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海岸の研究
海岸研究室

海岸研究室 研究テーマ
[1]海岸侵食

3.総合土砂管理

 我が国では、高度成長期より建設骨材の需要にこたえるために河川砂利の採取が行われ、水資源の確保と治水対策のために多数のダムが建設されてきました。また、沿岸域では大規模な防波堤を有する港湾や漁港などが整備されてきました。この結果、沿岸域における土砂収支の均衡が崩れ、著しい海岸侵食によって年間160haもの国土が失われてきています。図-1には、1951年〜1991年の砂礫海岸における汀線後退量を示しています。

 侵食対策として、護岸・堤防の整備、消波堤や離岸堤の設置などが行われてきました。しかし、結果的に海岸環境の悪化を招くことになってしまいました。これらのことから、近年では流砂系における総合的な土砂管理と、防護・環境・利用の調和した海岸保全に本格的に取り組むことになりました。

 流砂系は、陸域(河川)における土砂の運動領域である流域と沿岸域(海岸)における土砂の運動領域である漂砂系、この2つの接合部である河口域で構成されます(図-2)。流砂系における総合土砂管理計画を立案するためには、図-2の矢印に示すように、[1]漂砂系で必要となる流砂量(沿岸漂砂量)を決める必要があります。また、河川から河口域への供給土砂のすべてが沿岸漂砂になっているとは限らないので、[2]河口域における土砂動態と波浪による沿岸漂砂量との相互関係を明らかにする必要があります。

 この2つのうち [1]に関しては、対象とする漂砂系の確定(図-3)、沿岸漂砂の卓越方向と沿岸漂砂量の把握、海岸地形の形成過程の推定、海岸地形の変形予測などの課題があります。[2]に関しては、出水時における河口部の水理現象の把握、河口テラスの形成過程と河口砂州の変化過程の把握、出水と波浪の作用による土砂の移動の把握、河川からの流出土砂が海岸に寄与する量と粒径の把握などの課題があります。

 これらの課題に対して海岸研究室では、各地方整備局と連携して「漂砂系における流砂量モニタリングに関する調査」(国土交通省国土技術研究会、平成15〜17年度指定課題)をたちあげ、漂砂系における必要計画流砂量である沿岸漂砂の推定手法の検討や、河口域での気象擾乱時(洪水時、高波浪時)および平常時の土砂動態調査に取り組んでいます。

図-1
全国海岸侵食実態図
(2001年版)
図-2
流砂系のイメージ
図-3
漂砂系のイメージ
漂砂系の概念

沿岸方向には沿岸漂砂の連続する区間
岸沖方向には砂丘の陸端から海底の漂砂の移動限界水深までの範囲
分布する土砂の岩石種や鉱物組成が類似な領域


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