研究成果概要


国総研資料 第 1079 号

【資 料 名】 ICT浚渫工の導入に伴う浮泥堆積域における
マルチビーム測深の効率化に関する検討

【概   要】  将来の担い手不足の課題等に対応するため,国土交通省では,2015年度よりあらゆる建設生産プロセスにおいて生産性を向上させる取組であるi-Construction施策を実施している.港湾分野においても,必要な基準を整備した上で,2017年度よりマルチビーム測深による3次元データを活用したICT 浚渫工を開始している.
 しかし,海底面に堆積する泥のうち,浮遊状態から堆積状態にある浮泥が堆積する海域でマルチビームやシングルビームの音響測深を実施する場合,音波の周波数を高く設定するほど,音波が浮泥層上面で反射され浅く計測されてしまう場合がある.ICT浚渫工の導入に伴い,従来のシングルビーム測深からマルチビーム測深に変更され,測深精度の向上等の観点から周波数も200kHzから400kHzに変更される.そのことにより,浮泥が堆積する海域では,音響測深による海底面が浅く観測され,必要水深の見かけ上の不足やそれに伴う浚渫の新たな必要性の問題が生じる恐れがある.
 周波数400kHzのマルチビーム測深により,従来の周波数200kHzのシングルビーム測深による海底面の推計が可能となれば,上記問題は生じないが,現在そのような手法は確立されておらず,また,浮泥層厚の増加に伴う周波数200kHzと400kHzにより観測される海底面の差の変化についても,十分把握されていない.
 そこで,本研究では,ICT浚渫工の導入に伴う浮泥堆積域におけるマルチビーム測深の効率化を目的とし,ICT浚渫工における浮泥の影響がもたらす問題点を把握すると共に,浮泥が十分堆積する海域事例として東京湾を選定し現地観測を行い,周波数200kHzと400kHzによる観測海底面の違いを把握した.その結果,底泥密度1,200kg/m3以下の浮泥が30cm程度生じる内湾海域で深浅測量を実施する場合,周波数200kHzと400kHzによる観測海底面の具体的な差は10cm程度しか生じないことから,マルチビームのみによる測深で対応可能であることを提案した.

【担当研究室】 港湾施工システム・保全研究室

【執 筆 者】 坂田憲治、井山繁



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