研究成果概要


国総研研究報告 第 17 号

【資 料 名】 風に制御された相模湾への黒潮系暖水流入

【概   要】 相模湾に面する海岸に設置したHFレーダの観測結果,人工衛星画像,及びPrinceton Ocean Model を用いた数値実験結果に基づいて,2000年12月15日から2001年1月16日に発生した大島西水道からの周期的な黒潮系暖水流入の発生メカニズムについて検討した。この期間黒潮流路 は基本的に非大蛇行離岸流路型であったが,伊豆半島に比較的接近した形となっていた。この間,北海道上空を周期的に通過する移動性低気圧の影響によって,相模湾周辺では8-11日周期で風速場 が大きく変動していた。低気圧が北海道付近に位置している時期,相模湾周辺では西ー西南西の風が支配的となる。石廊崎沖では,沖向きの表層エクマン輸送によって黒潮前線が20km程度離岸し, その結果,相模湾湾内への黒潮系暖水は消滅し,代わりに低温沿岸水が西水道から流入する。一方,大陸性の高気圧が支配的になる時期,北北東ー東の風が卓越し,岸向きのエクマン輸送によって 黒潮前線は石廊崎に接岸する。そして,高温の黒潮系暖水が西水道から相模湾湾内へ流入し,相模湾湾内における循環流が発達する。流入した暖水は,数日中に相模湾湾奥部や東京湾湾口部へ到 達する。ただし,数値実験の結果によれば,この間,黒潮流軸はほとんど動かない。また,石廊崎沖表層における力学バランスの検討結果から,黒潮前線の利接岸の緩和に対して,非線形移流項や非 地衡流圧力勾配項が重要な働きをしていることが明らかとなった。最後に,数値実験結果に基づいて湾内亜表層における流動・水温構造について検討した。その結果,平均的には,100m以浅では相模 湾中央部に反時計回り循環流(anticlockwise circulation : aCC)が,それ以深では時計回り循環流(clockwise circulation : CC)が存在し,aCCの中心部では湧昇流が,相模湾北岸部では沈降流が支 配的であること,また水深100m層では湧昇モード風が強化される時期にCCが,水深200-300m層では沈降モード風が強化される時期にaCCが発達することが示唆された。

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 日向博文,宮野仁,高尾敏幸



表 紙 28KB
中 扉 109KB
目 次 31KB
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