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海岸の研究
海岸研究室

海岸研究室 研究テーマ
[1]海岸侵食

6.トレンチ調査

トレンチ調査による砂礫混合海岸の形成過程の多面的な解析

研究の狙い

  侵食された海岸を回復しようとするとき、その海岸がどんな砂や石で構成されていて、どのように作られてきたかという情報は、 回復対策を実施することでどのように海浜変形するかを予測する計算での条件を決めたり、 砂を人為的に投入して浜を太らせる養浜工法でも効果が長持ちすることや大きさや色の変化による利用・環境への影響等の検討を行う上で欠かせません。 しかし、砂と礫で構成されている海岸では、表面に砂が多い状態と礫が多い状態との間で時々刻々変化し、 海浜表層の調査だけではその時の状態しか見ることができず、海浜ができる経緯(海浜形成過程)を俯瞰的に知ることができません。
  本研究では、形成過程の情報である地層の連続性や礫の分布等を直接見るために、 海浜に長い溝を掘って観察して(写真1)、その結果を長期間の波の観測や海浜の測量データを用いて多面的に解析するトレンチ調査手法を開発しました。


写真-1 トレンチ調査の様子

  海浜のトレンチ調査には、図1に示すように多面的な情報を用います。
  写真2は、富士海岸のトレンチ調査の様子で、表面が大きな石(礫)で覆われていても、 その下には砂が大量にあることが分かります。表面からだけでは知り得ない海浜の別の顔を知ることができます。   図2は高知工科大学とともに実施した高知海岸での調査結果の一部です。 台風により赤点線の面まで砂浜が低下した後に、徐々に回復したことが分かります。 さらに、様々なデータと照合した結果、これは4か月程度の間に厚さ1mを回復したことが分かりました。


図-1 トレンチ調査で用いる情報




写真-2 トレンチ調査で得られた断面(富士海岸)




図-2 調査結果の例(高知海岸)



  詳細は、以下の文献をご参照ください。

・野口賢二,諏訪義雄(2014),静岡・清水海岸でトレンチ掘削調査により得られた砂と礫の堆積構造,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol.70,No.2,I_681-I_685.

・K.Noguchi,Y.Suwa,F.Kato,S.Sato(2019),TRENCH SURVEY TECHNIQUE FOR SAND-GRAVEL MIXED BEACH WITH APPLICATION AT HAMAMATSU-SHINOHARA BEACH,Proceedings of the 10th International Conference on Asian and Pacific Coasts.

・佐藤愼司, 野口賢二, 山中悠資, 与那嶺瑞輝(2020),海浜トレンチ調査による砂礫海岸形成機構の解明,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol.76,No.2,I_571-I_576.

・野口賢二,加藤史訓(2020),トレンチ調査による砂礫混合海岸の形成過程の多面的な解析,土木技術資料,Vol.62,No.6,pp.46-49.



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