#
海岸の研究 English Page
海岸研究室

海岸研究室 研究テーマ
[2]津波・高潮

1. 気候変動の影響を考慮した外力の将来予測手法

(1)海岸管理において考慮する外力

 高潮からの防護を目的とした海岸堤防の場合、堤防の高さは朔望平均満潮位に高潮による潮位偏差、計画波浪に対する必要高及び余裕高を加えた値で決まります(図-1)。そのため、将来の海岸防護を計画する際には、海面水位の上昇だけでなく、これらの将来変化についても予測することが必要となります。
※これまでに経験した最大値(既往最高)で決まっている場合もあります。

図-1 海岸堤防の設計外力の将来変化

(2)大規模アンサンブル予測の活用

 外力の将来変化を予測する方法としては、大規模アンサンブル気候予測データベース(d4PDF)の活用が考えられます。これは、過去6000年分(日本周辺域は3000年分)、将来については5400年分のモデル実験をおこなったもので、多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風のような極端現象の将来変化を、確率的に、かつ高精度に評価することができます。

 d4PDFのデータセットから土佐湾周辺を通過する台風を抽出した結果が図-2です。大量のモデル実験をもとにしているので、過去実験で4,608個、将来予測(気温4℃上昇)で2,744個と、非常に多くケースの台風を想定することができます。これらの台風について高潮や波浪の推算をおこなうことで、将来の「高潮による潮位偏差」「波浪に対する必要高」を、予測の幅(不確実性)とあわせて算定することができます。

図-2 d4PDFから抽出された土佐湾周辺を通過する台風

赤線が過去実験、灰色線が将来予測(4℃上昇)

(3)気候モデルが有するバイアス

 d4PDFの過去実験は、過去に経験した気象をモデル化したものですが、実際の観測結果との間にはモデルバイアスと呼ばれる差異があります(図-3)。そのため、将来予測の結果もモデルバイアスを含んだものであるため、適切に補正したうえで使用せねばなりません(図-4)。

図-3 d4PDFなどの気候モデルが有するモデルバイアスのイメージ

図-4 有義波高の超過確率分布におけるモデルバイアスの例

(4)バイス補正手法の検討

 土佐湾沿岸に11地点を設定し、d4PDFの将来予測結果(気温4℃上昇)から算定された有義波高の確率分布に対して、3種類の手法でバイアス補正を試みました。手法1(図-5)による補正結果は手法2、手法3よりも高めの値となる傾向が見られましたが、手法による結果の違いは地点による結果の違いに比べれば大きくありませんでした(図-6)。この結果は土佐湾についての結果でしかないため、現時点で一般的な手法の選定方法を提示することはできませんが、引き続きバイアス補正手法の研究に注目していきます。

図-5 バイアス補正の例(手法1)

図-6 バイアス補正手法による結果の違いと予測結果の地理的変異


研究成果の詳細は下記論文をご覧ください

  • Evaluation of bias correction methods for determining future design wave height based on mega-ensemble climate projection
  • [Extended Abstract, 37th International Conference on Coastal Engineering,2022]
    ※本論文は査読中

    [2023年6月更新]
    back