研究成果概要


国総研資料 第 890 号

【資 料 名】 干潟および干潟の生態系が有するサービスの定量化手法の考案

【概   要】  造成干潟等の環境改善施策が有する生態系サービスをはじめとした様々なサービスを適切に評価するためには貨幣換算を含む定量的なサービスの評価が望まれる.しかし,生態系に関するサービスの多くは市場化されていないため,信頼度が高い貨幣化は容易ではない.したがって著者らは,サービスの貨幣化の前に,まず信頼度の高い定量化が必要であると考えた.そこで本研究では,干潟と干潟の生態系がもつサービスの定量化手法を考案することを目的とする.
 定量化手法の基本的な構成は,海洋の状態を貨幣換算せずに総合的に評価する手法(Ocean Health Index)を参考にした.定量した干潟の生態系サービスは,Ocean Health Index の「人が健全な海から得ている便益」という観点に基づいて,食料供給,海岸保護,親水利用(観光・レクリエーション,教育,研究),地域密着(昔からの特別な場,日々の憩いの場),水質(懸濁物除去,有機物分解,炭素貯留),生物多様性(多様度,貴重種)の6群12項目とした.対象干潟は,東京湾内の潮彩の渚(人工干潟),海の公園(人工干潟),多摩川河口干潟(自然干潟),小櫃川河口干潟(自然干潟)の4つの干潟とした.
 各サービスの評価に必要な環境因子の選択および収集できるデータを考慮した定式化等を検討し,汎用性のある干潟のもつサービスの定量化手法を構築した.本手法では,各サービスに対して干潟間の定量的な相対評価が可能であり,各干潟の特徴を把握することが可能である.また,本手法では,各サービスに影響を及ぼす環境因子の点数を表示できるため,対象とする干潟の価値を高めたい際に,どの環境因子を重点的に改良・対策するのが効果的であるかを示すことができ,効率的な管理に活用できる.

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 井芹 絵里奈,岡田 知也,秋山 吉寛,渡辺 謙太,桑江 朝比呂



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