【資 料 名】 |
貨物輸送費用も考慮した港湾施設の耐震設計における経済評価手法の構築 |
【概 要】 | 岸壁や防波堤などの港湾構造物に対して経済評
価を行う場合,新設もしくは改良のための投資費用や被災時の復旧
に要する費用だけでなく,当該構造物が被災することによる経済活
動の損失なども考慮する必要がある。また信頼性設計の考え方を導
入した技術基準の改訂が検討されるなか,被災による経済損失も港
湾構造物の被災状況に大きく依存するため,経済損失の確率的な評
価手法を構築することは,極めて重要な課題といえる。そこで本研
究では,重力式岸壁を例に,被災状態が確率的に出現することを考
慮した場合の,貨物輸送費用も考慮した港湾施設の経済評価手法を
構築することを目的とした。具体的には,解くべき問題を,個別の
港湾構造物について設計震度を選択する問題として捉える。はじめ
に,評価の対象とする重力式岸壁について,港湾ごとに定義される
規模別の地震発生確率と,想定される断面を設計震度ごとに用意す
る。次に,想定された断面ごとに与えられる,被災状態別のフラジ
リティカーブに基づき,出現する被災状態を,モンテカルロシミュ
レーションによって推定する。さらに,得られた個々の被災状態に
ついて,周辺港湾の被災状況も考慮しつつ,その復旧費用や貨物輸
送における経済損失を求め,これに規模別の地震発生確率を乗じて
足し合わせることにより,地震被災による被害額の期待値が設計震
度ごとに得られる。最後に,各設計震度における投資費用を加えた
総コストを算出し,これが最小となる設計震度を選択するものであ
る。また,提案した手法を,単独もしくは複数のコンテナバースを
もつ港湾を例に適用し,迂回輸送に伴う経済損失の考慮の有り無し
によって,得られる最適設計震度が異なる場合があることを示した。 |
【執 筆 者】 |
柴崎隆一,森屋陽一,渡部富博,安間清 |
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