研究成果概要

国総研資料 第 1082 号


【資 料 名】 常時微動観測による実桟橋固有周期の推定手法に関する基礎的検討
【概   要】  桟橋の固有周期は耐震設計の重要なパラメータである.近年,既存施設の改良事例が増加しており,実桟橋で常時微 動観測を行い,固有周期設定の際の参考とする取り組みもある.しかし,常時微動観測を用いて固有周期を推定する際, 周辺海域の波浪や潮位条件,渡版の拘束条件等が推定結果に及ぼす影響について実測に基づく検証がなされておらず, 桟橋の振動モードや観測点配置の影響についても不明点が多い. 本検討では,常時微動観測により実桟橋の固有周期を精度良く推定するための基礎的検討として,全国 3 地点(小名 浜港,川崎港,神戸港)の実桟橋において常時微動及び桟橋前面水位の連続観測を行った.観測結果より,波浪や潮位 条件が推定結果に及ぼす影響を評価した.また,渡版有無の条件の異なる隣接ブロックで観測を行い,推定結果に及ぼ す渡版有無の影響を評価した.さらに,新たな試みとして,常時微動観測記録(加速度時刻歴データ)を変位時刻歴デ ータに変換することにより,桟橋ブロックの固有周期付近における多数の観測点位置の変位軌跡を確認し,どのような 振動モードで桟橋ブロックが挙動しているか確認した.最後に,微動観測により実桟橋の固有周期の推定を行う際の留 意点や最低限必要な微動計の配置についても整理した. 今回の結果,少なくとも本検討の対象桟橋では,波浪や潮位条件については固有周期の推定に対する影響は小さいこ とが分かった.桟橋ブロックの振動としては,並進運動が卓越する場合と,水平面内におけるねじり振動もしくはせん 断振動と推定される振動が卓越する場合があることがわかった.このような振動モードの違いに対しては渡版による拘 束性が影響を及ぼしている可能性がある.今回,振動モードに関する詳細検討はできなかったが,設計では想定してい ない振動モードの発生可能性を考慮する必要性を示唆するものであった.今後は,桟橋ブロックの振動モードと構造条 件の関係を明らかにすること,地震時の桟橋ブロックの振動モードを明らかにすることが重要である.
【担当研究室】 港湾施設研究室
【執 筆 者】 菅原法城、竹信正寛、宮田正史、福永勇介、野津厚、長坂陽介
 

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