研究成果概要


国総研研究報告 第 9 号

【資 料 名】 沿岸開発による環境影響の価格定量と帰還効果分析の手法に関する研究

【概   要】  沿岸開発における環境アセスメント・システムを「自然環境の変化の予測による 開発事業計画の事前の修正という帰還効果」と「開発事業とそれによって影響を受ける自然環境の比較考量」 という機構を持つ双方向的・多断面的なシステムと捉え、分析を行った。「帰還効果」を検証するため,港湾に おける埋立面積の時系列,水深分布,地理的経済的指標との因果関係の分析等の手法を当てはめ,埋立の 特性の分析を行った。「比較考量」の精度を高めるために,船舶事故流出油対策を事例に,CVM のアウトプット 特性の確認を行い,誤差・偏差の適切な補正の方法を検討した。(1)港湾埋立の規模・空間分布のマクロ分析 自己回帰モデルを用いたオイルショック以降の全国の港湾における埋立面積の時系列トレンドの把握,港湾 計画情報を用いた水深帯ごとの埋立計画増加面積の推定,パス解析を用いた埋立の面積と水深に対する地理 的経済的指標の因果関係の把握,を試みた。ここで用いたいずれの仕法も環境影響による帰還効果の一端を検 知することに成功した。これにより,これらの仕法が沿岸開発に対する帰還効果の検出に一定の有効性を持つこと を示すことができた。(2)船舶事故流出油対策を事例としたCVMの特性分析  船舶事故による油流出から海岸環 境を守るための費用負担に,CVM を適用した。その結果から得られる情報をもとに母集団の提示額−承認率分布 とその周りの誤差分布を仮定し,モンテカルロ・シミュレーションを実施し,サンプル数と支払意思額中央値の相対信 頼区間の関係式を求めた。また,回答者の考慮範囲が限られる場合に,CVMによって推計される支払意志額の中央 値が持つ偏りを補正するために,潜在的な同時確率分布が存在することを想定し,そのような場合における修正値とし て受入限度(Acceptable Limit:AL)という概念を導いた。

【担当研究室】 沿岸域システム研究室

【執 筆 者】 鈴木武



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中 扉 117KB
目 次 31KB
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奥 付 16KB


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