研究成果概要

国総研資料 第 1171 号


【資 料 名】 3次元FEM解析による既存アンカー耐力式の係船柱用アンカーへの適用性検討
~先付けアンカー方式を対象として~
【概   要】  近年の寄港船舶の大型化を踏まえ,繋離船作業の作業効率向上に配慮した係船柱に対する形状検討の必要性が 認識され,係船柱の上部形状の小型化が検討されている.一方で,船舶の大型化に伴う船舶牽引力の増加は, 係船柱を設置する際に用いるアンカーの大きさにも影響を及ぼすため,施工性を考慮すれば係船柱のアンカー に関しても可能な限り小型化することが望まれる.
 現在,港湾工事共通仕様書に記載されている係船柱用のアンカーボルトの標準長さは,アンカー引抜時の コンクリートが円筒状破壊することを仮定した引抜耐力式を基に設定されている.しかし,他の代表的な設計指 針類においては,その破壊形態として円筒状破壊より耐力が大きく算定されるコーン状破壊を仮定した引抜耐力 式が提示されている.このため,係船柱用アンカーの引抜時の破壊形態がコーン状破壊を示すことが確認できれば, 係船柱用アンカーの小型化に向けた設計法提案への一助となると考えられる.
 本稿では先付けアンカー方式を対象として,係船柱用アンカーに関する引抜時の破壊形態を把握するため, 既往の各種実験結果を基とした3次元FEMを用いたアンカー引抜実験の再現解析を実施し,係船柱用アンカーの 引抜破壊形態や引抜耐力の算定に用いる耐力式の適用性に関する検討を行った.また,既往のアンカー引抜実 験結果を用いて,引抜耐力式に対するアンカーの実耐力をベイズ予測区間によって推定し,アンカー引抜耐力式に対する部分係数の試設定を行った.
 この結果,係船柱用アンカーのコンクリートに対する引抜破壊形態は,これまでのアンカーボルトの設計に おいて仮定されてきた円筒状破壊ではなくコーン状破壊であることが確認された. また,3次元FEM解析結果によるアンカー引抜耐力は,係船柱用アンカーの鉛直方向への設置を想定したケースにおいて, 各種合成構造設計指針・同解説の引抜耐力式による算定結果と同等であった.更に係船柱用アンカーを, 上部工に対して傾斜角を設けて設置することを想定したケースにおいては,当該耐力式の考え方を適用した場合,解析結果に対して安全側の値として算定されることが判明した.
【担当研究室】 港湾研究部
【執 筆 者】 竹信 正寛,宮田 正史,佐々木 宏和,平田 悠真
 

表 紙
中 扉
目 次
本 文
奥 付
全 文 4,321KB