研究成果概要


国総研研究報告 第 1 号

【資 料 名】 環境施策に資する内湾域の総合的な環境把握を目指したMEL1D−MBモデルの構築

【概   要】  閉鎖的な内湾域は,高濃度の負荷,長い滞留時間,比較的大きな水体積,湾内での内部生産の高さなどにより特徴付けられ,構造的に汚濁が進行しやすいという特徴を持つ.日本の内湾域を例に取ると,環境問題への取り組みは,公害対策,環境復元(創造),生態系との共存といったキーワードを軸に変化してきている.そして,現在では,環境問題の広域的・長期的な視野に立った評価や対策を考えるべき時に来ていると著者らは考えている.これが,環境問題のマクロ化である.また,生物・生態系に配慮するためには,局所的・短期的(非定常的)な現象を把握・評価することも重要であり,こちらは環境問題のミクロ化として取り組むべき問題として捕えられることができる.そうした広域的・長期的,局所的・短期的といった多様な環境問題を考えるためのツールとして整備されるべき環境評価モデルの開発状況や特徴等について考察し,MEL1D−MB(Marine Environmental Laboratory,vertical one Dimensional-Multi Box)モデルを構築した.
 MEL1D−MBは湾軸方向に連結されたBoxから構成されており,1つ1つのBoxは鉛直方向に任意にメッシュを切ることができる.本モデルの特徴は,ブシネスク近似されたNS方程式と水温,塩分の移流拡散方程式,水質に関するスカラー量の方程式を,湾の特徴を捕えながら各Boxで積分することにより,流れに関して不確定なパラメータを含まずに再現計算を行うことができることである.本モデルを用いて1999年における東京湾の水質と流れ場の再現計算を行った結果,夏季において観測された塩分,水温,DO濃度をよく再現できた.また,その計算の簡便さにもかかわらず,本モデルの計算結果は3次元生態系モデルによる計算に匹敵する情報を再現することができることが示されるとともに,政策支援ツールとしての可能性が示された。

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 古川恵太,中山恵介,岡田知也,宮野仁



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