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海岸の研究 English Page
海岸研究室

海岸研究室 研究テーマ
[3]海岸環境

2.海岸保全施設による環境変化の予測

 海岸保全施設の設置により生態系に影響を及ぼすと考えられる要因として、定位目標の出現、基盤の出現、空隙の出現、物質の集積、底質の砂泥化、海底の洗掘、浅場の形成が挙げられています。このうち、設置の影響が設置箇所だけでなくその周辺に広がるのは、波浪や流れの変化に起因するものです。離岸堤、人工リーフ、突堤、ヘッドランドは、その周辺に波浪や海浜流の変化を引き起こし、その結果として長期的な地形変化に影響します。波浪や海浜流の変化は、プランクトンなどの分布とともにウミガメの接岸にも影響すると指摘されていることから、海岸保全施設の設置に先立ち検討すべき事項です。

 波浪や海浜流の計算には、対象海岸の注目種の生活史において波浪や流れとの関わりがある時期の代表的な波浪を用いる必要があります。たとえば、高波浪による擾乱が支配要因である場合には年最大波などを、通常時の流れが支配要因である場合は平均的な波浪を外力として与えます。波浪の設定にあたっては、近隣の海象観測所のデータを参考にするとともに、対象海岸における波浪や流れの実態との整合を考慮する必要があります。

 下図は、離岸堤の設置前後の海浜流の計算結果の例です。図中において、矢印は海浜流の速度を、濃淡は水深を示しています。夏季の通常時を想定して、有義波高0.8m、有義波周期7.0s、波向Eの波を与えました。離岸堤の設置により、離岸堤の開口部の深みに向かう流れが速くなりますが、その上昇は最大10cm/s程度でした。

離岸堤設置による海浜流の変化(左:設置前、右:設置後)


 下図は、人工リーフの設置前後の海浜流の計算結果の例です。離岸堤と同様に、夏季の通常時を想定して波を与えました。設置前は沿岸方向に130m程度の間隔で離岸流と向岸流が交互に出現しましたが、設置後は人工リーフの岸側に向岸流、人工リーフの開口部に離岸流が固定化されました。
人工リーフ設置による海浜流の変化(左:設置前、右:設置後)

 下図は、突堤の設置前後の海浜流の計算結果の例です。同様に、夏季の通常時を想定して波を与えました。突堤の設置により、流速は突堤の上手側で低下し、下手側で増加しますが、その変化は小さいものでした。

突堤設置による海浜流の変化(左:設置前、右:設置後)
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