2.簡易判定図表について

簡易判定図表とは、各種条件別の数値解析により計算されたピーク空気圧が整理された図表であり、安全性照査の基本的な考え方となる、人孔内で発生する最大空気圧と、人孔蓋の耐内圧力を比較することにより、伏せ越し形状の管路における人孔蓋の浮上・飛散に関する安全性を簡易に評価するためのものである。 


2.1 簡易判定図表の適用範囲

簡易判定図表を適用できる施設は、図−2に示すような空の状態から圧力満管状態に非定常的に移行する突入流式の単純伏せ越し形状の貯留管及び雨水幹線である。上・下流の人孔間に中間人孔がある場合や、流入形式が階段式や渦流式の場合は適用範囲外であり、別途数値解析又は水理模型実験により安全性を照査する必要がある。

            図−2 簡易判定図表の対象となる施設


2.2 人孔蓋の耐内圧力

安全性照査の基準とした人孔蓋の耐内圧力を表1に示す。人孔蓋の耐内圧力は、平受型のように蓋の自重のみで閉まる方式では、蓋の質量、蓋の面積、蓋穴の面積、蓋の浮上加速度から算定した。平受型人孔蓋の質量については、複数の都市を対象とした実態調査結果をもとに設定したものであり、各都市で使われている鉄蓋は構造の違いにより質量のばらつきがあったため、安全性照査では、最も安全側、すなわち最も小さい質量を用いた。また、「手引き」3)に記載された耐内圧力についても追記した。

 圧力開放型浮上防止用鉄蓋や耐圧型蓋のような、蓋と受け枠がボルトや蝶番で固定されている方式の耐内圧力は、ボルト、蝶番等の強度から算定した。

 耐内圧力は、人孔蓋の構造によって大きく異なるため、各都市で採用している人孔蓋の構造を考慮して設定することが望ましい。

           表−1 人孔蓋の耐内圧力

形式 耐内圧力(Pa)
平受型鉄蓋 1,400 (5,600)
耐圧型鉄蓋 265,000
圧力開放型浮上防止用鉄蓋 151,000

(注)平受型鉄蓋の耐内圧力の( )内の数値は「手引き」3)に記載された耐内圧力である



2.3 簡易判定図表の作成方法

 簡易判定図表にプロットされた人孔内最大空気圧は、空の伏せ越し管が満水に移行する時系列的なシミュレーションにおける人孔内空気圧のピーク値である。

伏せ越し管内の空気圧は、施設形状や流量規模等、様々な条件の影響を受けるが、なかでも人孔内最大空気圧への影響が大きな「本管径」、「空気抜き開口面積」および「流量規模」との関係に主眼において作成したものである。

「空気抜き開口面積」および「流量規模」以外は表−2に示す一律の条件で検討を行った。

 参考として、各種条件と人孔内最大空気圧との関係を参考図1〜参考図4に示すので参考にされたい。

上流側人孔における最大空気圧は、水理模型実験および数値解析によって、下流側人孔よりも小さくなる傾向がみられたが、参考図5に示すように、数値解析では解析値におおきなばらつきがみられたため、今後さらに検討を進めるものとし、今回公表する簡易判定図表はより危険度の高い下流側人孔を対象とした。

           表−2 簡易判定図表作成時の検討条件

検討条件 単位 備考
管路延長 1,000 (m) -
上流人孔径 1.5D (mm) D(mm)は本管径を表す
下流人孔径 1.5D (mm) D(mm)は本管径を表す
上流人孔落差高 25 (m) -
下流人孔落差高 20 (m) -

【参考文献】

3) 下水道マンホール安全対策の手引き(案),(社)日本下水道協会,1999.3


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