてみますと、研究所ですから、第一線の研究者をそろえているというのを外に向かって示す必要があると思うのです。そういう意味で見ると、国際ジャーナルの、査読付きのジャーナルがどのくらいあるとか、論文賞を取ったというような項目もあって、国総研は研究者のラインナップとしてスターリサーチャーを何人も抱えているのだということをアピールできるような資料にした方が良いと思うのです。現実に国総研には立派な研究者がいっぱいいらっしゃって、大活躍をして世界的にも有名な人がいます。昔のことを考えれば、例えば港湾技術研究所に合田良実先生という方がいらっしゃいまして、あの先生はまさに世界のトップで誰にも追随を許さない研究者でしたから、そういう人が今もいらっしゃるのに、何かそういうことがわかるような資料がここにないというのは、私には不思議にも思えるのですが。研究所なので、10ページの資料のように平均的にレベルが高いのだという主張ではない部分もあって良いと思いました。
 その次は13ページです。国際活動ですが、国総研の立場から見るとアジア、成長力のあるインドというのがクローズアップされてくるのはよくわかるのですが、日本全体としてどの国を重点的にやっていくかというのは、もう少し大学教育の立場も考えていただけたらなと思ったのが感想です。というのは、日本の大学ももう二十数年前に英語を使用言語とした留学生の教育を始めて、日本の大学で博士を持った人材を次々に母国に送り返していったわけです。一応アジアは完成して、今はアフリカから有為な人材を招聘しようとしており、少し変わり始めたわけです。恐らくインドとインドネシアやベトナムでは、アプローチの仕方が違っていて、インドネシア、ベトナムというのは日本の大学院で教育を受けて向う側の人間になっている人がたくさんいるので、そういう人たちを活用するというアプローチをしていただきたいと思います。それに対してインドでは、日本の大学は人材招聘の競争に負けておりまして、有為な人材の多くをアメリカに取られてしまって、なかなか日本に来なかったのです。ですから、インドだけは日本で教育を受けた有為な人材がたくさんストックされているという状況にはないので、インドとインドネシア、ベトナムは違うということを前提にアプローチをしていただければと思います。せっかく親日的な人たちがたくさんいるので、それを国総研も使って日本に留学した人は生涯にわたって日本からのいろんなアプローチがあって、いろんな活動を日本とともにやっていけるのだというようなイメージがそれぞれの国で出来上がるように、日本のこれまでの人材の育成を踏まえて何かやっていただければと思います。そういう意味で言うと、そろそろアフリカも適切な時期になってきまして、少なくともタンザニアはかなり日本留学組の人材の蓄積が進んだところです。東アフリカは今、経済成長が著しいので、将来性があると思います。
 3つ目は、今後の取り組みです。資料5で「震災を受けて取り組む研究の概要」というのがあって、従来の想定にとらわれない地震、津波を対象にするのだとあります。これはそうなのですが、今回の震災を受けて国土技術の政策を考える意味では、役割の分担ももう一度考え直すようなところがあっていいと思うのです。津波の例で言うと、地震のことは地震学者に任せて、津波の研究者は土木の人が多いのですが、土木の人が津波の分析をして、その後、最終的には市町村レベルの方が地元の避難計画をつくるという役割分担でやってきたのですが、どうも役割分担を厳密にし過ぎたがゆえに地震学者の主張の限界が、市町村レベルの防災計画の担当者まで伝わってないことがたくさんありました。津波の研究者も地震学者の言うことを少し信じ過ぎたかなとも思います。地震学者たちがやっていることの限界をきちんと考えなければいけなかったかなと思っているのです。今の役割分担のまま国総研がこの部分に自分は取り組みますと言うと、相変わらずどこかで1つ前の段階がブラックボックスになるようなことが起こってしまいます。恐らく、これはだれもよく考えてないような気がするので、国総研が率先して、これからの防災に関して、少なくとも社会インフラに関しては、地震から最後の避難計画まで一貫して取り組む、全体のシステムを把握している人がどこかにいるのだということを示せるような新たな取り組みをしていただけると、役に立つだろうと思いました。
 以上3点、申し上げました。

【委員長】  ありがとうございます。何かございますか。

【所 長】  最初の点なのですが、国総研はスタープレーヤーがいる研究所ではありません。それを最初に申し上げたつもりなのですが、独法と国総研に分かれるときに、独立して立っていける、あるいは技術の高度化というキーワードに代表されるような部分は独法が担って、本省と不即不離で、24時間べたっとくっついてやっているようなところ、本省がもう手放せないところを国総研で集めていますので、どうしても行政経験の方が長い研究職員が多いのです。10年前、生涯一研究者という人はほとんどいない研究所に変わったことを、実は余り意識せずにやってきて、研究所という名前を何とか高めるために大分苦しい思いをしてきました。昨年は本来期待されていることと少し離れ過ぎたのではないかという反省があって、その辺を整理したのが最初の資料ということになっています。

【国総研】  国際活動についてですが、特にアジアについて御紹介したというのもあるのですが、インド、インドネシア、ベトナム、これは国全体の重点国でもあります。それから、インド、インドネシア、ベトナムについて、私がここ数年係わった感じで言いますと、インドネシア、ベトナムからは多くの留学生が来ているかとは思うのですが、向こうの研究所の中での日本の経験者ということで申し上げますと、インドネシアは公共事業省、ベトナムは交通省なのですが、100人に1人か2人ぐらいかなと思います。特にベトナムの場合、社会主義なので上の層が東欧圏あるいはロシアに行かれています。若い層につきましては、例えば埼玉大学政策研究所にいたとか、そういう人が若干いるような感じです。
 先ほどの説明、短い中ではちょっと端折られていたのですが、アジアとの関わり、特に中堅、若手のネットワークをつくっていこうというようなことを今やっておりまして、まさに御指摘のように、学生時代からかかわっている人はもちろんですが、今後10年、20年とつき合っていきましょうということで、戦略の1つとして立てております。次のページにございますように、かなり上の大臣、副大臣といった方がすごく反応されておりまして、要はお金も要るのですが、国土の持続発展の基盤のナレッジネット、人のネットワークがほしいということを例外なく皆さんおっしゃっています。向うとの数々の共同のイベントにもそのあたりの幹部の方が出てこられて熱弁を振るわれているというような状況がございますので、御指摘いただきましたような長期的なフォローアップをしっかりやっていきたいと考えております。
 インドは、正直、非常に難しい国でございまして、我々もそうなのですが、向うサイドがすごく大きな国で、州がかなり独立して非常に多様な国ですので、向うの調整にすごく時間がかかっているなというのが率直な印象としてございます。
 もう一点、御指摘のありましたアフリカですが、所内のマンパワーも見ながらなるべく取り組んでいきたいとは考えております。まだアジアを数年始めた段階ですので、そのあたりの反省も踏まえて今後は展開を考えたいなと、考えております。

【国総研】  津波についてですが、3点目の御指摘は大変重要だと思っております。国総研としても、例えば外力がこうなると専門家の方に言われて、それをそのまま受け取って自分の役割を果たして次に渡すというのでは、もう済まなくなってきたなと。例えば外力にはかなり不確実性もあるとするならば、地域の守るべきエリアを見たときに、この線を越えるとこういうことになるとか、そういう地域の方の脆弱性を理解して、それを逆にその外力を決める専門家に返すとか、両方に対してオーバーラップをするような研究を今後もっと積極的にやっていかないといけないということを強く認識しております。まだ今までの仕事の仕方と若干違うところもあるので、不慣れな部分はありますが、是非進めていきたいと考えております。
 ちなみに、資料3の19ページに、これは大震災の対応のみならず災害全般に言えることで、19ページのような気候変動についても、将来どれぐらい雨が強くなるかということと、それを受けてどういう被害が生じるか、それに対して何をしなればいけないかということを何とか一通りつないで、我々としてはどれぐらいの精度を逆に気候を予測する方に求めるか。それを受けて、どれぐらいの不確実性を前提にして、どれぐらいの幅の施策検討をすべきか。何とか両方をブリッジするようなことを防災施策全般について今後より強めていきたいと思っております。ありがとうございました。

【委員長】  1番目のことはそれでよろしいですか。ちょっと仕方がないということで。

【委 員】  私は初めてなので、いろいろお聞きしたいと存じます。まず資料3でしたか、こんな素晴らしい研究を続けておられるのだなというのを初めて認識いたしました。ただ今の、委員の質疑・応答の中で、ちょっと気になる点があるのですが、私は研究者にとって国総研は非常にユニークな研究所であると思います。それは、国政と、現場のいろんな課題に直結した研究をやっていて、普通の大学でも他の研究機関でもなかなかできないことであります。確かに最先端というのは大事なのですが、最先端よりも包括的といいますか総合的な視点をもって、政策を組み合わせた研究機関で、そういうユニークさが研究者にとって魅力になるような研究が行われ、そこで人材が育成され、国内外との人事交流が行われるのは、大きなメリットだと思うのです。先ほど、どちらかというとネガティブにおっしゃったような気もするのですが、非常に良い、これは他になかなか真似出来ない研究機関だと思いますので、そこを売りにして、ここは魅力があるのだから、もっと大学やいろいろなところと交流を持って、例えば5年でも一緒に共同研究をやろうというのがあってもいいのではないかと思っております。

【所 長】  まさにユニークな研究所で、国土交通省の職員が主体になって形成している研究所です。独法と分かれる前でしたら、研究所主体の人間に行政ベースの人間が一部入っている研究所だったのですが、2つに分かれてしまったので、どちらかというと、行政のサポートグループに重心を置きましたので、その辺はどうしても頭を切り変えざるを得ないところがあります。ですから、行政経験の豊富な人間が研究所に3年、あるいは5年というのはあまりないのですが、そういう中で、それぞれがどんな分野の技術あるいは政策に貢献できたかということを、それぞれの尺度で達成感として持てるように指導はしているのですが、それが例えば、非常に高度な論文集に論文が載ったとか、そういういわゆる研究所としての尺度で計りますと、逆にみんな下を向いてしまうところがありますので、その辺は一番運営が難しい研究所で、そういう意味でユニークなところかなと思います。うまく伝えられないかもしれませんが。

【委 員】  どんなことが起こっているかと申しますと、津波合同調査グループが立ち上がって津波の研究者間で相談としての話をしている中に、もちろん国総研の海岸工学研究者の方が来ていらっしゃるわけです。彼らが我々の仲間の中で大きな発言権を持っているのには幾つか要素があって、その中でもいつも学会に参加して良い論文を発表していて、我々が彼らを仲間だと思っているというのが大きい要素なのです。そのときに彼らは、学会内だけで話しているわけではなくて、本省ともつながりがあって、我々の中で話していることを本省が相手でもやりとりできるような立場にあるということです。この2つの意味で彼らは非常に有利な立場にあるのです。1つ目の、平素から我々が自分たちのピアとして、ピアというのは要するに同じレベルで研究の話ができる仲間として思っているというのも、これも重要なことで、調査に行くときに、彼らが測ったのだから大丈夫だとか、彼らにはこれが任せられるとか、我々とどう分担しようとかいう話ができるのも、やはり日頃一緒に研究をしているからだと思っていただきたい。そういう意味では今研究している方はレベルが高い方たちなので、それを評価しつつ、今後も学会でも活躍できるような立場を与えていただければ、我々としてもうまく一緒に仕事がやっていけると思っております。

【所 長】  分野によりますので、一般論として言いにくいところがあります。その部分を除いてしまうと、実は研究所というのは要らなくなってしまうので、しっかり学会に顔を向けて自分たちのレベルを学会の先生方とちゃんとお付き合いできるようなインセンティブはしっかり保っていきたいと思います。

【委員長】  私も所長がおっしゃったように不即不離で、そういう人事運用をするということは、例えば所長は行政経験もおありですが、かなり長い間土木研究所及び国総研におられるわけです。そういう方で立派な業績を残しておられる方がたくさんおられていて、そういう方が中心になって、それだけではありませんが、独自の視点で研究されてきたことが、結果的にとは言いませんが、実務、行政で大変役に立っている事例とか、あるいは学会でも注目を浴びた研究事例がたくさんあると思うのですが、そういうものは、もうこの際要らないという感じですか。
 言い過ぎかもわかりませんが、私が受け取ったのは、行政の御用聞きになるということかと。部によって違うと思いますが、道路研究部のような、形をデフォルトスタンダードにするという感じなのですか。決していいアイデアだとは思いませんが。道路研究部が悪いと言っているわけではないですよ。ああいうすごいところにおられながら、立派な研究成果を上げておられるなと思って、尊敬申し上げておるのですが、もう少しその辺の人事運用も含めて考えた方がいいのかなと。少なくとも外部にいるとそういう風に見えますが。

【所 長】  そのように言っていただくのがごく自然だと思うのですが、人事がどれだけ我々の思うようにいけるかどうか、そのあたりもなかなか難しいところがあります。少なくとも、今、先生方に言っていただいた方向をできるだけキープしようとは努力しております。ただし、思うに任せないいろんな事情の中でやっているということ、それから余りそこに力を入れ過ぎると、必ずしも研究志向じゃない人もウエートとしてはたくさんいるものですから、そのあたりをうまく、それぞれが力を発揮してもらうというのが、我々の仕事の非常に大きいところですので、若干御理解いただけるとありがたいと思います。決して後ろ向きで、全然要らないとかやめてしまえとか言っているわけではありません。

【委 員】  今、研究者の皆さんのやりとりを伺いながら、こういう専門家の皆さんが政府というか日本の政策に活かすため、どういう風に生きた研究をするか、そういうことを考える場があるということがとても大事だと思いながら伺っていました。どういうことかといいますと、実は今回資料4でお話しいただいた4月26日の東日本大震災調査報告会です。私はこの日、聞きに伺ったのです。そうしたら余りの人の多さに、ずっと後ろの壁にへばりついて立ちながら、最後までずっと立って聞いていたのですが、私はそのときに、やはりこういう大きな震災に出会った日本で、国土交通省の機関として、いろいろな分野の方が一斉に被災地に飛んで、現状把握に努めていただいたということが、やはり国に直結している研究機関の役割というか、素晴らしさなのだと、私は感動して伺っていました。こういうときのために、仕分けにめげずにきちんとした体制を整えておくということが、日本にとっての、日本に住む人にとっての安全・安心につながるのではないかと思います。こういう機関が日本の中にちゃんとあって研究を続けているということに、プライドを持って、しっかり続けていただきたいなと、ずっと立って伺いながら考えておりました。
 それで、実はそのときにはマスコミの方と関連の研究者の方、あるいはコンサルタントの方とかそういう方が多いのかなと思ったのですが、一般の人はもちろんほとんどいない会場でしたが、今後こういう研究や状況把握をどのように基準の見直しや復興に活かしていただくかというところが、国民に安心感として伝わってくることこそ、大事なことなのではないかと思いました。もちろん研究所の皆さんが発信することに余りエネルギーをかけ過ぎると研究が進まないので、そこはうまくバランスを見ながらやるしかないとは思うのですが。
 その点で資料4の4ページの「国総研が実施した調査・技術指導等の対応」として、具体的には全部委員会へ参画したと書いてあるのですが、委員会に参加しながらどういう基準の見直しに対して情報提供しているとか、もう少し内容がわかるような言葉にしておいていただいた方が、今後こういう書類が外部に出ていったときに、こういう研究をどう活かしているのかということが見えるのではないかと思っています。
 なお、今後基準の見直しなどに活かし、最終的にどのように日本が立ち直って復興しているのかというようなことを、日本国内だけでなく世界にきちんと発信していくことも大事だと思いますので、少し時間はかかりますが、きちんと担っていただければ大変うれしいと思います。
 なお、具体的な話なのですが、資料5の4ページの「平成23年・24年度に取り組む震災対応以外の主な研究」のひとつに「地球規模の気候変動への対応」と書いてありますが、今後この辺の分野と「安全・安心な社会の実現」と相まったようなところが非常に増えてくると思いますので、対応していただければと思います。
 なお、「低炭素・水素エネルギー社会に向けた都市システム技術の開発」に関しては、今回、原子力発電所事故でエネルギーに対する社会の関心が増えてきており、まず自立分散型で地域がエネルギーを確保していって、それを社会基盤として大規模電源がどれだけ支えるかという、新しいエネルギーのあり方への大きな変革を早めている感じがします。そういう社会資本整備にも大きく影響するような状況が起こってくると思いますので、これからのまちづくり、都市づくりに対する対応というのを広い範囲で捉えて参画していっていただければありがたいと感じています。どうぞよろしくお願いします。

【委員長】  何かありますか。

【所 長】  本当にいろいろ御期待いただいて、本当にありがたく思います。その前に、後ろで立っておられるのを見つけたのですが、私も身動きとれなくて対応できず、大変申し訳ないことをいたしました。
 この資料の書き方はいろいろ参考にしていただきたいのですが、我々の仕事の予算の90数%が事業費だと申し上げたのは、我々は本省、国土交通省そのものなのですね。だから国土交通省が何がしかを打ち出したときには、多くの場合必ず裏に我々がいるのです。だから、時々ちらっと、あれは国総研がやったのだということが見えるのはすごくいいのですが、余り我々が先立って結論めいたこと言うと、ちょっとブレーキがかかったりまずいことがいろいろあるものですから、恐らく、ほとんどの各部署の人間はその辺は非常に気を使いながら仕事をしているのだと思います。
 最後のエネルギーの話等々は、これは先ほどの資料ではうまく表現がされていないのですが、10年経っていくにつれて我々の環境、人口構成も大きく変わるし、10年経てば技術革新も恐らく今回は大分アクセルを踏まれたので進むだろうし、そういうことをしっかりと読むような形で、今を前提条件として仕事をするのだけはやめようという話は、かなり強く指導しているつもりですし、勉強会などもいろいろやっている、そういった努力はしているつもりです。
 地球規模の話で、何かありますか。

【国総研】  今回の津波災害と、それから気候変動の先ほどちらっと御説明したことは非常に関連していまして、非常に大きな進むべき流れが見えてきたと思っております。それはまさに対処すべき災害の外力を点でとらえるのではなくて、かなり増えていくものととらえて、それに対して一体我々はどういうシステムを持っているのか。両方を睨みながら、それぞれにどこで我慢して、どこで粘り強くしていくかということをトータルに捉えないと、点で何か物を決めていくというのは無理だなと。それは実は気候変動への対応もそうですし、津波の災害、先ほど柴山委員からも御指摘いただいたように、その辺、我々の安全・安心を保つための次の方策がかなりはっきりしてきたので、何とかそれを我々が持っている現場の力をうまく組み合わせながら、実践的な何か方策にパッケージとして出していけるかどうか、この辺がこの1〜2年の勝負だと思っておりまして、何とかその方向で、今のアドバイスを踏まえて努力していきたいと思っております。そういう意味で、一緒に考えていくということを申し上げたいと思います。

【委 員】  今の話は大変良い視点をお持ちで素晴らしいなと思いました。ICSU(国際科学会議)では、今、グランドチャレンジといって、今までの自然科学の体制を変えようとしております。これは単に学会だけ変更ではなくて、ベルモント・フォーラムという科学技術を支える各国の役所といいますか、日本の場合は文科省になりますが、アメリカはNSFとも一緒になってやっており、実現未を持っています。その動きは何かといいますと、観測と予測をやるわけですが、その先にスレッシュホールド、つまり限界値というものを明確にして、これを超えると大変なことになるということを示します。更にその先にレスポンスというのがあって、要するに社会の反応がきちんとなされるようにしようということを考えております。さらにその先にイノベーションを設定しております。こういう枠組み、新たな科学技術をつくりだそうとしているのですが、これは自然科学だけではできませんので、ISSC(国際社会科学評議会)という社会科学の国際組織と一緒にやろうとしています。何を申し上げたいかというと、国総研のこの6つの大きな柱というのは、これから日本があるいは世界がこれを調和させながら総合的に取り組んでいく非常に大事なものを6つ含んでいるということです。復興と少子高齢化の問題とか、今お話になったエネルギー、それから気候変動もなかなか普通ではできないような河川政策が、こういう復興とあわせて合わせ技でやっていくと効果的なものもできると、私は思っています。そういう組み合わせをする力をお持ちなわけで、2つ申し上げたいと思います。一つは科学と社会あるいは政策とつなげていくような力をお持ちになっている非常にユニークな研究機関であるということを売りにしていただきたいということ。もう一つはコンポーネントとして優れたものをお持ちですから、それをつなげて、包括的に物を考えるような、それが政策を打ち出していくために必要だと思っているのですが、そういうユニークさも是非出していただいて、是非この国をリードしていただきたいなと思っています。

【委 員】  皆さんのお話を聞いていて思ったのですが、私は、民間の会社で商品開発や技術開発をやっておるのですが、国総研は研究所という名前がついているので、ちょっと違和感はあるかもしれないのですが、国総研さんの悩んでいらっしゃることって、割と民間会社で、ちょっと規模も違うのであれかもしれませんが、研究所も別に持ってはいるのですが、技術部という存在がありまして、これはいろんな商品や企業が施策を打ったときの技術的なバックアップをやらなければいけないのですが、研究所と技術部は何が違うかというと、技術部は逃げられないのですね。とにかくどんな施策を打とうが、あるいは外から何を言われようが、専門以外であろうがとにかく受けざるを得ないのです。そういった悩みが実はあるのではないでしょうか。研究所の人間というのは、専門外は知らないで済むのですが、その悩みが1つやはり大きいのかなという気がいたします。
 そんなところなので、私どもの会社で言えば実は技術部には学会発表はするなと言ってあるのです。研究所に任せろと言い切ってしまっています。それは民間会社ということもあって、いろんな制約の中でそうしておるのですが、問題点は、技術部の人間がまさに、ここにいらっしゃる方も含めて先生方と接触してお話ししなければいけないということがあるので、技術レベルは確保しなければいけない。ところが一番難しいという気はしております。逆に言うと、研究所の人間というのは範囲を決めてしまっていますので、そこのところではもっと頑張って先端を行けというやり方をしておるのです。そういうのがちょっと思った内容でして、共通の悩みかなという気がします。
 あと、資料の中で、これは当然だったのかもしれませんが、先ほどの海外展開の話で1つ思ったのが、ベトナム、インドネシア、インドというのが確かによくわかるのですが、実は住宅業界でそろそろ中国などへ進出が始まっておるのですが、まだまだ分からない部分が非常に多くて、ゼネコンを初めとしてなかなか十分には海外展開できてないのが現状かと思っております。そんな中で、当然それは済ませているというお話かもしれませんが、中国、韓国、といった非常に近いところにもまた宜しくお願いしたいなと思います。
 それから、津波という、今回の震災に関しては新たな部分が非常に多かったものであれなのですが、そんな中で私ども業界にとってみますと、実は液状化の問題で非常に難しい対応を迫られておりまして、特に住宅レベルで十分な措置がどこまでできるのか、それは経済的に考えてなかなか打てる方法が見つかっておりません。是非また良い方法を宜しくお願いしたいと思います。
 あと最後の資料5ですか、従来の想定にとらわれないということなのですが、確かに想定を超える話が幾つか出たときに、どう考えればいいのか非常に悩んでいまして、恐らくまさに行政の方で示していただいた大きな方向性の中で民間というのも進んでいくと思うのですが、突然にして1000年レベルを考えなければいけないのか、今まで大地震というのは数百年レベルで起こるかどうかというところを対象にしていたのですが、その辺の大きな流れというのはどのように変わっていくのか、もし分かれば教えていただきたいなと思います。

【所 長】  最初の技術部というお話は、実は政権が変わったときに当時の馬渕副大臣にした私の説明と全く同じです。さすがにゼネコンにおられた大臣であって、国総研は営業本部の技術部です、独法土研は技術研究所です、それだけであと何も聞かれなかった覚えがあります。ただ、そういう制約の中で、どうやっていくかということなのですが、ただそういう縛りがかかっていることだけは間違いないということでございます。
 それから、想定外は、これはすごく難しい話であることは間違いないのですが、私は実は神戸の地震のときに橋の研究室長をやっていましたので、どうしようかという議論に巻き込まれました。だから外力をきちっと想定して、それに耐えるものを造っていく、あるいは解析法を高度化して地震が起こったときの動きの中で対処していく、あるいはもうそれは余りにも可能性が少ない話だから、知恵の中で最低限、人命だけは守るという視点で、構造物ではなくて、そういう形の対処もあるし、そういった形であらゆる方法を並べていった中で、どういうレベルの地震はどうしようかというのをやった記憶があります。だから、今回のこともそのままでは使えないかもしれませんけれども、地震に対して何を守るのかというところからいろんな大議論を、ありとあらゆる議論をしていく必要があると思っています。ただ、大変だからといって思考停止するというのは、そろそろ許されないのではないかなという意味で、このことを書いてあるわけです。
 液状化は、どなたか何かお話しすることありますか。なかなか大変だということは我々も聞かされているのですが。

【国総研】  今回の地震では、建築の方でも4つか5つぐらい重要なことがあったと考えております。その中には長周期地震動の問題なども入るのですが、液状化もその1つと考えておりまして、ただ今委員がおっしゃったように、建物側で対処できることというのは、特に住宅みたいな小さな規模で対処できることはごく限られているという風に今現在は理解しております。液状化については、国交省全体で幅広にどういう条件で発生するのかとか、そういう点も含めて検討会議が設置されておりますので、そちらでの検討を待ちつつ、建築の方で何かやらなければいけない事態が出たら、その段階で対処できるようにということで常に用意している、そういうような現状で、まだ答えがないという点で、委員のご指摘のとおりであります。全然お答えにはなってないのですが・・・。

【副所長】  委員の幾つかの御意見というか、お話になったことで、ちょっと前後してまたもとに戻ってしまう部分があるのですが、たとえて言えば技術部か技術研究所かということで説明がありましたが、国総研の中でも建築の分野に関して言うと、やっている研究、仕事のアウトプットが例えば建築基準法の技術基準であったり住宅性能表示制度の技術基準であったりということなので、最後の出口との関係から仕事内容が割と技術研究所的な要素が色濃いのかなと私は考えます。その出来た技術基準に対して、具体的なスペックをつくっていく、コストダウンしていくといった部分は、建築の場合にはプレーヤーが各民間のゼネコンさんであったりハウスメーカーであったり工務店であったりということで、そういう意味では割と技術研究所的な色彩もあるのかなと私自身は感じているところです。それが1点です。
 それから海外連携ということで、中国、韓国を宜しくというお話がありましたが、まさにそうでありまして、いま一番中間層が大きく育ってきていて、住宅とか建築の分野に関して言うと非常に市場として魅力のあるところですから、そうしたところとどんどん研究レベルでも政策レベルでも協力関係を築いていくことが非常に重要だと考えておりまして、今日の資料には出てきておりませんが、そういう視点で仕事をしている、研究者も個人的なネットワークを築いてやっているというところですので、そこは決して忘れていないということを申し上げておきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【委 員】  私も土木系の民間の人間として一言言いたいと思います。資料3の18ページや20ページの成果を見せていただいたときに、こういうデータベースなりソフトなのかもしれませんが、成果をオープンソースのような形で民間で自由に使えるような形にできないかなと考えました。国交省の技術基本計画の中に、技術の国民への還元ということが1つの大きな視点として謳われているかと思います。これは国民生活への還元を対象にしているかと思いますが、これを民間研究機関に対する還元でも読み取れるのではないかと思います。といいますのは、土木系の業界の集まりの中で、我々がどういうふうな形で研究を進めたらいいのだろうかということを議論しております。その中で研究所の経費とか人間の数も、この10年ぐらいを見ると半減しているという状況で、非常に研究を進めにくいという環境があります。国総研がやれる研究範囲あるいは、やるべき研究範囲と、民間がやる、できる範囲というのを明確にして、国全体としての研究体制の構築を図ることが大切かと思います。その意味で、民間ができない基礎的な部分を国総研あるいは国がやっていただいて、具体的なところに落とし込むのは民間でやるとか、そういう役割分担をできないかなという意味で、先ほど申し上げましたような成果をもっと広く国民あるいは民間にも使わせるということができないのかなと思いました。

【委員長】  ありがとうございました。

【委 員】  2つほど発言したいのですが。1つ目は、先ほど、今後地震とか津波の対策をどうしていくかというお話があったのですが、津波研究者のグループでは今後の津波対策どうするかということを今日の昼に土木学会で発表する必要がありました。それは、レベルを2つ設けるということです。1つ目は津波防護レベルと呼んでいます。これは数十年から百数十年に1回の津波に対しては構造物で守るということです。それを超えるものについては津波減災レベルという2つめのレベルを設定して、とにかく避難をしてもらうということになります。この津波減災レベルについては研究者の間でもまだ議論が分かれていまして、1000年に1回というようなものに関して地震学者の言うことを鵜呑みにしても将来は必ずしも予測できない。では我々は何をすべきかというと、津波堆積物のボーリング調査をして、これまでの津波の経歴について日本全国にわたって調べるべきだと思います。例えば中国地方の西部には津波が来てないことになっていますが、掘ってみて調査することが必要です。2つのレベルでは、1つ目の防護レベルについてはかなり話はまとまっていますが、減災レベルをどのくらいにするかについては今のところ上限が決まりそうにありません。上限が決まらないのでは避難の計画が作りにくいので、どうやって避難計画を詰めていきましょうかという話をしているというところでございます。
 技術部と研究所の話なのですが、技術部に徹したからといって役に立つわけではないような気がするのです。というのは、例えばお医者さんたちは毎日臨床をやりながら臨床研究というのをやっています。それから大学の教員は、教育をやりながら技術的なコンサルタントをするというのも含めて毎日研究も進めているわけです。これをやると決めたからといって、その部分ですごく役に立つわけではなくて、幅広くできるということを示しながら、研究もやりながら技術的な要求にも応えていくというのが正しい姿なのではないかと思います。そういう意味で、もう少し土木系の研究者の方に考えていただきたいことがあります。これまでずっと力学中心の研究をやってきて、大学では、だいぶ教育の内容を変えて、社会科学の内容を教育に取り入れてきたのです。それはどうしてかというと、もう皆さんもそのつもりでいらっしゃると思うのです。力学だけの研究枠組みではなかなか解決できない問題があります。まさに1000年に1回の津波のレベルへの対処をどうするかというのは、力学研究では結論は出てこないわけです。では、そういうときに社会科学の人とどう連携をしていくかというときに、これまでは社会科学の勉強をした人と一緒に研究をすればいいのではないかと思っていたのですが、どうもそうではなく、技術的なバックグラウンドを持った研究者が社会科学の勉強をして、その枠組みを自分の研究に取り入れていくというのが正しい姿勢で、よその人に教えてもらうというのではもうできないのだということが何となく分かってきたのです。研究者の皆さんも、社会科学の研究者と一緒に研究をして助けてもらうというのはもう諦めて、自分が勉強をして社会科学の枠組みを研究に直接取り込む、そういう方向でやっていただきたいと思います。

【所 長】  ありがとうございました。本当にそれは私も実感していますので、そういう方向で進めたいと思います。

【委員長】  他にいらっしゃいますか。

【委 員】  今までの話とは全然違うことでお願いがあるのですが、私はたまたま利根川の基本高水の見直しを学術会議に答申があって、その取りまとめをやっております。非常に強く感じたのは、皆さんというわけではなくて、国交省の本省、地方整備局の方々がなかなかドキュメンテーションされないということなのです。基本高水の算定方法が残ってないというようなこともあって、御存じのように社会的に大きな混乱を与えています。また、XバンドMPレーダという最新鋭レーダ委員会でも、是非これをきちっとした技術文書に残してくださいというお願いをいたしました。何を申し上げているかというと、この冊子の後ろの方にもいろいろなマニュアルとか技術指針とかいうものの活動は出ているのですが、役所の中にドキュメンテーションしてレビューするという文化を是非お作りいただきたいと思います。それを担うのは、やはり国総研ではないかなと思っています。そういう機能を国総研が要になってお作りいただいて、そして役所が進めるいろんな政策、技術的な検討がきちっとドキュメンテーションされて、その上で、更にもう一言言えば、国総研の方々が係わってレビューをして世に残していくという文化を是非お作りいただきたいと思います。

【所 長】  今ちょうど変わり目を迎えているような感じがしています。国総研ができてまだ10年ですが、歴史的に研究所だけが技術をやっているという意識は多分旧建設省でもなかったと思うのです。現場こそが技術開発をして、それを実践しているところという意識があっての研究所だったのが、かなり組織的に研究所に頼るウエートが今ではどんどん大きくなっているような状況です。これからまたその辺がどうなっていくのか、私らが言ってもあれなのですが、ちょうど今河川局自体も何か変わろうとしているような予感がしております。

【国総研】  まさにその委員会で私も直に御指導をいただきまして、改めてそれは非常に重要であると認識しています。ある意味では、むしろ10年、20年ぐらい前の方が、レビューの問題は若干あったかもしれませんが、土木研究所資料などは全部とは言いませんが、文書化するということに対してすごく真摯であったという時代があったと思います。私の先輩にもそういう方がたくさんいらっしゃいました。ちょっとその風習が薄れたと思っています。これからは人任せということではなくて、まさにおっしゃるように組織として、単なる経験値のようなものをしっかりまとめていくということを何とかシステム化するようなことを、Xバンドについてもしっかりやってまいりたいと思いますし、それをうまく広げていければいいかなと思っておりますので、また御指導の方を宜しくお願いいたします。

【委員長】  そろそろ時間になったのでまとめないといけないのですが、その前に1つだけ感想をお聞きしたいのですが、資料3の5ページに、研究予算の推移ということで、平成17年度に比べると約半減していますよね。これは大きな問題だと思うのです。お金のないときにこそ研究とか調査をきちんとして賢い判断をしないといけないということに逆行しているようにも思いますので。でも、そういう話をここでしたって仕方ないという面もあるのですが、実態をお聞きしたいのです。こういうふうに研究経費が減って皆さん発注業務とか審査の業務とかいろんな業務があると思うのですが、そういう時間に比べて自分で考える時間というのは実感として増えているのでしょうか。あるいはいろんな意味で逆にまた減ってしまっているのでしょうか。

【所 長】  これは研究室にもよるので、たまたまそうなってないところもあるのですが、少しは自分で考えざるを得ないということも含めて、頭を使って自らの考えを出す割合は増えていると私は感じていますが、どうでしょう。

【国総研】  技術部的な道路研究部でございますが、私も5年ぶりに研究所に戻って参りまして、あのときに比べると圧倒的に道路関係の予算は減ったのですが、今委員長が言われるように個人個人の時間は少し余裕が出てきたように感じます。それと、発注関係もかなり所長の御指導があってスピーディにさせていただきながら、手間はできるだけ軽くするように心掛けています。また、ディスカッションを本省とやるか学会の関係者あるいは大学の先生方とやるかは別にして実際に議論を行なう時間はかなり増えてきているようなので、それはポジティブに考えています。また、そのような議論を通じて人脈ができ、人材が育っていくのかなと、徐々にですが、そんな感じは持っています。

【委員長】  ありがとうございます。聞いて安心しましたし、いろんなところで努力されているのだなと思いました。
 今日の評価結果をきちんと報告しないといけないのですが、今の御議論を聞いておって、こんな感じかなというようなものをざっと申し上げますので、特に追加すべきことがあったら後で御注意いただきたいと思います。
 まず大事なのは、技術部なのか研究所なのかということですが、技術部としての使命はあるのだが、やはり研究の側面をきちっと重視してやっていただかないと技術部にもならないよというところかなと思います。非常に極めて要約をいたしますと。
 あと海外展開については、中国、韓国、アフリカなどがありますので、それもお忘れなくということと。今日御紹介いただいた中にも、それ以外にも、すごく良い研究成果はいっぱいあると、それを実感いたしましました。また、国でやっている研究所だからオープンソース化やドキュメンテーションをしっかりするための努力もお願いします、ということでございましたし、研究に関しては一本通して誰かが面倒を見ていかないと、そうでないと、良い技術開発や政策展開は難しいのではないかという話がございましたので、新しい科学研究の枠組みというとちょっと大げさになるかもわかりませんが、行政と現場と政策と研究を結びつけている、非常に枢要な位置に国総研はあると思いますので、その辺を是非お願いします。
 2番目の東日本震災発生からの活動について、報告会を見て感激したという話がありましたが、こういう機敏な活動をきちんとされる、調査結果をきちんと報告されるということは、非常に良いことだと委員の皆さんも感じられたと思います。ただその中で、難しいということでしたが、特に液状化の話についての言及がございましたので、宜しくお願いします。
 それと、私ちょっと思ったのですが、震災発生直後からの調査活動、ほとんど構造物の破壊という面が多かったのですね。これからだと思いますが、その構造物、施設がどういうサービス、機能を社会に提供して、それがどうなったかということも、政策展開に向けて非常に大事だと思いますので、そういう方面にも気をつけていただければなと思います。
 23年度及び24年度に取り組む研究に関しては、聞き漏らしているかも分かりませんが、主に研究活動についての議論に何か含まれていたようにも思います。特に23年度と24年度に取り組む研究に関して、ここをもっとやれという話は、国総研全体の研究というものについてどう考えるかという中に含まれていたようにも思います。私が聞き漏らしていると思いますので、それは今記入していただいております評価シートをもとに再構成させていただきたいと思います。
 もしよろしければ、今申し上げたようなことを基調に文案をつくりまして、またコメントをいただくという手順で進めてまいりたいと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、議事についてはこれぐらいで終了いたします。本当に熱心にたくさんの視点を、あるいは御意見をいただきましてありがとうございます。

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6.その他

 ・研究方針の見直しについて
 ・国土技術政策総合研究所研究評価委員会設置規則の改定について

【委員長】  それでは、次の議事次第でその他が2つございますが、これをお願いいたします。

【事務局】  その他の議事の1つ目、研究方針の見直しにつきまして、資料6で御説明いたします。

・ お手元に最初に机上の資料の説明の中で、研究方針の改定素案というものも配っておりますので、これもまた横に置いていただければと思いますが、まず資料6の表紙をめくっていただきまして、「研究方針の見直しについて」でございますが、研究方針と申しますのはどういうものかと申しますと、国総研が現在解決に向けて取り組んでいる重要な課題、これを私ども「技術政策課題」と称しておりますが、そういった重要な課題に対してどのような目標のもとにどのような研究を行って解決しようとしているのか、これを対外的に公表することを主目的としております。合わせまして、そうした課題を解決するためにどのように研究を進めていくのか、あるいは国総研の使命とか研究に対するスタンスですとか、そういったものも合わせてまとめて外部に示しますとともに、内部にも徹底することを目的として策定しております。現在の研究方針を、7月を目途に改訂するということで、現在作業を進めております。

・ そこで、主な見直しのポイントを本日紹介したいと思います。3ページ目でございます。次のページにございますが、「主な見直しポイント」は2つございまして、今お話ししました技術政策課題、つまり重要な研究課題ですが、技術政策課題の設定の仕方が、従来中長期的でございまして、研究の動向が具体的に見えにくかったことから、今回3年〜5年程度で一定の成果が期待できるような優先的速やかに解決すべき課題として政策課題を設定しておりまして、研究の目的、研究の内容をある程度具体的に記述することにいたしました。お手元の素案でいいますと、めくっていただいて目次のところで第1編、第2編とありますが、第2編の技術政策課題に該当しまして、ここに従来よりも具体的に取り組む研究の課題について記述したところでございます。
 ポイントの2つ目が、国総研の立場・役割を踏まえた見直しということですが、本日の議論の中でもございましたように、最近の事業仕分けや独法改革の議論を踏まえまして、国土交通省の研究所であるがゆえの役割や研究の進め方、そういった面での記述を、この研究方針の目次で言いますと第1編のいろいろなところに記述したということでございます。
 以上の点をポイントとして、現在見直しを進めているというところの御報告でございます。
 続きましてもう1つの報告でございますが、規則の改正でございます。資料7にございます、赤文字のところを改訂したいと思っております。個別研究課題の評価結果、従来委員長の同意を必要としたものを、委員長へ報告に改正しようとする案でございます。まず、現在個別課題の評価をどのように進めているのかと申しますと、各分科会におきまして国総研側から1課題ずつ詳しく説明をした上で、そこで十分御議論をいただいて分科会の主査の責任で評価結果を取りまとめていただいております。その結果を後日、本委員会の委員長に私ども事務局が一括して御説明しているといったことを進めております。また対外的には、研究課題の評価結果をホームページ等で公表しておりますが、研究課題の評価機関は分科会ということで公表してきているところでございます。
 一方、現在の規定では、10年前に委員会を設置して以来変えておりませんでしたが、委員長の同意が必要だということになっております。以上のような実態に合わせまして、委員会のメンバーが相当交代いただいたこの際に、分科会の評価を評価結果とするということにいたしまして、委員長へは報告ということで規則の改正をさせていただきたいと考えております。以上で、御報告をさせていただきます。

【委員長】  何か御意見、御質問ありますか。

【委 員】  見直しのポイントの3ページの「優先的かつ速やかに解決すべき課題(3〜5年程度で一定の成果を期待するもの)」、これは、研究はプロジェクトベースの課題ということになると思うのですが、それ以外にも研究はあるのですね。プロジェクトは全体の中の何割かで、それ以外に継続的に進めていく研究は別にあると思っていいのですか。

【所 長】  研究、実は100のオーダーでありますので全部並べるわけにいきません。その中でも、我々がこういう技術に絡む政策に関して問題意識を持っているというのをしっかりと前に出して、それを解決すべくやっている研究というのを「技術政策課題」と、我々勝手に名前つけまして、それらのうち少し大きいもの、所としても背中を押して頑張れというものをプロジェクト研究という形にしております。ですから、これを公表するということは、これをやりますと外に向かって宣言していることになりますし、これを改訂するということは、外から見て、国総研は問題意識がこっちの方に変わってきたのだなというのを見えるようにしたいというところでございます。

【委員長】  独法と違って、中期計画つくる必要ないわけですよね。

【所 長】  政策研究所で5年先の話を書いていかがなものかと思います。むしろ問題意識の変化があれば、それをちゃんと出すべきと思いまして、こんな形になっております。

【委員長】  ありがとうございます。よろしいですか。
 それでは、その他何かありますか。

【事務局】  事務局からの連絡事項でございます。本日の議事録及び研究評価の報告書につきましては、後日取りまとめて国総研のホームページ等で公表したいと考えております。これらにつきまして、後日、各委員の方々に発言内容の確認等をお願いしたいと思っております。お願いにつきましては、メールで御依頼をするというように考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。

【委員長】  ありがとうございました。

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7.国総研所長挨拶/閉会

【事務局】  それでは最後になりますが、所長より一言ごあいさつを申し上げます。

【所 長】  本日は長時間にわたりまして、いつも熱心な御意見をいただいて本当にありがたく思っております。
 常日頃、人事面、予算面において、非常に強い縛りの中で運営をやっているものですから、つい言い訳がましい答弁が多くなって非常に心苦しく思っております。我々もできるだけ委員の先生方の期待に答えられるような、それだけでなく、国民の期待に答えられるような、いい研究所にしていきたいと思っていますので、今日いただいたたくさんの意見、我々としてもどう答えられるか、所内で議論してみたいと思いますので、引き続き今後とも御指導いただければと思います。本日は本当に長い間ありがとうございました。

【事務局】  以上をもちまして閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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