国土交通省 国土技術政策総合研究所
TOP 省エネで健康的な室内環境

木造住宅を建てる前に確認しておきたい
7つのポイント

5.省エネで健康的な
室内環境

設計時において、品確法の断熱等性能等級が高い等級であっても
気密性が低かったり、冷暖房および換気の計画が不適切だったりした場合、快適な居住環境を確保することは困難となります
今回は、快適な環境を確保するために重要と思われる6つの項目を説明します

しょうこ

今 住んでいる古い住宅は、夏は暑くて、冬寒いの・・・
新しい住まいは、快適な住まいにしたい!その方法を教えてくれる?

住宅内を省エネルギー性が高く快適にするためには、いくつかの工夫が必要になります

けんた

1)断熱等性能等級の確認

等級の数値が高いものほど断熱性等が良くなります。
初期費用は高くなりますが、その後の光熱費等は相対的に低くなります。

しょうこ

今の住まいは、冬は隙間風が多くて寒いの!
隙間の少ない住宅を選ぶ方法ってないかしら

隙間の量は、住宅が完成する直前に専用の機械を設置して
隙間の量を計測することが出来ますが、計測を実施していない建設会社も数多くあります

けんた

2)気密性能の測定の有無、保証される気密性能

住宅の隙間が多く、気密性が低いと外気が室内に侵入しやすくなり、夏は暑く、冬は寒い家になり、冷暖房を使っていても十分な効果が得られず、冷暖房費が増加してしまうことがあります。また、寒冷地では室内の水蒸気が壁内に流入し内部結露を引き起こしたり、適切で計画的な換気がされにくくなったりします。例えば、排気用の換気扇があっても、近くに大きな隙間があると、その隙間からショートカットして外気が入ってしまい、部屋全体の適切な換気がされず汚染された空気がそのまま淀むことがあります。気密性は、施工完成前に専用の機器を窓に設置して、住宅の隙間の合計面積(㎠)を建物の延べ床面積(㎡)で割った値となるC値(隙間相当面積)を計測し評価します。C値は延床面積1㎡あたり隙間(㎠)を示すものであり、値が低いものほど気密性が高くなります。なお、計測時は、全ての換気口は養生テープ等で塞ぎます。因みに気密性が高いからといって息苦しくなるわけではなく、気密性が高い住宅に対して、適切な換気をすることにより、断熱性を確保しながら換気により外気を取り入れ室内の空気を清浄にすることが出来ます。

しょうこ

今の住まいは、部屋と部屋の間の壁(間仕切り壁)が凄く冷たいの!
新しい家を建てるとき、対策はあるのかしら?

ひょっとすると、間仕切り壁の上下に気流止めがされていない可能性があります

けんた

3)気流止めの有無

例えば、在来軸組構法等の場合、外壁や間仕切り壁の上下に気流止めが無いと、冬、床下の冷たい空気が外壁や間仕切り壁に流入してしまい、冷やされた壁から室内も冷やされると共に結露の要因にもなります。
夏は、床下の暖かい空気の流入により壁から室内も暖められてしまいます。

気流止め
引用:(一社)木を活かす建築推進協議会「住宅の省エネルギー 設計と施工」より作図

4)換気システムの種類

住宅の換気には、以下の3種類があります。 第1種換気:給気口および排気口の何れにも機械換気装置を設置する換気システム
第2種換気:給気口に機械換気を設置し、排気口を自然換気とする換気システム
第3種換気:給気口を自然換気とし、排気口に機械換気を設置する換気システム

換気システムの種類

第1種換気は、イニシャルコストが高くなりますが、最も計画的に換気することが可能なうえ、屋外に捨てる熱を回収する「熱交換換気システム」を導入できるため、冷暖房エネルギーの削減と快適性の向上が期待できます。
第2種換気は、採用事例が少ない状況です。第3種換気は、最も一般的な換気システムとなります。

しょうこ

今の住まいは、冬、換気口から冷たい風が入ったりして、そのまわりが寒いの!
換気口を塞ぐと室内の空気が汚れたままになるんだけど、何か良い方法はある?

換気の際、屋外に排出する汚れた空気(排気)から熱を回収し
新鮮な外気を室内に取り入れる(給気)時に、その熱を再利用する熱交換換気システムがあります

けんた

5)第1種熱交換換気システム

夏期に通常の換気をすると、冷房により冷やされた室内に暑い外気が入り室内の温度が高くなってしまいます。
また、冬期に換気をすると、暖房により暖められた室内に寒い外気が入り室内の温度が低くなってしまいます。
第1種熱交換換気システムは、換気の際、屋外に排出する汚れた空気(排気)から熱を回収し、新鮮な外気を室内に取り入れる(給気)時に、その熱を再利用する換気方法のことです。従って、この仕組みにより外気は室温に近づいてから室内に給気されます。
このシステムは、ダクト式とダクトレス式の二つがあり、何れも熱交換が可能なため省エネルギー性が高く、冷暖房費が削減出来ます。また、外気導入による温度差が少ないため、不快感を減らすことも可能です。さらに、外気を導入する際、このシステムのフィルターを通過させて空気中に含まれる花粉、PM2.5、アレルゲン、埃など目に見えない有害物質を排除し、健康にも役立ちます。
一方、設備費と維持費が高くなりますが、冷暖房費は低くなります。
例えば、熱交換率が90%の場合は、以下のようになります。

外気温が30℃で室温が20℃だった場合
外気は30℃のままではなく、21℃程度まで下がってから室内に給気されます。
外気温が0℃で室温が20℃だった場合
外気は0℃のままではなく、18℃程度まで温まってから室内に給気されます。
しょうこ

熱交換換気システムは魅力的だけど、コストやメンテナンス等、総合的な判断が必要そうね!
夏と冬、省エネで快適にすごしたいけど、どうしたらいい?
熱中症とヒートショックの問題もあるし・・・

夏と冬の場合を分けて、説明しますね!
夏は扇風機とエアコンだけですが、冬は排気塔筒がないファンヒーターを使用すると
室内の空気が汚れるので、煙突や排気筒のある暖房器具、エアコン、床暖房を推奨します

けんた

6)各部屋の温度管理が適切なこと

夏期の猛暑日または熱帯夜において、居間や寝室等が冷房されない部屋があった場合、熱中症となる恐れがあるので、そのような部屋が生じないようにする必要があります。因みに熱中症の発症場所は、室内も数多く発生しています。また、冬期において暖房されない脱衣室、浴室、トイレ等がある場合、暖かい居間や寝室から冷たいこれらの部屋へ居住者が移動した際、室内温度の変化により血圧が上下して、心臓や血管の疾患が生じて死亡する事例があり、その状況をヒートショックと呼んでいます。因みに東京都健康長寿医療センターの資料「入浴時の温度管理に注意してヒートショックを防止しましょう」によると、2011年において約17,000名が入浴中にヒートショックで急死したと推計されており、同年の交通事故死亡者数4611名の3.7倍に至っています。従って、冬期において脱衣室、浴室、トイレが、WHOの推奨する18℃以上に制御が可能であるか事前に確認することは極めて重要となります。冬の季節に脱衣室や浴室の温度計を置いて、18℃以上であることを確認されることを推奨します。18℃以上にする方法として暖房の他、暖房室とこれらの部屋とのドアを開放して室温を高める方法もあります。
最近、1つまたは2つのエアコンにて住宅全体の冷暖房を計画される事例がありますが、体感温度の個人差への配慮、各個室の温度制御が適切に実施出来るデータおよび技術力を保有していることへの確認も必要と思われます。

部屋の温度管理
しょうこ

交通事故の死者よりもヒートショックで亡くなる方の方が多いなんてびっくりね・・・
脱衣室や浴室が暖かくなるように注意しなきゃ!