国土交通省 国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部

橋梁研究室

研究内容の紹介

道路橋の適切な維持管理に向けた取り組み
〜点検要領における床版損傷評価の改善〜

【背景】
高齢化橋梁の増加に伴い、床版が突然抜け落ちて、路面が陥没する事故も発生しています。これは、主に自動車荷重の繰り返しに伴う疲労の影響によるものと考えられています。

床版抜け落ちによる交通規制 裏面から見上げた写真

【研究内容】
国土技術政策研究所では、大型車による繰り返し走行を模擬した試験が可能な輪荷重走行試験を実施し、損傷メカニズムの解明や損傷の進行を適切に把握する手法について研究をしています。
この研究の成果は、現行設計基準の問題点の把握と改善策の確立などの設計基準の見直しや、点検による危険な兆候の確実な検知・認識方法の確立などの点検要領の見直しに活かされます。

【撤去部材の活用】
実橋梁における損傷は、橋梁の構造や使用環境などにより多様な劣化性状を有することから、損傷を模擬した試験では再現が困難なこと、実橋の供用下において損傷の進行を観察をするには長期間を要することから、撤去される橋梁から切り出した部材(撤去部材)を用いて実験を行いました。


【検査結果の例】
これまで、床版のひびわれは、次のような過程で損傷が進行していくものと考えられていました。
@床版支間方向に広い間隔でひびわれが発生(評価a)
Aひびわれの間隔が密になる(評価b)
B床版支間直角方向にもひびわれが発達(評価c、d)
C格子状のひびわれが密になり、抜け落ちる(評価e)
点検要領では、上記の損傷進行の各段階に対応して評価の区分(a〜e)がなされている。


一方で、ひびわれが格子状にならないまま漏水・遊離石灰が生じて抜け落ちるケースがあることが分かりました。漏水・遊離石灰は、路面に降った雨水等の水が床版に生じた貫通ひびわれを通って生じているものと考えられることから、貫通ひびわれの有無とコンクリート床版の疲労耐久性の関係を検証しました。

             輪荷重走行試験(疲労試験)



【結果】  
見かけのひびわれ性状や受けた荷重履歴が類似していても、貫通ひびわれを生じた場合は疲労耐久性が大きく低下することが確認できました。  このことから、ひびわれの損傷評価に貫通ひびわれの有無を組み入れることを提案することとしました。