土木構造物の設計地震動

 基本的な知識から最近の動向までを解説しています。
 (注:執筆当時の状況に基づくものです。)

参考文献

土木構造物の設計地震動(第1〜6回),土木技術資料,Vol. 49(No. 10-12)-50(No. 1-3), 2007-2008. (PDF 1,220KB)



長周期地震動の距離減衰式と増幅率の地域性

 既存の観測記録をもとに,周期2〜20秒のやや長周期地震動を推定する経験式を作成しました。 あわせて周期ごとの増幅率を全国1775観測点で算出し、わが国のどこで、どの周期の地震動がどの程度 増幅されるのかを示す全国マップを作成することにより,堆積平野で長周期地震動の増幅が大きくなる 傾向や,特に増幅率の大きい周期が平野ごとに異なることを示しました。


卓越周期

地点ごとに推定される長周期地震動の卓越周期

参考文献

Seismic hazard maps for rather-long period ground motion, The 7th General Assembly of Asian Seismological Commission and the 2008 Fall Meeting of Seismological Society of Japan, p. 297. Abstract(PDF 496KB), Poster(PDF 622KB)

やや長周期地震動の距離減衰式と全国の地点補正倍率,土木学会論文集A,Vol. 64, No. 4, pp. 721-738, 2008.概要はこちら



新しい距離減衰式

 スペクトルインバージョンにより地震の加速度震源スペクトルを推定し、その短周期レベルをパラメータとして、 新しい地震動強さ(最大加速度、最大速度、SI値、計測震度、加速度応答スペクトル)の距離減衰式を作成しました。 得られた距離減衰式は、従来よりも顕著にばらつきが小さく、地震動強さの推定精度向上を実現しました。


距離減衰曲線

短周期レベルAをパラメータとする最大速度の距離減衰曲線


参考文献

海溝性地震を対象とした地震動強さの距離減衰特性の地域性に関する検討,第10回地震時保有耐力法に基づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集, pp. 269-274, 2007.(PDF 486KB)

短周期レベルをパラメータとした地震動強さの距離減衰式,土木学会論文集A,Vol. 62, No. 4, pp. 740-757, 2006.概要はこちら



橋梁に作用する津波外力の計測実験

 道路橋に作用する津波外力の評価手法を提案するため、水路と道路橋の模型を用いた 大型実験を行いました。実験では橋桁に作用する全波力等を測定し、測定値を既存の算定式と比較しました。 その結果、橋桁に衝突する前後に津波が砕波するような場合には大きな衝撃波力が作用すること、水平抗力は 港湾基準式により安全側の評価ができることが分かりました。


津波実験

水路と橋梁模型を用いた津波外力計測実験

参考文献

津波衝突時に橋桁に作用する波力,第12回日本地震工学シンポジウム論文集, 2006. (PDF 345KB)



地表地震断層の最大変位量の推定式

 内陸の浅い地震では、断層のくい違いが地表面にまで到達し、地表地震断層が出現することがあります。 本研究では過去に発生した地表地震断層の事例を調査し、横ずれ断層の地震による最大変位量の推定式を提案しました。 また、同じ地震規模では平均的に、逆断層の方が横ずれ断層の地震よりも最大変位量が大きくなる 傾向があることなどが分かりました。


地表地震断層

地表の最大変位量と地震規模との関係


参考文献

内陸地震の規模・タイプと地表地震断層の特性との関係,土木学会論文集,No.801/I-73, pp. 21-32, 2005.概要はこちら



確率論的地震ハザードマップの作成手法の開発

 確率論的地震ハザードマップは、ある一定の期間に各地域に生じる地震動強度の予測値を描いた地図です。 本研究では、活断層やプレート境界で繰り返し発生する大規模な地震の発生履歴などを考慮して地震 ハザードマップを作成する手法を開発しています。本研究成果は、道路橋示方書等の耐震設計基準類 における地域性を考慮した設計地震動の合理化や今後の地震防災計画等に有効に活用できます。


地震ハザードマップの作成例1地震ハザードマップの作成例2
(a) 100年間の超過確率が63%の地震動強さ     (b) 100年間の超過確率が5%の地震動強さ

地震ハザードマップの作成例


参考文献

確率論的な地震ハザードマップの作成手法, 国土技術政策総合研究所研究報告, No. 16, 37p., 2003.(PDF 3,349KB)

短周期レベルの特性を考慮した地震ハザード解析,土木学会地震工学論文集,Vol. 28, 論文番号42, 6p., 2005.(PDF 494KB)



震源モデルに基づく地震動推定手法の開発

 地震動はその発生源である震源断層の特性(震源特性)に強い影響を受けます。 本研究では、断層運動を数値的に表現した震源モデルの設定手法、ならびに震源モデルに基づく地震動の推定手法を開発しています。 また、その結果に基づいて土木構造物の設計入力地震動を設定するための研究も行っています。
 本研究の成果は、道路橋の耐震設計において一部実用化されています。


関東地震

統計的グリーン関数法により推定した
1923年関東地震の工学的基盤における地震動強度


参考文献

想定地震に基づくレベル2地震動の設定手法に関する研究, 国土技術政策総合研究所研究報告, No. 15, 32p., 2003.(PDF 2,452KB)