研究成果概要

国総研資料 第 1135 号


【資 料 名】 UAV・AI を活用した港湾等のインフラ維持管理に関する点検診断システムの開発(その1)
【概   要】  港湾施設は高度経済成長期に整備され,建設後50年が経過して老朽化している施設が増加するほか,厳しい自然環境下に置かれていることから,より効率的・効果的な維持管理手法が求められてい る.近年,様々な分野・用途でUAVが活用されており,港湾分野においてもUAVを用いた点検の効率 化が期待されるが,船舶や鋼構造物による電波の遮蔽など,港湾特有の課題がある.
 国土技術政策総合研究所では,港湾管理者等のインフラ維持管理の効率化のため,UAV・AIを活用して港湾の施設を3Dデータ化し, 施設変状を自動で抽出する「UAV・AIを活用した港湾施設等の点検診断システム」(変状抽出システム及び遠隔地画像伝送システム)の開発を行っており, 本資料では当該システムの概要と開発状況をまとめた.
 変状抽出システムは,三次元モデルの精度低下の要因となる海面部分を画像から除去したのち三次元モデル・オルソ画像を作成し, ひび割れ等の施設変状を抽出するものである.海面の除去に関して,機械学習モデルDeepLab V3+を用いて関東近郊及び沖縄の海面を学習させた結果, 海面推定の検証デ ータに対するmIOUは97.3%であった.施設変状抽出は,本資料ではひび割れ抽出についてまとめており, 機械学習モデルFPCNetを用いてUAV空撮画像等を学習させた結果,検証データに対するF1 Scoreは90%以上であった.
 遠隔地画像伝送システムは,港湾における船舶・鋼構造物による電波遮蔽や,海上伝搬による減衰 等の影響を回避・軽減することを目的としている.使用予定の5.7 GHz帯について,港湾環境における周辺環境雑音は確認されなかった.また,製作した無線モジュールを用いて,非見通しにおいてマルチホップ映像伝送できることを確認した.
【担当研究室】 沿岸防災研究室
【執 筆 者】 里村大樹・辻澤伊吹・山本康太
 

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