研究本部の設置の経緯(平成21年4月)
社会資本整備審議会の答申
「水災害分野における地球温暖化に伴う気候変化への適応策のあり方について」2008年6月
(記者発表資料pdfファイル)は、
- 人間活動に起因する地球温暖化に伴う気候変化は、その予想される影響の大きさと深刻さから見て、
人類の生存基盤そのものに影響を与える重要な課題であること。
- その影響は、生態系、淡水資源、食糧、沿岸と低平地、産業、健康など広範囲の分野に及ぶこと。
- 特に沿岸域や低平地では、海面水位の上昇、大雨の頻度増加、台風の激化等により、
水害、土砂災害、高潮災害等が頻発・激甚化するとともに、
降雨の変動幅が拡大することに伴う渇水の頻発や深刻化の懸念が指摘されていること。
- 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書では、
CO2等温室効果ガスの削減を中心とした温暖化の「緩和策」には限界があり、
「緩和策」を行ったとしても気温の上昇は数世紀続くことから、
温暖化に伴う様々な影響への「適応策」を講じていくことが「緩和策」と同様に重要であると指摘されていること。
- 国民の安全・安心を確保することが国の基本的な責務であることにかんがみ、
国が長期的な視点に立ち、早期に気候変化に対して、予防的な施設の整備をはじめとする適応策を検討・実施すべきであること。
を示しています。
また本答申は、先進国において温暖化の緩和策として温室効果ガスの削減に取り組むだけではなく、気候変化への適応策として、海面水位の上昇に対し堤防の嵩上げにより計画的に高さを確保するなどの対策に既に着手している国もある中で、我が国は、先進国の中において災害に脆弱である特性を有しているにもかかわらず、気候変化が水災害に与える影響について科学的な解明がなされつつある段階であり、気候変化に適応する具体的な施策についての検討が十分に行われていないのが実情である、としています。
こうした状況・認識を踏まえ、国土技術政策総合研究所は、地球温暖化が水災害に関して人々に与える影響を明らかにし、気候変化に適応可能な種々の技術政策を提示し、またそれを支える技術の開発・普及を行うことが喫緊の課題であるととらえ、2009年4月1日に、気候変動適応研究本部を設置しました。
本研究本部の設置により、それまで各研究部で行われていた影響評価や適応策に関する研究の一層の統合化を図り、参画する各研究部・センター(下水道研究部、河川研究部、道路交通研究部、都市研究部、沿岸海洋・防災研究部、社会資本マネジメント研究センター)の特色を生かしつつ、全体目標に向かって横断的な研究が促進される体制を整えました。
水害を防ぐ・減ずる技術政策の長年にわたる実践を通じて培ってきた知見を、気候変化という新たな事態に向けて磨きをかけ、我々が新たに抱えつつある問題を長期的視野からも目に見える形にし、気候変化に賢く対応できる社会を構築するために、技術政策の提案やその実践を支える本質的な知見の提供に取り組んで参ります。
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