国総研資料 第 1134 号 |
【資 料 名】 | 船舶の係留施設への衝突事故に関する基礎的分析 |
【概 要】 | 本資料では,過去の船舶に関する事故報告データ(運輸安全委員会船舶部門による約12年分の報告書)
から,船舶単独事故のうち「岸壁・護岸等との衝突」した事故(全618件)を抽出し,港湾の計画・整
備・維持管理等に関する施策検討の基礎資料とすることを目的として,船舶の係留施設への衝突事案を
対象に基礎的な分析を行った.得られた知見は以下のとおりである. 船舶の係留施設への衝突事故に着目すると全565件のうち着岸時の発生が約7割と多数を占め,また, 全事故案件の6割以上が風を要因としたものであった.船舶の係留施設への離着岸時に風の影響により 発生する衝突事故は288件発生していたが,海側から陸側に向かって風が吹く場合に5割強と多く発生す る一方,船首側からの風向時には事故は少なくなる傾向が認められた. 船舶が係留施設本体に衝突したケースは478件存在し,多くの場合,コンクリートの部分的な欠損や 擦過傷等に損傷は留まり,港湾機能への影響が及ぶと判断される案件は約8%の40件と比較的少なかっ たものの,その殆どのケース(36件)で鋼管杭や矢板本体,スリット等の主要構造部材の損傷が認められ た.また,港湾機能に影響が及ぶと判断される案件40件のうち約1/3の13件は船体のバルバス・バウが 係留施設本体に衝突しており,岸壁本体の大規模な損傷にバルバス・バウの衝突が関与しているケース が比較的多いことが示された.さらに,係留施設の構造形式別に港湾機能に影響が及ぶ案件の発生割合 を分析すると,重力式と矢板式がそれぞれ約5%であったのに対し,杭式では約10%と相対的に高い値を 示し,杭式は重力式や矢板式に比較して,船舶の衝突に対しては相対的に脆弱であることが示された. 船舶が係留施設の付帯設備に衝突したケース207件のうち港湾機能に影響が及ぶと判断されるケー スが約57%にあたる118件存在したが,損傷の対象やパターンは多岐にわたっていた.特に, ガントリー クレーンへの船体の衝突案件10件では全案件で港湾機能への影響が及ぶと判断され,クレーンへの衝突 は最も避けるべき衝突形態の一つであることがわかった. |
【担当研究室】 | 管理調整部 |
【執 筆 者】 | 松田茂・宮田正史 |
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