研究成果概要

国総研資料 第 1169 号


【資 料 名】 風・流れによる船舶牽引力の評価への静的釣合い計算の適用性検討
【概   要】  港湾基準における船舶の牽引力は,貨物船を対象にした風に対する船体の動揺解析(動的解析)により,係船柱に作用する牽引力の算定結果を求め,船型ごとに標準値として設定されている. 一方,近年,外航船の大型化傾向に伴い,岸壁設計当初に想定していた船種・船型と異なる船舶が 着岸する場合が増えてきている.また,津波来襲時に港外退避できない船舶の係留避泊の安全性を 高めるための検討も進められている.風や津波に対する係留船舶の動的解析を行う際には,動的解析に 関する専門的知識が要求され,船舶諸元や係船索の配置状況など詳細な解析条件を設定しなければな らないため,容易に実施することは難しい.このような背景から,船種・船型や係留方法等に応じて, 風や津波に対する船舶牽引力を動的解析によらず簡単に評価できる手法が必要とされている.
 本検討では,この課題に対して,船体に作用する風や津波による荷重と係船索による牽引力との静的釣合い に基づく簡易的な手法(以下,簡易法)を提案し,その適用性を確認した.風に対する検討は, 岸壁側から船体側面(船側)に垂直に当たる条件を対象として,既往の動的解析(港空研資料No.1341) による最大牽引力と簡易法による牽引力とを比較し,簡易法の適用性を確認した. また,津波に対する検討は,津波を流れとして考え,流れが風の検討と同じ船側方向から作用する条件に加え, 船首尾方向から作用する場合も対象とし,既往の水理模型実験(港空研資料No.1213)および既往の動的解析から 得られた牽引力と簡易法による牽引力とを比較し,同じく簡易法の適用性を確認した. これらの確認の結果,船体に風や津波が船側方向に作用した際の最大牽引力(動的な影響が考慮された牽引力)は, 簡易法による牽引力に一定の倍率を乗じることで,推定可能であることを示した.
【担当研究室】 港湾研究部
【執 筆 者】 宮田 正史,米山 治男,柴下 達哉,平田 悠真,佐々木 宏和,竹信 正寛
 

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