国土交通省 総合技術開発プロジェクト
「社会資本の予防保全的管理のための点検・監視技術の開発
(予防保全総プロ)」

〜点検手法を“見えるところを見る”から“診るべきところを診る”へ〜

研究期間        :平成22〜24年度の3ヶ年
プロジェクトリーダー :建設マネジメント研究官
担当研究部・センター:下水道研究部、河川研究部、道路研究部、建築研究部、
住宅研究部、総合技術政策研究センター


T.目的

U.背景と必要性

1 社会資本の高齢化
 これまでわが国で蓄積されてきた社会資本は、私たちの日々の生活を支えるとともに、産業活動の基盤として大きな役割を果たしてきました。これらの社会資本は、高度経済成長期に集中的に整備されており、今後老朽化は急速に進行すると予想されます。
 図-1は、50年以上経過する社会資本の割合を示したものですが、H23年と20年後を比較すると、例えば、道路橋(約9%→約53%)、水門等河川管理施設(約24%→約62%)、下水道管きょ(約2%→約23%)、港湾岸壁(約7%→約56%) などと急増し、今後、維持管理費・更新費が増大することが見込まれます。
図-1 建設後50年以上経過する社会資本の割合
図-1 建設後50年以上経過する社会資本の割合

 社会資本の急速な高齢化により、社会生活に大きな影響を与えるような事故や災害の急増が懸念されます。
 例えば、日本より社会資本の整備が早かった米国では人命を巻き込む落橋事故が発生しており、わが国でも、平成19年に幹線道路の橋梁で落橋につながりかねない主要部材の破断が見つかったほか、住宅・建築物の外壁の劣化による剥落、下水道の管路施設の高齢化等が原因となった道路の陥没事故等の二次災害につながりうるような重大な損傷・事故が頻発しつつある兆候が見られます(写真-1)。
写真-1 高齢化する社会資本の損傷事例
写真-1 高齢化する社会資本の損傷事例

2 予防保全的管理への転換と課題
 今後の社会資本の高齢化に適切に対応していくには、つくったものを長持ちさせて大事に使う「ストック型社会」への転換を推進していく必要があります。
 これまでは損傷等に対して個別・事後的に対処してきましたが、高齢化による損傷リスクが急速に増大する将来においては、施設の状態を定期的に点検・診断し、致命的欠陥が発現する前に対策を講じることにより、事故や災害を未然に防ぐとともに、施設の長寿命化により長期的に見た場合のトータルコスト(ライフサイクルコスト)の縮減を図る「予防保全」の考えに立った戦略的維持管理が必要となります(図-2)。
図-2 予防保全的管理の基本的な考え方
図-2 予防保全的管理の基本的な考え方

 予防保全的管理は、個別の施設に対する"点検"、"健全度評価"、"劣化予測"、および"補修補強"の4つのフェーズから構成されており、各フェーズにおいて、以下の課題が挙げられます。
 "点検"フェーズの課題として、スケールが大きい土木構造物でも局部で密かに進行する亀裂や腐食等が問題となりますが、目に見えないような局部損傷の進展を効率的かつ確実に探知する技術は確立されていません。
 また地中の構造物では、点検自体が困難であり、目視点検では捕捉できない損傷を探知するための調査法の開発も必要になります。
 "健全度評価"フェーズの課題として、部材の劣化状況を踏まえた構造物の性能評価方法が確立されていません。
 "劣化予測"フェーズの課題として、橋ひとつを例にとっても、その形式、形状、交通量、自然環境などさまざまな要素があり、劣化の要因も複数かつ複合的と考えられるため、個々の劣化メカニズムを研究するとともに、実際の構造物の長期挙動観測などによるデータの蓄積やさまざまな劣化パターンの研究が挙げられます。
 "補修補強"フェーズの課題として、想定していた補修補強効果が発揮されないことがあり、劣化状況に応じた効果的な補修補強を行うための技術の開発や、開発された技術を検証し現場へ早期にフィードバックするシステムの構築が挙げられます。

3 技術開発の方向
 今回の総合技術開発プロジェクトでは、上述した"点検"、"健全度評価"、"劣化予測"、"補修補強"の予防保全的管理の4フェーズのうち、フェーズの最初にあり先行して技術開発することが効果的で、かつ、様々な施設種別を横断して適用することが可能な"点検"フェーズに絞って技術開発を行うこととしました。
   "点検"フェーズにおいては、これまでの目視による点検・監視では、損傷が相当進行してからしか把握できず、作業能力やコストといった制約により、適切な頻度・方法での検査が実施されていないケースが見受けられています(写真-2)。
写真-2 目視では把握しにくい部位の事例
写真-2 目視では把握しにくい部位の事例

 今回の技術開発では、目視困難な場所を点検可能にする技術、さらに、広範囲で大量な構造物について目視のみで把握されていた変状を効率的・確実に点検する技術を開発しました。
 開発に当たっては、産業分野での基本技術の開発は進められているものの社会資本施設への応用は進んでいない非破壊検査などについて、多種多様な検査手法およびそのデータについて要求性能、評価基準を実験・確認した上で整備し、民間の技術開発の促進を図ることとしました。

V.技術開発の内容

W.研究成果の活用

参考資料


お問い合わせ先

  国土交通省国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター 社会資本システム研究室

  Eメール : nil-kensys@ki.mlit.go.jp



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