研究成果概要


国総研資料 第 831 号

【資 料 名】 東北地方太平洋沖地震に伴う津波被災後の 大船渡湾の水質に関する研究

【概   要】  2011 年3 月に発生した東北地方太平洋沖地震に伴い発生した津波によって,大船渡湾の湾口防波堤が流失した.大船渡湾は水質改善に対して多大な努力を行ってきた水域であり,湾口防波堤の復旧に際しては,環境への配慮が重要であると考える.環境に対する配慮として,如何なる対策が有効であるかの検討に対して,現状の湾口防波堤が無い状態での水環境特性を把握し,湾口防波堤がある状態との比較を行うことは非常に有用である.そこで,本研究は,現在の湾口防波堤が無い状態での観測を実施し,湾口防波堤が無い状態での水環境特性を明らかにすること,および環境に配慮した湾口防波堤の復旧を考える際の留意点を明らかにすることを目的とする.
 現地観測は,2012 年9 月18 日から10 月23 日および2013 年7 月26 日から11 月25 日にかけて,水質,底質,および流況に関して行った.
 調査の結果,次のことが明らかとなった.水質に関しては,@湾口防波堤が無い状況では,貧酸素水塊は形成されなかった,A底層のDO 濃度は,湾口防波堤がある状況と同じ減少率で低下していた,B月に数回の頻度で突発的に流入する湾外水の影響によって,貧酸素化は免れていた.質に関しは,@底質は,被災前後でほぼ同じだった,A撹乱・再堆積の痕跡は,約20 cm まであった.流況に関しては,湾口防波堤が無い状況の平均的な流況は,表層から水深4 m は流出,水深4 m から水深15 m は流入,水深15m から底層までは流出の3 層構造だった.これらのことから,環境に配慮した湾口防波堤の復旧を考える際には,下層の流れの阻害を低減し湾内低層の低水温化を防ぎ,および突発的に湾外の底層から入ってくる低水温水塊が流入し易くする技術開発が重要であると考えられた.

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 岡田 知也,古土井 健



表 紙
中 扉
目 次
本 文
奥 付


全 文 5,128KB